眉村ちあきが2021年9月17日(金)、初めてのホールワンマンライヴ〈眉村ちあきの音楽隊〉を東京・中野サンプラザホールにて開催した。
初めて音楽隊(バンド)を率いてステージに立つ宣言をしていたとおり、越智俊介(Ba)、兼松衆(Key)、qurosawa(Gt)、 小西遼(Sax)、吉田雄介(Dr)の5人に眉村を加えた6人編成の「眉村ちあき音楽隊」でライヴが行われた。
初のバンド編成から1人のパフォーマンスまで天真爛漫な初ホールワンマン
開演時間に先立ち、眉村が影ナレで「あと5分ほどでライヴがはじまります」と述べると大きな拍手が沸き起こる。その30秒後くらいに「言い忘れたことがいっぱいあります……」と再び眉村が再び影ナレで現れライヴにおける注意事項を述べると、会場は和やかな雰囲気に包まれた。
18時5分。生演奏音が鳴りステージ上の幕が上がると、バンドメンバーの5人の姿が登場。蛍光イエローと薄い赤色の衣装に身を包んだ眉村が登場すると、先日ゲリラ配信されたばかりの「モヒート大魔王」でライヴがスタート。ダメ男に依存する女性を滑稽ながらコミカルに描く恋愛ソングを笑顔で気持ちよさそうに歌う。1曲の中で何度も展開を見せる組曲「Individual」では広いステージを左右へ走りながらハンドマイクで伸び伸び歌い、続くアルトサックスが艶美に鳴り響くジャジーな「開国だ」を表現力豊かな歌声でうたいあげ、冒頭3曲から幅広い眉村の表現世界を魅せていった。
「このカウントで入れたらマジですごい音楽隊♪」と、眉村の感覚で独自のカウントを取ると、バンドメンバーが彼女の動きを観ながら息ぴったりに「I was born in Australia.」の演奏をスタート。眉村は「すごい!」と驚きながら、「昨日楽しみすぎて朝4時まで眠れなかった」と客席に投げキッスをして溢れんばかりの笑顔でステージを縦横無尽に動き歌った。
「今日は、バンドで歌をちゃんとうたおうと思ってイヤモニをつけているので、興奮しないで、私。ヒッ・ヒッ・フー」と息をしながら、その場で思いついた16ビートで胸を叩く振り付けのコール&レスポンスを観客に伝授し「壁みてる」へ。ピアノとサックスの演奏とともに「夏のラーメンワルツ」、ピアノの伴奏で「DEKI☆NAI」、「本気のラブソング」を歌い上げた。
バンドメンバーは一度全員下がり、眉村1人でパフォーマンス。電話の自動音声をコラージュしたブレイクビーツに乗せてラップする「東京留守番電話ップ」を披露すると、「バンドメンバーにはまだ秘密にしている顔があります。こんなシュールな曲で大興奮して歌ってしまうことです。さっきまでちょっとだけ猫かぶっていたけど。イエーイ!」とスカートを捲りながら「顔ドン」へ。サビでは両足を左右に開いた到達点の高いジャンプも見せた。
指を鳴らしながら「私はロボット〜まだ愛を知らない♪」と即興で曲を作るフリースタイルミュージカルへ。この日3回改札で止められたこと、会場に来る途中ギターケースが壊れたことを歌詞に取り入れながら、「でも私はこんなにみんなに愛されているの 喜怒哀楽みんなにぶつけてやる」とロボットが心を持っていく様子を、アコギを弾きながら作っていった。
「私はめちゃめちゃ公園で遊ぶのが好きなの。掘った石を子どもに渡して洗ってもらって、それをつみ重ねる遊びが好き。またやりたいなという気分で歌います」と「代々木公園」を披露すると、ギタリストのqurosawaが登場。qurosawaが保育士兼ギタリストで、眉村が小さい頃、家出して駆け込んでいた保育所のナガタ先生と同僚である秘話を語った。「いまから私の家出の恩人の同僚と演奏します」と「奇跡・神の子・天才犬!」をqurosawaのアコギにあわせて2人で歌うと、再びバンドメンバーが登場。グルーヴなベースとドラムで「おばあちゃんがサイドスロー」へ。それぞれの楽器のソロプレイを見せると、眉村が「眉村ちあきの音楽隊!」と叫んだ。バンドとしてのヴルーヴが増すなか、「ブラボー」も披露。
眉村がアコギを手に取り、「昨今は閉ざされがちな日々なわけじゃん。私もそう。(本来)ライヴは月10本くらいやっていないと心が病むから、なんで生きているんだろうと涙がボロボロでちゃうときがあって。心に追い討ちをかけたのがSNS。人の心を傷つけたり、誰かが誰かを傷つけるところを目にしてしまうこともある。もちろんいいところもあるから、自分の心は自分で守ってほしい。まだ心が弱い人は使わないほうがいい。そんな曲です」と「やさいせいかつ」へ。そのまま「冒険隊 ~森の勇者~」をバンドメンバーと歌い上げた。
音楽って最高じゃん! いつも愛をありがとう
