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【連載】ツクヨミ ケイコ「大丈夫、わたしには音楽がある」Vol.2 夢が夢でなくなったとき

StoryWriter

人の夢が叶う瞬間を、目の当たりにした。

2025年3月31日、日本武道館。もうずっと心待ちにしていた日、でもずっと来ないで欲しかった日。いまあの日を思い出しても、まだ涙が出そうになる。

「アイドル」はかつて他人から選ばれるものであり、自分からなるものではなかったように思うけれど、いまはきっと違う。いまはもう誰にだってアイドルになれるチャンスや可能性がある。ただ、「その先」はまた別の話だ。

「デビューから3年以内に武道館をやれなかったら解散」

にっぽんワチャチャというアイドルグループは、そう宣言していた。

わたしたちSOMOSOMOがにっぽんワチャチャに出会ったのは2020年夏、当時まだ大阪を活動拠点にしていたにっぽんワチャチャを、わたしたちの主催ライブに呼んだことがきっかけだった。

そのあとにっぽんワチャチャは大阪から上京、SOMOSOMOは事務所を独立、お互いに新体制にもなった。

移り変わりの激しいアイドル業界のなかで、お互い形を変えては来たけれど、それでもお互いの存在自体に変わりはなかったおかげで距離を少しずつ縮めてきた。

そのせいか、「にっぽんワチャチャが日本武道館でワンマンライブをする」という宣言に、わたしは実感がずっと湧かなかった。

だって、同じイベントに数え切れないほど出演したし、ツーマンライブもしたし、衣装交換も楽曲のコラボもしたし、そのためのレッスンも一緒にしたし、プライベートで一緒にお酒を飲んだりもしてきたから。

居酒屋で乾杯をした友人が日本武道館のステージに立つ、だなんて。

その瞬間はあまりにも突然だった。

日本武道館のステージににっぽんワチャチャのメンバーが現れた瞬間、わたしは涙が溢れ出て止まらなくなった。

初めて、「にっぽんワチャチャが日本武道館でワンマンライブをする」に実感が湧いた瞬間だった。

まって、やばい、なきそう、と呟いた瞬間、横1列に並んで座っていたメンバーたちも同じように泣いていた。

にっぽんワチャチャが、わたしたちを、夢の武道館へ連れてきてくれた。

〈夢の武道館へ君も連れて行くよ〉
(「夢の武道館へ__」にっぽんワチャチャ)

誰も歩いたことのない道のりを歩んできたはずだ。何度馬鹿にされてきたんだろう。何度辛くなったんだろう。

毎日どの瞬間にSNSを開いても、日本武道館を埋めるために奮闘しているメンバーの投稿が流れてきていた。真冬に渋谷でフライヤーを配っていると聞いて会いに行ったとき、すこし不安そうになりながら「なかなか受け取ってもらえないから、知っている人に会えて嬉しい」と言ってくれた。

きらきらのメイク、きらきらの衣装、バックスクリーンに映し出されるメンバー、5色のペンライトの海、感動して泣かせられたかと思えば、いつもみたいに笑わせてもくれた。

きっとアンコールの最後の曲は あの曲だろうと思っていた。あの曲でありますようにと願ってすらいた。分かっていた。だけど、

〈夢は見ているだけじゃなくて 爪先立ちで手を伸ばした〉
(「キミとクエスト。」にっぽんワチャチャ)

爪先立ちで手を伸ばした先の、夢が夢でなくなったときの、その真っ只中。

もう何年も前から何回だって聴いてきたその曲で、わたしはまた涙が止まらなくなった。

「泣いてるー!」
「やばい、今ソモちゃんの顔見れん」
「また飲み行こなー!」

ライブが終わった直後に会ったメンバーは、遠くのステージにいたときと同じきらきらを纏いながらも、やっぱりいつも通りのにっぽんワチャチャで、それがわたしはすごく嬉しかった。

アイドルになった「その先」のこと。

誰にだってアイドルになれるチャンスや可能性がある。

でもその分、秀でることが より難しくなったように思う。

だから、唯一無二にならなくてはいけない。

にっぽんワチャチャは間違いなく唯一無二になった。

かわいくて、明るくて、楽しくて、破天荒で、一生懸命で、そしてなにより、誰も通ったことのない道のりを経て、わたしたちを日本武道館に連れて行ってくれた。

わたしたちSOMOSOMOに明確な目標はない。

SOMOSOMOは終わりを決めていない。

ただひたすら、いま目の前にあるものに立ち向かっている。

わたしたちには夢がいくつもあって、そのひとつを叶えたらまたひとつ、さらに大きな夢に立ち向かっている。

にっぽんワチャチャとはまた別の道のりの先でわたしたちは、どんな景色を見れるだろうか。

にっぽんワチャチャに、いち友人としての誇りと、いちファンとしての愛を込めて。

〈夢が夢でなくなったとき どんな景色が見えるだろう?〉
(「キミとクエスト。」にっぽんワチャチャ)

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