
「子どものための哲学」を意味する「Philosophy for Children」を由来に持つ、Mellrin(メルリン/西中島きなこ)主宰のシンセポップ・プロジェクト「P4C(ピーフォーシー)」。作詞・作曲・アレンジから、アートディレクションまでMellrinがトータルプロデュースし、10代後半から20代の女性メンバーを中心に構成されている同プロジェクト。最大の特徴は、インディーシーンでは珍しい「関西」と「関東」の二拠点体制。さらに、一度でも参加したメンバーは全員が永久メンバーとなる自由なシステムを取り入れ、固定観念にとらわれない独自の活動スタイルを確立している。音楽のみならず、ファッションやアート性を取り入れたポップでレトロな世界観は他に類を見ない。
今回、7月に下北沢BASEMENTBARで控える東京初ライブを前に、リーダーのMellrinにメールインタビューを敢行。プロジェクトの原点や独自の運営論、そして本格始動する「第3期」のビジョンまで、じっくりと話を聞いた。
プロジェクトの原点、Mellrinの音楽的バックグラウンド
──プロジェクト名「P4C」は、「Philosophy for Children」を由来にしているかと存じますが、「子どものための哲学」という概念に興味を持ったきっかけや、それをプロジェクトのテーマに置こうと思った理由を教えてください。
私は音楽を通じて色んな人が交流するコミュニティーを作りたいと以前から思っていました。参考にしたのは福祉施設のコミュニティースペースです。せっかくならプロジェクト名にも親和性を持たせたいと思い、色んな言葉を探している中で「P4C」に辿り着きました。私はメルちゃん(知育人形)が好きなのですが、メルちゃんのキャッチコピーは「めばえる やさしさ おもいやり」です。メルちゃんと遊ぶ中で生まれる優しい思いやりの気持ちとPhilosophy for Childrenによって育む心はリンクしていると感じ、この名前にしました。
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Mellrin
──Mellrinさんがリーダーとしてこのプロジェクトを立ち上げるに至った原点について教えてください。
私は音楽を作るだけでなくアートディレクター的な立場でプロジェクトを動かしたいと思いました。私はNewJeansが大好きなのですが、音楽はもちろん彼女たちのファッション性やポップでハイセンスな表現に高い魅力を感じています。それらをコーディネートしていたミン・ヒジンさんの影響力は大きいと思っています。私もそんな風にプロジェクトを作り上げていきたいと思ったのが今回のP4Cを立ち上げるきっかけになっています。個人的には映画監督にも近い気がしています。
──アーティストヴィジュアルとなるゾウのイラストは、どういうテーマが込められているのでしょう?
あれは数年前に私が絵の具で描きました。もともと象さんが好きだったのと、大きな象さんから漂う温厚で大きな愛をイメージしています。翼が付いているので、どこへでも羽ばたいていける飛躍の意味も含んでいます。
──Mellrinさんご自身のこれまでの音楽活動やバックグラウンドについても改めて伺えますと幸いです。リーダーとしてプロジェクト全体をまとめるうえで、これまでの経験がどう活きていると感じますか。
私は膨大な数の曲を生み出してきました。その中からP4Cにマッチした曲をチョイスするサウンドメイクの引き出しはあると思っています。プロジェクト全体をまとめるのは簡単じゃないですね。みんなの協力があってこそ成立します。
──P4Cの音楽性として、参照点となった作品・アーティストがあればぜひ教えてください。
CSS、Chvrches、NewJeans、カヒミ・カリィ、相対性理論、Chocolat、きゃりーぱみゅぱみゅ、HALCALI、スーパーカー、JUDY AND MARYなどでしょうか。音楽だけじゃなくてアート感やファッション性も表現として大きなポイントを占めているアーティストにP4Cは影響を受けています。
──2020年代半ばのいま、改めてシンセポップというジャンルで鳴らすことの面白さ、あるいは可能性をどんなところに感じていらっしゃいますか。
コンピューターおばあちゃん(※坂本龍一編曲)やハイスクールララバイ(※細野晴臣作曲・編曲)は私の中でシンセポップなのですが、その2曲の存在は大きいです。大衆的な歌詞とメロディーに絡むシンセサウンドには普遍的な魅力を感じます。私もP4Cでその領域を目指したいと思っています。
──楽曲制作はどのようなフローで進められていますか。以前お話を伺った際、ソフトウェアよりもハードウェアの機材を好んでいらっしゃったので、そのあたりの考え方も伺えたら嬉しいです。
