千葉県佐倉市には、バンド文化の歴史が存在する。BUMP OF CHICKENを始め、Halo at 四畳半、BOYS END SWING GIRLと、溢れんばかりの才能がこの地から産まれてきた。その土壌を作ったのが、ライヴハウス“Sound Stream Sakura”だ。何を隠そう、ヨコザワも佐倉市出身であり、自分のバンドでも何度も出演しお世話になった。現在自分が音楽に関わろうと思ったのも店長のシラハタさんに、足を運んでこそ分かる音楽の楽しさを教えてもらったのがきっかけだ。
そんなシラハタさんは、今年で3回目の開催となる〈くさのねフェス〉という地元密着型大型野外音楽イベントを開催する。今年は、LUNKHEADやサスケも出演するなど、年々その規模を拡大中。そんな今後大注目のイベントを作りあげてきたシラハタさんにインタビューを行った。下記にある出演アーティストのSpotifyを流しながら、読んでいただけると幸いだ。
取材&文:ヨコザワカイト
野外フェスティバルをやりたいと思っている
──本日は、よろしくお願いいたします。まずは、自己紹介からお訊きしてもよろしいでしょうか。
シラハタノブユキ(以下、シラハタ):くさのねフェスティバル実行委員会会長のシラハタと言います。佐倉市で、“Sound Stream Sakura”というライヴハウスをやっている人間です。おかげさまで、サンストは今年で19周年となります。よろしくお願いします。
──この周辺ですと、ライヴハウスって他にありましたっけ?
シラハタ:アーティストの持ち込みでイベントを開く場所はあっても、イベント制作のスタッフが居て、出演者に連絡を取って、イベントを組んで運営してるのは、京成線沿線だと、船橋以降うちしかないかな。イベント制作にウェイトを置いてやっている部分は大事にしています。
──そんなライヴハウスを経営されているシラハタさんが、〈くさのねフェス〉を開催することになった経緯を教えていただけますか。
シラハタ:もともと、僕らがやりたいと言って始まったものではな無くて。2017年の5月上旬に、急に佐倉市役所の農政課の人から連絡が来て、草ぶえの丘で野外フェスティバルをやりたいと思っているから、手伝ってくれないかって(笑)。
──そんな提案があったんですね(笑)。
シラハタ:その時は、イベントの出演者の手配とステージ周りを主にやることになりました。役所に「いつやりたいのか、どのくらいの規模でやろうとしているのか」を訊いたら、いつやるかだけ決まっていて、どのくらいの規模かは決まってなかった。それでいつやるかっていうと、8月、9月、10月のどこかと言われて(笑)。だいぶ幅があるんだけど、時間は無いっていう。実際に動き始めたのが5月の下旬とかだったので。
──それがフェスを開催した第一歩になったのでしょうか。
シラハタ:いや7年前に一度、自主的に佐倉城址公園で、一個のステージだけで野外イベントをやったことがあって。でもその時は、胸を張って盛り上がったとって言えるようなイベントには正直ならなかったんだよね。だから地元の演者でこういうイベントをやることの難しさと、よかった部分というかみんなの思い出になれた部分っていうの両方の想いを持っている中で、その話をもらって。でもこのままだと前のイベントの二の舞になっちゃうから、2トントラックのウィング車を手配して、そこと本ステージで交互にできれば、前のイベントよりも出演者を少し増やせる。そうすれば、関係者もしっかり増える。関係者が増えれば、リスナーがもし仮にあまり来なくても、関係者の熱はあげられるなって。だから、俺の中では、どれだけ関係者を呼べるのかっていうのが3ヶ月のポイントではあった。
始まったものを無くしてはいけない
──時間のない中で、機材や出演者のブッキングはどうされたんでしょうか?
シラハタ:ここに出るバンドがよく利用してた船橋のstudio PACKSさんに機材の依頼を出して、手配して、とか。出演者には急ぎで連絡したんだけど、スケジュールがダメで出れないって人がほぼいなくて。なんなら、調整してでも出ようとしてくれた人が多くて。だからブッキングで苦労したっていうのは、あんまりなかった。ただ、初めてのことばかりだったから、せっかくならこういう人呼びたいとか、そういう発想ができるほどの余裕がなかったし。そもそもなにかあっては、困るし。保証できないことが多かったので、仲がいい人中心に声をかけて出てもらいました。
──第1回目を開催した結果はどうでしたか?
