関西にてマネージャー業務、イベント制作などを経て、何でも屋として上京。タレントの送迎、チェキ撮影、音響、ステンレスの溶接などを経験し、メンズ・アイドルothersの運営を手がけはじめた“あの”ゴン・チョクによる連載「髪の毛より大切なものを探しに」。
先週公開された連載Vol.19「 私は勘違いをしておりました」(https://storywriter.tokyo/2019/05/27/1372/)では、ゴン・チョクとothersが進んでいきたい方向性と、地下メンズアイドル界隈でファンから求められているもののギャップに頭を抱えるゴン・チョクの様子が描かれました。
そんな悩めるゴン・チョクに、今後の連載についての打ち合わせを設定したところ、開口一番、地下メンズアイドル業界での苦悩を語り始めました。そこで、その様子をテープレコーダーに収録。今回のはその生々しい内容をお届けします。
「ROYAL小生」っていう名前になりました(笑)
──ゴン・チョクさん、何か悩みでもあるんですか?
ゴン・チョク:実は色々な地下メンズアイドルの問題に直面していまして。思い切ってothersを大きく方向転換しようと思っています。簡単にいうと、曲を聴いてもらうための地盤を築くために、ちょっと旅に出ますという感じです。
──なんでまた急に?
ゴン・チョク:前回の連載でも書かせていただいたんですけど、僕はアイドルっていうのは「楽曲→PV→衣装→ライヴ→メンバー」という順序でお客さんに伝わっていくと思っていたんです。でも実際にはそうじゃなかった。メンズ地下アイドルの世界では「メンバー→越えられない壁→楽曲」という逆の方向で伝わっていくことを身を持て体感したんです。othersとして作る曲や制作物を、ちゃんと見てもらう、聴いてもらうための最低限の下地を作る必要がある。そのための方向転換。グループ名も変えようかなと(笑)。
──え! グループ名も変えるんですか?
ゴン・チョク:変えます。もうちょっとポップというか、今風な感じにしようと。あと、あまりにメンバーからのアクティブが無さすぎて、グループに思い入れがないのかなと。なので、「グループ名を皆で決めてくれ、僕はもう関与しないから」と伝えました。その結果、「ロイヤル小生」っていう名前になりました(笑)。
──えっ(笑)。
ゴン・チョク:皇帝のROYALに、一人称の小生で「ROYAL小生」です。矛盾したグループ名にしたいのと、語呂が良いねと。なんかレペゼン地球みたいで、いいじゃないですか、って言われました(笑)。 でも若い子の感性でやった方がいいんじゃないですか。othersよりよっぽど覚えやすいし。もうちょいメンバーにも思い入れ持って欲しいし。
お客さんが5人いるかどうかが続けられるかのライン
──ゴン・チョクさんが直面しているのは、接触メインでグループを運営していくのか、あくまで楽曲や衣装や制作物にこだわっていくのか? という部分ですよね。
ゴン・チョク:まさにその話を先週othersのメンバー達とミーティングで話して。もしメンバーがメンズ地下アイドルの世界で王になりたい、地下を全部牛耳って掻き乱すくらいの気持ちがあるんだったら、俺は嫌だけど色々な地下のイベンターの方々に挨拶しに行って死ぬほどイベントを入れてあげるよと。ただ、俺はそれは違うと思うっていう話そしたら、メンバーも今の方向性ではないんじゃないかって。正直、お客さんを増やすのも難しくて。
──それはどういったところが?
