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台湾発ドリームポップバンドI Mean us、ロードムービーのスケールと繊細さを共存させた初来日公演

StoryWriter

7月22日、東京・新代田FEVERにて台湾からの5人組ドリーム・ポップ・バンド、I Mean Usが初の来日公演を行った。2015年に台北で結成され、2018年8月にデビューアルバム『OST」をリリースするなり、多様な音楽性を持つバンドが混在する台湾インディ・ロック・シーンで一気に注目を集めたI Mean Us。台湾でのレコ発ライヴでは1000人キャパの会場・台北Legacyをソールドアウトさせるなど飛ぶ鳥を落とす勢いの彼らが、2019年6月より〈I Mean Us 2019 “EYヨ” Asia Tour〉を敢行。中国7都市での公演を終えて、日本では福岡、大阪、東京でのライヴを行った。今回は、日本公演最終日の東京・新代田FEVERでのライヴレポとインタビューをお送りする。

取材・翻訳&文:エビナコウヘイ
写真(ライヴ):横澤魁人

 

動画撮影・編集:皆様ズパラダイス(@minasamazu
動画撮影:bokunofuneホシノ(@ho_322
動画撮影:インディーズうたのおねえさん(@mi0riii


ロックとクラシックで育った2人が作るI Mean Usの支柱

──今回の初来日ツアーという事で福岡と大阪を廻って来られたわけですが、そちらでのライヴはどうでした?

Mandark(以下マンダーク、Synth / Vo):対バンしたバンドとたくさん知り合えたのが良かったですね。日本のお客さんについて言うと、皆さん結構シャイかなあと思いました(笑)。落ち着いて見守ってくれている感じでしたよね。台湾だったら、皆スマホを持って写真や動画撮ったりしているので、それによってお客さんの反応が分かりやすかったりするんですけど。たぶんライヴの楽しみ方の習慣が違うんだと思います。

Hank(以下ハンク、Ba):初めて日本でのライヴを行って、たくさんのバンドと知り合う事ができたのがとても嬉しいです。ツアー初日の福岡公演が終わったあとは対バンしたバンドメンバーと打ち上げに行ったんですけど、最後には皆ものすごいテンションが上がって盛り上がりましたね。今まで見てきた中で一番クレイジーでハチャメチャな飲み会でした(笑)。

マンダーク:すごかったよね、でもこれが彼らにとって普通で日常なのかもね(笑)。終わった後は皆で飲みに行ってゲームやったりして、すごく良くもてなしてもらえました。次に皆が台湾に来る時があったら同じくらいもてなしてあげたいです! 楽しかった!

I Mean Us 2019 “EYヨ” Asia Tour福岡公演終了後の様子。

──音楽の話で言うと、皆さんはどんなバンドやアーティストの影響を受けて来たんですか? 日本ならスーパーカーなどが好きっていう話をお伺いしましたが。

章羣(以下ジャンチュン、Gt / Vo):僕がスーパーカーが大好きなんです!

──ジャンチュンさんのギターを聴いていると、確かにスーパーカーの影響があるなって感じます。

ジャンチュン:そうでしょ! だからこのStoryWriterっていうメディアの名前は、スーパーカーと関係あるのかなって思っていました(笑)! 音楽の話というと、昔は流行の音楽ばかり聴いていたんですけどと、だんだんインディペンデントにやっているバンドが好きになりました、一番好きなのは甜梅號(Sugar Plum Ferry)で、彼らのようなジャンルの音楽は確実に僕のギターに影響があると思います。こういうバンドを聴いていくほどに自分の音楽性や演奏の幅がどんどん広がっていったし、どんどん楽しくなりました。そしてI Mean Usの音楽には2つの面があって、僕が書く曲とマンダークによる曲があるんですが。

マンダーク:私は昔、結構クラシック寄りの音楽を勉強していたので、ロックの影響はあまり多くないのかもしれないですね。そもそもあまりロックを聴いてこなかった。楽器の勉強をするときも、やっぱりクラシックが多かったです。だからジャンチュンのロック畑で育った音楽性とは異なっていて、その両面性がI Mean Usの魅力の一つかも。

左からヴィッツ(Gt),ジャンチュン(Gt / Vo),マンダーク(Synth / Vo)

──他の皆さんはどういった音楽を?

