
取材&文:西澤裕郎
写真:ヨシモリユウナ
6人組ライブモンスター・Finallyが 2026年7月29日(水)、東京・Zepp Shinjukuで<5th Anniversary & Major Debut One-Man Live「door」>を開催した。
本公演は、グループ結成5周年と、8月5日のメジャーデビューをひとつの夜に重ねた初のZeppワンマンライブとなった。
ロック系アイドルの新たな盛り上がりを感じさせる一夜
結論から書くと、この日のZepp Shinjukuには、ライブ現場から立ち上がってきた、いわゆるロック系アイドルの新しく強い盛り上がりを感じさせる一夜となった。
この数年、ライブハウスに足繁く通う関係者や、アイドルグループの運営から、今いちばん盛り上がっているグループとして、Finallyの名前を聞く機会が増えた。この日のワンマンはSOLD OUT。フロアは後方まで1500人の観客で埋まり、ライブハウスならではの熱気が客席側から立ちのぼっていた。
彼女たちの5年は、前身グループからの独立に始まる。コロナ禍で活動の先行きが見えなくなるなか、続けるかどうかの岐路に立った6人が話し合い、自分たちの手でやると決めた。前のグループの楽曲は一切引き継がず、ゼロから立ち上げたのがFinallyである。

Finally
以降はセルフプロデュースのアイドルグループとして、自分たちでハコを押さえ、出たいイベントにDMを送り、主催イベントも打ってきた。楽曲は当初、知り合いづてのプロの作家に依頼していたが、バンドとの接点を求めて出演したサーキットでは、自分たちの出番を終えて一度帰宅したあと、打ち上げにだけ再集合し、名刺を手に挨拶回りをしたという。そうした地道な営業の先で、バンドマンからの楽曲提供が実現していく。
2024年8月からは、彼女たちの意思を拾い上げ、同じ目線に立ってサポートする現在の事務所に所属。8月5日にリリースされるメジャー1st EP『door』には、タカ(ex.ミオヤマザキ)、横山直弘(感覚ピエロ)、小野武正(KEYTALK)らが楽曲を提供している。5年間の足跡が目に見える規模となって現れた状態で本ライブは行われた。
5th Anniversary & Major Debut One-Man Live「door」
開演時刻を過ぎた19時15分、「WINNERS」が鳴ると客席から歓声が上がり、音量が上がる後半には本番さながらに腕が上がる。バンドメンバーがステージに現れ、スクリーンにメンバー紹介映像が流れはじめたところで映像にズレが生じ、客電が点いた。運営は状況を隠さず伝えた。〈システムの都合で映像のズレが発生してしまっており、改めて完璧なサイズで、しっかりとメジャーデビュー、皆様の力を借りてもいいでしょうか〉。バンドメンバーが一度ステージを降りる際には、アナウンスの呼びかけに応じて大きな拍手が送られた。
19時26分、〈今までの時間をなかったことにしていただいて、もう一度この曲から始めたいと思います。改めてメジャーデビュー、仕切り直させてください!〉。2度目の「WINNERS」が鳴り、フロアは1度目より大きな声で応えた。バンドメンバーに続いて6人が姿を見せる。大きな歓声のあと、一瞬の静寂を挟んで、バンドセットでのライブが動き出した。

1曲目はメジャーデビュー曲「わすれらんねぇよ」。ギターのタカによる作曲曲で、Aメロからサビまでを最短距離で駆け抜けるロックナンバーだが、6人は視覚の面でも見せつける。いわゆるロック系アイドルによく見られる簡略化された振りとは異なり、本格的なダンスを高速のフォーメーションチェンジとともに成立させていく。細やかな隊列が散っては揃い、スキルの高さがそのまま説得力になっていた。振り付けを手がけたのはJuriとMegだ。忘れられない元恋人に向けた歌という主題から「呪いのダンス」というテーマが立てられ、キョンシーを思わせるポーズが差し込まれている。

Tina
彼女たちのライブにおいて歌の絡み合いも見どころだ。メインボーカルのMegとRinkaだけで組み立てるのではなく、力強いJuriの声、大音量の中でも通るHarunaの声、艶のあるTinaの声、アクセントとして差し込まれるAoiの声、6人全員がパートを細かく受け渡していく。6人の歌が曲の色によって切り替わり、メンバーごとにユニゾンやコーラスを行い立体的に楽曲を描く。

