BiSHや豆柴の大群らが所属するWACKの中で、キャリアが最も長かったGANG PARADE(以下、ギャンパレ)が2つに分裂して生まれたアイドルグループ「GO TO THE BEDS」と「PARADISES」。キャリア順にメンバーが分けられ、コンセプトのまったく違ったグループとしてスタートを切った。
GO TO THE BEDSは、ギャンパレでキャリアの長い5名――ヤママチミキ、ユメノユア、キャン・GP・マイカ、ココ・パーティン・ココ、ユイ・ガ・ドクソンによって構成されたグループだ。2020年7月22日(水)にはグループ初となるフルアルバム『GO TO THE BEDS』をリリースする。
そんな彼女たちの個別インタビュー連載第4回目は、ユメノユア。ギャンパレの前身グループPOP時代から活動をはじめ、現メンバーの中ではヤママチミキとともにもっともキャリアの長いユメノ。負けず嫌いな気持ちは今も誰よりも強く、グループの精神的支柱としてグループを引っ張っている。コロナ禍に考えたこと、ユメノの作詞曲についてなど、じっくり話を訊いた。
取材&文:西澤裕郎
写真:外林健太
この5人にしかできないことが絶対ある
──コロナ禍でライヴや活動ができない時期が続いていますが、ユアさんはどのようなことを考えながら過ごしていましたか。
ユメノユア(以下、ユア) : ライヴができなくてもどかしいけど、社会の情勢的に仕方がないというか。この状況に対して、すごく憂鬱になるのもよくないなと思って、1日でも早く収まればいいなと思いながら過ごしていました。
──ギャンパレが2つに分裂して、GO TO THE BEDSとPARADISESとして活動することに対しては、どんなことを思ったんでしょう?
ユア : ユユだけ別グループになってしまったけど、GO TO THE BEDSは(カミヤ)サキちゃんがレンタルトレードで抜けていた時のメンバーで構成されていて、そこは安心感があるというか。長くいるメンバーばかりなので、実際活動を始めてみて、言わなくてもお互い分かる部分が大きくて、そういう部分は楽だなって思う時はありますね。
──前回ミキさんに話を訊いた時、GO TO THE BEDSはギャンパレの歴史みたいな部分を引き継いでいるところがあると話してくれました。そのあたり、ユアさんはどう思いますか?
ユア : 自分の中でそう思うところもあるんですけど、果たしてそれでいいのかな? ってところもあって。ギャンパレの熱い部分は、GO TO THE BEDSだからなくしちゃいけないものというより、自分がそう生きてきたものでもあるし、自分の中で大事にしているもので、たまたまそれが上手く集まったと思うんです。だから、音楽性だったりパフォーマンスはギャンパレの良いところは取り入れつつ、新しいものをどんどんやっていかないと新しいお客さんが増えないかなって思うところもありますね。
──ちなみに、メンバー5人でいる時の雰囲気はどんな感じなんでしょう?
ユア : うるさい(笑)。めちゃくちゃうるさいですね。でも、元気でいいんじゃないですかね(笑)。緊急事態宣言が出て、あまり練習できなかったときは、ZOOMで会議をしていたんですよ。基本40分1枠の無料プランを使っていたので、ここ3、4日で何が起こったかを話すだけで40分が終わっちゃって(笑)。
──近況報告で40分かかると(笑)。
ユア : 1番長い時は、18時から23時ぐらいまでやっていました。その時は5、6枠ぐらいやっていて、長いなみんなって(笑)。
──あははは。ユアさん自身は自分のことを話すんですか?
ユア : 乗れる話があれば、乗っかるけどぐらいですね(笑)。
──どんなことを話したか、印象に残っていることはある?
ユア : ギャンパレの熱かった部分はちゃんと大事にしようねということと、パフォーマンスとかの部分関しては、そこに引っ張られすぎることなく、この5人にしかできないことが絶対あるから、それを追求していけたらいいねみたいなことをみんなで話しましたね。
コロナ禍でSNSの様子も変だなって思うことが以前より増えた
──グループにとってデビューアルバムとなる『GO TO THE BEDS』のデモ音源を最初に聴いたときは、どんなふうに感じましたか。
ユア : めっちゃかっこいい! って思いました。もともと、私はロックが好きで。ギャンパレの曲もすごく好きだったんですけど、より自分の趣味に近いというか、いつも聴いている音楽に近いなと思って。今までだったら振り入れする前後とかライヴ前には自分の音楽を聴いてたりとかしたけど、日常生活で聴くってことがなかったんです。でも完成して音源をいただいてから、好きすぎて普段からもめっちゃ聴いています。前までは照れもあったり、いろいろな音楽を吸収したいって気持ちも強くて、あまり自分たちの音源を聴かないようにしていたというか。その気持ちは今もあるんですけど、何回も聴いちゃうくらい気に入っています。
──今回ユアさんの作詞している曲は2曲あります。作詞をするにあたって、何かしらテーマのようなものはありましたか?