シラハタ:概ね関係者だけで100人くらい集まったから、ある程度人は来るだろうとは予想してたけど。でも俺の中では、バスも1時間に1本あるかないかの僻地に500人も来れば十分じゃないかと思ってたら、1500人以上の方が当日来てくれたって話を後から聞いて。ライヴは実質無料だったけど、行政の人にも自分が最初提案し他時想定していたものの上を通り超えるくらいのやつイベントにしてもらえたと、喜んでもらえたね。飲食の出店が7、8店舗と演者が20組くらいでの開催でした。
──特に問題なども起こらなかったですか?
シラハタ:最後のHalo at 四畳半のライヴが始まる時間がこのままいくと、30分押しになりそうって事はありました。それだと最終のバスの時間に間に合わなくなるから、これはやばいって。それで途中、古くからうちに出てた演者が結託して一曲ずつ削ってくれた事で、Halo at 四畳半のライヴがオンタイムに戻って、綺麗に終わったってことはあったね。なんでそうしてくれたかって言うと、周りにいた演者の認識としては、市にお金出してもらった初めてのイベントを1回目から計画通りにいかないイベントにしてしまったら、2回目がなくなるかもしれないって思ったみたいで。
──普段のライヴとフェスを行う感覚は全く違いますか?
シラハタ:全然違うよね。ライヴハウスの場合って、こっちの家に招いてるみたいなところがあるから。うちの中に何があって、とかの話はしやすいけど。いざ外の環境って、意図しないところで問題が起こる事が多い。それにいくら体制を整えたとしても、転換15分っては無理だった(笑)。
──転換15分は大変なんですね。
シラハタ:うん。リハもやってないからね。全部、本番合わせ。だから去年の第2回からは、バンドの転換時間は25分取ってて。そう切り替えてからは、しっかり回るようになったかな。とはいえ、去年は3ステージ、今年は4ステージになって、自分たちのスタッフだけだと回しきれないのは変わってないかな。去年は当時のうちで働いてた人間も現場慣れしてなかったから、胸を張ってPAをやれるかって言うレベルでは正直なかったけど。ただ今年は、そいつがステージのPAをやることになっていて。そんな感じで1年かけたことによって、スタッフのできることができるようになったりはあるんだけどね。
──第1回を開催した時は、今のような規模になっていくと想像していましたか?
シラハタ:第1回に思ってた以上に人が来てくれた結果になって。行政が一昨年始めたイベントを民間がやるようになるのは、提案をしてくれた市の人が「こんなに可能性があって、エンターテイメント性があるイベントを行政がやってるってどうなんだろう。単純に、市がお金が出せないってなったら、このイベントは終わるんだよ。それは俺らでも決められない話だし、それにいずれこのイベントを行政が進めていくと、もし市長がそこで挨拶しててもおかしくない状況にあるわけでしょ。若い人たちがたくさんいるイベントに、市長とか議員さんとかが挨拶に来るのは、そこメリットがあるからで。そうなっていったらと、全然違うイベントになっていっちゃうんじゃないか。それは良くない。だったら、実行委員会化して欲しい。」って言ってくれて。
──市の方から実行委員会化の声がかかったと。
シラハタ:確かにその時にはもう、イベントを開くのに何が必要か分かっていて。イベントの制作とステージ関係の手配なんかはOK。演者もいる。あとは何が必要だったかって言うと、出店の取りまとめしてくれる人と、協賛金を集める人。じゃあ、なんで協賛金が必要かって言うと。2年目からクラウドファンディングはもともとやる予定だったんだけど、手数料がすごい高いって言う印象で。それだけで頑張っちゃうと多分足りなくなる。2本柱で、イベントの事前に払うものに関しては協賛金で払うようにしようって。そう言う事に対応できるのってどんな人だろうって思ってたんだけど。初年度にも出てくれた人で、“ジ・オチムシャーズ”って言う二人組がいるんだけど。その人が実は元々、商工会議所青年部っていう経営者の集まりの会長で。その人がいろんな会社の人と関わりがあってしかもうちによく出てる演者だと。もう声をかけるしかないってなって、お願いしたらやってくれることになり、必要なものが全て揃ったと。
──それはいつ頃でしょうか。
