【EVENT REPORT】沖縄から日本とアジアの音楽市場に交流を生み出す〈TAMM 2020〉を現地レポート

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音楽カンファレンス〈Trans Asia Music Meeting 2020〉(以下:TAMM)が、2020年2月22日、23日の2日間に渡って、沖縄県那覇市の桜坂劇場にて開催された。

日本からアジアへ、アジアから日本へと、音楽に携わる業界人がそれぞれの事業や活動を互いに持ち寄ることで、沖縄の音楽をアジアに発信していくこと、海外への新たなアプローチを考えたり問題意識を共有することを目的として行われている同イベント。2016年から始まり、年を重ねるごとにその規模は大きくなり、日本では他に類を見ない重要なカンファレンスになっている。

1on1ミーティングの様子

今回は、アジアを中心に日本国内外から30人以上の音楽関係者が来沖し、「トークセッション」「プレゼンテーション」「1on1ミーティング」など多彩なプログラムを開催。音楽ネットワークを共有し、沖縄を軸に多くの国・地域の音楽が行き交うような環境を構築した。この貴重な2日間の様子を、中華圏を中心にアジア音楽を追うエビナコウヘイがレポートする。

ショートピッチ:アジアの音楽フェスやメディアを紹介

まずは先にアジアの音楽情報を紹介するショートピッチの様子をお届けする。

・Short pitch 1
「CAT RADIO / CAT EXPO」
スピーカー:Tuk Tuk Passawan(CAT Radio・Cat Expo / タイ)

Tuk Tuk Passawan(CAT Radio・Cat Expo / タイ)

タイで人気のFMラジオ局「Cat Radio」主催のインディーズ音楽フェス〈CAT EXPO〉のスタッフであるTuk Tuk Passawan氏によるCAT EXPOブランド紹介が行われた。

「Cat Radio」では、音楽好きの著名人とDJのトークを行うなど、24時間ジャンルを問わず音楽やプログラムを放送。〈CAT EXPO〉は、アイドルやDJ、ポップ、ロック、国内外などジャンルを問わずに音楽を集めた年に1度の巨大音楽フェスで、遊園地跡地という広大な立地を活かして、ファッションやフード、旅行など幅広くブースを設けた総合エンターテインメントイベントとして認知されている。100以上のアーティストブースがあり、ファンとアーティストとの交流はもちろん、アーティスト自身が自分の曲を売り込むことができるようにもなっているという。今年は11月21日・22日の2日間に開催される予定。

・Short pitch 2
「Playtime Festival」
スピーカー:Natsagdorj Tserendorj(Playtime Festival / モンゴル)

今年で19回目の開催となるモンゴルの音楽フェス〈Playtime Festival〉。元はロックフェスだったが、だんだんと規模や参加する音楽ジャンルが広がり、広大な会場でキャンプもできるジャンルフリーのフェスとなった。現在では3日間で3万人を動員、70のモンゴルのバンド、国外から30のアーティストの計100組が参加するほどになった。2013年が契機となり、初の海外のバンドを呼び、そこから海外のアーティスト枠も多く設けられるようになった。日本からもMONO、LITE やThe fin.などが出演。実際に自身で海外のフェスやショーケースに足を運にNatsagdorj Tserendorjは、「1990年代以降、民主化に伴って音楽が多様化し、モンゴルにとって〈Playtime Festival〉はとても重要なイベントで音楽が育つ場所になっている。中央アジア地域諸国のバンドのこれからにとても期待している」と語った。今年は7月3日、4日、5日の3日間開催予定。

・Short pitch3
「The Rest Is Noise / Summer Noise」
スピーカー:MC Galang(フィリピン)

MC Galang(フィリピン / The Rest Is Noise)

