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【連載】ツクヨミ ケイコ「大丈夫、わたしには音楽がある」Vol.19 アイドルの美しい、終わりと続き

StoryWriter

好きなアイドルグループから、わたしの推しであったメンバーが突然脱退したときのこと。

わたしはめっきりそのグループの曲を聴かなくなり、動画を観なくなり、SNSを見なくなり、話題にすら出したくなくなってしまったことがある。

所謂、『離れる』というやつ。

アイドルになったいま、そして時間が経ってまた、推しのいないそのグループも好きになれたいまだから分かる。

ほんとうに救われた、ほんとうに大好きなグループだったからこそ、あんなことはしなければよかったと。

来月、わたしたちSOMOSOMOからメンバーがひとり卒業する。

わたしたちがいまの7人体制になったのは2023年の5月。

デビューしてから6年半。メンバーの増減を繰り返してきたわたしたちだったけれど、気が付けばいままでのどの体制よりも、この7人体制が長くなっていた。

3年近く、何があっても唯一変わらなかった形そのものが、変わる。

ある日突然決まったことではなかったけれど、それでもやっぱり、わたしの心はおかしくなった。

あんなに好きなはずの美容も料理も本も、そして音楽でさえも、新しいものをインプットしたいと思えなくなった。

あとから気が付いたことだけれど、わたしがこの連載を書き進められなくなったのも、遡ってみれば 卒業の決定を知らされた頃からだった。

わたしは、磨きをかけることではなくて、自分自身の形を保つことだけでもう、精一杯になった。

3年間、何があっても変わらなかった「7人のSOMOSOMO」という世界のなかだからこそ成り立っていた「ツクヨミケイコ」を、異世界に投げ出されても成立させなくてはいけないのだ。

でもこんな気持ちを、言えるわけが無かった。こんなことを言ったら、その子が悪いみたいじゃないか。その子は何も悪くない。寧ろ、沢山考え話し合った上で出た結論なのだから、背中を押してあげたいのだ。それに、こんなことを口にするのは、なんだか情けなくて嫌だった。

当初、もっと早く出る予定だった卒業発表の時期が伸びれば伸びるほど、わたしは現実逃避に成功した。嘘も百回言えば真実になる、と聞いたことがあるように、事実を公にしないことで、現実味は薄れていき、卒業なんてこのまま宙に浮かんで消えてくれるような気さえした。

確定した卒業発表の前日は朝から夜まで予定を入れて、ひたすら遊んだ。帰りの電車は、どうか明日が来ませんようにとまで願い、明日になったらプロデューサーとその子が、やっぱり辞めるの辞めちゃったと言ってくれることを、心の底から望んでいた。

それでも、そういう訳にはいかない。

卒業の発表は、わたしたちにとって初めて、ライブのMCでの発表だった。

これまでSNS上での発表しかしたことが無かったなかでの今回の発表は、それがどれだけ大きくて、大切で、丁寧に伝えたかったかという気持ちの表れでもあった。

3年前、新メンバー つまり今回卒業する子を含めた3人をSOMOSOMOに加入してもらうか否かの決断の真っ只中、わたしはどちらかと言えば加入には反対していた方だった。

わたしたちが「SOMOSOMOの第二章」と呼んでいる時期の始まり。わたしはとにかく人間不信だったと思う。当時も、自分自身の形を保つことだけで精一杯な時期だった。

安易に心を開いてはいけない。信用してはいけない。アイドルなんて、いつどこで誰がある日突然いなくなってしまったって不思議では無いし、珍しいことでは無いのだから。

自分自身の形を保つために、安易に綻ばない自分自身を成立させるために、自己防衛を。

それでもわたしは、その持ち前の明るさと人懐っこさと、計り知れない思慮深さで、わたしは心を開かざるを得なかった。

こうやって、泣くのを堪えながらだらだらと長文を書き連ねてしまうくらいに。

卒業の決定を知らされた日の帰り道は、偶然わたしとその子がふたりきりで、「けいこさんはわたしに心を開いてくれたと思ってる」と言われた。うん、と返しながら、わざわざ言葉にしてこなかったわたしの本心を読み取ってくれているところが、やっぱり流石だなあと思った。

冒頭に書いた、「突然脱退した推し」は、ある日突然の脱退だった。

体調不良が理由だったこともあり、卒業ライブの開催はおろか、発表があったその日付けでの脱退だった。

わたしはその数週間後に予定されていたライブのチケットを取るか迷っていたところだった。いつか行こう、の「いつか」を未来の自分に委ねていたら、その「いつか」は来ることなく終わってしまった。そんな自分を呪いたかった。

やるせなくて、そのグループから離れてしまった。

これに限らず、思いがけない形で去って行くアイドルを幾度となく見てきた。辞めざるを得ず、やり切れないまま去って行ったアイドルは、決して少ないとは言えない。

でも今回はそうではない。

きちんと時間をかけて言葉を交わして、決定から発表を経て卒業のその日までが、いまできるいちばんいい形で用意されている。

そんなにも奇跡のような日が確約されている。

その日を、わたしが凹んだまま迎えるなんて。

数年後、推しがいなくなり新体制になったあのグループを見て、その新しい魅力にまた夢中になった。

そして、その過程を見逃してきたことを後悔した。

辛さや寂しさにいちばんなんてつけたくない。

その存在に救われてきた、彩りを与えられてきたファンは、寂しくて辛いはずだ。

それでもあえて言うことが許されるのなら、きっといちばん強く影響を受けるのは誰でもないメンバーなのだ。

それでも、ひとりが卒業を決め、わたしたちが続けると決めた以上、わたしたちは進まなくてはいけない。

散々現実から逃げて、散々凹んだから、ちゃんと背中を押して送り出そう。

お互いに、いままでのことも、いまのことも、これからのことも、全部無駄じゃなかったと言い切るためには、わたしはそうありたいと思ったのだ。きっといつか、辞めたことも、辞めなかったことも、全然間違っていなかったと言えるように。

幸せに終わろうね。幸せになってね。幸せになるね。幸せになろうね!

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