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【連載】ヨコザワカイト「digる男。」Vol.45「小池グリーンは誠実な音がするのか」

StoryWriter

お世話になっております。digる男・ヨコザワカイトです。

「レコード屋に行っても、何から買えばいいのか分からない」

最近、友人にそう相談されました。僕も、digり始めた時は何を基準に買っていいか分からなかったものです。

ネットを見ても、「たくさん買うしかない」という意見がほとんどです。僕も正直そう思います。たくさん買うことで自分の好みの幅は広がり、知識は深まっていきます。

とは言っても、そのレコード屋に初めて入った時、その品数の多さに呆然とし、なんとなく店内をうろうろして、いづらくなって出ていく。そんな奴の気持ちが僕には分かります。

今回は、そんな悩める初心者diggerに向けて、どんなジャンルのレコ屋に入っても迷わずdigることができる奥義を伝授したいと思います。

それが、「色でdigれ!」。

そうです。digるジャケットの色を事前に決めてお店に入りましょう。

「小池グリーン」の音を求めて

実践してみました。

選んだ色は、なんとなく都知事選でよく目にした「小池グリーン」。果たして、この色で信頼できる1枚を見つけることはできるでしょうか。場所は、前回の記事(Vol.44「RECOfanの新店舗と歳を取っていきたい」)で紹介したRECOfan秋葉原店さんの100円コーナーです。

今回は、事前にイメージカラーピッカーというwebサービスを使用して色コードを検索しました。そうすると、小池グリーンは「#28944c」という色だということが判明。できるだけこの色に近いジャケットを探していきます!

小池百合子公式HPを開きながらいざ店内へ。

さすが、レコファン。100円コーナーの品数は半端なく、その情報量の多さに圧倒されてしまいます。

しかし、こっちは色を決めています。文字情報なんて一切読まなくて良いのでdigのスピードはかなり早いです。最初こそその謎のdigり方に戸惑ったものの、慣れてくるとプロのような手捌きで盤をチェックしている自分がいました。「いい色なら」とりあえず購入候補へ。

他のdiggerたちも一目置いて僕の速さをチラチラ見ています。しかし、積み重なっているのは緑色のジャケットだけ。怪訝な顔をしてされたような気もします。

このように色を確認しながらのdig

ある程度数が溜まってくると、色の違いが見分けられるようになってきます。今回の場合、小池グリーンはかなり濃い緑なので、淡い緑の作品は極力避けました。文字だけ緑色でも面白くないので、ジャケット全体が緑色の作品を選ぶことにしました。

そんなこんなでdigり続けること約1時間。取捨選択を繰り返し19枚をdigり終えました。

それがこちら。

 

=作品リスト=
Underworld『Live Everything Everything(CD)』テクノ
Laurent Garnier『Crispy Bacon(CD)』テクノ
Overdog『Fuck U Up(LP)』ハードトランス
Player One『Insomnia(LP)』ハードトランス
DJ Hype/We must unite『Still Smokin(CD)』ジャングル
Cut And Paste『Come Unstuck(CD)』ビッグ・ビート
The Wiseguys『Casino “Sans Pareil” / A Better World(LP)』ヒップホップ系エレクトロニカ
DJ BOOM & DJ TDAWG『THE SECOND ADVENTURE OF BOOMSKI & CLUTCH(LP)』バトルブレイクス
Hajime Yoshizawa『Secret Flight(LP)』クラブジャズ
Yeasayer『Odd Blood(CD)』ロック
Dinosaur Jr『Get Me(CD)』オルタナ
『GET YER LA-LA’S OUT!~THE MINTY FRESH SINGLES ANTHOLOGY 1~(CD)』ポップス
Sway『The Millia Pink And Green EP(CD)』シューゲイザー
Belle & Sebastian『The Boy With the Arab Strap』ギター・ポップ
SUPERCAR『Strobolights(CD)』エレクトロニック・ロック
Watermelon Club ‎『Stri:m(CD)』ポストロック
Weezer『Green Album(CD)』パワーポップ
Mitch Miller『The Best Of Mitch Miller(LP)』クラシック
『広沢虎造全集第一集』浪曲

いかがでしょうか。全て100円です。なんならセールで50円でした。

レコ棚は一気に緑色に染まりました。部屋の雰囲気が心なしかサイケになったのは気のせいでしょうか。

適当に選んだのですが、クラブ系が10枚、ロックが7枚、その他2枚とジャンルはかなり良い感じにばらけていますね。と言っても“草”を想起させる音楽が多く集まったような気はしますが。この中だとSUPERCAR『Strobolights』。19枚全体の平均を取っているような気がします。特に良い1枚でした。

Sway『The Millia Pink And Green EP』は、ネオ・シューゲイザーの隠れ名盤として評価が高く、普通100円では買えないような1枚です。

DJ BOOM & DJ TDAWG『THE SECOND ADVENTURE OF BOOMSKI & CLUTCH(LP)』も掘り当てましたが、100円コーナーからバトルブレイクス(DJスクラッチ用レコード)が出てくるのは始めてだったのでかなり驚きましたね。良いジャケットです。

また、この企画を思いついた時に、緑色の盤といえばということで最初に思いついたのがUnderworld『Live Everything Everything』だったので、こちらも見つけられてとても嬉しかったです。なかなか100円で買うことのできない1枚だと思います。

ちなみに、19枚中17枚が背帯びも緑色でした。緑色のアルバムはとことん緑なことが多く、緑色好きのアーティストがこだわってこの色にしているような気概を感じます。細部に至るまで誠実に作られた作品ばかり。結果良作が多く、個人的には緑色への信頼度がかなり上がりました。

digは本当にしやすかったですね。何からレコ棚を見ていけばわからないという人は、まずはご自身のラッキーカラーを決めてdigをし始めることをオススメします!

RECOfan 秋葉原SEEKBASE店 買取センター 公式HP:http://www.recofan.co.jp/map/SEEKBASE.html

※「【連載】digる男。」は毎週月曜日更新予定です。

ヨコザワカイト(よこざわ・かいと)
1997年生まれ、千葉県出身。大学では社会学を専攻している。StoryWriterで連載を担当しながら就職活動中、そして迷走中。最近は、密かに音源も制作している。

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