Haruna
そして、6人の表情は必死さよりも笑顔が中心にある。ライブを積み重ねてきたグループが持つ余裕と、曲ごとの表情のバリエーション。楽曲はロックをベースにしながらも、ダンサブルなものや、ソウルフルなもの、ラップを組み込んだものから、和のテイストを織り込んだ「CHIRIGIKU」まで幅がある。MegとRinkaが作詞した「CHIRIGIKU」は線香花火が落ちる直前の“チリ”という瞬間をタイトルに置いた、ひと夏の危ない恋の歌だ。それぞれをきちんと見せられるだけのエンターテインメントへの意識と表現力があった。
最初のMCでJuriが「今日は5年間活動してきた集大成でもあるんだけど、メジャーデビューする新しいドアを開くために、このワンマンライブを開催しております」と切り出す。冒頭のトラブルにも触れ、「なんかこういうところもFinallyらしいなと思いました。こういうことを一歩ずつ乗り越えて、いろんなことをクリアしていくんだなって、すごく感じさせられました」と笑った。続くメンバー紹介では、この日が誕生日当日だったRinkaの番で一際大きな歓声が上がった。

Rinka
小野武正(KEYTALK)が手がけた「メタモルフォーゼ」ではフロアで観客たちがタオルを回し、メンバー同士も観客同士も肩を組んで横に揺れた。「Start Line」では客席にいくつものサークルが生まれ、サビでメンバーも観客も拳を上げる。「みんなで歌いません?」の呼びかけに、大きな合唱が返った。歌い終えたAoiは「泣いちゃったよ」と笑顔で語った。

この客席の熱量は、2010年代初期、いわゆるアイドル戦国時代のフロアに近い団結力を思わせるものだった。なにより、それは外部から持ち込まれた話題性によるものではない。彼女たちが積み重ねてきたエンターテインメントへの努力と、その過程で結ばれてきた観客との信頼関係から生まれている。
SNS全盛の現在、アーティストの盛り上がりは多くの場合、オンラインで発火する。バズった1曲、切り抜かれた数十秒、拡散されたエピソード。それが動員に転じ、現場が後から埋まる。順序としてはそちらが標準になって久しい。Finallyはその逆を通ってきた。ライブハウスで1本ずつ積み上げた評価が口伝てで広がり、現場の熱が先にあって、そこにメジャーデビューという結果が追いついた。この順序で5年かけてZeppを埋めたグループが2026年に現れたことは、控えめに言ってもとてつもないことだと思う。
会場の外に目を向けると、同時代に現場でともに活動するアイドルグループから贈られた花が数多く並んでいた。実際、客席にもアイドルの姿が多く見られた。現場で出会った仲間と観客に愛され、背中を押される形でメジャーへ向かう。こうした光景を、筆者はコロナ禍以降で初めて目にした。ロック系アイドルは下火だと言われて久しいが、ここには確かな火種があった。

Meg
終盤、Megが5年間を振り返る長いMCを話した。上京を心配した両親のこと、知り合いを集めて少人数で開催していた初期のワンマンのこと。「今はうちらが入る前から、たくさんのスタッフさんがこのかっこいいステージを準備してくれて、めちゃくちゃ心強いバンドメンバーが演奏してくれて、そして今日、メジャーデビューという門出を見届けに集まってくれたあなたたちがいて。一度しかない人生で、間違いなく忘れられない日になっています」。そしてメンバーを中央に集め向かい合い、「改めまして、メジャーアーティストになりましたFinallyです。よろしく!」と告げた。その結束力は、一朝一夕では生まれない説得力に満ちていた。

