BiSHが所属するWACKが手がけるGANG PARADE(以下、ギャンパレ)が2つに分裂して生まれたアイドルグループ「PARADISES」。テラシマユウカ、月ノウサギ、ナルハワールド、キラ・メイの4人で2020年4月より活動をスタート、2021年1月にWAggからウタウウタが昇格した。同時に、月ノウサギのWAggへレンタル移籍が半年間告げられ、4人体制で活動を行って来た。
そして、3月21日から行われた「WACK合宿オーディション」で新メンバーとして「キャ・ノン」の加入が発表。彼女を加えた5人体制で、4月29日にTSUTAYA O-WESTでお披露目ライヴを行い、新たなスタートを切った。
お披露目ライヴでは1人赤い衣装を身に纏い、堂々としたデビューを飾った、キャ・ノン。もともとアイドルグループでの活動経験もある彼女は、どうしてWACKに興味を持ったのか? そして合宿オーディションを通して何を学んだのか。初インタビューをお届けする。
取材&文:西澤裕郎
写真:まくらあさみ
運命的なWACKとの出会い
──キャ・ノンさんのお披露目ライヴから約1ヶ月以上が経ちました。PARADISESの一員になった感覚が日に日に強くなっていっているんじゃないですか?
キャ・ノン:徐々に馴染むじゃないですけど、ちょっとずつ強くなってきた感覚ですね。
──他のメンバーとは、最初から打ち解けて話すことができていますか?
キャ・ノン:もともと私は人見知りして壁を作っちゃうタイプなんです。でもメンバーみんなが壁を作らず接してくれたのと、お披露目まで時間が短かったから、そんなこと言っていられないぞと思って。自分も壁を作らないようにすることができたし、打ち解けるのも結構早かったのかなと思います。
──WACK合宿オーディションの様子も見ていましたが、そんなに人見知りのようには感じなかったですけどね。
キャ・ノン:人見知りです。あまり人と深く関わってこなかったというか……(笑)。
──その場では対応しているけど、実は腹を割って話したりはしていないみたいな?
キャ・ノン:それがよくなかったんだろうなと合宿のときに思って。渡辺(淳之介/WACK代表)さんから「候補生で組んだグループのことを信じられてないんじゃない?」って言われたんです。合宿から帰ってきて、実際そうだったなと思って。PARADISESに入ったら、そういうことは絶対ないようにしようと思って活動しています。
──もともとキャ・ノンさんがアイドルに興味を持ったきっかけは何だったんでしょう?
キャ・ノン:自分がアイドルになって活動を始めたが中学生くらいなんですけど、最初はおもしろそうだからとか、やったことがないからやってみようくらいの気持ちだったんです。活動をしていくうちに他のアイドル・グループも観るようになって、わ、アイドルってすごいなと思うようになっていきました。
──WACKはいつぐらいに知ったんですか?
キャ・ノン:友達から突然「今から横浜、来て」って呼ばれて、2017年の合宿最終日に横浜赤レンガ倉庫で行われたフリーライヴ〈WACK EXHiBITiON〉に行ったのが初めてです。友達から「メンバーが振り作っているんだよ」とか「歌詞も書いているんだよ」って教えてもらったりして。そこで初めてWACKのライヴを観て、自分のやりたいことをやっている人たちばかりだと思ったんです。それまで、自分が何をしたいのかあまり分かっていなかったから、アイドルってすごい仕事だなと思うようになって。
──自分の人生と照らし合わせて、感じることが多かったんですね。
キャ・ノン:あと私が観ていた隣に候補生たちがいたんですよ。当時、私はオーディションのことを知らなかったから、なんなんだろうこの人たちは? と不思議で(笑)。踊っている子もいれば、棒立ちで観ている子もいて。これは何なの? と思っていたら、その子たちがステージに上がって合格者発表が始まって。その日に、旧BiSの横アリのDVDを借りて観てから、映画とか音源も聴いたりするようになったんです。
──自分のアイドル像とはまた違う概念みたいなものを感じたんですか?