佩蓬(ペイポン、Dr):時期によって聴いていた音楽は違いますけど、私はやっぱりビートルズかな。皆好きだと思うけど。

ハンク:好きなものはたくさん種類ありますね、ファンクとかパンクとかなんでも聴きます。

Vitz(以下ヴィッツ、Gt):私が聴くのは台湾とか欧米のバンドが多いですね、後はサカナクションとか。ちょっと古めのシティポップとかも好きです。コーネリアスも好きですし。

左からマンダーク,ハンク(Ba),ペイポン(Dr)

2人が作った曲をベースに自分の感情や音楽性を発揮していく

──ロックとクラシックを通ってきた2人がI Mean Usの音楽の支柱を作っていて、そこに皆でアレンジを加えていくんですね。皆さんの作曲のフィーリングみたいなものってどこから来るんですか?

マンダーク:失恋中が多いかなあ、すごく純粋な人間なので(笑)。

ハンク:以前は結構自分の情感的なものが大きかったんですが、勉強している時に「人生」について考える事があって…… 人生って一つの大きな流れじゃないですか(笑)。なのでそういう人生を考えるような曲を書いています。

ヴィッツ:私が主に担当するのは編曲なんですが、皆が伝えたい感受性みたいなものを重視していますね。

マンダーク:皆の提供してくれる曲のスタイルに合わせて、自分の中の感情や音楽性を発揮していく感じです。

──そういった部分からどのように曲として仕上げていくのですか? 先に歌詞? それとも曲から?

マンダーク:私の作る曲は先に曲を作っていって、その後に歌詞を書きます。先に短めのメロディを作ってから全体を編曲していく感じですかね。出来ていた短いフレーズを整えていって、最終的に一つの曲にすることが多いかな。

ジャンチュン:僕は先に曲を書いて歌詞ですね、たまには同時に出てくることもあるけど。前はギターとボーカルのパートしか作れなかったんですが、今はベースパートもできるし、ちょっとだけドラムも覚えてきていて。全体を考えながら曲を作れるようになりました。

ペイポン:彼らがくれたデモに、私達が自分たちのエッセンスを加えていく感じです。

──なるほど。お2人(ジャンチュンとマンダーク)がボーカルを担当しているわけですが、その歌い分けはどうやって決めているんですか?

マンダーク:基本的に自分で書いた詞は自分で歌う事が多いですね。ハモリとか掛け合いみたいなのも考えたりするけど。

実際に見てきた海外と東アジアのファンの反応の違い

──I Mean Usの楽曲ってシューゲイザーの要素もあると思うんですけど、台湾ではシューゲイザーとか流行っていたりするんですか?

ジャンチュン:僕らもがっつりシューゲイザーではないけど、まあやっぱりシューゲイザーが台湾では流行っているとは言えないかなあ。

ペイポン:私たちもそんなに人気なわけではないですしね。いま台湾で流行っているとすれば、シティポップとかヒップホップですかね。

──最近は世界で結構シティポップが流行っていて、海外では山下達郎のレコードが人気で値段が高騰した話とかよく聴きます。皆さんも山下達郎とか聴かれたりするんですか?

全員:あーーー!! 聴きます! 最近シティポップがすごい流行っているのでどんどん有名になっていますね、奥さんの竹内まりあさんもすごく有名で聴かれてると思います。

ペイポン:R&Bとかソウルも人気ですよね、

ヴィッツ:エレクトリックポップとかも人気ありますよね。インディーズポップとチル・ミュージックのミックス。完全にオールド・ファッションですね。

──ヨーロッパでもライヴをされた事がありますけど、何かお客さんの反応は違いましたか?

ヴィッツ:やっぱりあっちの方が反応が良いというか、皆さんイェーイ!! って叫んでくれたりしましたね。楽しいっていう感情を躊躇いなく体現してくれますよね。オープンマインドな感じ。自分が聴いた事がない音楽に出会うためにライヴハウスに来ている感じがいいですよね。

ハンク:ライヴ中でも指笛とかよくやってくれました(笑)。ライヴステージの近くを通りかかって、聴こえてくるものが気になったら「おっ」っていう感じでフラッと入ってきてくれている感じがします。