2015年に音楽レビューブログとしてスタートした「The Rest Is Noise」。徐々に小さなイベントのプロデュースも手がけるようになり、2017年末に初のフェスを開催。そこから国内のバンドの登竜門的な位置づけとなり、2018年にはジャンルレスの音楽フェス〈Summer Noise〉を主催。音楽レビューブログからスタートした当時から、フィリピンのインディーズや新人によるコミュニティを作り上げてきたという。〈Summer Noise〉には、自分たちが好きで情熱溢れるバンドばかりを集め、国内のインディーズアーティストはもちろん、台湾のEleohant GymやタイのPhum Viphurit、Yellow Fangなども参加。海外から参加してくれたアーティストには、メディアや会場押さえなどフィリピンで極力活躍できる場面を作ることを大事にしていると語った。「良い音楽と情熱のあるアーティスト及び関係者も国内外問わずアジアで繋がっていくべきだ」という考えをモットーにしており、フィリピンでショーケース文化を根付かせることを目標にしている。

Short pitch 4
「Bandwagon」

Marianne Chang (Bandwagon / シンガポール)

スピーカー:Marianne Chang (Bandwagon / シンガポール)

シンガポールの文化庁のサポートで運営されている音楽メディア「Bandwagon」。当初は国内だけだったが、アジア全体の音楽、特にインディーバンドをカバー。主にシンガポールのライヴイベントの情報を紹介していたが、国内の音楽業界の可能性に気付き、インタビューやレビューを多く載せるようになっていったという。タイをはじめ他の東南アジアの国に比べて、地元のミュージシャンがあまり聴かれていない状況を残念に思い、国内のバンドをメインに取り上げる「Hear65.com」を立ち上げた。近年はシンガポールでも音楽業界が盛り上がり始め、学生主体の〈IGNITE! MUSIC FESTIVAL〉などいくつかフェスが生まれてきており、Bandwagonとしてフェスのサポートも行なっていると語った。

現在は、自分たちでもフェスをプロデュースするようになり、「GIG BUS」を作り、会場までの移動バス車内でもDJが音楽をかけたり、アーティストのメンターセッションなど、音楽に触れる試みもしてきた。国内のアーティストにフォーカスする姿勢は今も変わっておらず、超有名アーティストをフェスに呼ぶ資金があるなら、そのお金で地元のインディーアーティストを10組呼ぶようなスタンスを心がけているという。

DAY1:ワールドミュージックと東南アジア進出

session1「東南アジアをツアーするためのヒント」

登壇者:
・Piyapong Muenprasertdee(タイ/ Bangkok Music City・Fungjai)
・Joff Cruz (ベトナム / Swan Zoo)
・Bel Certeza(フィリピン / Indie Manila・Homonym)
コーディネーター
Marianne Chang(シンガポール / Bandwagon)

セッション1の様子

東南アジア各国の音楽業界に関わるゲストが登壇。東南アジアで盛り上がっているインディー音楽シーンに関わっていく術を語った。

まず気になりそうな問題として、言語の壁を挙げた。演者についてはYellow Fangなどタイ語で歌唱するバンドがアジアや北米で人気が出ているので、業界関係者こそ言語を使えるほうがよく、次につなげていくためプロモーターと積極的にコミュニケーションを図るべきと語った。

また、現地に知り合いがいなくとも、似たような音楽性のアーティストやメディアに、SNSなどでコンタクトをとってみることが大事だと語った。その為にも、アーティスト資料の準備(英語)やライヴの動画を用意してパッケージしておくことが望ましい。特にライヴ動画は重要だとPiyapong Muenprasertdeeは指摘する。「聴衆の前でどういうアクトをできるのか、できれば、自分たちを知らない聴衆の前で演奏したアクトの映像があると、実際の国外フェスに出たときにどういうパフォーマンスができるのかの目安になる」と語った。また、現地で主に用いられるストリーミングサービス、SNSは各国で少しづつ異なっている。ターゲットとする市場、年齢層などはっきりさせてから、そこに刺さるアプローチすることが望ましいだろう。

Session2「ワールドミュージック・フェスティバルの現在」
登壇者:
根木龍一(日本 /  橋の下世界音楽祭)
Kong Dalse Yoon-Young(韓国 / Zandari Festa / DMZ Peace Train Music Festival Creative/Art Director)
Husniddin Ato(ウズベキスタン / OXUS Culture Director)
Nicolas Ribalet(フランス・ 日本 / SUKIYAKI MEETS THE WORLD Festival Producer)