ゴン・チョク:例えば、5人の仲良しのファンがいたとして、新規で10人のファンのグループが入ってきたら、もともとの5人は5人ごとグループを離れていくみたいな。お客さんの団体がスライドしていく。最初に5人仲良しグループのお客さんがいて、次20人の仲良しが来たら20人になる。で、その後また別の5人の仲良しがきたら、20人がどっかに行くんですよ。だから一生分母が増えていかない。何年か活動してるグループに訊いてもずっとそうらしくて。20人のタイミングはすごく売り上げがあるけど、その1ヶ月後には全員他界して、また20人来るときを待つみたいな。
──それはなかなか大変ですね。
ゴン・チョク:メンズアイドルをやっている子は今日明日食う金を稼ぐことに目がいっているから、もっとお客さんを増やしたい! っていう感じでもなくて。僕は、曲もPVも作るし、できればCDも出したい。そのためにメインの動きを、一旦ライヴではなく動画にしようかなと思っていて。動画を撮ってYouTubeにアップすることで、もうちょっとライトなところのお客さんに注目してもらって分母を増やしていきたい。そうしないと、いつまでたっても現状は変わらないから。
https://www.youtube.com/watch?v=1tFdfm1FrR8&feature=youtu.be
──女性アイドルの場合は楽曲からアイドルに興味を持つことが少なくないけど、メンズ地下アイドルは最後に曲に辿りつく流れが多いと。例えば、CUBERSはR&Bやダンスミュージックを基軸とした楽曲を作り続けつつ、雑誌や舞台に出たりして足場を作ってメジャーデビューまで果たしました。それくらいメンズアイドルでは、楽曲を伝えるのが難しいんですね。
ゴン・チョク:ほんっとうに難しい。
──当たり前ですけど、地道に時間かけてやっていくことが大事なんですね。
ゴン・チョク:そうですね。ただ、僕らはちっちゃい事務所なので、どうするか? と考えたときに、YouTubeでなんとか露出していくしかないという思考に至ったんですね。あと、方向性を変えようと思ったのは、メンズ地下アイドルのファンって命懸けで来ているから、というのもあるんです。その子たちに向けてやるにはディープにしないといけないし、メジャーに行くならライトにしなきゃいけない。ただ、お客さんがいないのにライトにしても当たり前にお客さんは来ないから…… 。たぶん今リリイベやったとしても、本当にお客さん0って感じになっちゃう。ぶっちゃけ、他のグループや、周りを見ていても、お客さんが5人いるかどうかが続けられるかのラインになっているんです。
──お客さんが5人いれば、グループが運営できるというのもすごい話ですよね。
ゴン・チョク:本当にそうなんですよ。客単価が1万円超えることも少なくないから。
──CDとか物販がないのに、どうやって1万以上、使うんですか。
ゴン・チョク:チェキを10枚とるんです。
──そう考えると、ゴンチョクさんの存在意義が揺らいできますよね。作品物を作らなくてもなんとかなっちゃうんだったら。
ゴン・チョク:そうなんすよね。現場だけなら全部バイトの子にやってもらえばよくて、スケジュール管理だけ僕がやっていればいいんじゃね? って一瞬思いましたね。
お客さんにとってメンバーは自分だけのもの
──ちなみにゴン・チョクさんファンはつかないんですか? こうして連載まで持っているんだから。
ゴン・チョク:なにもないですね。なんなら、叩かれているくらい(笑)。
──辛すぎる(笑)。
ゴン・チョク:最初にothersを始めるにあたって、会社の人間と話した時に、めちゃくちゃな事をやって叩かれて話題になればみたいなことを言っていたんですけど、話題にもならない。傷ついて終わり(笑)。というのも、メンズアイドルの場合、お客さんにとってメンバーは自分だけのもので、基本的に広めるっていう事をしないんです
──よくまだ続けようと思えますね。
ゴン・チョク:メンズアイドルはやりたいんです。今は、ちょうど会社に新しく動画編集できる人が入ってて、全部任せられるなと思って。でも、これでダメなら本当にどうしようかって感じではあります。そのうち会社から採算が取れないからグループを潰してくれっていう連絡が来るかもしれないですし。なかなか売り上げを上げるのが難しくて。
──売り上げをとるには、現場に行ってチェキを撮るしかないですもんね。
ゴン・チョク:かと言ってその現状も結構辛いんで。だからこその方向転換期なんです。
──他のメンズアイドルの運営さんから訊いたことあるんですけど、ライヴで曲を披露してもお客さんがあまり乗っていないということもあるみたいですね。
ゴン・チョク:僕らのライヴ始まるじゃないですか。コピーじゃないって気づいた瞬間、お客さん皆出ていきますからね(笑)。
──それは、知らない曲だから?
