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【連載】ツクヨミ ケイコ「大丈夫、わたしには音楽がある」Vol.18 持っていないのなら、

StoryWriter

小さい頃、アイドルグループがテレビに映っていたリビングで、母親に「アイドルは、自分のことを可愛いとか格好良いと思える人がなるものなんだよ」と言われたことを、わたしは何故かずっと忘れられないでいる。

当時のわたしは、“アイドル”は画面の向こう側、もはや架空の存在だとすら思っていたと思う。だからその言葉をすんなりと受け入れることができたし、その言葉のおかげで「アイドルになりたい」と簡単に言うことはなかった。

SOMOSOMOの<単独公演>には、いくつか種類がある。

季節やその時々に合ったコンセプトで開催する単独公演。

半年に一度のスパンで開催する大型ワンマンライブ。

そして、メンバーの誕生日ごとに開催する生誕祭。

先日1月18日、わたしの生誕祭を開催した。

1月に誕生日を迎えるわたしの生誕祭は、毎年秋にはもう準備を始める。

開催するライブハウスを決めることから始まり、日付と会場が決まれば本格的な打ち合わせに入る。コンセプト、それに合わせたライブの内容、衣装、グッズ。それに向けての撮影やグッズ製作のスケジュール。撮影は誰にお願いするのか、どんな雰囲気で撮って欲しいのか。VIPチケットの特典内容や、当日のセットリストも。

<生誕祭>というものをきちんと意識するようになったのは、アイドルとしてデビューしてからだった。アイドルならではのカルチャーなのではないかと思う。

生誕祭を開催しないアイドルグループや、対バン形式で生誕祭を開催するグループも多い。そのなかでSOMOSOMOの生誕祭は、本格的な「メンバープロデュース公演」である。

わたしにとって、それまでただ祝ってもらうだけのものだった誕生日は、「誕生日という特権を使ってライブをプロデュースして、人を楽しませる権利」になった。

今年の生誕祭のコンセプトは“アイドル”にした。

このコンセプトが決まったとき、特にその意味を深く考えていたわけではなかった。

今年の生誕祭でやりたいことが、見つからなかった。ただ、前年までと同じようなことをやるわけにはいかない、飽きさせないものにしなくては、という漠然とした義務感のような気持ちだけはあったし、一番最初の打ち合わせで「いままでと違うケイコを見てみたい」とプロデューサーにも言われたことがきっかけだった。

前年の生誕祭はバックバンドを呼んで、バンドセットでソロで曲を歌ったこともあり、いままでとは全く違うものにしたかったからという理由で決まったこのコンセプト。

内容先行の生誕祭ではなく、コンセプト先行の生誕祭になった。

それは、わたしが“アイドル”として見せたいものを模索して、向き合う良いきっかけにもなった。

衣装は一日中ネットサーフィンをして見つけた服や小物を組み合わせた。

いつもはロングスカートだから選ばないアイドルらしいパニエや、いつもは動きやすさを優先してしまうから絶対に履かない高いヒール。目立つ大きいリボンと、大好きなレースやパール、シルバーを散りばめる。普段メンバーカラーを強調することは少ないけれど、せっかくだから大好きな紫色が目立つように。

メインビジュアルやグッズに使う写真はキラキラしたものにしたくて、スタジオと夜の野外での撮影に。カメラマンは、いつも照明がキラキラしたライブ写真を撮ってくださる白石さんにお願いを。

カバー曲は、人生で初めて好きになったアイドルグループであるAKB48。アイドルに詳しくない人でも楽しめるように、メジャーな「大声ダイヤモンド」をソロで。

もう1曲は、ルッキズムに嫌気がさしてアイドルというコンテンツから離れていたわたしを、この世界に連れ戻してくれたきっかけのグループであるでんぱ組.incの曲を。4年前4人体制だった頃、今年と同じ渋谷チェルシーホテルで開催した生誕祭で歌って、オレンジ色のサイリウムでいっぱいになったフロアを忘れられない「ORANGE RIUM」を、今度はメンバー7人全員で。歌割りも、メンバーに似合うものを。

会場のBGMはわたしの大好きなアイドルの曲を詰め込んだ。

AKB48とでんぱ組.incはもちろん、わたしがアイドルとは思いもしなかった頃に好きだったグループの曲から、よく共演していていつも仲良くしてくれるグループの曲、以前所属していた事務所の後輩グループの曲、憧れのグループの曲まで。ライブが始まるまでの時間や、特典会に並んでいる時間も、できるだけ飽きさせないように。

グッズはわたしの衣装に合わせた色で揃えた。いままではなんだか小っ恥ずかしくてできなかったけれど、Tシャツには初めて自分の顔が分かる写真をプリントすることにした。スタイリングに力を入れた衣装でのアクリルスタンドと、数年前からプロデューサーに提案してもらっていたけれど、買ってもらえる自信がなくてグッズにしてこなかった受注生産のリングも用意した。

わたしは、自分自身そのものに対して自信を持てることはなかなかないけれど、自分が作ったものに対しては自信を持てる。
生誕祭は、わたしの我儘と拘りを何よりも優先してくれて準備をしてくださった事務所と、それに協力してくれたメンバーと、それを観に来てくれたファンのおかげで大成功だった。

冒頭に書いた、母親の言葉は間違いではないと思う。

誰かに勧めたいものは、自分が自信を持てるものであるべきなのだから、自分を可愛いと思うことができれば、きっと埋もれることなく前に出てゆける。

わたしは、自撮りをSNSにぽんと載せてどかんとバズるような見た目でもない。歌もダンスもパフォーマンスも上はいくらでもいる。何より、自分のことを可愛いだなんてなかなか思えない。アイドルに向いているとは、もしかしたら言えないのかもしれない。

それでも確かに、わたしのことを好きだと言ってくれる人がたくさんいるのだと、認めざるを得なかった。そういう生誕祭だった。

冒頭に書いた通り、わたしたちの単独公演にはいくつか種類がある。

そのなかで、大型ワンマンライブは“SOMOSOMO”の自信になるものであり、生誕祭は“わたし”の自信になるものなんだろう。

アイドルに向いていなくても、アイドルになれる。

自信が必要なら、自信を付けていけたらいい。

そして、そう思えるように、自分が作るものには自信を持てるように我儘も拘りも許される限り詰め込んで行きたい。

この文章にも。

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