セッション2の様子

各々の地域のワールドミュージックフェスを紹介し、その現状を紹介するセクション。

根木龍一の主催する〈橋の下世界音楽祭(Soul Beat Asia)〉は、愛知県豊田市で開催されるワールドミュージックフェス。助成金もなく手作り、投げ銭制、伝統芸能からレゲエ、ロック、メタルまで幅広く扱うなど独自のジャンルを開拓している。フェス内では自治エリアを設けており、主宰と関係なくイベントやライヴを行うスペースがあるというのも、かなり自由な雰囲気を感じさせる。

韓国のJung Hung Leeは、韓国人の中でもK-POPやジャズ、ポップなどを聴き尽くしたディープな層が一定数おり、彼らがワールドミュージックに興味を持ち始めて、毎年動員を増やしていると語った。また、韓国では海外と比較すると、公的機関のサポートも少なく、数字ばかり重視されてしまうのが改善すべき課題だと話した。

Jung Hung Lee

ウズベキスタンの〈LAND OF MUSIC FESTIVAL〉のコーディネーターHusniddin Atoは、現在ウズベキスタンには、1997年から続く中央アジア最大のワールドミュージックフェス〈SHARQ〉をはじめ、4つのワールドミュージックフェスがあるという。しかし、それらは伝統音楽が主体で、ポップミュージックについても、民間で多少はあるものの規模はまだ小さいと説明。歴史上、ソ連の支配下にあった中で、支配下の国々が支配を抜けて自分たちで発展し、その上で政府のサポートを得る段階まで進化していないことが問題だと語った。

1991年に富山県で始まった〈SUKIYAKI MEETS THE WORLD Festival〉のプロデューサーであるニコラは、集客1万5千人と、日本でも類を見ない大規模なワールドミュージックフェスを主催。イベントスタッフはボランティア、公共施設や空き家を会場やアーティストの宿泊施設にしたり、ワークショップなど町全体を絡める形で、非常に理想的な手法でイベントを成功させている。しかし関係者が半分近くフェスや業界に習熟していなく、情報発信が上手くいかないため、今後のプロモーションが重要だと語った。

ニコラ

筆者が思うに、ワールドミュージック市場は各国でも規模は比較的小さい方である。しかし、文化交流という方面での意義は大きく、日本でも政府や公的機関の援助があって良いのではないだろうか。だが、それによって表現の幅が狭くなる危険も想定しうるので、公的機関の寛容なサポートが求められる。

また、同セッション中では、2017年に始まったGloMMNet(NPO:https://www.glommnet.com)に加盟している世界のワールドミュージックフェスを紹介、各地のイベント・ショーケースで世界各国の音楽が行き交っていることを伝え、ワールドミュージックは確実に世界規模で支持層がおり、それを盛り上げる人々がいることを確認させてくれた。

DAYS2:目的を明確にしてアジアへ進出していくべき

Session3「ショーケースフェスがどれほど必要か」

登壇者:
Andy Jones(ウェールズ/ FOCUS Wales Co-Founder & Music Booker)
MC Galang(フィリピン / The Rest Is Noise)
Kangdam…Kong Dalse Yoon-Young(韓国 / Zandari Festa / DMZ Peace Train Music Festival Creative/Art Director)
Piyapong Muenprasetdee(タイ / Bangkok Music City founder・Fungjai )
コーディネーター
Bel Certeza(フィリピン / Indie Manila)

セッション3の様子

セッション3では、インディーズバンドにとってのショーケース・フェスティバルの役割を紹介、及びその未来と現状の課題にフォーカスして話が進められた。

先ず、各々が自国のショーケースの現状を語る中で共通していたのが、資金集めについて。公的機関や商業ベースではないイベントには企業も協賛しにくく、バックアップを得るのが難しいという。しかし、タイでは、調査を実施してショーケースイベントやフェスを行なうと経済効果の波及があることを明らかにすることで、政府がサポートするケースも増えてきたと、Piyapong Muenprasetdeeは語った。

