初めまして、GANG PARADEのテラシマユウカです。
この度、StoryWriterさんにて映画コラムを書かせて頂くことになりました!
これからどうぞ、よろしくお願いします。
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“趣味は?”
少し前まではそう聞かれても何も思い浮かばなかったのですが、休みの日には特に会う人もおらず、なんとなく映画館に足を運ぶ事が多くなり、気付けば映画が大好きになっていました。
映画は、身近にありながら、別世界へ連れて行ってくれます。
自分のどこを切り取っても経験し得ない様な物事が凝縮されていて。たまに人生に飽き飽きした時でも、スクリーンを通して現実逃避したり。
皆さんは何を基準に映画を選びますか?
俳優、ストーリー、映像、監督、原作などそれぞれにこだわりがあるかと思います。
この連載では、色々な人にオススメの映画を聞き周り紹介していきます。
皆さんそれぞれこだわりの最高の一本を私自身が鑑賞し、そして読者の皆さんに伝えるバトンの様なものになれば良いな…… と思いながら書いていこうと思います。
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さて、記念すべき第1回目は私の最高の一本、
『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY』
をご紹介します。
Vol.1『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY』
主人公・オリアアキは、29歳の売れない女優。女優を夢見て上京し、ふと立ち寄ったバーでサーカス団を営むカイトに出会う。それから10年、毎日小さなサーカス団でマジシャンの助手をするアキ。
30歳を目前にしたアキには仕事への熱も生きる目標もない。ルーチンワークのように繰り返されるのは、催眠術にかかるという演技。体を浮かされ、剣を刺され、催眠状態を演じているうちに、やがてアキの精神は徐々に摩耗し、いつしか現実と妄想の境界が破たんを迎えようとしていた。
何故生きるのか? 何を夢見たのか? 何を目指すのか?
唯一アキの中で美しい思い出として残るのは恋人・カイトとの時間……。自分が生きてきた人生の軌跡、アキが生きる現実と、叶えられなかった様々な妄想が入り乱れる。そして2つの世界の境界が壊れようとしたとき、アキの人生再生がはじまる……?!(公式ホームページより)
といったストーリーです。
【以下、ネタバレを含みます。】
キャッチフレーズは「オリアアキ29歳-それでも世界は、素晴らしい。」
この映画コラムタイトルの元になったフレーズです。
この映画を観るに当たって、二宮健監督から5つのヒントがありました。
① あなたが見ているアキの髪の色は、何色? その色が彼女は「今」、どこにいるのかを教えてくれるかもしれません。
②映画が始まってすぐの屋上のシーンでの会話を聞き逃さないでください。この映画をつかさどる重要な秘密に触れている部分があります。
③「ハムレット」の有名な台詞「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ」。この映画におけるオフィーリアとは?
④「夢が叶うことを拠り所にしてきても、叶った後は持続させなくてはいけない。でも、それって夢がないよね」
⑤あなたにとって当たり前の存在が、他の人にとってはそうでないこともある。アキにとってそれは、誰と誰と……。
これらのヒントを頭の片隅に置きつつの鑑賞をオススメします。
とにかく、観てない人に対しては全部言ってしまいそうなので「観て!」としか言えなくなるし、観た人とは永遠にああだこうだ語り明かしたい。情報量が多いので、喋り始めると口から溢れて雪崩のように語ってしまう気がします。
夢を叶えられず、恋人も失った主人公アキの幻想物語。幸せだった過去、何もない現在、そして女優として成功した妄想の中の未来。そんな時間軸が交錯した映像にどっぷりと引き込まれます。
時間軸や場面が目まぐるしく切り替わる為、監督からのヒント①、主人公オリアアキの”髪”が最重要事項になってきます。
過去と現在が入り乱れる映画は良くあるものだろうと思いますが、この作品は時間をごちゃ混ぜにしてから更にメチャクチャにバラバラにしまくって最後にまたひっくり返した様な映画でした。このシーンはいつ? と考えている間にまた別の時間に飛んでしまうので、初見のときはもう流れに身を任せてしまいます。それでも心地いい。
実際には時間は流れておらず、止まった状態で過去、現在、未来が同時に存在している”スポットライト理論”というものがあるらしいです。
私は繰り返し観るたび見方が変わる映画と、後味が胸糞最悪な映画が好きなのですが、この映画はまさに前者です。
既に何回も繰り返し観ていますが、新たな隠された描写を発見したり解釈の仕方が変わったりと宝探しみたいな感覚で、いつも思わずエンドロールで拍手したくなっちゃいます。
また、観るたびに謎が深まる作品でもあります。どこまでが実際にあった過去なのか? それとも妄想で作り出された過去? 現在は本当に現実? 考え出したらキリが無くなります。
ヒント③にある様に劇中に度々出てくる、かの有名なシェイクスピア作の悲劇ハムレット。「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ」というアキの言葉。こんなに場面が入り乱れてしまったのは、アキ自身がオフィーリア症候群だったからなのかもしれません。
ハムレットの台詞の他にも印象的な言葉が多く、心に残ります。
そしてこの作品には、監督自らセレクトしたこだわりの楽曲が使われており、ミュージックビデオ感覚で観れる所もあるのかなと思いました。鑑賞後、特にこの2曲がしばらく耳から離れなくなりました。
Kyla La Grange “Hummingbird”
KING “Promise”
恋人カイトが自分の人生の中での最高の10曲が入ったCDをアキにプレゼントするのですが、そのシーンが私は1番好きです。
余談になりますが、吉祥寺にあるココマルシアターにこの作品を観に行ったのですが、とても素敵な映画館だったのでご紹介します。
吉祥寺の人通りのある道を曲がると、雰囲気がガラッと変わりココマルシアターが現れます。小さな映画館ですが、座席指定もなく落ち着いて観れるので好きな場所です。2階にはカフェスペースもあり、鑑賞後の余韻にもゆっくり浸れます。
「夢が叶うことを拠り所にしてきても、叶った後は持続させなくてはいけない。でも、それって夢がないよね」という監督からの4つ目のヒント。この作品を通して、”夢”について考えさせられます。
夢に翻弄させられ続けた主人公。夢がなくては虚しいけれど、夢を見てばかりではいられない。夢が叶わなくて絶望するか、夢が叶って夢が夢でなくなるか。
夢に踊らされても どんな時でも
それでも世界は、映画は、素晴らしい。
皆さんにとって、夢って何でしょうか?
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初回は私の好きな映画をつらつらとお話ししましたが、Vol.2では私が所属する事務所WACKの社長、渡辺淳之介さんのオススメ映画をご紹介します!
それでは、また来週。
※「それでも映画は、素晴らしい。」は毎週火曜日更新予定です。
テラシマユウカ
2014年に結成され、現在9人組として活動中のアイドル・グループGANG PARADEのメンバー。2016年に行われた新生BiSの合宿オーディションに参加し、BiS公式ライバル・グループSiSのメンバーとして活動を始めるが、お披露目ライヴ直後にまさかのグループが活動休止。2016年10月にGANG PARADEへ電撃加入し、多くを語らない性格ながら強い意志と美学を持ってグループになくてはならない存在に。映画好きが高じて、StoryWriterにてテラシマユウカの映画コラム「それでも映画は、素晴らしい。」の連載スタート。