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SUNNY CAR WASHはどのように誕生し、解散していったのか?──宇都宮HELLO DOLLY店長・久保憲行が当時を語る

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2021年12月28日のラストライヴをもって解散したバンド、SUNNY CAR WASH。2016年の結成以降、剥き出しで初期衝動に満ちたバンドサウンドと、純粋無垢さを持ったヴォーカル、詩的な歌詞、感情剥き出しのライヴで、数多くのリスナーたちを魅了した。そんな彼らの軌跡を辿るため、解散ライヴの映像化を目的としたクラウドファンディングで制作されたZINEの中から、バンド誕生の場所である地元・宇都宮のライヴハウスHELLO DOLLY店長・久保憲行へのインタビュー記事を掲載する。

取材&文:西澤裕郎
写真:樋口隆宏


才能あるヴォーカルの人って、どこか普通の人と違うんですよ。ゴミで確信しました(笑)

──久保さんとSUNNY CAR WASHとの出会いから教えてください。

久保:アダム(※岩崎のニックネーム)が高校のとき、Sugar?っていうバンドでHELLO DOLLYに出たのが始まりなんですけど、最初はめっちゃ距離感があったし、そんなに話す感じでもなくて。気がついたらめっちゃ仲良くなっていたんですよね。HELLO DOLLYでバイトするようになって、バイト終わりにみんなで飯食いに行ったりするようにもなって。

──Sugar?はどんなバンドだったんでしょう?

久保:ごく普通の高校生バンドみたいな感じでしたけど、曲は独特な感じがありました。よくこんな歌詞考えつくなみたいな印象というか。SUNNY CAR WASHも、そうじゃないですか? 基本、アダムって頭が良いんですよね。

──HELLO DOLLYで働いていたときの岩崎くんはどんな感じでしたか?

久保:アダムは、僕の中ではすごい真面目なやつっていう印象でした。受付をしたり、ドリンクをやったり、ちゃんと働いてましたよ(笑)。ただ、仕事はテンパり癖がありましたね。

──SUNNY CAR WASHがどうやって始まったか、当時のことを教えてください。

久保:どうだったんだろう。自然すぎちゃって、どう変わったのか覚えてないぐらいですね。気がついたら、羽根田とアダムと当時はナホちゃんという女の子のドラムが叩いていた感じでした。今でも覚えているのは、SUNNY CAR WASHが3人になって初めてレコーディングして録った音源を、朝、アダムの車で聴きながらドライブしたことですね。車の中がゴミだらけで(笑)。助手席のドアって隙間が空いているじゃないですか? そこにもゴミが詰まってるんです(笑)。半端じゃねえなこいつは、って感じでしたね。才能あるヴォーカルの人って、どこか普通の人と違うんですよ。そのゴミで確信しました(笑)。

──あははは。

久保:衝撃でしたよ。あんな車、乗ったことない。でも音楽を聴き始めたら、ゴミのことは全然忘れて聴いていて。デモで録った「キルミー」を聴いていたと思うんですよ。2人で普通に聴きながら走っていたのをよく覚えています。

 

──羽根田くんと会ったときの印象についても教えてください。

久保:羽根田の第一印象は、とりあえずおとなしい真面目な好青年。あまり喋らないから、こっちも喋らないみたいな。羽根田のバンドも高校生の時にレコーディングしたんですよ。ベースがめっちゃうまくて感動した記憶がありますね。プレイもリズム感もすごかった。ちょっと衝撃的でしたね。ただ、SUNNY CAR WASHのライブで羽根田はベースをちゃんと弾いてなくて。曲中にベースのフレーズは弾かないんですよ。活動の最後の方じゃないですか、こいつちゃんと弾くんだみたいに思ったのは(笑)。ステージングがすごすぎて、ベースとかハチャメチャでしたね。でも、それってうまいからできるんですよ。

──フレーズを弾かなくても成立するくらい即興的なベースをプレイしていたと。

久保:成立してないときもいっぱいありましたよ(笑)。これ雑音じゃんっていうときもあったし。終始爆発音みたいな音を出していて。あいつは不思議でしたね。

──当時、どういうお客さんが多かったんですか?

久保:若い男の子とか結構いたんじゃないかな。「俺、SUNNY CAR WASHめっちゃファンなんですよ」みたいなことを言うバンドが増えてきて。若い子もいたし、女の子もいたし、びっくりしたのは10代の男の子が好きで見に来ていたことかな。

解散なのにこんなに盛り上がる?! みたいな。楽しそうじゃないの!? って

──デモ音源のレコーディングもHELLO DOLLYで行われていて、エンジニアも久保さんがやられているんですよね。音源化するときに意識されたことはありますか?

久保:アダムのちょっとしたピッチのズレを綺麗に直しちゃうかなみたいなことはあったけど、意外とギターとかすんなり録れていたなと思って。今はピッチもズレていてもいいなと思ってやっています(笑)。当時からすごく楽しんでレコーディングもやっていましたね。

──SUNNY CAR WASHの解散を聞いたときはどんな心境でしたか?