これについて、議論は進んだ。どのように政府と交渉してサポートを得るのか考えることは大事で、アイデアの奇抜さではなく、観光業・飲食業の活性化や雇用増加につながることを数字など具体的なデータで証明するなど、公的機関の求める思考に合わせるということが交渉のポイントであると結論付けた。

しかし、Andy Jonesは、政府が絡むと費用が余計に多くかかるケースもあり、独立した組織でやる方が安く済むことはある。また、それによっていろいろな企業と協力するとそこで培ったノウハウが残らない事も危惧されうると話した。音楽業界に理解の少ない政府よりも、専門的な組織や企業に政府が任せるという形が一番ベストかもしれないとも指摘した。

Andy Jones

また、アーティストにとってのショーケースの重要性も話題に上った。海外でのショーケースに参加は、実はアーティストに金銭的な利益は少ない。その分、現地の人間関係は充実させることができるし、今後のツアー開催に繋がるなどチャンスを広げる上では大事なイベントとなる。実際にフィリピンでショーケースを開催する〈The Rest Is Noise〉のMC Galangは、「ショーケースの一番の目的はアーティストを音楽ファンに紹介すること。メディアパートナーやライヴハウスをアーティストに紹介するなど、バックアップの準備を整えている」と口にした。

日本国内の音楽市場の縮小状況や世界各国で音楽配信サービス利用できる状況を鑑みると、海外ツアーにも国内と同等かそれ以上に可能性が広がっているのかもしれない。日本のアーティストも積極的に海外のショーケースに参加して、チャンスを掴みに行ってほしい。

セッション4「デジタル・インターネット・モバイル全盛の世界で、ライブ・ミュージックがなぜ重要なのか」

登壇者:
Hyunjoon Shin(韓国 / Professor of Sunkonghoe University)

セッション4の様子 Hyunjoon Shin

カルチャースタディーを専門とする韓国の大学教授Hyunjoon Shinが登壇。昨今ほとんどのコンテンツはデータ化・プラットフォーム化している中で、音楽もそれは避けられずストリーミングサービスが発達してきた。レコーディング作品を凌ぐ勢いで、ライヴの価値が高まっている一方で、ライヴも動画配信サイトというプラットフォームに掲載されるようになり、レコーディング作品と同様にデータ化している。更に言えば、中国ではケット販売会社やチケットエージェンシーにもプラットフォーマライゼーションが進み、ファンのトレンドやレートがデータ化されてプラットフォームに集められている。マッチングアプリのように、データに基づいたアーティストとオーガナイザーのマッチングを図るサイト「getstage」(http://www.getstage.com)も生まれてきている。

この音楽を取り巻くプラットフォーム化は劇的に進んでいるが、ライヴミュージックの発展は、多くのプラットフォーム化があったからこそだと語る。しかし、ライヴの中でもエンジニアやデザイナー、演出家、移動、宿泊などもありプラットフォーム化するのは限界があるという。なので、これまでのライヴ制作や仲介役とオンラインのプラットフォームのバランスが大事になってくる。これからはこのバランスを汲んだ新たな形のライヴイベントの制作、市場の広がりが鍵を握るだろうと語った。

セッション5「2020年代ライヴ会場はどこを目指すのか」

登壇者:
・本多真一郎(日本 / Zeppホールネットワーク海外運営事業部/Zepp New Taipei準備室長/Zepp Kuala Lumpur準備室長)
・三條 亜也子(日本 / WWW / スペースシャワーネットワーク)
・寺尾ブッダ(日本・台湾 / Big Romantic Records)

