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the原爆オナニーズ、60歳越えてなお「パンク」──映画監督大石規湖とライター上村彰子が語る、そのぶれない哲学

StoryWriter

今年で結成38年を迎えるthe原爆オナニーズの初ドキュメンタリー映画『JUST ANOTHER』。2020年10月24日の公開に先駆け、真夏の東京で、試写を観た。

今年になって世界は、まがまがしいコロナ禍に見舞われ、ライヴもない、祭りもない、つまらない日常がだらだらと続いている。しかしこの日、スクリーンから音楽が、音楽をやり続ける人の人生があふれ出てくるのを目の当たりにし、「何ひとつ、大切なものはなくならない」と確信した。

試写室を出た私は、猛暑の路上で企画書を書き始め、「この映画がすごいので、何か書かせてください」とありとあらゆるツテにメールを打った。すると一番に、「これは絶対記事にすべき内容だと強く思いました!」と、猛暑の路上よりホットな返事をくれたのが、StoryWriter西澤氏であった。

そんなわけで実現した、同映画を撮った大石規湖監督との対談。最初、インタビュー記事のはずだったのだが、監督が私の著書を読んでくれていたこと、またthe原爆オナニーズファンになって30年以上の私の強すぎる思い入れから、話がはずみ過ぎて対談になってしまった。映画やバンドの話を軸に、音楽や人の何に憧れるのか、どう生きたいのかという話。映画『JUST ANOTHER』鑑賞の、一助となれば幸いだ。

取材&文:上村彰子


「わかりにくい映画」を撮ってしまった

大石規湖(以下、大石):『JUST ANOTHER』 観ていただいてありがとうございます! わかりにくい映画を撮ってしまったなと思っていて……。

上村彰子(以下、上村):「なぜthe原爆オナニーズ(以下、原爆)は愛知県を拠点にし続けているのか」「なぜバンドに専念しないで仕事をしているのか」「なぜ60歳を過ぎて今なお激しいパンクロックにこだわっているのか」という監督の疑問が、この映画制作のきっかけだったんですよね?

 

大石:はい。日本だとバンドや音楽をやっていること自体、特殊だと思われがちなのもおかしいなと思っていたんです。多くの同世代のバンドマンが途中でバンドをやめちゃうことが多くて、それが残念というのもあったし、何かを長く続けていくことの「教科書」的な映画が撮れるといいかなと思ってました。自分も2本目の映画を撮るにあたり、「映画監督を続けていくぞ」という決意もしたところだったので。あと、バンドマンって見かけは個性的な人も多いけど、それは生き方の「思想」ゆえなところもあるので、「思想」を紹介することで巷の先入観をくつがえすものを作りたいとも思いました。

上村:それが撮り始めたら何か様子が変わってきたとか……?

大石:はい。原爆さんを撮ることに決めて、彼らに教えを請うつもりだったのに、撮り始めたらこのバンドの状況や人間関係は、どのバンドにもあてはまる事例じゃないんじゃないかと思って。シンプルに「バンドを続けていくにはこんなことが必要です」と語られてもいないですし。

上村:でもそこは、観た人がいろいろな受け取り方をするんじゃないですかね。

TAYLOW

大石:そうですね、TAYLOWさんの単語ってまず、端的じゃないですか。「ミュージシャンあるある」かも知れないけど、「このひと言からお前が自分で読み解けよ」みたいな。原爆の歌の歌詞とかもそうですけど、同じ歌詞を繰り返していて一体何を伝えたいのか、わかりにくいですよね。あれに近い感じで、10の質問をしても、単語でしか答えてくれないんですよ。メンバー皆さんそうですが、丁寧に説明を加えてくれない。それでこの映画はシンプルではなく、難解になってしまったかなと思って。観た人によく「わからない」って言われるのは、TAYLOWさんの「38年続いてるけど、2年単位だから」って言葉。

上村:あれは私は現実的で、いい意味で「ビジネスマン的だなぁ!」と思いました。短期的ビジョンと中長期的ビジョンをわけて考えているのかと。短期的ビジョンにおいて、2年ごとに区切って目標やタスクを決めて、その中で今回の映画撮影みたいな起爆剤となるようなできごともありつつ、短期の積み重ねが中長期的に続いていくという。いきなり「でっかいことやろうぜ!」みたいな無謀な企ても、「何としてでも続けてやる」という根性論もなく、淡々とした生活の中にバンド活動が根付いていると感じました。

