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グロテスクで神秘的なグラフィックデザイナー・クワハラヨシユキとは何者?

StoryWriter

グロテスクさと宇宙的な壮大さ、人間の神秘など、一度見たら忘れられない独特な作品を創造しているアートディレクター / グラフィックデザイナー、クワハラヨシユキ。BiS、Especia、PellyColo、水曜日のカンパネラといったアーティストのアートワークなども手掛け、現在は、Kenmochi Hidefumiやxiangyuが所属する〈孔雀倶楽部〉に所属しながらVJとしても活動している。

筆者もクワハラとの付き合いがあり、UKとエリザベス宮地と共に制作した18禁楽譜『GRAYZONE』の表紙、日本で唯一のトラッシュ・カルチャーマガジン『TRASH-UP!!』特別号の表紙のアートワークを創作してもらっている。こちらの想像を遥かに超えてくるデザインに驚かされ、感動し、強い信頼を抱いている。

そんなクハワラ初のソロ・エキシビション〈HUMAN POP〉が東京・渋谷 WOMBの期間限定バー・スペースbarWにて、8月10日(月)から31日(月)にかけて開催されている。「人体」をテーマに、サイケデリックな体内のグラフィック・アートを展示。クワハラの世界を堪能できる空間となっている。8月25日には同会場で『GRAYZONE』とのコラボも1日限りで開催。謎のベールに包まれたクワハラヨシユキの一端に触れるインタビューをお届けする。

取材&文:西澤裕郎


武道館のビジュアルは個人的な制作物として大きなポイントでした

──クワハラさんのキャリアは、どのようにスタートしているんですか?

クワハラヨシユキ(以下、クワハラ) : 僕はもともと美大やデザインの専門学校を出ているわけではなくて。高校を卒業してすぐにデザイン会社に入ったんです。それまで趣味で絵を描いたりしていたんですけど、就職した方が技術的な習得も早いかなと思いまして。以前は広告関係の割と堅めな仕事をメインに、企業ロゴとかデザインしていました。30歳くらいのタイミングで今のつばさプラスから話を頂いて、アーティストのアートワークやデザインを制作するようになったんです。

──最初に制作したアーティストの作品は何になるんでしょう?

クワハラ : はじめの頃は、水曜日のカンパネラのグッズとかからですかね。Especiaもジャケ周りは入ってからずっと担当させて頂いてました。

──僕が最初にクワハラさんの作品として認識したのが、水曜日のカンパネラの武道館公演のビジュアルで。クワハラさん的に、あのデザインは手応えがあった作品なんじゃないですか?

 

クワハラ : そうですね。長い間すごく色々手伝わせてもらって来て、武道館のビジュアルは個人的な制作物として大きなポイントでした。ビジュアルを考える段階でも普段から動いてる案件がカンパネラでは色々あったので、コムさん(※コムアイ)やチームの皆さんともスムーズに組み立てていくことが出来たし、DVDのパッケージ、グッズ、販促物などトータルで制作を行うことができてすごく内容の濃い案件でした。コムさんを撮影する時間が全然なかったので、〈COUNTDOWN JAPAN〉の控室に行って楽屋を白ホリにしてバタバタしながらの撮影はとてもいい思い出です。

──2期BiSのジャケットもデザインされていました。クワハラさんの世界に満ちていたというか、ご自身の作風も確立されてきたんじゃないかと思います。

クワハラ : それまで僕は相手によってデザインをガラッと変えていくようなところがあって。悪く言うと僕自身の個性とかあまり出してこなかったんです。アーティストの世界観にしっかり置きにいくというか。もちろん悪いことではないんですけど。2期のBiSをジャケからグッズ周りまで全て担当させて頂いていたぐらいから「お任せします」って言ってくれる人がちょっとずつ増えてきて。2期BiSに関してはWACKの渡辺(淳之介)さんと最初いろいろ話しながらデザインを組ませてもらっていたんですけど、後半はテーマを元に好きに制作させていただき、個人的にとても意味のある仕事だったなと思っています。

内蔵の部位とかもフォルムで見みてしまう

──クワハラさんの作品は、グロテスクだったり、宇宙的だったり、かなり独特な作風だと思うんですけど、影響を受けた作品とか、デザイナーなどがいれば教えてほしいです。

クワハラ : 日本のグラフィックの中でも沢山尊敬する人はいるんですけど、個人的には海外のグラフィックが昔から好きで、結構コアな部分になるんですけど科学雑誌の『OMNI』とか、サイエンス誌で繰り広げられてるSci-fiアートやグラフィックがすごく好きです。あとは、シュルレアリズムを思想としたアート作品などはとても影響を受けています。この人が好きっていうのはあまりなくて、わりとジャンル的な部分や時代を感じる作品などに刺激されることが多いかもしれません。

──生物学的なものも好きそうですよね。

クワハラ : 好きですね。そこまで詳しいわけではないんですけど、内蔵の部位とか細部まで圧倒的なビジュアル感だと思います。わぁここすごいフォルムしてるなぁ〜とか、顕微鏡で覗いた世界とかはすごく神秘的だなっと。なので図鑑とかそういうものも大好きです。

──見る人によってはグロいみたいなものに惹かれたりもする?

