取材&文:西澤裕郎
写真:伊藤洸太、外林健太
“人間最高”をコンセプトに活動を続けるアイドルグループ、LiVS。元WACK代表・渡辺淳之介から出資を受けたALL INc.主催によるアイドルオーディション「THE LAST CHANCE PROJECT」を経て、2023年8月13日にデビュー。2024年には下北沢シャングリラ、SHIBUYA WWWXでのワンマンライブを成功させた。
2025年8月18日、LiVSはグループ史上最大規模となる東京・恵比寿リキッドルームでのワンマンライブを開催。StoryWriterでは、恵比寿リキッドルーム公演という大きな挑戦に向けてスタートを切ったLiVSの軌跡を、さまざまな角度から記録してきた。
最終回となる今回は、2025年8月18日(月)に東京・恵比寿リキッドルームにて開催された、2周年にしてグループ史上最大規模となるワンマンライブのレポートを掲載する。
リキッドルームに響いた人間最高
「リキッドルームは、LiVSにとってのターニングポイントになる」
彼女たちへの取材を重ねるたびに、メンバーの口から「リキッドが勝負の場になる」という言葉が増えていった。
バンドにとっても登竜門的な意味を持ってきたリキッドルーム。この会場を満員にできるかどうかは、いわゆるメジャーシーンに打って出ていけるかの分かれ道となる。だが、LiVSにとっての“ターニングポイント”の意味は、この数ヶ月で大きく変化していた。
2025年に入り、歌唱の中心を担っていたコチャキンTVが脱退。さらにリキッドルーム公演のわずか10日前には、同じく個性的な歌声でヴォーカルの中心となっていたユニセックスの脱退が発表された。
結果として、この大舞台に立つのは、ランルウ、コンニチハクリニック、スズカス・テラ、ミニ・マルコの4人。こうした不安定な状況に、目撃者(※LiVSファンの呼称)たちからは心配や不安の声も起こり、グループの未来に影を落としかねない状況が続いた。
だからこそ、この日のリキッドルームは、LiVSが存続していくための生き残りを懸けたライブとなる。そんな意味を4人体制になったばかりのインタビューでメンバーは語っていた。
客電が落ち、流れたイントロは「ONE」。オーディションで脱落した候補生からの手紙をもとに生まれた楽曲だ。〈どうして報われないんだろう〉と歌うフレーズが、これまで以上に深く突き刺さる。これまでのワンマンでは後半のクライマックスで披露されてきた代表曲を、あえて冒頭に置いた。そこには、この日が特別な意味を持つことを強く伝えたい意志が込められていた。
「RとC」では、コンニチハクリニックが「お前らの本気見せてくれ!」と伝え、メンバー4人が客席へと飛び出した。これまでも客席に降りることはあったが、この日はどこにメンバーがいるのか瞬時に把握できないほどフロアが埋め尽くされている。自然に輪ができ、目撃者たちが彼女たちを取り囲み、熱狂が広がる。落ちサビではマルコがフロア中央で歌い叫ぶ。そのまま客席後方に設置されたサブステージに集まると、カラフルな風船が投げ入れられ、「業 TO HEAVEN」では、会場全体が鮮やかに染め上げられた。再びステージへ戻る彼女たちの背中には、4人で挑む覚悟が滲んでいるようだった。
ミニ・マルコが「苦しいことも楽しいこともたくさんありました。こうしてここに立っているのは、ここに立っていたい気持ちがあったから。あなたの想いがあったからです。3年目も、私たちはLiVSで歌い続けます」と想いを伝え、マルコのアカペラからワルツ調のパートとメロディアスなサビの展開がアクセントになるポップパンク「LiFE」、エモーショナルなロック曲「JUST ONCE」、「BACKLiGHT」、ミドルテンポの初期楽曲「MUSiC」、オルタナティブロック楽曲「He meets」と、2年間で生み出してきたバリエーション豊かな楽曲を力一杯パフォーマンスした。改めて感謝を1人ずつMCで気持ちを伝え、「Preserved」、初期楽曲「Colorful」、スズカスによる歌唱からはじまる「WiTH YOU」と、歌い繋いでいく。
本編のラストでは、一枚の手紙を4人でリレー形式に読み上げる。「一年後の私へ」と題された未来の自分に宛てた言葉。コンニチハクリニックが、「毎日わくわくして過ごしていますか? いま胸をはって幸せだといえますか?」と自分に問いかける。ランルウは「私はあなたのことを信じています。あなたもわたしのことを信じて生きてください」、スズカス・テラは「自分のことを好きでいますか? この場所で、いまより自分のことが好きだといいな」と語り、ミニ・マルコが、「まだ歌をうたっているよね? 自分の声を好きになれていますか?」と手紙を読むときには、フロアから啜り泣く声も聞こえていた。
それぞれが一言一言を大切に読み終えると、マルコが目撃者たちの方向に向かい紙飛行機を飛ばし、「Letter」へ。〈走って走って〉という歌詞は、観客に向けてではなく、むしろ自分たち自身への檄のように響いた。
本編18曲を力一杯歌いあげ、「以上、私たち、LiVSでした」と挨拶をしステージを後にした。
目撃者たちによる熱い口上をきっかけに起こるアンコール。メンバーのライブに呼応するようにあげたうねりが会場を包む。
アンコールの一曲目では、再び客席の四方からメンバーがサプライズ登場。「ZOMBiES→」で観客と一緒に跳ね回り、フロアを大きな渦に変える。ラストナンバーは「Don’t Look Back」。〈このまま前を向いて進んでいく〉と宣言するかのように、最後はメンバー同士、目撃者同士が手を繋ぎ、「人間最高!」と叫び幕を閉じた。
この日のライブには、悲しみも喜びも、そのすべてが剥き出しのまま存在していた。動画演出や特効といった華美な仕掛けはない。ステージとフロアを自在に行き来し、観客を巻き込み、ただアイデアと自力で空間を震わせた。そこには、LiVSが掲げる“人間最高”という言葉の意味が、まさに体現されていた。
脱退という現実を受け止めながら、その枠を超えてなお自分たちの姿を見せきった4人。会場にいた目撃者は、一筋縄ではいかない感情を彼女たちと共有し、未来を共に思い描いた。ターニングポイントとなるライブとは、大きな会場を埋めることだけを指すのではない。人間の心を動かし、解き放つこと。その真実を、LiVSはこの夜、確かに証明してみせた。
LiVEは、2周年という節目で一つの答えを見いだした。そして、3年目へと歩みだした。
■ライブ情報