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【連載】なにが好きかわからない vol.58「俺か、俺以外か。ローランドという生き方」

StoryWriter

皆さんこんにちは。

先日卒業式を迎えました。

恐らく普通の大学生よりも長い間大学に在籍して何をするでもなくプラプラしていたのですが、普通の大学生のようにバイトしたり遊んだりすることは勿論、留学に行ったりアイドル事務所でインターンしてみたりと普通の大学生活と少し異なる濃い数年間になったと自負しております。最後の1年半くらいはほとんど学校にも行かないままバイトとインターンに明け暮れて卒業したので、先日の卒業式も学校に対する何の思い入れが無いまま、いつも通りキャンパス内の人がほとんど来ない喫煙所で友人達とタバコを吸っているうちに終わりました。

最後の最後まで何の締まりもなく、気が付いたら卒業してしまったのかもしれないと思うと、もっと何か有意義なことが出来たんじゃないかなとか考えてしまいます。自分の行動にもっと自信を持てたら良いのになあと思うんですが……。それは僕の弱虫な側面の問題なのですが、やっぱり強虫になりたいという憧れは拭いきれないです。

そんな中で最近気になっている人物がおります。

水商売で蠢く歌舞伎町、そこに集うホスト達の帝王「ローランド」さんです。

昨年から少しずつメディアの露出が増え始めましたが、例えるならGacktさんのような圧倒的な俺様の世界観、大真面目のようでもありユーモアも混ざっている、それでいて何より説得力のあるような発言。それが世間にウケていますし、僕も見ていてとても素敵で楽しいと思います。前回帰省した際の深夜番組に出演しているのを観たのがきっかけだったのですが、そこで北海道で蟹しゃぶを食べているローランドさんのユーモアのある発言を観て度肝を抜かれました。

「蟹って横歩きでしか歩けないじゃないですか。でもローランドの接客ってよく、前向きになれるってよく言われる事多いんで、たぶん俺がカニを接客したら前向きに歩きますよ」

何言ってるんだろうこの人は? って思う反面、めちゃくちゃこの人面白い!! と思ってすぐ気になって色々調べ始めました。そこで先々週に発売された今回の表題の『俺か、俺以外か。ーローランドという生き方ー』という本が発売されると知って、もう発売日当日に買いに行きました。

本を開いてみると確かに僕がイメージしていた通りのローランド語録が並べられており、読んでいくうちにハリーポッターのホグワーツ魔法学校の図書館に自分がいて、棚の本を取って開く度にローランドの言葉を見ているような錯覚に陥りました。言葉一つ一つがそういう優雅な情景を思い起こさせる、そんなイメージを読者や聴衆に与えるような気がしました。

メディアでも数多くの名言を残しているローランドさんですが、日頃メディアに取り上げられるような名言は、夜中に1人でドライブをしている時に良い言い回しや言葉を思いついて、車を停めてメモを取っているそうです。また、ホストという職業柄、常に言葉というものを意識して選んでいるとか。そういった彼の愛情や想いが詰まった彼の「作品」として位置付けている事、そして日頃から常に言葉というものを意識し続けた人の言葉だからこそウィットに富んでおり、発信された先の世の中でも価値のあるものと位置付けられているんだと思いました。

彼と同様に言葉という物を意識した時に、僕も上手く言葉を使いこなして表現していきたい人間ではあるのですが、同じ言葉を選んだとしてもその言葉を操る人のキャラクターや受け取る側との関係性によって質が全く変わってしまう物だなと最近思っていて。恐らく、僕のような人間がローランドさんのような言葉を放ってところでめちゃくちゃサムいし、伝わったところで魅力は半減されるんじゃないかなあって。ローランドさんが前所属店舗をクビになった時に「お前より良いホストなんていくらでもいる」と言われた時の返し

「産院で処女を探すくらい難しいと思いますがね。せいぜい頑張ってください」

こういった言葉、恐らくその状況下ではただの生意気な新米ホストの戯言にしか聞こえなかったとは思いますが、実際に歌舞伎町ナンバー1の地位まで上り詰めて世に知られた後ではクールで粋なローランド語録になるという雲泥の差。自分に実績があるとかそれに伴ってフォロワーが増えるとか、或いは時代の流れで……。そういう事の積み重ねで一つの言葉の意味とか受け取り方が変わってくるんだな、と。

僕がこうやって毎週書いている文章も今はあまり意味のないものかもしれないけど、今後の僕のやる事によって意味が付随してくるかもしれない。だから、今は色々なものを積み重ねてやがて1つのストーリーをそれぞれの言葉や出来事にもたらしたいなあ…… などと思いました。今は何が正しいか分からないけどとりあえずやってみようかな。

今週はこの辺で。

また来週、一つよしなに。

※「【連載】なにが好きかわからない」は毎週木曜日更新予定です。

エビナコウヘイ(えびな・こうへい)
1993年生まれ、青森県出身。進学を機に上京し、現在は大学で外国語を専攻している。中国での留学などを経て、現在では株式会社WACKで学生インターンをしながら就職活動中。趣味は音楽関係ならなんでも。

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