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天津飯放浪記第25回 代一元「上北沢で見つけた何もかもが輝いて手を振っているように見えた天津飯」

StoryWriter

おいっす。

東北出身の暑さ耐性0マン、火鍋栄光です。

汗をだらだら垂れ流す汚らわしい乗客として電車に乗っていたある日のこと。ふと諸用で上北沢駅のホームを降りてみた瞬間、

ほう? 上北沢駅で、一番最初に巡り会える中華料理屋さんが間違いなくここ。どことなく目を引くそのお店の姿に思わず、用事とは逆方向の南口の方に脚が向く。この佇まいなら、”アイツ”があるに違いない。あゝ恋しい。〈街はイルミネーション 君はイリュージョン 天使のような微笑み 君を想い出せば 胸が苦しくて 消えてなくなりそうだ〉……。

地図も見ずに太陽と伸びる影の方向だけを頼りにやって参った。「味自慢 代一元」。

うーん、この食品サンプルがたまらん。良い味出してるんだよね。電車のドアが開いた瞬間から、銀杏BOYZ改めGOING STEADYの名曲「BABY BABY」。1曲分の尺でたどり着けるお店。味自慢なんて堂々と書けるお店、只者じゃない。早速入ってみようぜ。

このメニューの豊富さ。三枚目の写真は、なんと階段の裏側にまでメニューが貼られている図。あー、好きじゃあ。縁もゆかりもない広島弁を出したところで早速、愛想のいいおばあちゃんウェイトレスさんに天津飯900円を注文。ワクワクしちゃうぞ。

注文を済ますと、お客さんとお店のおばちゃんでNHKニュースを見ながらの世間話。今日は神戸が猛暑日だとかどうとか。しかし8月に入って突然の猛暑日の連続。暑すぎん? 汗拭きシートで汗拭きながら、とりあえずお冷を流し込む。毎年夏になると、高校の横の土手沿いで初めての彼女を後ろに乗せて汗だらだらで自転車漕いでたのを思い出しますなあ。あの夏のBGMもやはり「BABY BABY」。夢のよう夏。あの子は元気かな。〈夢の中で僕ら 手を繋いで飛んでた〉……。とにかくオレは気づいたら夏だった‼︎ ふわふわ……。

\オマタセシマシター/

突如現実に引き戻す黄金の天津飯!

うーん、見た目はシンプル。天津飯のうまさは見た目とは何の関連性もない。同じような外見でも全く異なる味を出してくるのが面白い。今日はどんな君に出会えるだろう、実食!

うふん。

ノンフィルターでこの黄金! こんな玉子のお寿司があったら食べたい!

この綺麗な外見はまるでシュークリーム! 君はシュプリーム! 月面のブランコは揺れる〜♪

さて、一口を口に運んでみると卵が香ばしい! 油少なめで卵を炒めると焦げ目がつくらしいけど、そういう香ばしさ出しも計算されてのことなのか! 口の中が香りいっぱいで嬉しい! そして、ちょっと塩味が強めの醤油ベースのあん。ちょっと胡椒も効いててスパイシーだけど、夏はそれが一層嬉しいし白米もすすむ。具材はネギと蟹肉というシンプルな組み合わせではあるけど、それはそれでシンプルな味のみで勝負する感じが素敵! 素朴で優しいご主人夫婦の人柄でもあるかもしれない。蟹肉もしっかり味がしているし、ちょっと単調な味付けも酢やラー油で味変するたびに、天津飯本来の違う旨さが際立つ! 絶品! 美味すぎて、周りの何もかも輝いて手を振っているように見える!

ンー! ダイエット中だけど天津飯だけは抜かせられませんな。バクバク食べてしまいました。これからも週に一回の天津飯チートデイを忘れずに。

〈You don’t know how many times I missed out could hold you〉……(以下略

ちなみに後ろの席に座った女性も天津飯を注文していました。自分以外に天津飯を頼む人を初めて見たのでちょっとドキドキしました。素敵です。

今日の天津飯豆知識:
素朴な店主夫婦の人柄の良さが味に出がち。


⭐︎今日のお店⭐︎
「代一元」
住所:〒156-0057 東京都世田谷区上北沢3丁目35−9
時間:11時00分〜20時00分
定休日:金曜日
電話:03-3329-0228
火鍋栄光(ひなべ・えいこう)
大学時代には中国に留学、何度も旅行で現地に赴いては中国各地の料理に舌鼓を打ってきた若武者。現在はネオン輝く大都会トーキョーで、本場の味が楽しめる中華料理屋を彷徨う神出鬼没のゾンビ。普通の中国人はチンプンカンプンの日本発祥中華料理の代表格「天津飯」に人生を狂わされかけている。記事中の写真は©︎Photo by Kopei。

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