皆さん、こんにちは。
2017年末、邦ロック好きな人々に大きな衝撃が走るニュースがありましたね。そう、チャットモンチーが2018年7月に解散します(※本人たちはこれを「完結」と称している)。
橋本絵莉子(Gt&Vo.)を中心に徳島の高校で結成されて以来、現代のガールズ・ロックバンドの先鋭として走り抜けてきたチャットモンチー。インディーズ時代から幾度となくメンバーチェンジと様々な編成を経て「変身」、その度に彼女らの最高を産みだし続けてきました。
そして、その「変身」の最終形態として「チャットモンチー」ではなくなることを選んだんですね。
ロックの種子を植え付けられた初ライヴ
僕が中学生の頃に生まれて初めて地元・青森のライヴハウスで観たバンドがチャットモンチーで、あの時の衝撃に突き動かされるままにギターを始めました。ギターを始めたことだけでなく、ロックの世界へと踏み込むキッカケになった僕の起源のバンドです。
僕がまだ東北の田舎町で中学生だった頃、ラジオ番組「SCHOOL OF LOCK!」で3枚目のシングル「シャングリラ」(※2006年11月15日リリース)がフィーチャーされているのを、たまたま聴きました。幼い頃から、兄の影響で流行りのJ-POPばかり聴き続けていた僕にとって、チャットモンチーを好きになるまで時間はかかりませんでした。
彼女らが僕にとって特別なバンドになったキッカケは、ライヴでした。2枚目のフル・アルバム『生命力』をリリースした彼女らが敢行した「生命力みなぎりツアー」で、僕の地元の小さなライヴハウスにやってきました。青森で1番有名なライヴハウスですが、キャパは300人ほどで、ただの倉庫みたいな場所です。
「中学生が1人で行くのは危険だから」という理由で僕がライヴへ行くのを渋った親を押し切り、当日、前から3列目くらいで拳を振り上げながら心から震え「音楽ってすげえ、バンドってかっけえな」ってホントに思ったんです、特に多感な中学2年生にはどれほどギター・ボーカルというスタイルがカッコよく見えたか… 次の日の学校では友達にチャットモンチーを観た!! という話だけで1日が終わりました。
でも、友達に話した程度で着地点が見つかる興奮の度合いではなく、「絶対にギターを弾きたい!!」と思い始めていました。友達から譲ってもらったばかりのニンテンドーDSだのPS2のドラゴンボールだの… 売れる物は全部友達や店に売り払い、お年玉とお小遣いも合わせてすぐにお金を用意して、ろくな楽器屋も無かった青森の本屋の片隅の楽器コーナーでsquierのストラトモデルを買いました。橋本絵莉子さんはテレキャスがメインだったのですが、素人の僕には色合いが本人と似ていればもうそれが全てだったんです。
受験勉強の準備もあり、部活の最後の大会に向けて気合を入れるべきところを、僕はギターに全て注ぎました。一時は成績も下がり始めましたが、当時の自分には化学式だの数学の公式なんかより、コードの1つやスケールを覚えることの方がずっと価値のあることだったので全く気になりません。チャットモンチーに近づけるからです。むしろ、成績トップでスポーツ万能のイケメンの友達よりも、楽譜が読めて和音構成なんかも知っている吹奏楽部の友達の方がずっと尊敬できました。そういう人の方が、自分よりずっとチャットモンチーに近い存在であるからです。
また、同時期にギターを始めた友達もいました。彼もチャットモンチーなどの所謂「ロキノン系」が大好きで、あーでもないこーでもないといつも話してました。そんな彼とライヴハウスに立つようになって、ある時チャットモンチーと同じステージに立ったこともあるのですが… 収拾がつかなくなりそうですのでこの辺で。
とにかく、冬の寒い日に観たあの確かな熱気に包まれたライヴは、僕の人生の最初に観たライヴ、且つ一番ロックを滾らせたライヴだった、と今も思っています。ただの部活と勉強で終わるはずだった中学生は、あの日、タンポポの綿毛が飛んでいくようにロックの種子を植え付けられたんです。
チャットモンチーは時代に合わせて「変身」し続けた
そんなチャットモンチーの何が好きかと言えば、橋本絵莉子の力強くも心に寄り添ってくるような歌声を中心に、3人(当時は元Dr高橋が在籍)が瀬戸内海の渦潮のようなグルーブを生み出していることです。ここまで全てが楽曲に対して素直であり続けたバンドを僕は知りません。それは、チャットモンチー以降、数多くのガールズバンド(メンバー全員が女性)が続々とデビューしている事実を見ても、彼女たちが掻き鳴らし世に伝えてきた音楽が人々の中で「共鳴」し続けている証なんだと思います。
例えば、the peggiesやyonigeは、チャットモンチーの影響が垣間見えるバンドだと思います。the peggiesの「LOVE TRIP」を聴いていると、一時期のチャットモンチーのメロディ感を感じます。もちろん展開は違いますが、チャットモンチーの遺伝子は確実に流れているんじゃないかと思うのです。
こういったモデルとして語られるチャットモンチーは、3ピース時代の印象が強い気がします。でも、チャットモンチーがすごいのは、3ピースでなくなり、どんな編成に変身しようとも「チャットモンチーらしさ」が微塵もブレなかった点だと思います。どんな形態でも、その楽曲を聴くだけでチャットモンチーだとわかる。これは、一貫した「らしさ」を携えながら、チャットモンチーが時代に合わせて「変身」をし続けたからであり、3ピースバンド時代、ひいては高橋久美子が脱退した後も音楽を続けてきたからなんだなと思います。
かたや、僕はどうなんでしょう。チャットモンチーが蒔いた種子を持つだけあって(つもり)、人生の中で日々少しづつ「変身」を続けてきていたのかもしれません。し、これからもするでしょう。音楽1つをとってもチャットモンチーから始まり、HR/HMやアイドルソング、映画音楽など幅広く好みが変身してきました。チャットモンチーが時には必要に応じ、時には自ら求めて変身したように、僕も人生のどの側面1つ取っても自分らしさを持った変身を遂げ、それを人生と世に胸を張って言えるように生きていきたいです。例えもがきながらでも。自分が好きな物、僕の場合はチャットモンチーに由来するロックですが、それに則っている人生スタイルってサイコーにイカしてると思いませんか?
不可抗力のように常に「変身」し続ける人生になりそうですが、彼女らのように変化を求めながら楽しみ続ける人生でありたいと思っております。
青森のとある中学生が彼女らの全てに感動したように、数多くのリスナーたちが感銘を受けてきたからこそ、多くの人たちに語り継がれ、解散がここまで大きなニュースになるバンドになったんじゃないかと思います。残り数か月、彼女らの最後の1秒まで続く変身に期待が止みません!
7月の武道館ライヴ、すでに楽しみです!
1993年生まれ、青森県出身。進学を機に上京し、現在は大学で外国語を専攻している。中国での留学などを経て、現在では株式会社WACKで学生インターンをしながら就職活動中。趣味は音楽関係ならなんでも。