ヴィッツ:道すがらに見つけてライヴハウスに入って盛り上がっている感じだよね。

マンダーク:聴いた事がないから聴かないって事がないよね。

ハンク:逆にアジアだと、各国でライヴの聴き方やノリ方がやっぱり違いますね。

ペイポン:アジアの国だとすでに人気があるかどうかとか、友達に勧められたからとかそういうことを気にする人が多いですよね。

ヴィッツ:日本は割と落ち着いてライヴを見てますよね。台湾でも別に全員が全員エキサイティングしているわけじゃないし、高雄とかめっちゃ冷静な感じでしたけど(笑)。

マンダーク:中国、台湾、日本で比べると、中国が割とお客さんのテンションが高いですね。日本は結構落ち着いていて、台湾はその中間くらい。

──台湾と国外を比べて何か音楽シーンについて違いは感じますか? 以前DSPSにインタビューした時は、台湾のインディシーンっていうのは、例えば日本に比べると歴史がまだ浅くて成熟しきっていない感じがすると伺いました。

ジャンチュン:確かにそうだよね。

ヴィッツ:台湾はやっぱり比較的人口が少ないので、音楽がすごく好きで聴く人、特にインディーズバンドとかになると、その分母体数が少ないかなとは思います。日本や韓国のアイドル、K-POPとかそういう主流な音楽の勢いものすごいですよね。もちろんインディーズバンドもすごいと思いますが、やはり流行の音楽と比べちゃうと多少の落差はあります。台湾はインディー音楽を聴く人口ってそんなに多くないかもしれませんが、だからインディーズシーンが、ニッチで主流ではないということにもならないかなあと思います。

マンダーク:バンドブームが少しずつ始まっているのかなと思います。

──今夜のライヴに向けて何か意気込みはありますか?

ジャンチュン:皆さんが楽しんで満足してくれればもう充分です(笑)。

マンダーク:ライヴが終わった後に、皆がまたI Mean Usのライヴに来たいと思ってくれると嬉しいですね。

ヴィッツ:やっと日本に来ることができた大事な機会なので、たくさん私たちのこと知ってほしいです。

マンダーク:いいライヴをして皆に知ってもらえれば、皆もまたライヴに来てくれるかもしれないじゃないですか。今回のアジアツアーでは、35組のバンドと共演してサポートもしていただきました。本当にありがとうございました。今回、お客さんにはライヴを楽しんでもらうだけではなく、また私達のライヴに来たりして応援してもらえるようにしたいです。


I Mean Usライヴレポ@新代田FEVER

7月22日月曜日、新代田FEVERにて〈I Mean Us 2019 “EYヨ” Asia Tour〉のツアーファイナル公演が行われた。当日は、Luby Sparks、17歳とベルリンの壁、オープニングアクトのMorningwhim含む総勢4組での公演となった。

出演順はMorningwhim、17歳とベルリンの壁、Luby Sparks、I Mean Usの順番。シューゲイザーやドリームポップのジャンルに影響を受けたバンドが集った当日。浮遊感のあるサウンドをそれぞれの形で披露する中で、会場はチルな雰囲気へとまどろんでいく。各々身体を揺らしたり、時には軽く手を挙げたりするなど思い思いに音楽を楽しんでいった。

そして最後に登場したのがI Mean Us。青と紫の照明が差し込んだステージの中にメンバーが入場すると、アルペジオのイントロが印象的なデビューアルバム『OST』の1曲目「I Don’t Know」でライヴがスタートした。〈The heaven like new year〉、〈Let it go〉などの歌詞が示すように、甘美で浮遊感のある世界観を作り出し、オーディエンスも肩を揺らしながら酔いしれていく。その一方で、ステージ上で全身を使って楽曲の感情を体現する。

続けて、「Johnny The Hero」、「EYヨ」、「12345 I Hate You」とデビュー・アルバムの収録曲を披露。ベースとドラムの堅実なリズム隊のサウンドの上に、マンダークの透き通る歌声とシンセサイザーのサウンド。ヴィッツのギターは鋭く、これらがI Mean Usのサウンドの主柱となる。その上には子供のように感情豊かに高ぶらせるジャンチュンのステージング。このギャップが、I Mean Usの魅力の一つだろう。特に2曲目の「Johnny The Hero」のアウトロでは自分を爆発させるように叫ぶジャンチュンの姿が印象的だった。「EYヨ」では一転して、マンダークのボーカルがメイン。凛とした世界観から徐々に激しく壮大なサウンドになっていく。ここでも感情が高ぶり過ぎて、ジャンチュンのギターストラップが外れてしまうトラブルが起こる。それでもお構い無しに頭を振り続ける姿に会場もさらに沸いた。

