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【連載】ヨコザワカイト「digる男。」Vol.36「今が旬な“封筒型雑誌”を買ってきた」

StoryWriter

お世話になっております。digる男・ヨコザワカイトです。

長かった春休みも、終わりの兆しを見せています。

それに気がついて慌てて宿題を始めるように、「今、何を聴けば良いのだろう」などとモヤモヤ考えながら、日々digり続けています。先週は、高円寺のCD屋『黒猫』に行ってきました。

いつもと同じ「知らないもの」に溢れて

僕の家から高円寺駅まで約20分、そこから歩いて約2分。

やけに眩しく肌寒い5月の終わりです。当たり前の光景に懐かしさを感じるほど久しぶりに外に出た僕は、この後待ち受ける過剰な情報量に期待をしながら、足早に店へと向かいました。

「黒猫」は、5月まで「円盤」という名前のCD屋でした。そのお店が5月より、店主の田口さんが長野県伊那市で営んでいるお蕎麦屋さんの屋号と統一させて、この「黒猫」という名前になりました。「円盤」は、レーベル名として残るそうです。

僕にとってこのお店は、とにかく「知らないもの」に溢れています。僕が吸収できる情報量をはるかに超えた作品の蓄積数とリリースの量。そこにずっとあるような、それでいて今朝届いたような新鮮な作品1つ1つに、それにぴったりの紹介文が書かれていて、読んでいるだけで正直お腹いっぱいになってしまいます。そんな精神状態で、なんとかその日買うものを絞って絞って、でも結局たくさん買っちゃうんですよね。

そんないつものお店が、その日も変わらず開店していました。

ミニリニューアルでイベントスペースがなくなった分、アイテムの数はさらに増えたような気がします。個人的には、店名が「円盤」から「黒猫」へと有機的な名前になって、少しは親しみやすくなったかな。いや、でも近づきすぎると逆にひっかかれそうな名前です。

閉じられない雑誌『ミツザワ通信』

本記事では、「ミツザワ通信 増刊号 2020年4月」を紹介します。

ミツザワ通信は、「封筒型雑誌」です。どういうことかと言うと、本のように閉じられてはいない雑誌なんです。1ページ1ページ、そして、1作品ずつバラバラに封筒の中に入っています。

本号では、総勢50人もの作家/アーティストが、漫画を書いたり、コラムを書いたり、かと思えば閉じられた小説から落語CD、『黒猫』特製コンピレーションが収録されたりと、溢れんばかりに豪華な“一冊”です。

内容はもちろん、紙のサイズや材質といった形式が全く統一されていない自由さは痛快の一言。

制作期間1ヶ月という驚異のスピードで制作、まとめあげられた本号は、コロナ禍で社会が戸惑い変化していく中、アーティストは今何を感じ考えているのか、まさに現在そのものが反映された作品群。アーティストも家にいて溜まってる分の反動かな、とっても密に詰まっています。

焦燥感と呑気をぐちゃぐちゃにして両立させているといった印象。キテレツなセンスにクスッとさせられて、全部を理解できる訳ではないけれど、でもどこか心を刺してくる。

それぞれが自由にこの曖昧な感情を表現できるのは、「やっぱりフィジカルだからだよな」と思わせる説得力がそこにはあります。

特に、コンピレーションCDのクオリティの高いこと。「円盤」と4月の頭に偶然コンタクトを取った人に参加してもらったとのことで、そんな運命が詰まった作品をリアルタイムで聴いておく必然性はかなり高いのではないでしょうか。

もし「今、何を聴けば良いのか」と問われたら、これがその答えとなる1枚かもしれない。このコンピ、今が旬です。

通販は下のLINKから。もしくは時間に余裕のあるうちに、店舗の方に出向いてみてはいかがでしょうか? もちろん、体調管理などはしっかりとなさってくださいね。

『黒猫』公式HP:https://kuroneko2020.blogspot.com/

※「【連載】digる男。」は毎週月曜日更新予定です。

ヨコザワカイト(よこざわ・かいと)
1997年生まれ、千葉県出身。大学では社会学を専攻している。StoryWriterで連載を担当しながら就職活動中、そして迷走中。最近は、密かにLolicoreを制作している。

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