「ブート盤」それはいけない響き。
ブート盤は、法律上の権利を無視して諸権利を有しない者により権利者に無断で発売または流通される非合法商品である。海賊盤、ブートレグ、ブートレッグ、ブート盤とも呼ばれる。(wikiより)
ちなみに語源は、禁酒時代に密造酒をブーツの中に隠したことから生まれたそうな。
レコード屋やフリマアプリでたまに見かけてはいたのですが、これまで手をつけないようにしていました。というのも、非合法商品ということに怖気付いていたというか。公式に申し訳ないというか。こそこそ音楽を聴くのも何だかなあと。
でも、先日どうしても買いたくなってしまったブート盤を見つけてしまったんです。それがこちら。
MY BLOODY VALENTINE『THE WAR IS OVER』
2018年8月15日、豊洲PITで開催された来日公演のライヴレコーディングブートです。「オーディエンス・ソースを核に複数のIEMソースで輪郭を整えた迫力&臨場感満天の逸品」とのことですが、ブート盤が初めての方には馴染みのない単語ばかりですよね。
オーディエンス・ソースとは、一般的に想像されるような観客席からマイクで録音した音源のことです。IEMソースというのはステージ上のミュージシャンが聴いているインイヤーモニターの音をレシーバーで傍受した音源になります。もちろん、完全にアウトな1枚です。
本公演は、マイブラの5年ぶりの来日公演ということで当時かなり話題になりまして、ライヴレポもいろんなサイトで書かれていましたね。
実は、僕もその翌々日に開催された〈SONICMANIA〉に行きましてマイブラのライヴを生で見てきました。何も考えられなくなるほどの轟音でした。人生で最も大きな音が体中を突き抜けて唖然としたまま会場を後にしたことを覚えています。トラウマ級の衝撃でした。
そんなあの日の轟音をもう一度聴けるんじゃないか、そんな淡い期待に心を乱され購入してしまいました。
僕にとっては初ブートがこの1枚です。中には音質が酷いものもあるとのことでしたのでドキドキしながら聴いてみると、結構いいじゃん! 確かに通常リリースされるような音源には乗っていない観客の話し声とかも入ってしまっていますが、それもリアルで良いです。音源化されていない新曲も収録されており、あの日の光景が断片的によみがえってきました。
少しずつ音量を上げていきます。
ああ、確かにこんな空間だったなあ。聴覚以外の感覚を全て吹き飛ばすような。
でも、どれだけ音量を上げてもあの轟音は再現できませんでした。そして、あの衝撃も再現されることはありません。轟音に近い何かが罪悪感とともに僕の部屋に充満して終わり、再生を止めました。
※「【連載】digる男。」は毎週月曜日更新予定です。
1997年生まれ、千葉県出身。大学では社会学を専攻している。StoryWriterで連載を担当しながら就職活動中、そして迷走中。最近は、密かに音源も制作している。