2019年6月にスタートした連載、ヨコザワカイト「digる男。」。大学生のヨコザワカイトが音楽を中心に、レコードやCD、カセットテープなど、様々なアイテムを古今東西digってきた。今週は果たして、どんな店に足を運び、どんな作品との出会いがあるのか。
第3回となる今回と次回は、2021年に高円寺での開店を検討しているカレーとシンセサイザーの店『サルタナ』の店主・灰谷文助の自宅のCD棚から数枚をセレクト。果たして、どんな珍盤が飛び出すのだろうか。
カレーとシンセサイザーの店『サルタナ』店主・灰谷文助から借りた寺田創一『KIMIGAYO』
寺田創一『KIMIGAYO』
持ち主:『サルタナ』店主
借りた日:2020年10月19日(月)
レーベル:FAR EAST RECORDINGS
フォーマット:CD
発売日:2000年
ジャンル:House, Techno, Others
2020年10月28日(水)にトルカリ高円寺店にて、カレーとアナログ・シンセサイザーの店「サルタナ」の店主・灰谷文助が、自身の所有するシンセを持ち寄り、カレーを食べながらシンセを試奏できるイベント〈Mixologist’s Nite(Powered by Sartana)〉を開催する。
アナログ・シンセサイザーと聞くと、つまみが多く扱うのが大変なイメージがあるが、本イベントでは初心者でも楽しめるように機材のレクチャー等も受けることができ、初めてシンセサイザーを触るという方も大歓迎のイベント。
まだ定員に余裕があるとのことなので、気になった方は是非お早めに予約をされたし。
また後日ヨコザワのnoteにてイベントレポートをあげる予定なので、イベントに来れない方も是非そちらを読んでしていただきたい。
イベント詳細はこちら:https://note.com/sartaana/n/na28259b65b61
ヨコザワのnoteはこちら:https://note.com/kaito_yokozawa
と言っても、カレーとシンセサイザーの店「サルタナ」はまだオープン“予定”。されなのにもかかわらず、Twitterのフォロワーは3,500人を超えその注目度の高さがうかがえる。音楽好きの方、機材好きの方は早めにチェックしておくべきだろう。
蕎麦屋から灰谷氏の自宅へ
10月19日(月)には取材の事前の打ち合わせということで、我が地元荻窪は蕎麦の名店「本むら庵」にて灰谷氏とお会いしてきた。
話が思いのほか盛り上がり、会食のあと灰谷氏の自宅にお邪魔させていただくことになった。
部屋には、ゆうに20台はあるだろうか。アナログシンセやエフェクター、サンプラーがぎっしりと並ぶ。珍盤が次々に出てくるCD棚は音楽へのひたむきな愛情を感じさせる。
こんなにもたくさん機材があるのに、DJ / アーティストとしては活動されたことはないとのこと。世界中にはこのような秘めた才能が眠っているのだと思う。
その後気になったCDをいくつか紹介していただき、お借りすることができたのでその一部を紹介する。
灰谷氏がいくつか所有している寺田創一の作品の中でも僕にとって衝撃だった『KIMIGAYO』。本アルバムは、君が代をサンプリングした10曲を収録。天皇崩御の緊急放送などキワな音源が満載だ。まさに取り扱い注意である。
こちらは、Q.D.K. Mediaの『electronic toys2』(左)と映画『Barbarella』のサントラ盤(右)。灰谷氏はモンド・ミュージックもかなり集めているとのことで、この2枚はモンドとして紹介された。
「モンド」という用語は、イタリア語で「世界」を意味する単語に由来する。モンド・ミュージックの正確な定義はないが、世界中の“珍”な音源とでも言えるだろうか。上記2枚のような、「どうやってたどり着くのだろう」というエキゾチズム溢れる音楽を指すことが多い。
『electronic toys2』は初期エレクトリックミュージックのコンピ。個人的には、Harry Breuer「Moog Foo Young」がオリエンタリズム溢れるテロテロな曲で好きになった 。ハリー・ブリュアー&ヒズ・クインテットで有名な彼の初期のmoog作品(1969年のアルバムに収録)であり、陽気さと悲しみが一緒くたに表現されたmoogの響きは他にない味わいを醸し出している。
映画『Barbarella』は、ジャン=クロード・フォレの有名なバンド・デシネの作品を映像化したもの。性的拷問のシーンが多く発禁処分を受けたという本漫画を題材に、ロジェ・ヴァディム監督/ジェーン・フォンダ主演によるフランス製カルトSFである。
音楽は、グラミー賞も受賞したロバータ・フラッタの「Killing Me Softly with His Song(邦題:やさしく歌って)」の作曲も担当したチャールズ・フォックス。本作にも表情豊かで優雅な曲が多く収録されているが、どうやって灰谷氏はこのアルバムにたどり着いたのだろう。diggerとしてその深い知識に尊敬の念を抱かずにはいられない。
まだまだ彼にはCDをお借りしている。次回は、大衆銭湯で初見演奏を録音した「さまよえるオランダ人」など数枚を紹介する。
カレーとシンセサイザーの店「サルタナ」Twitter:@sartana_synth
※「【連載】digる男。」は毎週月曜日更新予定です。
1997年生まれ、千葉県出身。大学では社会学を専攻している。StoryWriterで連載を担当しながら就職活動中、そして迷走中。最近は、密かに音源も制作している。