「12345 I Hate You」が終わるとMCへ。

「こんばんは、I Mean Usです。今回のツアーが初の来日公演となりまして、今日が最終公演です」と簡単な挨拶を済ました後、「今回スペシャルなカバーをご用意しました、七尾旅人さんの『サーカスナイト』です」とジャンチュンが話すと、会場からは期待を示す大歓声が。シンセサイザーから始まるメロウな曲調と必死に日本語で歌う姿に会場は微笑ましくもまどろんだ雰囲気へと一変。曲が終わると、再度拍手と大歓声が上がった。

「外国人が話す日本語は変だと言われるけど大丈夫ですかね(笑)」とジャンチュンのハニかむ姿で笑いを誘うと、「ここからはちょっと雰囲気を変えてダークな感じの曲をやりますよ、楽しんでくれたら嬉しいです」と「普通人類」へ。厚いシンセベースのサウンドとマンダークの透き通る歌声、それでいて軽いリズムが妖しげな雰囲気を作る。間を置かずに次の「Eager, Contagious」へ。「普通人類」とは異なり、重めな曲調とサビで荒々しく歌い上げるジャンチュン。同じダークサイドを歌っても、I Mean Usの2人のボーカル、ジャンチュンとマンダークが作り出す音楽の二面性を感じられた2曲だった。

ここでマンダークのMCへ。

「本日はお越し下さってありがとうございます、今回がツアー〈EYヨ〉の最終公演です」と感謝を述べた後、日本のバンドは「ヤバイ、スゴイ」と連呼したり、ギターのヴィッツは「17歳とベルリンの壁」の日本語の発音を忘れないようにすることで頭がいっぱいだった、と話して会場の笑いを誘う。笑いが落ち着くと、ロマンティックを歌ったという「Søulмaтe」。透明な白の衣装のマンダークの優しく包み込むような歌声と、浮遊感が広がっていく壮大さが相まって、当日一番の神聖さを感じさせた。

そして、本編ラストは代表曲である「You So」。イントロの電子ベース音が鳴ると、待ち焦がれていたかのように会場から歓声が。青と赤で照らされたステージが、同曲のMVでの夕焼けの大自然で演奏する姿と重なっていき、雄大さを感じさせる。会場とステージの境目など無いかのように、柵の前まで降りて演奏するジャンチュンの姿に会場もどんどんヒートアップ。最後は、ジャンチュンがステージと客席の間に足を踏み外して落下してしまうほどパフォーマンスに熱の入ったステージングを見せてくれた。

アンコールでは、ステージに登場したヴィッツが「今日で最後の公演なので全力を使い切って台湾に帰ります」と述べて「Take Care, Sis」を披露。現在YouTubeで公開されているTOKYO ACOUSTIC SESSIONのアコースティック編成とは異なり、バンド編成のサウンドがより楽曲に奥行きを与え魅力的に聴かせる。最後は「死寶貝」を披露してライヴは終了。ステージ上で記念写真を撮り、大盛況のうちに公演は終了した。

ロードムービーのサウンドトラックを意識して作られたという今作のアルバム『OST』。クールな面もあればアツいパフォーマンスもある、正に映画のようなドラマのあるアルバムのストーリーを体現したライヴだったと言える。I Mean Usがこれから描くロードムービーのようなバンド活動にもっと世界が注目していくことを予感させられた。これからの彼らの活躍に期待したい。

 


I Mean Us

〈2019 “EYヨ” Asia Tour〉東京公演

2019年7月22日(月)東京・新代田FEVER

セットリスト

  1. I Don’t Know
  2.  Johnny The Hero
  3. EYヨ
  4. 12345 I Hate You
  5. サーカスナイト(七尾旅人カバー)
  6. 普通人類
  7. Eager, Contagious
  8. Søulмaтe
  9. You So (Youth Soul)

Encore

  1. Take Care, Sis
  2. 死寶貝Playground Babe

 

I Mean Us オフィシャルアカウント:

Facebook:https://www.facebook.com/IMeanUsBand

Twitter:https://twitter.com/IMeanUsBand

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