セッション5の様子

規模の違うライヴハウスを運営する3人はそれぞれのやり方で独自の海外と繋がっていく。

渋谷のライヴハウスWWW / WWW Xを担当するスペースシャワー・ネットワークの三條亜也子は、〈In&Out〉というWWWのレギュラーイベントで日本と海外のバンドの対バンイベントを行ない、日本とアジアのインディーシーンの交流地点を作っている他、WWWのラウンジをWWWβと改称しクラブイベントを開催、上海のクラブとの交換プログラムも行なっているという。ここで意識していることは、アジアのアーティストを呼びつつ日本のバンドを並列に紹介することだと語った。アジアに関心を持っている日本のバンドが増えてきている中、日本に呼びたい全く面識のないバンドが〈In&Out〉キッカケで交流が生まれ、コラボレーションすることもあるという。

青山と台北の月見ル君想フを経営しながら、「BIG ROMANTIC RECORDS」を立ち上げた寺尾ブッダが、中華圏のイベント状況を紹介。昨年、中国では現地のプロモーターと協力してライヴ制作を37本も行なったものの、今年上半期はコロナウィルスの影響で日本のバンドの公演はほぼ中止になっている現状を語った。また、日台のバンド(CHAI、Yogee New Waves、落日飛車、DSPSなど)のリリース、ライヴ制作も積極的に行なっている中で、台湾のインディーバンドは自分たちで会社を起こしてマネージメントを行なっているケースが多く、各国のエージェント、プロモーターと契約して大手に所属することなく世界に出ることが多いと話す。日本のインディーバンドも、海外進出を目指すなら積極的にアクションを起こした方がいいのかもしれないと語った。

海外のZepp進出を多く担当する本多真一郎は、海外進出するにあたってアジア8都市(台北、香港マカオ、上海、クアラルンプール、バンコク、マニラ、ジャカルタ、シンガポール)の2018年のキャパ400以上の会場のイベント本数を調査したデータを基にトークを進めた。各国アーティストの海外進出本数、及び近年の傾向の中で、日本のアーティストは台北に加えて上海でライヴを行うことが増えた反面、東南アジアの該当会場では年間1桁回数ほどしかライヴを開催していない。ここでもやはり、東南アジアおよびアジア各国間のつながりの中に日本があまりコミットしていいないことが浮き彫りになった。日本のマーケットではK-POP、邦楽、洋楽が多く、その他ワールドミュージックの知名度は少ない。アジア各地のZeppで活躍した現地のアーティストが日本でも公演できるようにしたいと語った。

本多真一郎のデータ

セクション6「海外マーケットを目指す理由」

登壇者:
幸田悟(日本 / Okinawa LOVEweb founder)
高良結香(日本 / アーティスト)
Darren Teh(マレーシア / アーティスト An Honest Mistake)
PYRA(タイ / アーティスト)
Darthreider(日本 / アーティスト)

セッション6の様子

動画配信サイトやサブスクリプションサービスの発展に伴い、もはや国内の音楽市場にこだわる理由は少なくなっている。ここでは海外の音楽市場の進出を行なってきたアーティストを迎え、彼らの体験や海外を目指す理由を語るセクションとなった。

先ず海外を目指し始めた理由を、各々が語った。

PYRAは、自身の音楽スタイルがタイではあまり主流ではないので、海外の市場を目指すことは自然だったと語る。地元のレーベルでは満足のいくサポートを得られず、インディーで自分というブランドを確立することを決心。その後も各所からオファーがあったものの、自分の音楽を理解してくれる人や、タイ語で歌って欲しいなど要求が多くてマッチしないまま活動を継続。やがて知り合った方にWarner Musicのアジア部門を紹介してもらったという経緯を話した。自分の音楽スタイルや目標をブレさせずに、それを理解してくれるパートナーに出会えたことが良かったと語る。

PYRA

マレーシアのアーティストDarren Tehも、自身のスタイルを理解してくれるスタッフに会うことが大事であると付け加えた。マレーシアのインディーアーティストは実力があるものの、音楽をビジネスとして経営するスキルが足りず、海外進出に踏み切るor成功するアーティストが少ないので、自身の経験を基にマネージメントサポートをしている彼は、先ずは同じことを試みている先輩アーティストやマネージメントに会って、謙虚に勉強する姿勢も必要だと話す。