大石:そうですね、TAYLOWさんとしては「2年単位でしか先のことはわからないから、そこでやってくしかない」という話だと思うんですけど、人によっては「あれはどういう意味なの?」「かっこつけて言ってるの?」とか、色々なとらえ方をする。そこは難解でありつつ、おもしろ味で、観た人が自分で考えるきっかけを得てもらえばいいのかなと。

上村:そうそう。「音楽ドキュメンタリー」というジャンルでありつつ、色々決めつけず、そういう余白みたいなところがあった方が、むしろ原爆を聴いたこともない人とか、普段音楽を聴かない人とか、いろいろ人が思いがけないおもしろがり方をしてくれるんだと思いますけど。

31年前、ラ・ママの前でTAYLOWさんに怒られた

大石:上村さんの書かれた『お騒がせモリッシーの人生講座』を読んでみて思ったんですけど、モリッシーもかなりわかりにくいことを言ってますよね。でもアーティストのわかりにくい言葉こそ、こっちが想像力を膨らませるきっかけになったりとか、自分の立場だったらどう考えるかを問うきっかけにもなったりする。モリッシーとTAYLOWさんて、何か似てますね(笑)。

上村:だから私、ふたりとも好きなんですよ!! よく「なんで共通点もあんまりないのに好きなの?」と聞かれるんですけど、ふたりともめちゃくちゃ「パンク」だし、まごうことなき「ロック」の権化です。音楽はもちろんのこと、「お前ならどう考える⁉」という問題提起や、何がかっこ悪くないのかを示唆してくれるところが、たまらないんです。

 

何のジャンルでも言えますが、この世の中、「決まっていることになっている」「決めつけられる」ことってけっこう多いじゃないですか。「パンクだからこういうファッションしろ」「スミスファンだからこうだろ」「女だからこうしろ」「母親はこうあるべき」…… とか、既存の型がすごく嫌いなんです。映画にも出てきていたけど、80年代の日本のパンクシーンは、「鋲ジャン」「モヒカン」当たり前みたいなお決まりがあったところに、TAYLOWさんや原爆はあんな感じで。ファッションでパンクをやってない。

大石:上村さんは高校生時代から原爆のライヴに通ってたんですよね? どんな感じだったんですか?

上村:1988年、高2から東京でのライヴに行き始めました。化粧したり、アメ横で買ったライダースを着て頑張ってたけど子どもっぽくて浮いていて、他の怖いお客さんに「なんでこんな子がいんの!?」とどつかれたり。でもライヴ中に最前列に押し出されて窒息しそうになってるとステージに上げてくれたりして、TAYLOWさんは優しかったです。

ひとりなのは心細くて、パンク雑誌『DOLL』の文通コーナーでライヴに一緒に行ってくれる人を募集しました。「原爆オナニーズは知りませんが、オナニー大好き!」とか、「俺のフェアレディZに乗りませんか?」なんて見当違いな返事ばかり来るんで諦めていたら、年上の社会人のお姉さんから返事が来て。彼女は熱烈なEDDIEさん推しで、仲良くつるむようになりました。実は、最初に原爆を教えてくれたのは同い年の彼氏だったんです。私があまりに原爆に夢中なので「俺よりTAYLOWさんみたいなおっさんが好きなのか!?」「年上の友達もできて、俺はどうでもいいのか!?」と責められました。「ごめん、私は原爆をとる……!」とか公園でもめたりして、意味わかんない(笑)。

大石:彼氏の嫉妬!! そして当時からすでにおっさん……(笑)! 原爆を見ていると、あんなにゴリゴリのパンクをやっているのに、子どもだろうが、女性だろうが、どんなお客さんでも受け容れる感じがありますよね。でも上村さんは大学受験するんで、行くのをやめたんですよね。

上村:当時はパンクを勘違いしていたんです。パンクに憧れてるのに、親の庇護の元で受験勉強してたらカッコ悪いような気がしてしまって。もう勉強もいやだし、ライヴに行く度に親とは喧嘩になってドン詰まって。高3の12月、ライブ後にTAYLOWさんに「もう受験やめたい」と愚痴ってしまった。するといつも寡黙な彼にいきなり、「自分の与えられた場所で、自分がすべきことをちゃんとやるのがパンクでしょ!」って言われて。

大石:えっ! これは怒られてる、ってくらいに言ってくるんですか!?