シラハタ:それで初年度関わってくれた人も入って、初年度終わって2ヶ月後の11月にはもう実行委員会が一応形になったっていう感じかな。そこから月一回の会議を必ず開きつつ。結局2018年のイベントはそこから10ヶ月で、クラウドファンディングも150万円集まって、イベントを開催できました。初年度の時に2年目の事を考えていたわけではないけれど、始まったものを無くしてはいけないって言う気持ちはあったし。1回目の時は演者に負担をかけ過ぎてしまったって言うのがあったから、その負担をなるべく減らせるようなイベントの形にしないと、また同じ事を繰り返してしまうと思って、2年目はステージを3つに増やしたって言う。
──初回の開催が大変だったことを聞くと、ステージ数を増やすのは勇気のいる決断に思えます。
シラハタ:って思うじゃん? でも単純にステージをもう一個増やすってことが大変なわけじゃなくて。結局1回目のままでやっていたら、演者に迷惑がかかるっていう事実は変わらないわけだから、もう一個のステージを作らないと、課題に向き合ったことにはならなかったんだよね。確かに現場の人間は増えるし大変なように見えるんだけど、現場のスタッフにいい責任感は持つようになるし。初回の時、イベントのために勝手に判断して動いてくれた出演者があれだけいるんだったら、ゆとりさえ持たせてあげられたら、多分みんな喜んでもっといいものを作ってくれるだろうなって。それが少なくとも2回目としての迎え方だろうなって。有料化もしたしね。
──結果、2回目には1500人の来場者を記録しました。
シラハタ:結果はやっぱり、ステージ増やして良かったよね。音の被りも意識しなくていいくらい時間にゆとりがあって。交互に演奏し合う、野外型のサーキットフェスに憧れがあったのか(笑)。出来るだけグレーな時間を減らして、しっかりパフォーマンスできる時間を増やす。そうでもしないと、有料化した2000円で人来るのかなって。そこがずれちゃってしわ寄せを食らうの演者とお客さんだからね。そうやってしっかり伝えようとした第2回で、役所の人もライヴに行くようになったから。うちだけじゃなくて、Halo at 四畳半のワンマンとか(笑)。メジャーデビュー発表のワンマンはみんなで行ったし。
──そんなこともあったのですね! 参加するバンド側の意気込みはいかがでしたか?
シラハタ:実は、若いバンドの子とかがどう言う気持ちでやっているのか語ってくれる事が多くて。特にHalo at 四畳半。実は、白井(Halo at 四畳半ベース)は運営会議とかにも来てくれてたんだよ。当事者意識を持ってやりたいって言ってて。彼の本音を言うと、Halo at 四畳半でこんなイベントをやりたかったから悔しい気持ちもあったし、どんな人がやってるんだろうって言う気持ちもあったんだと思う。白井のようなバンドマンが来ると、「街の人と触れてる」って言う感覚になるらしいね。実際に初年度は、音楽ユーザーじゃない人もたくさん来たみたいで。その人たちの目の前で生で演奏して、かつライヴハウスのような場所でしか見られないようなバンドが、MCを交えて、どんな想いでステージに上がっているかとか語ったり、来てくれたお客さんに対するお礼の言葉を述べたりとか。Halo at 四畳半は特にそう言う人たちに対しての言葉のかけ方が優しくて丁寧だし押し付けがましくないバンドだから、響いた人が多かったと思うんだよね。
──さすがHalo at 四畳半です。
シラハタ:彼らがそんな姿勢で取り組んでいると言うこともあって、バンドに興味を持った人以上に、白井やHalo at 四畳半のメンバーに興味を持った人が多いみたいで。そのきっかけは、間違いなく会議に出るって言う彼のアクションが始まりだったと思う。こんなバンドの人が来るんだ、みたいな感覚も運営メンバーが持ったとも思うし。不思議だったけど、彼らにとっても、今まで届けてこれなかった人にも音楽が届けられる場所で演奏ができるって言うのは、これほど幸せなことはない。だからそんな場所を無くさないためにも、白井は会議に出てくれたんじゃないかな。
胸を張って帰ってきてもらえる地元でいたい
──そのような流れで2年目までに運営側にもバンド側にも基礎ができたと思うのですが、3年目の開催となる今年はどんなところが変わっていきましたか?