キャ・ノン:それもありますし、同じアイドルなのに、こんなに自分たちのやりたいことをやっているんだと思って。自分は受動的にやっていたから、かっこいい! と思ったんです。
──とはいえ、それまでのキャ・ノンさんのアイドル像とは違う部分もあったんじゃないかと思います。映画を観たり、WACKを知っていく中で気持ちは変わらなかったですか。
キャ・ノン:全然変わらなかったですね。むしろ自分もWACKで活動してみたいと思うようになって、親に話したんですけど、そのときは反対されました。そらから、リリイベとかにも連れて行って、こんなにすごいんだよ! って見せて一生懸命説得して納得してもらいました。
1番じゃなきゃいけないと思うようになった
──2020年にはコロナ後でしか合格にならないアイドルオーディション「Project WACKちん」に参加、その流れで2021年のWACK合宿オーディションにも参加することになったんですよね。
キャ・ノン:WACKちんで不合格になってしまったんですけど、渡辺さんから合宿に呼んでもらったんです。でもWACKちんのZOOM面接が全然ダメで、合宿に行くことよりも、不合格になってしまったこと対してすごく悲しくなっちゃって。なんで自分はこんなにできないんだろうと思って、最初はそっちばかりに気を取られていましたね。
──合宿オーディションは6泊7日に渡って行われました。毎朝マラソンがあったり、デスソース入りのご飯を食べたり、ダンスレッスンをしたり、1日フルでいろいろな課題に臨んでいましたが、自分を出すことはうまくできていましたか。
キャ・ノン:上手くいかないことがずっと続いていました。言われていることは分かっているのに、それができない自分がもどかしくて。
──どういう部分ができないなと思っていたんですか?
キャ・ノン:殻を破れとか、もっとできるでしょって言ってもらっていたんですけど、その「もっと」が全然できていなくて。やっているつもりで終わっていたんだなって、今考えるとより思います。
──合宿オーディションはWACKの哲学を叩き込む場所でもあります。キャ・ノンさんはWACKの考え方をある程度分かって来ていたと思いますが、実際に合宿に身を置くことで、考え方や価値観に変化はありましたか?
キャ・ノン:変わったというよりも、考え方が増えた感じがします。自分のなりたかったものという部分ではすごく変わりました。WACKに入れれば何でもいいって気持ちで合宿に行っていたんですけど、その気持ちで受かっている人は誰もいないだろうと思って。最初はもし入れるなら歌割りもいらないみたいな気持ちだったんですけど、それは渡辺さんに見透かされていて。「お前は、どこかで1番じゃなくていいと思っている部分がある」って言われたときに、ああ、そうだなと思って。それをきっかけに、1番じゃなきゃいけないと思うようになったんです。
月ノウサギからの影響
──合宿3日目からは、WACKの現役メンバーも合流しました。一緒に合宿を過ごして接する中で、どんなことを感じましたか。
キャ・ノン:全員信念があるなと思いました。私は全員とペアを組めたわけではなかったんですけど、お話することができた人全員、それぞれの強い意思があるんだなと伝わってきました。
──キャ・ノンさんは、月ノウサギさんとペアを組むことが多かったですよね。2人でパンツを被って行ったコントがものすごいインパクトを残しました。
キャ・ノン:他のグループは、コントを考える時間がすごく長かったんですけど、私たちは最初の1時間ぐらいで作り終えていて。その後に月ノさんとしゃべることのできる時間が結構あって。自分がWACKのオーディションを受けた経緯とか、人生の中でこんなことがあったという話もいっぱい聞いてくれて。逆に、月ノさんがどうして受けたのかとかも教えてもらって。かっこいい人だなって思いましたね。
──どういう部分がかっこいいと思ったんでしょう?
キャ・ノン:そんなに不器用な人じゃないと思っていたんですけど、めちゃめちゃ不器用だという話をしてくれて。不器用なりでも、そこで何も妥協せずにやっていたり、向き合っている姿がすごくかっこいいなと思ったんです。私たちがペアになったのも、きっとどこか似ているところがあるからだろうし、殻を破れってことだと思うからって話をしてくれて。とにかくやるしかないんだって月ノさんが教えてくれたんです。
──月ノさんも「私はたぶんキャ・ノンと似ていると思う」と話していました。実際、似ている部分はあるなと思いますか?
キャ・ノン:似ている部分もあるし、全く違うところもあると思います。私は「なんでもできちゃうように見えるね」って言われることが多くて、それが嫌だったんです。私は合宿に向けて、なんでもできるように準備してきたのに、と思って。
──たしかに、事前に合宿に向けて努力を重ねてきたわけですもんね。
キャ・ノン:その過程を観てもらえないからわからない部分もあるじゃないですか。私は歌もうまくなかったからすごく練習してきたんです。そんなときに、月ノさんがそういう気持ちを聞いてくれて分かってくれて。それが、その後の合宿の中で支えになったんです。
──逆に課題曲になかった「pretty pretty good」が突如、審査楽曲になったときがありました。そのときは戸惑いがあったんじゃないですか?
キャ・ノン:ありましたね。どうしよう……みたいな。でも、それはみんながしっかり準備してきたからこそ出された課題なんだろうと思って。困ったけど、あの課題曲のおかげで破れたものがあるとすごく思っています。
もっと自分を出してもよかったと気がついた
──キャ・ノンさんは合宿を通して、どんな部分が1番変われたと思いますか?