パソコンは使わず、ハード機材だけで制作しています。パソコン制作はしたことがありません。
変遷を経て行き着いた、関西と関東の二拠点体制
──現在までにメンバー構成は大きく変わったと伺いました。この間に何があり、どのような変遷を経て現体制に至ったのか、可能な範囲で教えていただけますか。
P4Cのプロジェクトリーダーとして私が目標とする世界観の解像度を上げていくにつれて、自然と現在の構成になっていきました。
──第3期の活動がスタートしたとインスタに書かれていましたが、第1期、第2期、第3期と、それぞれの時期の特徴やテーマがあれば言語化していただけますと幸いです。
第1期は「バンドTHEハオルチアオブツーサ」として活動していた時期で、この時は関西の大学生を中心にバンド編成にこだわった活動をしていました。その時に大手メジャーレコード会社のディレクターや音楽レーベルの代表などから音源を高く評価されました。そこでプロジェクトの可能性に自信を持ちました。FLAKE RECORDSやHOLIDAY! RECORDSにもCDを取り扱っていただきました。
第2期は就活などで活動が困難となった「バンドTHEハオルチアオブツーサ」のメンバーから新しい人を迎えて色々と試行錯誤した時期です。フルート、トランペット、ダンサーなど色んな人が参加してくれました。大変でしたが良い経験になりました。
第3期はこれから本格的に始まるので言語化するのは難しいですが、インスタグラムの投稿を見ていただければ雰囲気は感じてもらえるはずです。
──10代後半から20代の女性メンバーが中心という構成は、最初から意図されていたものでしょうか。あるいは活動を続ける中で自然と形になっていったものでしょうか。
特に年齢にはこだわっていないですね。雰囲気とセンスで決めています。
──関西と関東、それぞれにメンバーが存在するという体制は、インディーシーンでも非常に珍しい在り方だと感じます。この二拠点という形に至った経緯と意図を教えてください。
もともとは関西を中心に活動していくだけのプロジェクトとして考えていたのですが、楽曲の評価が上がっていくにつれて東京でもライブをして欲しいという声をいただく機会が増え、その期待に応えたいという気持ちが私の中で芽生えました。そこで思い浮かんだのが「渋さ知らズ」の存在です。公演によってメンバーの入れ替えはあるけれど、1度でも参加したメンバーは永久メンバーといった自由なシステムを「P4C」にも取り入れたいと思いました。そしてメンバー探しをする中で、この人だったら関東のP4Cを任せてみたいと思えるメンバーが見つかったので二拠点での活動を決めました。
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Mzk(ボーカル担当)P4C関西
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E-Neverひとみ(トラック操作・関西メンバー)
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HITOMI(トロンボーン・関西メンバー)
──関西組と関東組、それぞれのメンバーが醸し出す空気感や、ライブの色合いに違いはありますか。リーダーから見て、両者をどう捉えていらっしゃるか伺いたいです。
P4Cのメンバーは固定されていないので、今後も変化していく可能性は大きいです。加入はあるけど脱退のシステムは基本的にないので、1回でもP4Cに参加してくれた人はみんな永久に正式メンバーです。関西と関東、どちらも様々なタイプの個性を持った人たちが集まっているので、各メンバーが醸し出す空気感などに注目していただけたら嬉しいです。
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うた(ドラム・関東メンバー)
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ちなみ(ボーカル・関東メンバー)
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菊千代(ボーカル・関東メンバー)
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柳本やな(キーボード&コーラス・関東メンバー)
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戌亥なつき(ギター・関東メンバー)