クワハラ : もともと家がホラー映画が好きな家族なんですよね。小さい頃は好きでもないのに映画を観せられて怖い夢ばかり見ていました。でもその影響もあって、どんなホラー映画やグロテスクな作品を観ても冷静に観れるというか、細部まで気になってしまい、特殊メイク的な所とか表現の部分に目がいってしまいます。表現的な部分では参考になることが多いので引き出しにストックしています。

──『GRAYZONE』の表紙をお願いしたときも、いろいろな臓器をコラージュしたデザインをしてくれましたもんね。

クワハラ : あれも最初、西澤さんから「好きなようにやってください」とお話をいただいて。GRAYZONEチームの皆さんも凄く受け入れてくれて嬉しかったですね。制作する上でブームみたいなのが常にあるんですけど、あの作品はコラージュブーム期のデザインなんです。割と飽き性な部分があるのでコロコロ手法を変えていくことが多いかもしれません。

──その後、『TRASH-UP!!』増刊のデザインをしてもらった際は、メタリック調の人間とか宇宙人みたいな作風でしたよね。

クワハラ : 『TRASH-UP!!』が、ちょうど作風の混在期だったかもしれません。GRAYZONEで制作させてもらったケルベロスみたいに顔が6つあるデザインもそうですが、今回アー写で使っているコラージュデザインから変わる時期のデザインが『TRASH-UP!!』だったんです。作風でどんなブームなのかなんとなくスグわかると思います(笑)。

体内でも宇宙ぐらい神秘的なことが起きている

──今回の展覧会では、どういったものを表現しようと思ったんでしょう?

クワハラ : せっかく展示会をやらせてもらえるんだったら、好きなものにピントを当てて、そこから出るものを作ろうと思ったんです。自分の根底には、ホラー的な要素とかグロテスクなものがあるので、今回テーマに沿って全部1ヶ月くらいの制作期間で作りました。

──「HUMAN POP」という言葉はどこから出てきたんですか?

クワハラ : 一応コンセプトでも掲げているんですけど、普段、自分たちの体内ってあまり意識しないじゃないですか? 大まかな形や機能の認識はしているけど、特にそこまで興味ないよなっと。でも部位ごとに、すごく巧妙に設計されていて、しっかり見ていくととても美しく感じる部分も沢山あるし、神秘的だと思うんですね。実は体内ですごいことが起きているっていうのを自分のフィルターを通して表現してみたかったんです。臓器の部位も全部個性だと考えると、体の中ってすごくおもしろい。それをポップな表現で形にしてみたかったんです。

──全部PC上でデザインしているんですか?

クワハラ : そうです、全部デジタルです。体内の図鑑とか資料を買いまくって、フォルムをスキャニングしたりして、自分でデジタルで色をどんどん上書きしていく手法ですね。なのですべて原型を留めていないですね。色なんか特に。

──全体的に、赤い色使いが印象的でした。サーモグラフィーで赤って熱があるじゃないですか。そういう意味でも、温度感を感じる作品だと思いました。

クワハラ : 全体的に赤を主軸で色の構成は決めていて。パッと見た時、体内の臓器なんで冷たく感じる色合いで組んでいくとグロテスクな方向に偏ってしまうので、そこはなるべく使わないようにして、体内の温度感を感じられる色とPOP感を一緒に表現できればと思ってました。

──8月25日には「GRAYZONE」の日が設定されています。

クワハラ : 今回の展示とGRAYZONEで会場限定のアイテム販売なんかも考えています。そのあたりは、GRAYZONEのSNSを是非チェックしてみてもらえたらと思います。

──本展示会での注目ポイントをあげるとしたら?

クワハラ : 好みはあると思うんですけど、普段あまり目にすることがないようなものが並んでいると思うので、面白がって見て欲しいな思っています。見方次第でいろいろなおもしろさが詰まっているので。そういう部分をちょっとでも共有できたら個人的にはすごく嬉しいです。


■展示情報

YOSHIYUKI KUWAHARA SOLO EXHIBITION
HUMAN POP
期間:2020年8月10日〜31日
会場:bar W(住所:〒150-0044 東京都渋谷区円山町2-16 WOMB 4F)
入場料:※日程により変動あり、詳しくは下記URLにて
詳細URL:https://womblive.jp/event/

関連イベント:
HUMAN POP / GRAYZONE
2020年8月25日(火)OPEN: 19:00
ENTRANCE(music charge) 1,000円(1D付)
LINEUP : GRAYZONE and more

・クワハラヨシユキ(孔雀倶楽部):https://www.instagram.com/yoshiyuki_kuwahara/

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