上村:そう! 渋谷のラ・ママの前でいきなり雄弁にお説教ですよ。横で当時のギターのSHIGEKIさんが笑ってましたけど。それで「俺は大学行ったし、今は会社員やってる。でもバンドもやってる」と言って、塾帰りだった私が持っていたテキストに「うかれよ、受かれよ、浮かれよ」と書いて、「もう受験終わるまで来んな」って返してきた。子どもだったからその言葉の意味がよくわからず原爆友達のお姉さんに、「もう来ちゃいけないって言われた……」ってしょんぼり言ったら、「優しいね。それがTAYLOWさんだね。パンクだよ」って言われたので、渋々納得したみたいな。今思えば、その説教があったから、今の私がある。TAYLOWさんに感謝です(笑)。

大石:確かに、厳しさの中に優しさを感じますね。TAYLOWさんからは、社会の構造をわかった上で、自分が今何をするかを決めて生きる、みたいな姿勢が感じられます。映画の撮影の時に言っていたんですけど、TAYLOWさんが就職した時代は氷河期だったそうで。一度就職したところでずっと働かなきゃいけない、離職したら再就職できないという時代だったから、ひとところでサラリーマンでい続けるのが当然だったとか。それを制約とはとらえず、その立場で何をし、自分がどうあるべきか考え続けてきたように感じます。私はイギリスのミュージシャンではオアシスが好きだったんですけど、彼らもマンチェスターというロンドンからは隔離された場所の労働者階級生まれという立場で、社会構造をとらえて音楽活動をやってた。モリッシーももちろんそうですよね。

パンクの精神とは「DO IT YOURSELF」、自分でやるってこと

上村:ちょうどその高校生の頃『宝島』だったかに、「パンクの精神とはDO IT YOURSELF。自分でやるってこと!」っていうTAYLOWさんのコメントが載っていたんです。当時はパンクってかっこいい音楽やファッションだと思っていた節があったから、よくは理解してなかったけど、なんか深い、とにかく「この人の言うことはなんか本物だ!」と思って記事を切り取って下敷きに入れてました。この映画でも、TAYLOWさんの根底にあるパンク精神が変わってないのが伝わってきて、嬉しくて。

大石:まわりがそれをやってるからかっこいいんじゃなくて、じゃあ自分のスタイルを探してやってみろっていうのが「DO IT YOURSELF」ですよね。自分がやるべきことをやっていれば、SNSで人を誹謗中傷するとか、自分の人生これでいいのかって不安になったりとか、余分なこと考えなくてよくなるのに。

上村:ほんとに。高3の私にTAYLOWさんが言ったことが、大人になった今ならよくわかります。「自分の置かれた場所で一生懸命やる、本分を全うすることこそが、かっこいい」ってことだと思うんですよね。TAYLOWさんが映画の中で、「生活の基盤がないとバンドなんかやれない」ってきっぱり言うじゃないですか。バンドで売れようとか、ビッグになろうということが目的じゃない。もちろんバンドは大切だけど、「自分らしく生きる」という大テーマがあるから、一見派手なバンド活動とは対極にあるように見える会社員生活の全うや、地元にい続けるというスタンスが、戦略的につながってくる感じです。そんな目的のぶれなさこそが、憧れであり自分のお手本なんです。

大石:大目的を持って客観的に冷静にやっている反面、客観性を失ったものも両立されているのがすごいと思って。TAYLOWさんや、前作『MOTHER FUCKER』で撮った谷ぐちさんもそうなんですが、自分の人生はコントロールしつつも、音楽に対する情熱やライヴとか、無我夢中になれてどうにもならない衝動も抱えている。その差が激しい。TAYLOWさんに、「何でバンドを続けるんですか?」って聞いても、あんなに冷静なのにはっきりとした答えが出てこないんですよ。

 

上村:本能で、理屈じゃなく突き動かされているからですかね。でも、TAYLOWさんは映画の中で「もしやめてしまっていたら引きこもりになっていた」と、大石さんに打ち明けていましたよね。バンドが、自分が生きていくのに必要なものであることは、間違いないのではないかと。ライヴでのTAYLOWさんの豹変を見ると、本当は「アレ」が本物なんじゃないかと。実は地球で普通に生活するための仮の姿が、我々が通常バージョンだと思っている姿なんじゃないかと考えてしまって(笑)。普通の人間は本物の「アレ」になる自分を想像もしないし、体現もできない。でも冷静な姿も本能的に突き動かされる「アレ」も、両方あるのが天才だったりアーティスト、表現者なのでないかと。モリッシーもステージの下では「シーズンオフの長嶋茂雄」のようで、ギャップがすごいです(笑)。

