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【LIVE REPORT】ZOCがツアーファイナルで爆発させた愛情と怒りの乱反射

StoryWriter

2021年6月から全国22会場42公演に及ぶライヴハウスツアー〈ZOC FOR PRAYER TOUR 2021 SUMMER〉を行なってきたZOC。大森靖子がプロデューサー兼“共犯者”としてメンバーを務め、西井万理那(ex. 生ハムと焼うどん)、藍染カレン、巫まろ(ex. 福田花音 / アンジュルム)、舞踊家のrikoこと雅雀り子に、3000通を超える応募の中からオーディションを勝ち抜いた15歳の新メンバー・鎮目のどかが加わった6人体制の初ツアーでもある本公演のファイナル、2021年9月9日のZepp Haneda(TOKYO)公演を、ライターの宗像明将がレポートする。

6人の内臓の蠢きを感じさせるようなステージ

2021年9月9日にZepp Haneda (TOKYO)でZOCが開催したツアー「ZOC FOR PRAYER TOUR 2021 SUMMER」最終公演は、間違いなく終盤の「①④才」から「CUTTING EDGE」への流れがハイライトだった。

雅雀り子のダンスのソロが圧巻だった「①④才」が終わると、ZOCの全員がステージ上に倒れこんだ。突然として「動」から「静」へと切り替わり、会場には長い無音が続いた。ファンも拍手をせずにステージを見守り続ける。やがて大森靖子がスポットライトに照らされながら手を伸ばし、何かを叫んだ。「絶望」という単語だけは聞き取れる。そこから次の「CUTTING EDGE」が始まった。歌いだしの歌詞は「自殺サイトも見飽きたし」である。今度は生と死のコントラストが鮮やかになる。ステージ上の2個のミラーボールがZepp Haneda (TOKYO)の空間を光で埋めていった。

 

「CUTTING EDGE」は、2021年6月にリリースされたZOCのファースト・フル・アルバム『PvP』のリード・ナンバーだ。『PvP』は、「CO LO s NA」を筆頭に、コロナ禍の時代性と正面から向き合った傑作だった。『PvP』は清濁合わせ飲んだからこその傑作であり、しかしまだ尽きぬ清濁があった――というのがZOCをめぐる最近の炎上でもあった。ZOCは、SNSの時代だからこそ生まれたが、SNSにメンバーもファンも巻きこまれてしまうというアンビバレンツをも抱えている。

>>>【LIVE REPORT】ZOC、メンバー同士の想いをぶつけ合った涙と決意の仙台公演

本編の最後のMCでは、メンバーがひとりずつ語っていったが、その最後に大森靖子は、SNSにも触れつつ、ZOCの音楽とパフォーマンスについて以下のように述べた。一部を抜粋する。

大森靖子

「6人のひとりひとりの人生があって、ひとりひとりの悩みもあって、楽しさもあって、楽しいだけじゃない。個性とか悩みとか歪みとか、そういうものがあるからこそ、そして、そのひとつひとつがちゃんと晒しあってぶつかりあえたからこそできたパフォーマンスだと私は思っています」

「私は本気でたくさんの固定概念や生きづらさみたいなものを全部一度壊す、と言ったら暴力的かもしれないですけど、緩和させて柔らかくして溶かしたうえで、新しい形も作っていけるような音楽がやっていきたいと本気で思っておりますので、それにはちょっと覚悟が足りなかったのかなという部分が自分でありますので、またこの今日の公演を自分で感じて、覚悟を改めて、これからも世界を変える音楽をずっとやっていきたいと思っておりますので、お力添えください。応援よろしくお願いいたします」

内情はわからない。ただ、ひとつだけ言えるのは、この日のZOCのライヴは、会場で見ていて軽く動揺するほど素晴らしかったということだ。

22会場42公演に及んだワンマンライヴツアー〈ZOC FOR PRAYER TOUR 2021 SUMMER〉の最終公演は、2021年6月10日のTSUTAYA O-EASTでの初日と同様、「family name」で幕を開けた。初日と同じく、鎮目のどかのアカペラによる「family name」だ。初日のように涙は流していないように遠目には見えた。ただ、鎮目のどかの歌声には、揺らぎとかすれ、小さな悲鳴が詰まっており、そしてツアーを経たからこそのたくましさもあった。