Juri
後半にはJuriが、メジャーデビューという言葉の実際について踏み込んで話す場面があった。「メジャーデビューをして、売れるかどうかは正直わからないんですけど、バッターボックスに立てるのって本当にごくわずかな人だと思うんですよ。周りのアイドルの方とかを見ても、メジャーデビューできるって本当に当たり前のことじゃなくて」。メジャーデビューしたから売れるわけではない。セルフプロデュースで現実を見ながら数字と向き合ってきたグループが言うこの一言には別の重さが乗る。そのうえでJuriはこう続けた。「打席に立ったからには、Finallyらしく思いっきりバットをぶん回そうってことです。思い切り振りたいから、これからもついてきてくれますか?」
その言葉通り、続く新曲「1か8か」の振り付けにはバットを振る所作が組み込まれていた。「アゲアゲええじゃないか!!!」でミラーボールが回り、バンドメンバー紹介からソロプレイへ。「うちらやっぱ最強じゃん?」の後半ではメンバーと観客が揃ってスクワットを刻み、ドラムのHang-Changがステージ前方に出てきてメンバーと観客を煽る。さらにベースのタケウチカズヒロが運営からの指令として、Juriの5年間更新の止まった個人YouTubeチャンネルを暴露し、禊としてスクワットを課すという一幕もあった。バンドメンバーまで含めて場を回していく、この日の6人と背後のチームの関係がそのまま出た時間だった。MegとRinkaの力強い歌唱から、Megの「忘れられない日にしてやるよ!」を合図に「Danger」へ。フロアが一斉に跳ねる。

「ライブハウスでやっと掴み取ったメジャーデビュー。こうやってみんなと新しいドアを開くことができて、めちゃくちゃ幸せです」とJuriが言い、「メジャーのリード曲も、めちゃくちゃ悩みました。だから最後にもう一回だけ。聴いて帰ってください」と、この日2度目の「わすれらんねぇよ」で全16曲を締めくくった。
この夜のZepp Shinjukuを観て、なによりも素晴らしかったのは、質の高いエンターテインメントに、きちんと観客たちがついてきているという事実だった。手を抜かず、ごまかさず、6人で歌とダンスの精度を上げ続けてきたことが、そのまま満員のフロアとして返ってきている。作り手の努力が観客に正しく届くというのは、当たり前のようでいて決して保証されていない。それが成立している現場を目の当たりにできたことは、多くのアイドルグループにとっての希望でもある。
エンターテインメントとしての強度も、それを支える現場の熱も、すでにこの日のZepp Shinjukuに揃っていた。あとは、より多くの人に見つかるだけだ。公演後には東名阪を3周するツアーの開催が発表された。無料スリーマンから始まり、ワンコインツーマンを経て、ワンマンで締める。見つかりに行く、という意思がそのまま形になったスケジュールだ。アイドルシーンの新しい夜明けを垣間見た。様々なドアが開いた一夜だった。

セットリスト
1. わすれらんねぇよ
2. XXXXXX
3. 他人火事着火マイクファイヤー
4. 彼女になりたかった。
5. CHIRIGIKU
6. メタモルフォーゼ
7. HATER
8. キスして欲しい?
9. アイドル讃歌
10. LANDSTAR
11. Start Line
12. 1か8か
13. アゲアゲええじゃないか!!!
14. うちらやっぱ最強じゃん?
15. Danger
16. わすれらんねぇよ
■リリース情報

Finally
『door』
2026年8月5日(水)リリース
価格:¥2,500(税込)
収録曲:
1. わすれらんねぇよ
作詞:シミズサチ 作曲:タカ 編曲:タカ・哲也
2. 1か8か
作詞・作曲:ufobey369 編曲:大月 文太
3. キスして欲しい?
作詞・作曲・編曲:横山 直弘
4. メタモルフォーゼ
作詞・作曲・編曲:小野 武正
5. CHIRIGIKU
作詞:Meg・Rinka 作曲:タカ 編曲:タカ
■ツアー詳細

Finally Live Tour 2026「TAKE to GIVE〜大きく借りて、もっと大きくお返しするツアー〜」
2026.10.23 — 12.27
名古屋・大阪・東京 全9公演
10月23日(金)愛知:名古屋 HeartLand
10月24日(土)大阪:心斎橋 Pangea
10月31日(土)東京:渋谷 Milkyway
11月13日(金)愛知:名古屋 ell.SIZE
11月15日(日)大阪:アメリカ村 BEYOND
11月23日(月・祝)東京:渋谷 Milkyway
12月6日(日)愛知:名古屋 SPADE BOX
12月20日(日)大阪:LIVE SQUARE 2nd LINE
12月27日(日)東京:神田スクエアホール
チケットは特設サイトにて
https://tour2026.finally-official.com/