大石:ギャップって普通に生活している普通の人は、なかなか出せないですもんね。私は、パラレルワールドを自分の中に持ってる表現者、妖怪化できる人間に憧れが強いんです。自分もいつか、妖怪化できるところにまで行きたいと思っていて。でも、妖怪の正体をわかっちゃっているから、わかっちゃった人間はもう行けないのかもしれない……。

「自分じゃないもの」の、楽しく、しぶとく生きる姿にこそヒントがある

上村:ナチュラルに、頭でわかる前に行っちゃってる人は行っちゃえるけど、理屈でそれに憧れてるワナビーはいけないのかもしれないですよね。やっぱりそういう向こう側の「妖怪」に憧れるから、1作目も2作目も、「自分じゃないもの」を撮ったんですか?

大石:そうですね。完全に憧れだし、パンクだし、音楽をやっている人の生き方哲学を知ったら、私たちの普通の人生も、絶対おもしろくなると思うんです。私が惹かれるのは、世間から言ったら「マイノリティー」と見なされている人たちかもしれないですけど、そういう人たちこそ、楽しく、しぶとく生きるヒントをくれると信じているんです。

上村:世間で言う「普通」という基準の向こうにこそ、すごいものがあると思います。私たちは子どもの頃から、マジョリティーに入らないと幸せになれない、かわいそうと、思わされがちですよね。昨今「多様性」とかよく言われますけど、社会は本当の意味で多様性を受け容れているように思えない。遠巻きに「多様に大変な人がいるよね」って言っているだけではなく、別の場所で生きてる「自分じゃないもの」、多様な人々の考え方をまず知ってみることが、大事だと思います。

大石:そう! よく言われている多様性って「多様」をくくってるだけで、個々をちゃんと見てくれてない。でも音楽をやっているような人って男女子ども関係なく、全部「個」に対して、メッセージをくれる人も多いと思うんです。ラ・ママの前でいきなり上村さんを叱るTAYLOWさんしかり(笑)。

上村:ほんとですよ、あんな子どもに対して「え~、受験なんてやめて来ればいいのに~」っていい加減なこと言う人だっていそうなのに。メッセージが一貫していて平等ですよね。

ファッションだと廃れるけど、哲学は古びない

上村:映画の中のTAYLOWさんも同じ過ぎて、安心感をおぼえました。昔を回顧するんではなく、「今自分のやるべきこととをやれ、今を生きろ」ってことをずっと言ってる。「30年前のバンドのことばっかり話してるなら、博物館にでも行けばいい」って言葉、耳が痛い人も多いんじゃないかなと思いました。大石さんも撮っていたTAYLOWさんのあの大量のレコードって、「買った順」に並べてるそうなんですよ。自分の「なう」がアップデートされ続けてるのが、視覚でわかるってすごくないですか。

大石:でも若作りとか、若い文化に迎合しているわけでもないんですよね。若い人の文化に乗っかることもできるけど、そんなことをしなくても自分の年齢でできること、今までやってきた今の立場でできることを着実にやっていけばいいんだなって、TAYLOWさんの姿勢見ていて痛感しました。

上村:これって、ぜんぜん「音楽映画」じゃないですよね。音楽聞かない人とか、原爆を知らない人でも「自分も自分の何かをひたむきにやっていこう」と思えるのではないかと。思いがけない励ましが得られると思うんですよ。

大石:若い人に観てもらいたくて撮ったんですけど、同年代にもわかってもらえたらいいなと今は思ってます。自分が何をするべきかって考えるきっかけになれれば…… もしかしてあれかな、『the原爆オナニーズの人生講座』みたいなタイトルにすればよかったのかな(笑)。

上村:それでTAYLOWさんが出てきたら本当に教壇の先生みたいで、インパクトないのでは……。

大石:ですよね(笑)。パンクであるという美学の上でやっているから、「パンク」として知ってもらうのがいいんでしょうね。映画でも語っていますが、パンクが生まれたところから知っているからこそ、その一貫した精神を貫いているわけだし。

上村:もはやパンクが、生きる哲学だからですよね。ファッションだと廃れるけど、哲学は一貫している。ずっと同じことを言っても古びない。

大石:たとえずっと同じことを言っても、みんなが求めていないことを老害みたいに言っているんじゃなくて、まわりの変化を受け容れているのもすごいと思いました。情報や世の中に敏感。撮影時はコロナ禍の前ですが、「今バンドやるならノマドとかああいう感じで、どこでもできる仕事しながらやるのがやりやすいんじゃない?」と言っていて。その後リモートワークが主流になってきたんで、TAYLOWさんの言葉は予見にも感じたし、アイディアが先進的。私も監督に選んでくれたのもそんな感じではないかと。新しいものを見つけたら柔軟に受け容れてくれる。

上村:これしかダメだ! って感じがなくて柔軟ですよね。大石さんもインタビューで、「過去の遺産だけで食いついないでいるようなレジェンドには魅力を感じない」と言っていましたが、結成38年にしてまさに現在進行形。まわりや社会の変化に合わせて動き続けている。監督は今後も、音楽や芸術などそのものより、人やその哲学を撮りたいという意向ですか?