「family name」はアカペラから6人によるパフォーマンスへと続く。修羅をかいくぐった音楽はかくも強いのか、と感じる。ZOCをめぐる奔流の中で離れるファンがいるのはやむをえない。ただ、ZOCが生みだしてきた愛情と怒りの乱反射が、その結果として、芸術としての評価をZOCが受けられない事態を生むことだけは避けるべきであり、だからこそこのライヴレポートを書いている。

まず4曲が歌われ、最初のMCが始まった。自己紹介の後に、ZOCは6人中4人がひとりっ子だという話題になり、大森靖子が「それを崩すべきではなかったんだよ」と発言したとき、軽く緊張したことは正直に記しておきたい。特になんということもなく会話が続いたこととともに。

「LiBiDo FUSION」では、同曲のMVにも出演したそわんわんがサプライズ登場。彼女はそのまま「AGE OF ZOC」にも参加して踊り、メンバーのソロコーナー1曲目である西井万理那の「それな!人生PARTY」でもYouTube用の動画を撮影していた。

西井万理那

さらに巫まろの「まろまろ浄土」、藍染カレンの「紅のクオリア」、そしてこの日に合わせて配信リリースされた鎮目のどかの「Fake baby」、雅雀り子の「りこりこ☆くろまじゅつ」へと続いた。

巫まろ

藍染カレン

鎮目のどか

雅雀り子

そしてこの日、大森靖子が自身のソロ曲から選んだのは「きもいかわ」だった。自己と他者の断絶を受け入れる楽曲だ。

終盤で披露された「CUTTING EDGE」には、〈そうだってお金払って / 見守りたいのは成長過程という / 自分殺戮ショー〉という歌詞がある。続いて歌われた「A INNOCENCE」には〈でも 成長過程みせるのが / アイドルだって聞いた〉という歌詞があるが、2019年の『断捨離彼氏』のカップリングとして「A INNOCENCE」が収録されてから約2年で、早くもZOCの「アイドル」への視点は変化していることも感じる。より生々しく、より身も蓋もなく。

ZOCに「安心」という言葉は似合わない。拡張と変化を志向している集団であり、それは波乱の要素を抱えていることと同義でもある。ZOCは社会と関わることを選択しているがゆえに、社会からの干渉も受ける。しかし、是々非々で臨むとしても、この日のZOCの音楽とパフォーマンスは、身を焼く炎をかいくぐった者たちによる異様な輝きを放っていた。6人の内臓の蠢きを感じさせるようなステージだったのだ。

取材&文:宗像明将
写真:Masayo

セットリスト
SE ZOC序曲
1. family name(PvP 版)
2. CO LO s NA
3. DON’T TRUST TEENAGER(PvP 版)
4. SHINEMAGIC(PvP 版)
5. ヒアルロンリーガール(PvP 版)
6. 眼球にGO!
7. 濃♡厚♡接♡触
8. LiBiDo FUSION
9. AGE OF ZOC(PvP 版)
10. それな!人生PARTY
11. まろまろ浄土
12. 紅のクオリア
13. Fake baby
14. りこりこ☆くろまじゅつ
15. きもいかわ
16. ①④才
17. CUTTING EDGE
18. A INNOCENCE(PvP 版)
19. REPEAT THE END
EN. ZOC 実験室(PvP 版)


■ライヴ情報

ZOC 東京単独公演「ZOC CLUTCH 2021」
2021年12月17日(金)@中野サンプラザホール
チケット発売スケジュール:
ZOC公式ファンアプリ先行(V.I.Pチケット)※先着先行
受付期間 9月10日(金)20:00〜9月12日(日)23:59
詳細はこちら:https://www.zoc.tokyo/schedule/tour/detail.php?id=1001984

HP:https://www.zoc.tokyo/

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