また、Darthreiderも韓国の〈Zandari Festival〉の出演がきっかけで、中国のフェスにも呼ばれるなどどんどん広がっていったと話す。これまでのセッションでも何度か触れられていたように、”先ず海外にコンタクトを取ってみる一歩を踏み出す”ことがアーティスト側に求められているのは確かなようだ。これに加えて、この時代に国や地域の違いを意識する必要はなく、自分たちを気に入ってくれるコミュニティを出て新しいコミュニティに入っていく気概も必要だと語った。

Darthreider

歌手であり、アメリカ・ブロードウェイでミュージカル俳優としても活躍する高良結香は、ネットもあり、地域など問わずに同じ土台で発信を始めることができる時代である中で、海外で活躍していくには2つのポイントがあると言う。自分でチャンスに歩み寄っていくように行動することと、いつでもチャンスを掴める準備をしておくこと。ボイトレなど技術、コントロールできるものは自分でコントロールできるようにしておくだと言う。沖縄にいた頃は、ブロードウェイがどんなものなのか、ミュージカルとはなんなのか全く掴めていなかったが、これからは後輩にも自身の経験を伝え、才能が生まれて見つかっていくサポートをしたり、自分の経験を沖縄に還元していきたいと話した。

セッション7
「危機を機会に変える:日本のアーティストはいかにアジアのマーケットを目指すのか」

登壇者:
Ginn(日本 / dessin the world)
根木龍一(日本 /橋の下世界音楽祭)
齋藤幸平 (日本 / Fukuoka Asian Picks)
寺尾ブッダ(日本 / 月見ル君想フ / Moon Romantic ・BigRomantic Records)
コーディネーター
野田隆司(日本 / Music from Okinawa)

セッション7の様子

日本音楽業界の危機感を感じているメンバーをメインに総括。これまでドメスティックだった日本音楽業界は、サブスク中心の時代では海外にもマーケットを求めていくべきではないか? それはどうやって目指すべきか? を語るセッションになった。

タイに10年以上在住しているGinnは、バンドのマネージャーとしてアジアに進出し始めているが、今後はイベントやレーベル単位での海外進出もしたいと展望を語った。しかし、今のところバンドが来ても単発に終わり、ファンベースは築けていない上に目的意識が足りないと鋭く指摘した。寺尾ブッダも、日本のバンドを連れて行く際に、前向きな姿勢ではあるものの、目的という意味では温度差はあると付け加えた。また、齋藤幸平は、国は違えど海外進出について抱えている問題が一緒のケースが多いと話す。国境を超えて考えることもあるのではないか? と話し、海外と日本を互いに紹介し合うだけではなく、一緒に作品を作って新しい価値を作ることが大事なのかもしれないと提案した。

Ginn

齋藤幸平

いかにアジアのマーケットを目指すのか? というテーマについては、根木龍一はチャンスを掴むには、常に変動する現地のマーケットに行ってみることが大事であり、実際に現地に赴くほどの情熱があるかが大事ではないかと話す。Ginnも最後に改めて、”どこの国のどの年齢層をターゲットにして、どういうものが人気あるのか、などちゃんと順序立てて考えていこう”と、目的を以て進出することを念押しした。

イベントの最後には、今回の主催者である野田隆司が総括。沖縄のバンドを海外に発信していくという目的で始まったイベントが、東京をはじめ日本全体を巻き込むイベントになってきたので、これがハブになって新たな企画やつながりが生まれてくる場所になることを期待したいと語った。最後には、以下の登壇者の共同声明を発表し、これからの音楽による世界とのつながりを誓った。

Trans Asia Music Meeting 2020 共同声明

 “Trans Asia Music Meeting(TAMM)”は、沖縄とアジアの音楽ネットワーク構築と、沖縄音楽の海外発信を目的に2016年にスタートしました。この約4年の間に、世界の音楽業界の状況は大きく変わり、TAMMの役割も少しずつ変化してきました。