「今からやる曲は、私がずっと嫌いな曲でした。だって、ノリで作った曲だし、もっと手をかけて作った曲もあるのに褒めるからです。そして、私はこの音楽隊にもやきもちをやいています。なぜなら演奏がうまいからです。みんなが先日公開したMV「悪役」のバンドバージョンを、ソロの音源より褒めるからむかつきました。でも、そのとき私は嫉妬したけど、私、まだ開かなければならない扉がいっぱいあるんだと思ったんです。自分1人で編曲をするより、人と組んだほうが褒められる。でも、私1人で作っている曲を好きだっている人もいるし、どの扉が好きかわかんないなと思ったんです。どの扉が好きかわからないし、私はこのままで生きていこうと思って。嫉妬心にかられていままで通り曲を作ったりもするし、悔しさにまみれて泣きながら曲を作る夜もある。だけど、どれが好きかわからないから大丈夫だよって自分に言い聞かせようと(思っていて)。この気持ちわかる人いるかな? どんな気持ちで歌うか意味がわかってくれたらいいです。ごめんね、こんな語彙不足で。心を精一杯こめてうたいます」と「大丈夫」を想いをこめて歌い上げた。そのまま眉村ちあきの音楽隊で初めてMVも公開した「悪役」をメンバーの演奏の中で歌い上げ本編は幕を閉じた。
鳴り止まない拍手の中、ステージに登場した眉村。「(スタッフに)いいよって言われてないけど出ちゃった!」と堪えられない喜びを伝えると「ありがとう! アンコールしてくれて!」とアコギを手に「私についてこいよ」を披露。再びメンバーを呼び込み、それぞれのメンバーを紹介。「私にも悩みがあって。ダイエットをしているとほっぺがけずれてあごがでる、ってことで「あごけずりゆうこ」という曲を作ったんです。最後にこんなプロフェッショナルな人たちに演奏させるっていう暴挙です」と笑いながらバンドと歌い上げた。
「おうちにかえるまでがライヴ、今日はきてくれてありがとうございました」とバンドメンバーと横並びになり一緒に挨拶をすると、幕が下がってくるのとともに「帰りたくない! 帰りたくない! 分かるー」と終演を惜しむ眉村。すると再び幕が上がった。
「ダブルアンコールくれたってことであってる?」と嬉しそうな眉村は、フリースタイルミュージカルで歌った「私はロボット」を歌い出し、それにメンバーが即興で演奏をつけていった。その様子に嬉しそうな眉村は、「Aメロを歌います」とメンバーに告げ、「夢を与える仕事なのに なんでだろうみんなから夢を貰い続けちゃう」と即興で歌詞を加える。それを即座に受け止め、バンドメンバーも即興で伴奏をつけていった。即興とは思えない完成度を見せると、「音楽って最高じゃん! いつも愛をありがとう。あなたの帰り道に少しでも音楽の愛が咲きますように。大好き」と、泣きそうになりながら笑う眉村らしい挨拶をし、客席全員と記念写真を撮って初のバンドライヴは幕を閉じた。
これまで人を信用してこなかったと語っていた眉村が、他者を信頼して立ったバンド編成のライヴステージ。その気持ちに寄り添いながらも音楽としては自由に思い切りよく応えたバンドメンバーたち。ライヴが進むにつれて、眉村ちあきの音楽隊としてのグルーヴがどんどん生まれていった素敵なステージだった。
取材&文:西澤裕郎
写真:Ryo Higuchi
〈眉村ちあきの音楽隊〉
2021年9月17日(金)@東京・中野サンプラザホール
セットリスト
1. モヒート大魔王
2. Individual
3. 開国だ
4. I was born in Australia.
5. 壁みてる
6. 夏のラーメンワルツ
7. DEKI☆NAI
8. 本気のラブソング
9. 東京留守番電話ップ
10. 顔ドン
11. ミュージカルMC
12. 代々木公園
13. 奇跡・神の子・天才犬!(Acoustic ver.)
14. おばあちゃんがサイドスロー
15. ブラボー
16. やさいせいかつ
17. 冒険隊 〜森の勇者〜
18. 大丈夫
19. 悪役
<アンコール>
20. 私についてこいよ
21. あごけずりゆうこ
<ダブルアンコール>
22. ミュージカルMCで産まれた曲(Band ver.)
■『眉村ちあきの音楽隊』配信
https://eplus.jp/mayumurachiaki/
チケット:3,500円
アーカイブ : 9月24日(金)23:59まで
■ライヴ情報
眉村ちあき 日比谷野外大音楽堂ワンマンライブ「ナントカサマーフェスティバル」
出演者:眉村ちあき
2021年10月24日(日)@日比谷野外音楽堂
時間:開場 16:30 / 開演 17:30
チケット料金:4,500円(税込・全席指定)
主催・企画・制作:サンライズプロモーション東京 / 会社じゃないもん / TOY’S FACTORY
問い合わせ:サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(平日12:00~15:00)
眉村ちあき 公式HP:http://mayumura.tetetetetetetetetete.club/