キャ・ノン:自信がないからできないとか、苦手だからできないと言い訳にしないようになりました。苦手だからできないって言い訳をしていたら、ずっとできないだろうなって。そういう気持ちの持ち方から変わらないと、もっと変われないなって思いました。
──合宿最終日、最終審査で「自分への手紙」を書いて読みました。キャ・ノンさんの手紙は、「私はあなたが嫌いでした」から始まって、「弱くてダサくて、まともに自分と向かい合わずに」など、自分と向かい合ったからこその内容になっていたと思います。6日間の合宿を終えて、もう1回自分自身を見つめ直す時間になったのかなと感じました。
キャ・ノン:そういうところも、合宿ではあまり出さないようにしていたんです。自信がないと思われたら終わりかなと思っていた。でも全然そうじゃなかったなと最終日に思って。もっと自分を出してもよかったんだなってことに気がついたんです。
──「自分が自分であることにものすごく疲れてしまうことも、たくさんありました」とも書いていました。人生の中で全開で楽しく生きられている感じでも持てなかった?
キャ・ノン:常に自分のことを俯瞰して見ちゃうから、自分の人生として生きていなかったなって思ったんです。俯瞰と主観の自分が両方いるみたいな感じだった。
──合宿中は、俯瞰せずに目の前に一生懸命になる瞬間があった?
キャ・ノン:最終日に近づくにつれて、俯瞰する余裕なんてなくて。それがよかったのかなと思いました。「pretty pretty good」の審査で、もしもしチャン(現・チャンベイビー)が1回泣いてしまったときがあって。それまでの自分だったら、絶対に声をかけられていなかったんですよ。自分なんかに声をかけられても……と思っちゃうタイプだったから。でも、そんなことを言ってられない状況で、そういうふうになっちゃうよねって話もできて。必死になったら人間はどうにでもなれると思いました。
──今まで避けてきた人と真正面から向き合うこともできた?
キャ・ノン:向き合うしかない状況でしたし、できていたと思います。
──合格者発表で自分の名前が呼ばれたときは、どんな気持ちでしたか?
キャ・ノン:嬉しいのと驚きでした。それまで全然名前が呼ばれていなかったから、は! 呼ばれた! みたいになって。1人一言挨拶をするとき、WAggに合格したテラタイリクちゃん(現・ベル・ナルド)が1番いいこと言っていて(笑)。頭が回らなさすぎて全然言えなかったんです。
──それは俯瞰しているキャ・ノンさんではなかったからじゃないですか?
キャ・ノン:そうですね。出た言葉をそのまま言った感じでした。
──PARADISESへの合格は、どういう想いで受け止めたんでしょう?
キャ・ノン:月ノさんと「PARADISES RETURN」を一緒にやったとき、パニくっちゃったんですけど、「諦めちゃダメだよ」って言ってもらって、私にとっても本当に大事な曲になって。また一緒にPARADISESで歌えるんだと思って、すごくうれしかったです。
──合格発表のあとに、PARADISESのメンバーと顔を合わせたわけですが、メンバーの印象はどうでしたか?
キャ・ノン:実物の方がかわいかった(笑)。え! みんなかわいい! と思って。そのとき、メイちゃんはすごくかわいい子だって思ってたけど、だんだん中身を知っていくうちにこんな頭おかしい子なんだなって(笑)。いい意味で、初対面の第一印象と全然変わりましたね。
──あははは、ナルハさんはどうですか?
キャ・ノン:ナルちゃんも、あんなにかわいい見た目なのに結構物事をはっきり言うタイプでおもしろいなと思って。結構ズケズケ言うのがツボですね(笑)。
──ユユさんはどうですか?
キャ・ノン:ユユちゃんは物事の考え方もそうだし、すごく深く考えていると思って。あとはしゃべっていておもしろいですね。楽しい人です。
──ウタさんは?
キャ・ノン:ウタちゃんも私と同じで、結構人見知りなタイプなのかなと思って。人見知りを感じたら人見知りになっちゃうから、最初の方は全然喋れなかったんですけど、仲良くなっていくうちにこんなに魅力的でおもしろい子なんだって感じています。
こんなにすごいグループなんだというのを見せたい
──4月29日(木・祝)にTSUTAYA O-WESTで開催したお披露目ライヴですが、緊急事態宣言により無観客での配信ライヴになってしまいました。どんな気持ちで臨んだんでしょう。
キャ・ノン:最初はすごく悲しかったんですけど、メンバーみんな前を向いていたんです。逆にたくさんの人に観てもらえるチャンスなんじゃないかって言ってくれて、私もそう思うようにシフトチェンジしました。前向きな気持ちで当日を迎えることができました。
──キャ・ノンさんだけ衣装が赤で驚きました。どういう心境でしたか?