シラハタ:3回目をやるにあたって目標にしたところは、良い意味で地域を超えていくことでした。地元佐倉を盛り上げるということは、佐倉を知る人を増やすことなんじゃないかと。さっきの話に戻るけど、くさのねフェスは、行政から民間に移したからこそ、地域を超えて様々な人たちと関わっていけるんじゃないかと思って。それに、全国区で活躍している地元出身バンドたちの姿を見ていて、単純にかっこいいと思ったし、くさのねフェスに出演してもらうんだったら胸を張って帰ってきてもらえる地元でいたいと言う気持ちもあり。
──資金面での変化は何かありますか?
シラハタ:今年になって変わったことが同時にもう一つ、目標として、みんなにギャラを払えるように取り組み始めて。それは2年目までもあった話で、幾らかでも払えないかなって。ただ、それを払っちゃうと、3年目の開催を行うための余剰金がなくなっちゃうから、結局払えなかった。だからみんなの気持ちだけで開催してたんだよね。ただ今年は、事前に事務所に所属してるアーティストに、しっかり決まった分当てて。残った金額、なけなしの金額だけど、地元の演者にも払えるような予算立てして呼んでいくと。そうなってくると、この人呼びたいけど、遠いから地元の演者とギャラ一緒なのは違うかなって思って、呼べなかったこととか。逆もあって、この人は絶対呼びたいから、地元の演者は呼べなくなるとか。
──出演アーティストを見ると、より音楽フェスらしいブッキングになっていっていると思いました。
シラハタ:そんな風に言ってくれて嬉しいな。くさのねフェスは、間違いなくいろんな人に助けてもらって、開催できているイベントで。行政の人たちも、市民の人たちにも、本当に力になってもらってます。だからこそ感じるのは、協賛頂くにあたってそんな気持ちな方々が居てくれているからこそ開催できていることは実感しているし、本当にありがたいことなんだけど、音楽イベントとして、もっとしっかり成立しないと成長や挑戦を続けていくことが出来ないんじゃないかと。ありがたい、という気持ちの方向を、もっと来場者に向けていきたい。
──確かに、成立し続ける事は重要で大変な事ですよね。
シラハタ:来場者がこの場所でこのバンドのライヴを見たいって気持ちに寄り添っていくからイベントを大きくしていけるんじゃないかな。そうやってココに来る出演者や来場者の観る佐倉や、ココに居る人の佐倉を、お互いに見つめあって初めて、佐倉を内側、外側から感じあえるようなイベントにしていけたらいいよね。音楽イベントだから、お互いの価値観を交換するきっかけの中心にアーティストがいて、その人の言葉で、改めて佐倉を感じてもらえるイベントを考えた結果、ああいったブッキングになりました。
──今回は、LUNKHEADも出演されます。
シラハタ:Halo at 四畳半の渡井が、元々高校生の時に歌ってたとか、BOYS END SWING GIRL の冨塚が LUNKHEAD 小高さんの大ファンだったとか。ちゃんと地元のバンドの動向 に注目して、実際に足運んで生の声聞いて、何が起きてるのかを見てきたから。Twitter 越 しにとか、HP 越しに出てる情報だでは、視られない情報が現場にはたくさんあって。その場所に出てるって言うことはわかっても、実際に行ってみたら、たまたま誰々さんが居たとか、 現場に行って初めて分かる情報ってあるから。地元バンドの動向に注目してなかったら、LUNKHEAD を呼ぶようなイベントにはならなかったかな。
──それは、シラハタさんならではのブッキングではないでしょうか。