ユア : 今回は家にいる時期に歌詞を書かなきゃいけなかったんですけど、刺激がなさすぎて……。いつもは外を歩いていて思っていることをテーマに入れてそこから歌詞を書いたりしていたんですけど、今回は外を歩けないから、人間観察もできず、全然歌詞が書けなくて。歌詞の提出もわりと最後の方で、残り書けるのが3、4曲しかなく、やばいやばいと思って内心めちゃくちゃ焦っていました(笑)。作詞が1枚もアルバムにないのは悔しいなと思いつつ、書きたいけど書けないし、どうしようどうしようって。
──もともと外を歩いたり、人を観察したり、外からの刺激を受けて作詞するってことが多かったんですね。
ユア : 些細な人間の行動に対して思ったことだったり、映画を観て浮かんだら書くということが多かったんです。昔は自分の内情を書くこともあって。それこそ「WE ARE the IDOL」とか「Happy Lucky Kirakira Lucky」は内側から出ているものを軸に書いていたんですけど、似通っちゃうから、逆に周りのものから上手く自分の考えを落とし込むという方法に今シフトしていて。なので、周りが大事かもしれない。友だちと普通に話していてこういうことあったんだって想像したりすることが普段から結構好きだから。何もなさすぎると、余計にどうしようどうしようってなっちゃう。
──コロナ禍の期間は、アニメとかも結構観ていたみたいですね。他の作品から影響を受けて、作詞に繋がることもありますか?
ユア : 過去にそういう歌詞もありました。それこそ「sugar」は『君の名は』を観て書いたんです。寝ると人格が入れ変わる。それを書きました。
──今回の「パッパラパー」はどういう着想から書いた曲なんでしょう?
ユア : 「パッパラパー」は、仮歌をもらった時、80年〜90年代のロックンロール感を感じて。革ジャンを着て、タバコを吸って、みたいなイメージがパッと出てきたから、そういう感じの歌詞が書けたらいいなと思って、言葉を紡いでいった感じですね。
──タイトルがいいですよね。「パッパラパー」。
ユア : サビをめっちゃ迷ったんです。もうちょっと文章的な歌詞だったんですけど、マネージャーの辻山さんから「1つの言葉で繰り返しとかの方がいいんじゃない?」ってアドバイスをいただいて。メールで何回か議論をして最後に思い浮かびました。所謂サビみたいな歌詞を4パターンぐらい作ったんですよ。文章的な意味でハマりがいいのもあるかなと思って。でも、ちょっと違うねってなって、ひねり出したのが「パッパラパー」でした(笑)。
──これがサビに来ることで、だいぶ抜けが良くなった感じがしますよね。
ユア : ライヴで聴いた時に1番頭に残るんじゃないかなって。あの歌なんだったんだろうな? ってきっと思うんじゃないかと思います。逆にAメロ、Bメロで伝えたいことは伝えきれているから、サビでみんなバカになって踊ろうぜぐらいなテンションで良かったなと思いますね。
──もう1曲の作詞が「GROOVE」です。これはどういう着想から書いた歌詞でしょう。
ユア : これは日頃思っていること、それこそコロナ禍でSNSの様子が変だなって思うことが以前より増えて。ギャンパレの「ALONE」もSNSのことを書いていたりするんですけど、より世の中が変な方向にいっている気がして。だから、それを書こうと思って書きました。ラップ調の曲だったので、言葉を連ねていって、Bメロで言いたいことを言って、みたいな構成になっています。
──そういう意味で、サキさんの脱退の後2週間、SNSをやってない時期がありましたよね。その期間は、どんなことを感じましたか。
ユア : SNSに対する意識が変わりました。今までは、やらなきゃいけない、これも仕事みたいな感じのところもあって。それは変わってないんですけど、一旦SNSの距離を置くことによって、今までSNSから感じていたストレスじゃないですけど、反応を気にしすぎていた部分があったなってことに気がついた。自分の周りの人とか、いろいろな人の投稿を見て、これはあまりかっこよく見えないなとか、逆にこういうのおもしろいなとか、客観的にSNSに対して見られるようになったり、すごくいい機会をいただいたなと思っています。実際、誹謗中傷の問題が起こっていたりするし、あらためてSNSの使い方についてはみんな考えなきゃいけないんじゃないかなと思いますね。
どこのグループにも負けたくない
──コロナによって世の中が変わってしまったのとほぼ同時に、GO TO THE BEDSもスタートしました。どんな気持ちで活動に臨んでいるんでしょう。
ユア : 大きな活動という点では、まだ何もできていなくて。でも、もし普通にギャンパレのラストライヴができていて、GO TO THE BEDSが始動していたと考えると、それとは確実に想いは変わっているなと思っていて。1回1回のライヴの尊さをあらためて感じているので、実際ステージに立った時には、よりその大切さを感じるんじゃないかなと思っています。
──ユアさんが活動をはじめたときと比べて、WACK内でもグループ数がすごく増えました。他のグループのことは気になりますか?