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☆彡キ(トラック操作&ボーカル・関東メンバー)
──関西の現場に立ちながら感じている、いまの関西インディーシーンの温度感のようなものがあれば教えてください。
南堀江SOCORE FACTORYはP4C(関西)のホームグラウンドだと思っています。あそこにしかない空気感とブッキングセンスは唯一無二ですし、かさごさん(店長)の音響に対するこだわりとPA技術には絶対の信頼を寄せています。
──二拠点での運営において、楽曲やビジュアルの世界観の統一、メンバー間のコミュニケーションをどのように担保されているのでしょう。
楽曲は全て私が作っていますが、演奏する人やボーカルによって聴いている人に与える印象は、同じ曲でも違ってくると思います。ビジュアル面はポップで柔らかい世界観を大事に考えています。コミュニケーションに関しては、基本的に私が各メンバーに対して個別でやり取りしながら全体像を固めていくような流れです。
──作詞・作曲・アレンジ、関西/関東のメンバーそれぞれの関わり方について教えてください。
P4Cはシンセポップ音楽チームなので、そこに寄せたサウンドメイクを意識しています。メンバーとの関わり方は特に関西と関東で違いはありません。たまにLINEで通話したりしています。
変わらない「核」、派生プロジェクト「セルフコンパッション」
──メンバーが入れ替わってきた中でも、変わらず大切にしてきた「P4Cの核」のようなものはありますか。
やわらかい雰囲気と可愛らしい世界観ですかね。
──現在のメンバーが揃ったいま、改めて「P4Cとして鳴らしたい音」「描きたい景色」はどのようなものでしょう?
ポップを前提とし、レトロ感や可愛らしいチープさのある表現が理想的ですね。平成のオモチャ箱みたいなワクワク感を表現していけたらと思っています。まだまだアップデートしていきたいです。
──これまでライブ活動に参加していたドラム演奏者のキタシンさんによる派生プロジェクト「セルフコンパッション」についても伺わせててください。このソロプロジェクトはどのような経緯で立ち上がったものでしょうか。
もともとは私が中心の音楽プロジェクトとして「セルフコンパッション」を立ち上げました。しかし思っていたよりも「P4C」だけで自分のキャパシティーが限界だと感じ、セルフコンパッションは保留のような状態になっていました。そんな時にふと、ドラマーが中心となるプロジェクトにしてみたら面白いかもというアイデアが浮かびました。そこでキタシンに話を持ちかけたところ、快諾してくれたので、キタシンにはP4Cの正式メンバーからは勇退していただき、セルフコンパッションとして音楽活動をしてもらうことになりました。しかしながら現在もキタシンには、基本的にP4Cが関西でライブをおこなう際はサポートとしてドラム参加してもらっています。
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キタシン from. セルフコンパッション(ドラム・関西メンバー)
──P4Cとセルフコンパッション、それぞれの音楽的な棲み分けや、相互に与え合っている影響についてはどうお考えですか。
実はキタシンだけでなく、他のメンバーも色々とアクティブに活動をしています。各メンバーによる活動の幅が広がって、相互に魅力を感じていただけるような流れを作っていけたら理想的です。
東京初ライブ、未来へのビジョン
──7月には下北沢ベースメントバーで東京初ライブが控えています。この初ライブを、P4Cというプロジェクトの中でどんな一夜にしたいと思っていますか。
この日を成功させることが、今後の関東P4Cの飛躍に繋がると考えています。
──関西/関東それぞれの今後の活動について、現時点で見えているビジョンを教えてください。
ライブは月に1本、もしくは2ヶ月に1本くらいのペースでやっていきたいと考えています。SNSでの発信(メインはインスタグラム)で色んな人にP4Cの魅力を届けていけたらと思っています。
──最終的に、P4Cというプロジェクトをどんな存在に育てていきたいと考えていますか。リーダーとしての中長期のビジョンを伺えれば幸いです。
音楽だけじゃなく、ファッション性なども重要なポイントとしてP4Cは考えています。センスの良い女の子たちにも共感してもらえるようなプロジェクトにしていきたいです。最終的には関西と関東どちらでもワンマンライブができるほどの集客力を目指しています。<フジロックフェスティバル>には出たいです。
ライブ情報
2026年7月16日(木)@下北沢BASEMENT BAR
Official HP https://lit.link/p4c