 アジア各国においても音楽ネットワークはより良い形で機能するようになり、マーケットは世界中に広がっています。その背景には、音楽関係者が日々築いている直接的なつながりがあります。アジアの音楽関係者が情報を共有し、強く結ばれることは、音楽文化の発展のために非常に重要です。
 また音楽をはじめとする文化やソフトのパワーは、社会的なインフラとして欠かすことができません。それを永続的に維持していくことは私たちの大切な役割でもあります。

 今回、新型コロナウイルス(COVID−19)の流行により、旅行の禁止と制限のため、残念ながら多くの登壇者がキャンセルせざるをえませんでした。そうした中でも、多くの音楽関係者がTAMMに参加してくれました。皆ビジネスが繁栄するために何年もかかるであろうことを理解していますが、継続的で定期的な直接的な対面会議が持続可能で前進するための唯一の方法であることも知っています。

 友情は音楽ビジネスの上での真の通貨であり、文化は社会的、政治的、または経済的に影響力を持つ真の通貨です。

 デリゲーツはアーティストの機会を増やすために、頻繁に会う必要があり、TAMMはアジアのネットワーク接続を強化するイベントの1つでもあります。

 私たちのネットワークに行政からのサポートは重要です。すぐに明らかな効果を示すことはないかもしれませんが、長期的には大きなプラスの効果を与えるものに投資していることを理解していただけることを望みます。

 私たちはこれからもアジア発の音楽のネットワークをひとつの軸として、音楽文化の発展に寄与していきます。

2020年2月23日 沖縄県那覇市

この〈Trans Asia Music Meeting 2020〉は、アジア各地の現地で活動する音楽関係者と、日本からアジアに繋がっていこうとする人々が交わる起点であり、日本では他に類を見ないほど海外の音楽シーンと近い場所になっている。音楽業界としても、もはや国内市場だけでは大きな広がりも難しくなっている中で、海外との繋がりは必須なはずだ。音楽関係者もアーティストも、少しでも興味がある人は、毎年冬に開催されるぜひこのイベントに参加してほしい。きっと何かチャンスにつながるはずであるし、トークでも再三言われたように、実際に現地の人々にコンタクトを取ってみることが重要となっていく。その一歩を是非この〈Trans Asia Music Meeting〉から始めてみてはいかがだろう。

取材・文:エビナコウヘイ
写真:金 載弘


■イベント情報

〈Trans Asia Music Meeting 2020〉
2020年2月21日(金)-23日(日)@沖縄・那覇市桜坂劇場

・登壇者
Jung Hung Lee(韓国 ・Ulsan Jazz Festival Founder & Director / ACC world music festival / Seoul )Music Week Founder & General Director
Kong Dalse Yoon-Young(韓国・Zandari Festa / DMZ Peace Train Music Festival Creative/Art Director)
Bel Certeza(フィリピン・Indie Manila)
MC Galang(フィリピン・The Rest Is Noise)
PYRA(タイ・アーティスト)
Tuk Tuk Passawan(タイ・Cat Radio / Cat Expo)
Ginn Sentaro(タイ / 日本・dessin the world founder)
Darren Teh(マレーシア・アーティスト / An Honest Mistake)
Natsagdorj Tserendorj(モンゴル ・Playtime Festival Founder & Programmer / Amantun Music Group Founder & CEO)
Husniddin Ato(ウズベキスタン / OXUS Culture Director)
Andy Jones(イギリス ウエールズ・FOCUS Wales Co-Founder & Music Booker)
和田 礼 a.k.a. Darthreider(日本・アーティスト / THE BASSONS)
清水英明(日本・株式会社MCIPホールディングス代表取締役社長)
本多真一郎(日本・株式会社Zeppホールネットワーク海外運営事業部 / Zepp New Taipei準備室長 / Zepp Kuala Lumpur準備室長兼 / ホール開発事業部プロデューサー)
三條 亜也子(日本・WWW / スペースシャワーネットワーク)
根木龍一(日本・橋の下世界音楽祭)

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