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【連載】CHOOSE YOUR DISTANCE Vol.5──コロナ禍に〈りんご音楽祭〉主催者が全国各地で行った34本のライヴオーディション

StoryWriter

長野県松本市のアルプス公園で2009年から毎年開催されている野外ミュージック・フェスティバル〈りんご音楽祭〉。 新型コロナウィルス感染拡大により様々な音楽フェスが中止・延期になる中、〈りんご音楽祭2020〉が2020年9月26日(土)、27日(日)に開催される。

今年は身近な仲間とともに作り上げる長野県松本市の“祭”という根源的な観点に立ち返り、チケットは長野県内のチケット取り扱い店舗のみ、通常キャパシティーの5分の1にあたる1日1000人限定で販売、りんごステージ、そばステージ、そして新設となる山の神ステージの計3ステージで行われる。

StoryWriterでは、同フェスの主催者である、dj sleeperこと古川陽介に3ヶ月にわたり密着する連載「CHOOSE YOUR DISTANCE」を毎週掲載中。連載5回目となる今回は、〈RINGOOO A GO-GO 2020〉の関東二次審査で古川氏が東京を訪れた際の密着レポートをお届けする。


2020年8月17日 東京 〈RINGOOO A GO-GO 2020〉関東二次審査

古川氏への密着取材をはじめて約2ヶ月。

すっかり松本市が身近に、そして愛おしくなってきた筆者は、再び高速バスに乗って松本へ…… と危うく間違えそうになったが、今回の取材は古川氏が東京に訪れたタイミングで行うことになっていた。

東京のライヴハウス東高円寺U.F.O.CLUBで〈RINGOOO A GO-GO 2020〉関東二次審査が2020年8月14日〜17日にかけて、行われていたのだ。

〈RINGOOO A GO-GO〉は、りんご音楽祭を構成する要素の中で外せないライヴオーディション企画だ。全国のライブハウスを会場にりんご音楽祭関係者が足を運び、実際にライヴを見て審査を行う。出演者が普段活動している地域に実際に訪れることにより現地シーンにおけるミュージシャンの姿を直に見ることに重きを置いている。これまで、水曜日のカンパネラを筆頭として、数多くのミュージシャンがここから羽ばたいていった。

過去には参加者がチケットノルマを負担することに対しSNSで賛否両論起こったが、ライヴを重視したオーディションを維持するために、集客リスクのシェアとしてそのシステムを導入している。それは、募集ページに包み隠さず書かれている。「りんご音楽祭をステップにして、優秀な音楽業界の人と繋がって欲しい」という強い想いが込められているのもこのオーディションの特色だ。

RINGOOO A GO-GO

ご存知のとおり、2020年は新型コロナウィルスの影響により、各地でのライヴ開催が難しくなってしまった。普通に考えれば中止、もしくは規模をものすごく縮小するところだが、古川氏は6月下旬からオーディションを開始。65本予定していたものを55本キャンセルし、新たに24本を追加調整、最終的に34本行なった。

コロナ禍にここまでの数のライヴ企画を行なっていた主催者はいないだろう。〈りんご音楽祭〉は現場でのライヴを重視している。この状況下で、その根源的な想いを間違いなく表してみせた。

筆者は8月17日(金)、〈RINGOOO A GO-GO 2020〉の最終日、東高円寺U.F.O.CLUBを訪れた。ソウル、ブルースロック、ロックンロール、出演バンド5組の鳴らす音楽はバラバラだった。しかし、すべてが純で、力強く、開放感に満ちていた。この状況下で音楽を鳴らすことへの強い覚悟を感じ、音楽の持つ快楽と喜びを感じさせられた。

現場で鳴っている音楽からしかわからないことがある。わかったつもりになっていたことを、改めて実感した。自分の心にも強く残った1日となった。

ライヴオーディションがすべて終わり打ち上げ…… と思いきや、ラジオ出演へと古川氏は向かった。その移動中のタクシー内で、一息ついた古川氏にインタビューを行った。

INTERVIEW:古川陽介

──〈RINGOOO A GO-GO 2020〉、例年に比べ開催は大変だったでしょう。

古川 : 〈RINGOOO A GO-GO〉は本来、4月中旬からスタートする予定だったんですよ。まさにコロナの影響が1番大きい時期だったので、出演キャンセルもめちゃめちゃ増えたし、日程変更をお願いしたんだけど出れませんって人もすごく増えた。例年600~700組ぐらいがライヴ出演してくれるんですけど、今年は200組でした。ただ、今、現場にいる人たちは、演者もスタッフもお客さんも気合いが入っている人ばかり。だから数は少なかったけど、クオリティは今までで1番よかった。

それと、7、8年オーディションをやっていますけど、初めて東京が1番よかったというのも感じたことです。例年であれば、地方の方が副業だったり実家暮らしの人が多いから、活動が生活に根付いてて説得力のある表現だと感じるんですよ。それが、今年に限っては、音楽以外のことを考えてる人はなかなか音楽活動ができない状況にあった。地方にはご高齢のご家族のいる方も多いだろうし、実際開催自体できなかったところもいっぱいあって。そういうこともあるんですけど、今年は明らかに東京の出演者のライヴがダントツよかったですね。それだけ東京が街として困難な状況だったことの証かもしれませんね。