ユア : 気にしますよ、めっちゃ(笑)。ヤキモチを焼いちゃう瞬間が絶対あるだろうし、それをたぶん自分の中で上手く処理できないから、逆にあまり関わらないようにしているんです。たぶん誰よりも気にしているんじゃないかなって思うぐらい、いろいろなチームを気にしていますね。逆に、今なんでそのグループがおもしろいんだろうとか、そういうところも考えることが多いですね。
──そういう意味では、PARADISESに関してはどう思っている?
ユア : 負けたくない。そもそも私は負けず嫌いだし、1番近いところにいた子たちだから負けたくないんですよ。それが強すぎたときがあったので、1回関心を持ちすぎるのをやめようと思って。WACKの中の1つのグループだし、もっと広い目でたくさんいるアーティストの中の1つだからっていうふうに考えるようになったら、少し楽になりました(笑)。
──めちゃめちゃ気になっていたんですね。
ユア : 近いがゆえに気になりすぎて。ギスギスしたら良くないっていうのも自分では分かっていたので、広い目で見るようになりました。WACKの子たちに対してもそうで、昔はそれこそBiSHに負けないとかあったけど、まんべんなくライバル意識を平等に持つじゃないですけど、音楽業界の中でもいろいろなところに対して視野を広げるようになりました。
──ユアさんの負けず嫌いの気持ちは、今も衰えないんですね。
ユア : 表にはあまり出さなくなりましたけど、衰えないですね。それこそ、2期BiSとギャンパレで一緒にツアー回ったり、ライバル的な存在が分かりやすかったじゃないですか。でも音楽業界はもっと広いし、WACK全員がめちゃくちゃ売れたら1番実りがあると思うから。WACKを知っている人が増えたからこそ、どこのグループにも負けたくないなっていうのはありますし、もっと広く視野を持ちたいと思っています。
──コロナ禍で見通しがつきづらい部分もありますが、音楽が好きなユアさんだからこそ、現状について思うことはいろいろあるのかなと思います。
ユア : 1個あるのは普通にライヴができる環境に世の中がなったらいいなって想いはすごく強くて。今まで通りライヴハウスでライヴができる日が1日でも早く来る世の中が来たらいいなって。ライヴハウスで育ってきたからこそ、すごい強く思う。あと、音楽業界で誰も諦める人が出ないといいなって。この状況が理由で諦める人が誰も出ないといいし、そういう世の中であってほしいなと思います。
──今回のアルバムは、メンバー全員の歌詞や、渡辺(淳之介)さんと松隈(ケンタ)さんとの歌詞もあったり、全員の想いが込められていると思います。全体を通して、どんなアルバムだと思いますか?
ユア : 今の世の中の人に響くんじゃないかなと思います。みんな何かを失っている気がして。考えが狭くなっているというか。そんな状況でも聴いてくれる人に寄り添ってくれるアルバムなんじゃないかなと思います。楽曲はゴリゴリだけど、歌詞を見るとすごく考えさせられるというか。みんなに寄り添ってくれるアルバムだと私は思います。だからこそ自分も聴いているのかなって。
──8月1日には“WACK FUCKiN’ REVENGE PARTY”が開催される予定です。久しぶりのライヴとなりますが、どんな気持ちで迎えたいですか。
ユア : いま自分たちのステージに向けて全力を込めて考えて練習しています。踊るところは踊るところであるし、お客さんも一緒にできるような振りも入っている。観ていて飽きないんじゃないかなと思います。そういう振りを作っているので、早くライヴしたいです! お客さんに早く会いたいですね。
GO TO THE BEDS PROFILE
ヤママチミキ、ユメノユア、キャン・GP・マイカ、ココ・パーティン・ココ、ユイ・ガ・ドクソンの5人からなるアイドルグループ。読み方は“ゴートゥーザベッツ”。
2020年3月、所属する音楽事務所WACKが主催するオーディション合宿「WACK合同オーディション2020」最終日に事務所代表の渡辺淳之介より「ギャンパレ」を2つに分ける形で結成がアナウンスされた。
2020年4月1日に同日結成した「PARADISES」とのスプリットアルバム『G/P』をリリース。
同年7月22日に初のフルアルバム『GO TO THE BEDS』をリリース!!