シラハタ:単純に、BOYS END SWING GIRLがメジャーデビューするって言うのは、嬉しいじゃない! それで、本人たちも自分たちのご褒美みたいな感じで憧れのLUNKHEADとのツーマンさせてくださいってお願いしたらくて。でも、どこかでスケジュールのミスがあって、なくなっちゃったんだって。楽しそうに「LUNKHEADとツーマン、いついつにやるから絶対来てください!」ってあれだけ言ってたのに、なくなるなんてよっぽどなことだなと思って。それで色々話を聞いてったら、ベース同士が家に遊びに行くほど仲が良かったとか、ギターも教わってたとか、全然知らなかったそんな情報が出てきて。決定的だったのが、ライヴハウス側のミスでそのイベントが無くなったということ。LUNKHEAD側も話を聞いた次の日には、「すぐやろう!」って言ってくれた、と。なのにイベントがなくなって、うつむいてる暇も無くBOYS END SWING GIRLは進んでいったんだよね。
──そんなことがあったんですね。
それだけの関係ができてるなら、ほぼ部外者の俺が、「こう言う風に話を聞いていて、感じるところもあったし、BOYS END SWING GIRLがメジャーデビューする年だし、憧れのLUNKHEADにはくさのねフェスにいて欲しい」って言っても受け入れてくれるんじゃないかって。BOYS END SWING GIRLの白澤さん経由でLUNK HEAD合田さんから話を通してもらったら、出演が決まったんだよね。その間、一度も会ってないよ。でもそんなストーリーの中で気持ちは届いたんだよね。それだけBOYS END SWING GIRLの信用がすごかったということももちろんあり。そこからだね、遠くで開催のフェスだとしても演者が出たりしたら顔を出して、くさのねフェスの話したりとかするようになっていって。運営チームの誰かがこのバンドいいねって話をしたら、必ず声かけるような柔軟さを持ってやるようにもなったし。もちろん何バンドかには断られたけど、今決定してるバンドのライヴには、一回は絶対行くことにした。
佐倉だから
──第3回目の開催にあたっての目標はありますか?
シラハタ:市役所の人は、3000人って言ってるんだけど。今の状況で、3000人を集めることはできても、3000人を迎えることはできるのかって言われると分からなくて。3000人って簡単じゃないからね。でもきっと2000人はあの会場で迎えることができる状況が今できていて。だからそこが目標かなって思ってる。数字でいうとそんなところ。あとは、出演者からヒアリングしたことを1個1個丁寧にクリアしていくことかな。別に大きな問題があったわけじゃないんだけど、こうだったら嬉しいの、こうだったらを、こうしたよって形に持っていきたい。
──そうしてくさのねフェスが大きくなっていく一方で、今までは地元の演者も出れたという良さもあったわけで。そこのバランスは、今後どう取ろうと考えているのでしょうか?
シラハタ:その点に関して、一番適切な言葉があるとしたら「本当に申し訳ない」。本当に。地元演者を全員迎えにいくくらいの気持ちはもちろん今でもあるんだけど、3回目ともなり、多少の認知はされたとは言え、まだまだ人気には至っていないイベントだから。今でも来年は出来るのかって不安はあって。実行委員に対しても、今のまま意味的な報酬だけでは続けていくことは難しいと思う。だから、音楽イベントで成果をあげて労ってやりたいし、ボランティアの方々の献身的な活動にも、もっと喜ばしい成果で背中を押してあげたいと思って。とはいえ、アーティストに、絶対に出るんだ!出してくれ!とか、俺は出るって決めてます、とか言われてしまうと、僕も人間なんで、「好きだ!付き合ってください!」って言われているような気持ちになってしまって、やっぱり意識してしまうことはあるよね。
──恋愛と同じですか。
シラハタ:出演することの、“意味”じゃ無くて、“価値”を上げたいからこそ、オファーをすることに関しては丁寧にしなきゃなって、特に今年思った。例えば、じゃあなんでHalo at 四畳半は毎年出てるんだと思う?
