「〈サマソニ〉出演決定おめでとう」と言われて、ありがとう、すごいでしょう?と意気揚々に返す日々。
ありがとうと返す日数が長くなって、当日までの日数が短くなればなるほど、わたしは、手放しで喜ぶだけではいられなくなっている。
〈SUMMER SONIC〉。
2000年に始まり、関東と関西での同時開催という珍しい形で開催される、日本3大ロックフェスのひとつとも呼ばれる夏の大型ロックフェス。国内のアーティストに限らず海外アーティストも多く出演し、昨年2024年は東京会場、大阪会場、前夜祭イベント〈SONIC MANIA〉を合わせて 総動員数は25万人以上。
音楽ファンはもちろんのこと、音楽に特別詳しいわけではなくても、〈サマソニ〉の愛称を耳にしたことがある人も多いのではないだろうか。
わたしたちSOMOSOMOというアイドルグループは、〈SUMMER SONIC 2025〉Club Que Será Seráステージへの出演が決定した。
わたしたちは2020年5月、「出れんの!?スパソニ!?」というオーディションに挑戦していた。コロナ禍の影響により開催されない〈SUMMER SONIC〉に代わりに開催されることになった、〈SUPER SONIC〉への出演権をかけたオーディション。
2019年7月にデビューしたものの、半年後にはコロナ禍によりライブ活動を休止せざるを得なかったわたしたちにとって、それは大きなチャンスだった。
しかし結果は、音源・動画審査は通過したものの、二次審査で敗退。
そこから5年が立ち、今度はオーディションではなく、オファーをいただいて出演させていただけることになったのだ。
〈サマソニ〉への出演を解禁してから、たくさんのお祝いの言葉をいただいた。
ライブの特典会ではもちろん、配信中のコメントでも、SNSでも。
いつも応援してくれているファンの方を筆頭に、他のグループのファンの方、そして他のグループのアイドルの方や、関係者の方々からも。
母親や、音楽好きの兄にも連絡をした。友人にも話した。
「今年の〈サマソニ〉に出るよ」なんて、何度口にしても不思議な気持ちになる。
夏フェスが憧れだった。
学生の頃、母親が心配して行かせてくれなかった夏フェス。
高いチケット代も交通費も出せなくて、タイムテーブルの画像を保存して、観たいアーティストに丸をつけるだけだった夏フェス。
自分がアイドルになってからも、自分のライブがあるから行けるわけがないと分かりつつ、出演アーティストの解禁を楽しみにしていた夏フェス。
まさか自分が初めて行く憧れの夏フェスが、出演する側だなんて!
でも、わたしはいち音楽ファンとして知っていた。
ロックフェスにアイドルが出演することを、よく思わない意見もあるということを。
恐る恐るわたしは、「アイドル ロックフェス」と検索をかけてみた。
肯定的な意見のなかで、わたしが想像していた通りの言葉は、すぐに見つかった。
「ロックフェスにアイドルはいらない」。
これはもう何年も前からある話だ。もちろん、過去の夏フェスを盛り上げてきたアイドルがいることも事実である。ももいろクローバーZ、でんぱ組.inc、BiSH。
ただ、前述したアイドルが夏フェスを盛り上げられているのは、それ相応の実力や知名度があるからこそだと思う。
「なぜアイドルがロックフェスに出ないで欲しいのか」という理由はきっと人それぞれだと思う。ただ、わたしはその気持ちが、どうしても理解できてしまう。
学校が苦手だった学生の頃、ロックはわたしの聖域だった。ライブがわたしの救いだった。
好きなアーティストの話を、友達にさえほとんどしなかった。
女の子が苦手で、お化粧もお洒落も苦手だったわたしにとって、アイドルは邪道だった。
可愛いからなんだ。可愛いだけで何になる。曲も歌詞も、自分で作ってすらいないくせに。
アイドルの魅力を知って、自分自身がアイドルになって、デビュー6周年を迎えたいまだから分かる。アイドルは可愛いだけじゃないし、簡単じゃない。
でも、当時、アイドルを知らなかったわたしにとっては、どうしても受け入れ難い存在だったのだ。
先日わたしが、「アイドルがロックフェスに出ることって、実際、どう思われるんだろう」「生半可な気持ちでライブをしてはいけないよなと思ったり、した」とXに書いてから、色々な返信が届いたり、特典会でこの話をしてくれるファンの方々がいた。
その人たちはわたしの気持ちを受け止めてくれながら、自分の意見も教えてくれた。
そして、最後には口を揃えてこう言ってくれる。
「SOMOSOMOなら大丈夫だよ」
SOMOSOMOのファンのなかには、アイドルに限らず幅広い音楽を好きな人も多い。それから、元々アイドルファンではない人も多い。
SOMOSOMOをきっかけにアイドルを好きになってくれた人がいるし、アイドルのなかで唯一SOMOSOMOだけを好きでいてくれる人もいる。
元々アイドルなんて嫌いだったのにおかしいなあ、と話してくれるファンの方も、いる。
わたしはいつも考えすぎてしまうような性格だし、そうやってひとりで考え込んではネガティヴな方向に沈んでいってしまう。今回もそうだった。でも、ふと我に帰ってみる。
「〈サマソニ〉に出演します」と自分の口から言えること。
「〈サマソニ〉出演おめでとう」と自分たちのファンに言わせてあげられること。
何より、わたしたちに、〈サマソニ〉に出て欲しいと思ってもらえたこと。
何ひとつ簡単なことではない。ひとりでできることではない。数えきれないほどのライブをして、ここまでかけてきた時間があって、その間で出会えた人たちがいて、そのなかで築いてきた信頼があってのことだと信じたい。自信を持ってもいいと、思いたい。
交わらなくてもいい世界なのかもしれない。
でも、どちらの世界の魅力も知ってしまったわたしだからこそ、もしできることがあるのなら。そう思って、この記事を書いている。
憧れの場所を、誰でも立てる場所にしてはいけない。
呼んでいただけたからにはそれ相応の、それどころかそれ以上のものを見せたい。
SOMOSOMOなら大丈夫だよと言ってくれるファンへ。
そして、これを機に出会う全ての人たちへ。
改めて、<SUMMER SONIC 2025>東京、8月16日(土)Club Que Será Seráに出演します。
音楽にとって夏という季節は、1年のなかでも特別な季節のように思う。
わたしはいち音楽ファンとして、いちアイドルとして、自分にとっても、これを読んでくれたあなたにとっても、記憶に残る特別な夏にしたい。