【連載】アセロラ4000「嬢と私」シーズン2 第3回

アパートの家賃、52,000円。

嬢生誕祭の特注ドンペリ、50,000円。

「うちとの思い出、プライスレス。だよね?」

DA.YO.NE。

EAST END×YURIが脳内でラップする。どちらかといえば、私はSO.YA.NAのWEST END×YUKI派。だが今はそれどころではない。今ここにある、クライシス。

「聞いてる? アセちゃん?」

そう言いながら、私を見つめる嬢。長く色っぽいまつ毛、クッキリとした二重。襟元から覗く鎖骨、そして巨乳。前かがみになり、セーターから胸の谷間をチラつかせながら迫ってくる。

「アセちゃんが来てくれてドンペリもたのんでくれるなら、やろうかな、生誕祭」

違う違う、そうじゃ、そうじゃない。

行くなんて言ってない。

このままいったら、どれだけお金がかかってしまうかわからない。

もしかして、嬢は最初から生誕祭への勧誘目的でデート(同伴)に応じたのだろうか。だとすれば、なんという策士。「哭きの竜」で言えば、二代目甲斐組若頭・外田裕二レベルの切れ者。まさか、嬢に麻雀の心得があるとは。いや、きっとないに違いない。私にも、麻雀の知識などない。ではなぜ麻雀の話をしているのか。嬢のおっぱいを麻雀牌とかけていたとするならば、今すぐ謝らねば。私自身に謝罪すべく深々と頭を下げる私。

「なにしてんの?」

嬢がこっちを見ている。

私は我に返った。断らなければ、生誕祭を。断るのだ。

…… 気がつけば、『まんがはじめて物語』のお姉さんとモグタンのように、嬢と私はいつの間にか店にワープしていた。その間の記憶は、ない。結局、断ることを切り出せない私。

「生誕祭の日、店の中めっちゃ装飾するかんね。ディズニーランドかと思うかもよ! ウケる! ちょうウケる!」

店のソファーで、チンパンジーのように両手を広げて叩きながら、大笑いする嬢。そんなに面白いかといえば、たいして面白くない。私の心は嬢パンジーに振り回されるバナナ。今にも折れてしまいそう。

その日の会計は25,000円。生誕祭には、さらにドンペリ代がかかる。頭がクラクラしてきた。

そんな私のもとに、翌日LINEが届いた。珍しく写真が添付されている。私に自撮り写真を見て欲しいなんて。やっぱり可愛い嬢。全盛期の間下このみちゃんくらい、カワイイ。

私はすぐにLINEを開いた。

そこあったのは、嬢ならぬ、家電。「炭酸製造マシーン」と書いてある。

「誕プレ、これがほしいにゃん」

おねだりする嬢のコメント付き。容赦なしの、実用性MAX・必要性ZEROな現実的誕プレチョイス。欲しい、自分で買いたくない、買ってもらう、のわかりやすい3段活用。価格は、30,000円。

私は改めて、嬢生誕祭に必要な資金を計算する。

  • 基本料金2時間25,000円(指名料込み)
  • 特注ドンペリ代50,000円
  • 誕プレの炭酸製造マシーン30,000円

◆見積もり合計 ― 105,000円。プラス、サービス税もかかる。

プライスレス、なわけない。

私の月収は約18万円。生誕祭まで、あと1週間。どう考えてもお金が、足りない。

どうしたらよいのだろうか。

私は、某女子アナが提唱する「マイメロ論」を思い出し、

「私はマイメロだよ~☆お金はないけど、ドンペリも飲みたいし、イチゴも食べたいなあ~」

と呟きながら近所をうろついてみた。

むなしい。何の解決にもならない。どう考えても、やっぱり生誕祭になどいけそうもない。

私は旅支度を済ませると、夜行バスに飛び乗り、東京を脱出した。嬢のいない、街へと。

〜シーズン2 第4回へ続く〜

【連載】アセロラ4000「嬢と私」シーズン2 第1回
【連載】アセロラ4000「嬢と私」シーズン2 第2回

※「【連載】アセロラ4000「嬢と私」」は毎週水曜日更新予定です。

アセロラ4000(あせろら・ふぉーさうざんと)
月に一度のキャバクラ通いを糧に日々を送る派遣社員。嬢とのLINE、同伴についてTwitterに綴ることを無上の喜びとしている。未婚。
https://twitter.com/ace_ace_4000

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