──うーん…… それだけの人を集める魅力があるからでしょうか?
シラハタ:彼らが出てくれてるのは、「佐倉だから。」なんだよね。それ言われたら何にも言い返せない。佐倉にどんなバンドがいて、どんな文化があるのかをHalo at 四畳半を通して知ってもらってきたことは周知の事実じゃない。それだけ気概のあるバンドが、佐倉だから出てるとしても、なんかの天秤にかけられる可能性はあるわけで。それでもHalo at 四畳半と肩を並べて戦ってるバンドの中で、全バンドの株をしっかり上げさせたい。こういう想いをしっかりと伝えられなきゃ、出演した人にも、今回は選ばなかった人にも、持って帰ってもらえるものがない。だからそんな感じで、アッパーにもロワーにも、一方に合わせて考えるんじゃ無くて、そこも全部含めて、続けていくことを前提に動いていく。じゃあ今年出れないことが、来年出れないことになるとか、逆に今年出れることが来年に繋がるとか、そんなものはわかんないけど、それぞれが得意なことを頑張ってたら、リスナーは選ぶと思うんだよね、俺だけじゃ無くても他の人とか。
──そうして、佐倉のバンドの文化が作られてきたように思えます。
シラハタ:「だから、Halo at 四畳半なんだね」って帰着するポイントを演出させないと、「Halo at 四畳半はやっぱり佐倉なんだな」とか「佐倉はHalo at 四畳半なんだな」って言葉に力がつかないんじゃないかなって思う。去年Halo at 四畳半のメジャーデビューが決まってたから、終わった後にその話をしてくれって言った時に、彼らは「いや、この場ではいうつもりないです」って。自分のものじゃないから、自分たちの宣伝のためなんかに使いたくないっていうスイッチが入ってたんだよね。でも、絶対言うだろうなとは思ってたけど(笑)。結果、言わせたけど(笑)。「佐倉のバンドと関わる中で、目の前のバンドがメジャーデビューできる瞬間に、人生で何回立ち会えると思う?」って。俺はこう言う仕事してるから、ありがたいことに何度かはあるけど。「お前ら、これから何万人の人のものになんなきゃいけないわけじゃん? だったらいいじゃん、それくらい!」だから、「言って欲しいんだよ」って。それで、お客さんにもとかそう言う応援する気持ちになって欲しかったし。
──まだ、今年が終わってもないうちから聞くのもあれですが、来年以降の展望はいかがでしょうか。
シラハタ:来年以降は正直、まだわかりません。ただ、一つ思っているのは、今年の成果次第で、地元出演者に胸張って出演してもらえるようなステージをもっと作っていきたいとは本気で考えてます。
くさのねフェス2019
2019年8月31日(土)千葉・佐倉 草ぶえの丘
主催:くさのねフェスティバル実行委員会
共催:佐倉市
後援・協力:(公社)佐倉市観光協会、佐倉商工会議所、島村楽器(株)、タワーレコード、ケーブルネット296、新星堂、(株)伊藤楽器、(株)ふくろうエフエム、bayfm、TSUTAYA佐倉店、千葉県商工会議所青年部連合会、千葉テレビ放送(株)
=出演アーティスト=
明くる夜の羊、アシタカラホンキ!、岩船ひろき、inspire blue、WOMCADOLE、Organic Call、KAKASHI、岸本アツム、カグライフ、鎌形けんすけ、QLTONE、クロトミク(O.A.)、河野圭佑、ココロオークション、The Cheserasera、サスケ、SeanNorth、唱頂の大員、the Swiss Porno Acoustic Vacations、Damn Drive、CHERRY NADE169、月がさ、燕、This is LAST、中村 中、はぴぐら、Halo at 四畳半、HelloMusic、PULSE NOTE、Hivari、平間やすお、PELICAN FANCLUB、BOYS END SWING GIRL、YUUTO、Yuya Takahashi、ユレニワ、LUNKHEAD
くさのねフェス公式HP:
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公式Twitter:
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