ゴン・チョク:そう、知らない曲だから(笑)。この前メンバーが体調不良で休んじゃって、メンバー1人でライヴ出演したときがあるんです。僕らの曲って、各メンバーの音域を考えて作っていて、すごく高いキーとかもあるから1人で歌えないんですよ。その日は1人だから、SPライヴってことで好きな曲歌っていいよ、カバー歌いなよ、って嵐の曲を用意して歌ったんですけど、まあ盛り上がるっていう(笑)。
──知っている曲ですからね!
ゴン・チョク:悲しい(笑)!
──まずは存在を知ってもらってからじゃないと、どれだけいい曲を作っても響き辛いんですよね。
ゴン・チョク:なので手始めにPVは撮ったんです。映像に曲をくっつけて聴いてもらうしかないんだろうなっていう。
夢のない業界だっていう
──僕の周りで何人か、地下メンズアイドルのメンバーに会いに行くために身体を売ってお金作っている女性ファンもいるんですよ。そこまでして会いにきている子に、音楽性が良いからって部分だけで納得させるのは相当難儀なことというか。
ゴン・チョク:それはそうだと思います。だからこそ、お客さんからいろいろ言われるんですよ。でも、それだけ命掛けてきてたら、そりゃ文句も出るわなっていう。究極ですよね。好きな人に会うために他の人とセックスするって……。メンズの今の仕組みも悪いんです。お金を稼ぐために月30本イベント入れたりとかするので。
──毎日じゃないですか?!
ゴン・チョク:だから、あまりに入れ込んじゃうと風俗で働くしかないんですよね。夜から朝まで風俗で働いて寝て、夕方からライヴ行って、夜また風俗行って稼いで、次の日また行って…… メンズの地下現場が、そういうシステムになっている。メンズアイドル側も、例えば大学生とかなら、大学を卒業した瞬間に辞めていく。夢のない業界だっていうことは、やっている彼らもたぶん分かっていると思うんです。
──それがリアルだし、ファンの子にとっては現場にくるのは切実なことですし。
ゴン・チョク:そうなんですよ。女の子のアイドルだったら、急にライヴが入って3日前に告知しても、オタクは「わぁ〜そんなギリギリに言われても〜。行けないや〜。まあ次行くからいいや」くらいの感じなんですけど。メンズではもう、2週間前にでも告知しようものなら、「私達に来んなって言ってんの?」みたいなクレームが出るっていう。
──話題になった「いまメンズ地下アイドル業界で何が起きているのか」(http://plus14.hateblo.jp/entry/2019/03/16/044428)という記事がありましたけど、それを書かれているめりぴょんさんは自らもメンズ地下アイドルカルチャーに浸かりつつ、でも客観的な批評性も持っていて興味深いですよね。
ゴン・チョク:うん、どっちかと言うと客観視もしつつハマってるって感じですよね。
──ゴン・チョクさん、ちょっと前にTwitterでリプ飛ばしあっていて対談やりたいねって話をしていたと思うので、ぜひ実現してほしいなと。
ゴン・チョク:僕も訊きたいことはいっぱいあります! 連絡してみます!
※「【連載】ゴン・チョクの「髪の毛より大切なものを探しに」」は毎週金曜日更新予定。
ゴン・チョク
満31歳のおじさん。関西にてプラニメの現場マネージャー、イベント制作などを経て、何でも屋として上京。タレントの送迎、チェキ撮影、音響、ステンレスの溶接などを経験し、このたび株式会社リーディよりメンズ・アイドルをデビューさせることとなった。気になるグループ名は「others」。音無奏翔、山下修、立花類、夢野続輝の4人で構成されており、ゴンチョクを含め全員がメンズ・アイドル未経験者。0からアイドルを学び、ダンス、歌、特典会などを経験する中で成長していくことが期待される。
・ゴン・チョク Twitter
https://twitter.com/yajinokano73
・ROYAL小生 official site
https://others-idol-official.amebaownd.com/
・ROYAL小生 official Twitter
https://twitter.com/others_staff