──この時期に34本もの企画を行なったというのは、それだけ〈りんご音楽祭〉の中でオーディションが大切なものだということでもありますよね。

古川 : 〈RINGOOO A GO-GO〉に出ているミュージシャンたちは、これをきっかけに音楽業界でのし上がっていきたいという人が多いんですよね。僕の仕事は〈りんご音楽祭〉をきっかけに、音楽業界で活躍してる裏方さんと繋げること。例年だったら出演バンドの動画を作ったりとかして中長期的にPRしていくんですけど、今年は申し訳ないことに予算的に動画の制作はできなさそうだし、お客さんも5分の1だし、オーディションに出たメリットを例年通り返せなさそうなんです。だから、持ち越しで来年の出演を提案しようと思っていて。ただ、実際ライヴを観てたら、来年に持ち越しでって気持ちにはなれないんですよ、正直。どのバンドもすごくよかったから。

「RINGOOO A GO-GO 2019」グランプリを獲得したpaionia

 

──お世辞抜きで、本当によかったです。どのバンドも。

古川 : 感情だけで考えると、みんな出てよって気持ちなんです。こんな状況なのに、みんなノルマもありつつ現場を盛り上げてくれて。それでも出演してくれたエネルギーというのは本当に強いから。だからこそ、バンドの未来のことを考えて、来年ちゃんとバシッと決めた状態で出てもらった方がいいと思うってことを1組1組に伝えようと思っています。

──〈りんご音楽祭2020〉のブッキングは現状、どういう状態でしょう。

古川 : 明日整理して、明後日ぐらいから一気に始めます。本当はこのオーディション中にやりたかったんですけど、ありがたいことにエモーションが強すぎてなかなか決められなくて。決断するってことが本当に難しい時代だと今思っています。出演者とかを発表してから、中止にするというのは、僕は本当にしたくないと思っていて。全てにおいて、ダメな部分が僕にはいっぱいあるけど、誠意を持って対応したいという気持ちは常に持っています。だから、ちゃんと開催できると決めて、出演者も問題なく出演できそうだということが決まった状態で発表したいと思っています。

2020年9月15日 総勢108組の出演アーティスト&タイムテーブル発表

上記取材から約1ヶ月後の9月15日、〈りんご音楽祭2020〉の出演アーティストとタイムテーブルが一斉に発表された。総勢108組が、9月25日の前夜祭から3日に渡って3つのステージでパフォーマンスを行う。

2日間通しチケットは出演者発表前にSOLD OUTの状態。しかも一度に108組の出演者をタイムテーブルとともに発表するというのは、前代未聞ともいえるだろう。実際に発表後、SNSでは大きな盛り上がりを見せた。この発表までの古川氏やスタッフ、出演者たちの想いが一気に華咲いた瞬間はとてもエネルギッシュで、音楽、そして祭の持つパワーを実感させられた。

そして、〈RINGOOO A GO-GO 2020〉のオーディションからは以下の15組が選出された。

〈RINGOOO A GO-GO 2020〉選出15組 ※五十音順
・aruga
・AGE
・EOW
・THE KITCHEN
・sucola
・底なしのバケツのようにざらざら
・W.K.T.K.SYNDROME
・DFI
・なかにしりく
・THE PEOPLE
・periwinkles
・THE HOPKINS
・Mao
・真舟とわ
・LIFE CROWNS

 

上記インタビューで語っているように、古川氏が全組に連絡をし、納得してもらった上で来年の出演に持ち越した。ここから1年に渡り15組をフックアップしていく。2021年3月上旬には、都内のライヴハウスで上記15組が出演したライヴイベントを開催。さらに、サブスクでのプレイリスト展開など、〈りんご音楽祭2021〉出演に向けて、様々な企画をこの15組と予定している。そして2021年、彼らは〈りんご音楽祭2021〉のステージに立つ。

いよいよ10日後に迫った〈りんご音楽祭2020〉。長野県松本市の“祭”という根源的な観点に立ち返り、たくさんのスタッフやアーティスト、お客さん、松本市の人たちの想いが溢れた3日間になることは間違いなさそうだ。

【連載】 Vol.1──コロナ禍の24時間パーティー「瓦祭」潜入レポート
【連載】Vol.2──この時代に音楽フェス開催を選んだ〈りんご音楽祭〉のアティチュード
【連載】Vol.3──どんな規模でも音を鳴らし続けることの重要性、松本3日間密着レポート
【連載】Vol.4──〈りんご音楽祭2020〉 開催1ヶ月前、主催者古川陽介インタビュー


■イベント詳細

〈りんご音楽祭2020〉
2020年9月26日(土)・27日(日)@長野県松本市アルプス公園

・オフィシャルサイト:https://ringofes.info

・古川陽介 Twitter : https://twitter.com/dj_sleeper

【連載】CHOOSE YOUR DISTANCEは毎週火曜日更新予定です。

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