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【連載】ヨコザワカイト「digる男。」Vol.56「モンガ堂で買った『THE SUN DIED』」

StoryWriter

2019年6月にスタートした連載、ヨコザワカイト「digる男。」。大学生のヨコザワカイトが音楽を中心に、レコードやCD、カセットテープなど、様々なアイテムを古今東西digってきた。

先週より、ヨコザワが毎回どこか一店舗に足を運び、そこでdigった渾身の1作品を紹介していく企画がスタート。果たして、どんな店に足を運び、どんな作品との出会いがあるのか。

第2回となる今回は、西荻窪にある古書店・モンガ堂にてdigってきた。

モンガ堂でDigった一枚 / Ellery Eskelin『THE SUN DIED』

Ellery Eskelin『THE SUN DIED』

購入店舗:モンガ堂
購入価格:300円
購入日:2020年10月7日(水)
レーベル:Soul Note
フォーマット:CD
発売日:1996年
ジャンル:Contemporary Jazz

 

ジャンクCDとの突然の出会い。それは曲がり角で食パンを咥えた美少女とぶつかるのに似ている。

もちろんレコファンやハードオフに行けば、未知なジャンク品に確実に出会えるだろう。しかし、街中で突然出会うからこその出会いというものもある。

10月7日(水)、すぐにも雨の降りそうな空であった。夏を引きずった秋から冬を予感させる秋への転換点。肌寒い季節だからこそ、熱を込めてdigっていきたいものである。

ホームセンターで適当な用を済ませた帰り道、ふと目の際を黄色い看板が横切った。「ふくろう?」。

それは、「モンガ堂」の看板であった。

ホームセンターOlympicに行くたびに見かけてはいたのだが、実は入ったことのないお店。古書店らしいのだが、地元民しかたどり着けないような場所にあるので不思議に引っかかってはいた。

天気の変わらないことを祈りながら入店。その時は夜に読む本でも見つかれば良いかなと思っていた。しかし、店主に軽い会釈をしたその瞬間。CDコーナーが視界の隅を横切った。

心拍数が急に上がるのを感じる。「落ち着け、こういうところにはクラシックとかつまんないCDがあるのがオチじゃないか」。そう自分の期待感を上げすぎないように注意しながら、棚に目をやる。

すると、ジャズからトランスのコンピ、はたまたJR公式DVDという謎のラインナップ……。

見つけてしまった… これは運命だったのだ。

隠しきれない高揚感を胸に、探りの手のスピードを上げる。全部で200枚ほどであろうか。2BOXほどしかスペースはないのだが、dig的満足感を得るするには十分であった。

しかも、値段がおかしいくらい安い。1000円を超えるものはほとんどないんじゃないか。およそ100円〜300円。これは、買うしかない。期待を胸にジャケットで数枚を選ぶ。

結局2、3枚のCDと100円古本を手に会計を済ませた。今回は雨が心配だったので、本はしっかりと選ぶことができなかった。山岳関連や旅関連が主であろうか、漫画やzineなども置いてあった。

外に出ると、雨もはまだ降っていなかった。はやる気持ちとともに急いで帰宅。

ジャケット買いしたCDはEllery Eskelin『THE SUN DIED』。フリー・ジャズであった。門外ではあるが素人耳にも興奮できる良盤で、300円で買えたのはかなりお得だったよう。

 

 

イタリアのフリージャズレーベルSoul Noteからのリリース。Ellery Eskelinの肉厚なサックスが満腹感を覚えるような演奏。録音も結構良い。

そして初っ端から存在感の輝く歪んだギターは、Marc Ribot。トム・ウェイツやエルヴィス・コステロ、日本では矢野顕子とも共演している大物ギタリストだそう。アルバム題にもなっている「The Sun Died」ではトレモロを使った哀愁漂うスタイルも堪能することができる。これは、これから名前を覚えてチェックしようと思った。

また、同時購入したDVDは北海道・富良野〜美瑛を走るふらの・びえい雪原ノロッコ号の前面走行風景完全収録(2005)である。どこから出てきたんだか…… 以前LDにて購入した環境映像集を思い出す。

DVDのワンシーン、というかこのアングルが変わることはない。

【連載】ヨコザワカイト「digる男。」Vol.40「環境映像をdigる」

夏晴れの富良野。謎のノスタルジーを感じながら、秋の終わりを感じる雨の到来には気づかぬままであった。

モンガ堂 Twitter:@monga_book

※「【連載】digる男。」は毎週月曜日更新予定です。

ヨコザワカイト(よこざわ・かいと)
1997年生まれ、千葉県出身。大学では社会学を専攻している。StoryWriterで連載を担当しながら就職活動中、そして迷走中。最近は、密かに音源も制作している。

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