キャ・ノン:青い衣装がすごくかわいいと思っていて、着れる! と思っていたら、私のだけ赤かったのでびっくりしました(笑)。
──すごく目立ちますよね(笑)。
キャ・ノン:何もしなくても目立つから、自然と私のことを観てもらえるじゃないですか。今だけだと思うので、この期間を有効に活かしたいです。
──その後、〈PARADISES IN WONDERLAND TOUR〉で、名古屋と沖縄を巡りました。初めての有観客ライヴ、どんなことを感じましたか。
キャ・ノン:名古屋公演で、初めてお客さんと会ったんです。無観客のときもすごく楽しかったけど、比べ物にならないぐらいライヴが楽しくて。お客さんはみんなマスクをしているけど、動きとか、目を合わせてくれることで、気持ちを伝え合えていると思っていて。私にとってははじめましての人がいっぱいいたけど、みんな温かいなと感じました。あと、名古屋は3回まわしだったんです。どうなっちゃうんだろうと思ったけど、有観客だからできたんだなって。お客さんの力ってやっぱりすごいなって思いました。
──PARADISESの活動を通して、今後どんなことを達成したいと思いますか?
キャ・ノン:前までは、自分のやりたいことや夢がなかったけど、WACKのアイドルを見て夢ができて今ここに立てているんです。世界を変えてもらったなとすごく思っていて。同じようにPARADISESが誰かの人生の楽しみになってくれたらいいなと思っています。そういう人がたくさん増えて大きなステージに立てるようになりたいです。自分が応援しているアイドルが大きいステージに立つのって、すごくうれしいじゃないですか。そうやって自分たちの追う夢が、お客さんの夢になってくれればいいなと思いますね。
──現在、月ノさんがWAggにレンタル移籍中ですが、もうすぐ戻ってきて6人体制になります。5人体制は約3ヶ月で終わるわけですが、どういう気持ちで活動していますか?
キャ・ノン:今5人の練習と、6人の練習を並行しているんです。この前、月ノさんと2人で話したときに「私がPARADISESに戻ったとき、今までの状態だとダメだと思う」「今待っている状態になっちゃっているんじゃないか」って話をしていて。月ノさんが帰ってくるのも、ツアーが始まるのも待っている状態じゃいけないよねって。5人が進んでいるところに月ノさんが合流しないといけないなと思っています。
──6月27日が現体制のラスト・ライヴとなります。ライヴにかける意気込みを訊かせてもらえますか?
キャ・ノン:フォーメーションなど、5人だからこそ見せられるものがたくさんあると思うんです。5人で見せられる期間は少なかったけど、5人の状態で、PARADISESってこんなにすごいグループなんだというのを見せたい。もともとPARADISESのファンの方々に、変わったねとか、すごくなったと思ってもらえないと、ずっと変わらないままかなと思うから。この5人でたくさん練習して、挑みたいですね。
■イベント情報
「PARADISES REVENGE MATCH IN OSAKA」
2021年6月27日(日) 大阪 アメリカ村 DROP
1部Open/Start 12:30/13:00
2部Open/Start 15:00/15:30
3部Open/Start 17:30/18:00
〈PARADISES PRETTY GUARDIANS TOUR〉
2021年7月17日(土)@東京 TSUTAYA O-WEST
1部 Open/Start 12:30/13:00
2部 Open/Start 15:00/15:30
3部 Open/Start 17:30/18:00
[問]TSUTAYA O-WEST 03-5784-7088
2021年7月31日(土)@大阪 梅田Shangri-La
1部 Open/Start 12:30/13:00
2部 Open/Start 15:00/15:30
3部 Open/Start 17:30/18:00
[問] 梅田Shangri-La 06-6343-8601
2021年8月1日(日)@愛知 NAGOYA JAMMIN’
1部 Open/Start 12:30/13:00
2部 Open/Start 15:00/15:30
3部 Open/Start 17:30/18:00
[問] JAMMIN’ 052-265-7601
2021年8月8日(日)@北海道 BESSIE HALL
1部 Open/Start 12:30/13:00
2部 Open/Start 15:00/15:30
3部 Open/Start 17:30/18:00
[問] BESSIE HALL 011-221-6076
2021年8月9日(月・祝)@北海道 BESSIE HALL
1部 Open/Start 12:30/13:00
2部 Open/Start 15:00/15:30
[問] BESSIE HALL 011-221-6076