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【連載】ツクヨミ ケイコ「大丈夫、わたしには音楽がある」Vol.28 Home

StoryWriter

好きなバンドのYouTubeのプレイリストを PCで流していたとき、何故だか1曲だけ、知らないバンドの知らない曲が紛れ込んでいた。

運命だ!と浮かれて好きになったそのバンドの<遠くの街に住んで 大人になったけど>という歌詞に、いつか共感できる日が来るのだろうかと、思ったことを覚えている。

WEAVERの「こっちを向いてよ」という曲は、映画『桃瀬、こっちを向いて。』の主題歌だった。映画のストーリーに合うラブソングなのだけれど、わたしはそのフレーズだけがよく頭を過っていた。

ひとり暮らしを始めた理由は、逃げたかったからなのだと思う。

2022年に活動休止という思いがけない状況になり、わたしは心身ともにぐらぐらしていた。心がそれ以上落っこちてしまうことが怖くて、毎日きちんと起きてご飯を食べてメイクをして自撮りをして、用事がなくてもとにかく毎日のように出かけていた。

ひとりでいる時間と比例して、考える時間も増える。

不安になったり、いらいらしたり、した。

使う暇も余裕もなくじわじわと溜まっていた貯金をぜんぶ使って、ひとり暮らしを始めた。

ひとり暮らし、初めての夜。すかすかの部屋で電気を消してベッドに寝転がり天井を見上げた、あの視界をよく覚えている。

ひとり暮らしをすると決めてからその日まで、半月ほどしか経っていなかった。

「ひとり暮らしをしたら寂しくなるよ」とよく耳にしていた。

はずなのに、わたしは思ったより、寂しくなかった。

初めてひとり暮らしをした部屋から、引っ越した。

退去の日、前日に引越しを終えてからっぽになった部屋で、入居日のことを思い出していた。そうだ、あのときもこんな風にすごくよく声が響いていた。

突然ひとり暮らしを決めたこと、間違いだったとは一瞬たりとも思わない。母親の反対を押し切る代わりに、物件選びも契約もライフラインの手続きもなにからなにまで自分でやった。地元から1時間以上離れている街を選んだ。きちんとひとりで立てるように。すぐ帰れないように。心配をかけてごめんねと、いまになって強く思う。

あのときのわたしはたぶん思考に塗れて、自由に使える脳みその余裕がほんの少ししかなかった。だから寂しくなかったのだと、思う。

いまの方がずっと寂しい。

実家に帰り、他愛のない話を思うがままに話して、自分の家に帰るたびに思う。

それでもやっぱり、不安なまま、いらいらしたまま、この寂しさも知らないままでいるよりはよかったのかもしれない、とも思っている。

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