大石:はい、自分の中で「パンク」と思うものを。今、落語家さんにハマっているんで、伝統芸能の人も撮ってみたいですね。原爆も「伝統芸能」に近いと思うんですけど。落語家は、「生きることと仕事が同化している」と感じられて、魅力的です。こういうのって「勘違い力」だと思ってるんです。その思い込みがきっかけなって、強い視点を生んだりするのではないかと。上村さんがTAYLOWさんやモリッシーをずっと好きなのも、ある意味「勘違い力」じゃないですか(笑)。

上村:ここまで長く好きだと、たとえ勘違いであっても「本気力」に昇華していきますしね。とにかく、テーマは何であれ大石さんには、大石さんが考える「パンク」琴線に触れるものをガンガン撮って、世の中に揺さぶりをかけてほしいと期待しています。延々話し続けられるんですけど(笑)、今日はありがとうございました!

大石:はい! お互いキーワードは「ロック」とか「パンク」ですよね。その精神の中にある素晴らしいものを、もっと広く伝えていきたい、みんなに知ってほしいと思っています。

* * * * * * *

大石監督によると、「今回の映画が完成することは、最後まで誰も信じてくれなかった」とのことだった。何の期待もしていないメンバーに食らいついて撮影した1年間は、どんなに大変なものだったろう。けれども監督の本気が伝わり、映画が完成して良かった。最終的にバンドメンバーは喜んでくれたそうで良かった。

そして色々な気力を奪われた2020年、この映画を観られたことが、本当に良かった。大石監督、「勘違い力」マックス発動でがんばってくれてありがとう。普通の人が垣間見ることができない「向こう側」を、映像としてきっちり切り取って、残してくれた。「なぜ続けていくか」という答えのないものを続けていくバンドメンバーの姿や言葉に、ノーギミックで正直な人間の力強さを感じる。答えのない自分の人生を、今後どう生きていくのか。

『JUST ANOTHER』は、観た人それぞれが人生を考える、ヒントをくれる映画だと思う。

PROFILE
大石規湖(おおいし のりこ)

映画作家
静岡県出身。フリーランスの映像作家として、スペースシャワーTVやVICE japan、MTVなどの音楽番組に携わる。トクマルシューゴ、DEERHOOF、DEATHRO、怒髪天、BiS階段など数多くのアーティストのライブDVDやミュージックビデオを制作。2017年にLESS THAN TVを追ったドキュメンタリー映画「MOTHER FUCKER」で映画監督デビュー。2020年10月24日公開の『JUST ANOTHER』は劇場公開2作品目となる。

上村 彰子(かみむら あきこ)

ライター、翻訳者
東京都出身。2018年、モリッシーの人生哲学を読み解く『お騒がせモリッシーの人生講座』(イースト・プレス)を出版。2019年、映画『イングランド・イズ・マイン モリッシー, はじまりの物語』(監督マーク・ギル)にて、字幕監修、解説を手掛けた。2020年には翻訳書『モリッシー自伝』(イースト・プレス)、『大人は知らない 今ない仕事図鑑100』(講談社)を出版。音楽のみならず社会問題、教育問題をテーマに執筆活動中。


■作品情報
『JUST ANOTHER』
出演:the原爆オナニーズ <TAYLOW、EDDIE、JOHNNY、SHINOBU>、JOJO広重、DJ ISHIKAWA、森田裕、黒崎栄介、リンコ 他
ライブ出演:eastern youth、GAUZE、GASOLINE、Killerpass、THE GUAYS、横山健
企画・制作・撮影・編集・監督:大石規湖
スチール:菊池茂夫
1.78:1|カラー|ステレオ|90分|2020年|日本|配給:SPACE SHOWER FILMS
©2020 SPACE SHOWER FILMS

公式HP|https://genbaku-film.com

公開情報:10/24(土)より新宿K’s cinemaほかにてロードショー!以降、全国順次公開!
クレジット:©2020 SPACE SHOWER FILMS

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