久保:うわ、マジかって感じでした。せっかく始まったのに……みたいな。しかも、解散が決まってからアルバムリリースだったり、ラストライヴだったり、いろいろ盛り上がっているじゃないですか? メンバーは毎日HELLO DOLLYに来るし、解散なのにこんなに盛り上がる?! みたいな。楽しそうじゃないの!? ってなっちゃっているから、なんだこれ、みたいな(笑)。きっと、またバンドやるんじゃないですかね、あいつら。

 

──ちなみにSUNNY CAR WASHが作る楽曲に変化を感じられました?

久保:パンクなんだけど、ちょっと大人になっていってる気がするんですよね。曲も。

──どういうところにそう感じられたんですか?

久保:演奏したときの雰囲気感もそうだし、アダムの雰囲気も昔に比べると良い意味でちょっと大人になっている気がする。羽根田もベースをちゃんと弾くようになったしね(笑)。昔の羽根田の映像、見せてあげたいですよ。やばいですから。ベースがぼやややーんって鳴ってるだけなので(笑)。1回訊いたことあるんですよね。「アダム、あれはあれでいいの?」って。「いやー、弾いてはほしいんですけど……」って言ってました(笑)。

──あははは。どこかで羽根田さんもよし弾くかとスイッチが入ったと。

久保:最近はずっと真面目に弾いていますね(笑)。

突然ドカーンって現れたと思ったら、ボカーンと消えてしまったみたいな

──SUNNY CAR WASHがきっかけになって、HELLO DOLLYや宇都宮の音楽シーンが盛り上がっていっている感じはありますか?

久保:一時はいい感じがあったんですけど、彼らが上にあがっていって、存在が雲の上ぐらいになっていったじゃないですか。そうすると、目標が憧れになってきちゃって。ちょっと身近にいて、対バンもできてとかだったらまた違うじゃないですか。それを超えてデカくなっていった感じでしたね。

──SUNNY CAR WASH解散にあたって2人にお言葉をいただけますか。

久保:正直言うと、もうちょっと続けてほしかったですけどね。でも、こうなっちゃったので、どう言えばいいんだろうなあ。アダムはこれから1人で戦うので、相当な期待とプレッシャーがあると思います。羽根田くんは真面目なので、いっぱい稼いで、焼き肉を奢ってくれると思います、きっと(笑)。

──久保さんにとってのSUNNY CAR WASHはどんなバンドでしたか?

久保:台風ですね。突然ドカーンって現れたと思ったら、ボカーンと消えてしまったみたいな。もうちょっと見ていたかったですね。変な話、武道館やるのでゲスト出すんでみたいな感じでふらっと観にいけるような、そこまで観ていたかったですね。


※本インタビュー記事は、クラウドファンディング企画「SUNNY CAR WASH、Zepp DiverCityラストライブを初の映像作品化」のリターン品として制作されたZINEに掲載されている内容を転載しています。

<目次>
・ラストライブドキュメンタリー
・SUNNY CAR WASH、メンバーラストインタビュー
・Special対談:岩崎×監督・松居大悟
・Special対談:岩崎×阿諏訪泰義
・アルバム『ハネダ!ハネダ!ハネダ!』セルフライナーノーツ
・Special対談:羽根田×MONO NO AWARE 玉置周啓
・歴代ドラマー鼎談会
・地元・宇都宮ライブハウスHELLO DOLLYの名物店長 久保に訊く
・SUNNY CAR WASH カメラマン樋口インタビュー
・過去ライブ写真ギャラリー


SUNNY CAR WASH プロフィール

2016年10月に結成。宇都宮出身、Vo/G岩崎優也、Ba羽根田剛による2人組ロックバンド。
甘酸っぱい気持ちにさせる声、生活感があふれるラブソング、そして衝動が抑えきれない『ド直球』なサウンドに魅了される人が続出。
2017年11月に初の全国流通盤1st Mini Album「週末を待ちくたびれて」をリリースし、タワーレコード「タワレコメン」、HMV「エイチオシ」などCDショップのレコメンドへ選出され、第10回CDショップ大賞2018の「関東ブロック賞」も受賞。
未確認フェスティバル2017で「審査員特別賞」を受賞したこともきっかけとなり、ライブハウスシーンで頭角を現した。
2ヵ月連続でメンバーの生まれ年にちなんだ1997枚限定シングルのリリースや、7inchアナログの限定リリースも即完売と好評な中、2019年3月にVo/G岩崎優也の体調不良により活動休止。
その後2年ぶりに活動再開をしたが、2021年12月28日に行われた「さよなラストLIVE 2021~はじめてのラストライブ~」at Zepp DiverCity TOKYO公演をもって解散。
2021年12月に約3年ぶりにファン待望の新曲を2週連続で配信リリース、2022年2月23日には1st Albumをリリース!

■リリース情報

SUNNY CAR WASH『ハネダ!ハネダ!ハネダ!』

発売日:2022年02月23日
価格:4,400円(税抜¥4,000)
品番:VPCC-80703
収録曲:
1. bbb
2. ハッピーエンド
3. 夢で逢えたら
4. ファンシー
5. TOKKO
6. カーステレオ
7. 放課後
8. ティーンエイジブルース
9. デイドリーム
10. てんてれ
11. ダーリン
12. ムーンスキップ
13. キルミー
14. それだけ

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