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【INTERVIEW】オレンジスパイニクラブが語るバンドの歴史、現在を“切り取った”最新アルバム

StoryWriter

YouTubeのMV再生回数が3000万回を超える大ヒット曲「キンモクセイ」をはじめ、良曲を生み出す茨城県出身の4人組バンド、オレンジスパイニクラブ。そんな彼らと筆者の出会いは、PK Shampooのヤマトパンクスがきっかけだった。ライブハウスやミュージシャンたちの集まる酒場で出会い、作詞作曲を担っている兄弟――スズキユウスケ(Vo, G)、スズキナオト(G, Cho)それぞれと、たまたま酒を酌み交わした。そのときの印象は、少しシャイな奴らといった感じだった。

その後、ツタロックDIGのライブに足を運んだとき、彼らのライブを見て驚いた。音の厚みが厚い、骨太で芯のあるロックバンドなのだ。メロディというよりもその音像に興奮を覚えた。そして今年のフジロック2日目。朝イチでRED MARQUEEに足を運んだら、灼熱の中、列を作って待っているファンがいて、ちゃんと彼らのサウンドは音楽好きに届いているんだなと勝手に嬉しくなった。

今回、2ndアルバム『Crop』のリリースに伴う取材を行うにあたり、じっくり彼らの歩みを調べてみた。すると、彼らが影響を受けたと公言しているKiNGONSを想起させるような衣装で、The ドーテーズというバンド名でもともとは活動していた。サウンドも青春パンクやガレージロックといった趣で、オレンジスパイニクラブとは大きく方向性も違う。一体彼らは、どのようにしてオレンジスパイニクラブの音楽性へと行き着いたのか、そして、そんな彼らの最新作はどのようなテーマが込められているのか? スズキユウスケ、スズキナオト、ゆっきー(B, Cho)、ゆりと(Dr, Cho)の4人に話を聞いた。

取材&文:西澤裕郎
写真:Jumpei Yamada


真剣に悪ふざけしたいみたいな感じだった

――今回初めてインタビュー取材させていただくわけですが、オレンジスパイニクラブの前身バンドとなるThe ドーテーズのことって、あまり触れないほうがいいんでしょうか?

ユウスケ:全然そんなことないですよ(笑)。

――いまの楽曲の雰囲気とだいぶ違いますよね。バンド名も見た目も。

ユウスケ:ただ大人になっただけです(笑)。

ゆっきー:たぶんドーテーズのままやっていても、こうなっていた可能性はある(笑)。

――MV「ハルによろしく」の冒頭で、改名前のThe ドーテーズ時代の映像が使われていますが、同じメンバーがやっていたのかなと思うようなセットリストの楽曲ですけど、当時は何を考えていたんでしょう?

 

ゆっきー:悪ふざけですよね。何も考えてなかった(笑)。

ナオト:真剣にやるのがダサいと思ってたんですよ。今も若いですけど、まだ16とかのクソガキだったので。何も考えてなかったですね。

――真剣にやることがかっこいいとは思ってなかった?

ナオト:そうですね。真剣に悪ふざけしたいみたいな感じでした。

――別のインタビューで、2016年の楽曲「タルパ」がオレンジスパイニクラブに繋がる重要な曲になったと話していますが、どういうふうに生まれた曲だったんでしょう?

ユウスケ:100%きっかけというわけではないんですけど、「タルパ」ができたときは、たしかにパンクバンドとしてやってきたThe ドーテーズとは絶対違う感触がありました。

ナオト:歌詞の感じとかも違ったしね。

ゆっきー:この曲きっかけに変わったというより、その曲の時期ぐらいから変わってきていたんだよね。2人(ユウスケ、ナオト)の作る曲とか、影響されている音楽も変わってきていて、それが最初に出たのが「タルパ」だったのかなという感じ。

 

――聴く音楽には、どのような変化があったんでしょう?

ナオト:何を聴いていたんだろう……。

ゆっきー:それこそナオトがヒップホップとかを聴き始めたんじゃない?

ナオト:それはたしかにあるかもしれない。すぐ影響を受けちゃうんで。

――昔のライブ映像を観ると、衣装も揃えたり、かなりコンセプチュアルだったじゃないですか? そこらへんも「タルパ」の時期に変えていった感じなんでしょうか。

ユウスケ:衣装を揃えていたのは、結成して1年後ぐらいの2013年とかで、「タルパ」ができたあたりから衣装を揃えなくなったんですよね。

ゆっきー:だんだんみんなが脱ぎ始めた。今日つなぎ着なくていい?みたいな(笑)。

ナオト:臭いから着ないとか。

ゆっきー:今日持ってくるの忘れたとか(笑)。そんな感じでした。

左から、スズキユウスケ、ゆっきー、ゆりと、スズキナオト

――当時のドーテーズは、キンゴンズやKING BROTHERSのようなガレージロックに影響を受けた音楽をやろうと考えていたんですか?

ナオト:そうですね。それ以外に、The ピーズがルーツにあって。特にユウスケと俺は影響されているし、当時は今以上に意識していた音像ではありますね。

ユウスケ:もともとは青春パンクを志向していたので、ピーズに影響されたのは若干後ですかね。結成したばかりの初期衝動より、ちょっと後ぐらいにピーズからの影響を受けるようになった記憶があります。

――ゆっきーさんとゆりとさんも、同じくピーズに影響は受けている?

ゆっきー:僕は兄弟が聴いているから、なんとなく聴いてました。

ゆりと:僕は移動する車内で流れている音楽が自然と耳に入ってきました。

――どうして、そこまでピーズが響いたんでしょう。

ナオト:やっぱり詞だと思います。あと、ピーズって他のパンクバンドに比べてすごくおしゃれなコードを急に使ったり、歌詞も暑苦しいこととか言わない。パンクなのに抜け感があるというか。そういうのが僕ら世代にも受け入れやすいのかなと思いますね。

――オレスパは、ラフィン・ノーズとも対バンもされていましたよね。いわゆる反骨精神だったり、精神的なパンクの部分はどれくらい持っていると思いますか?

ナオト:自分なりの解釈をして、パンクってこういうものだよねっていう精神はあります。ただ、パンクスピリットみたいなものはないのかなとは思うんです。

ユウスケ:10代の頃は、きれいな歌を歌ってるバンドが対バンにいたら、なんだこいつら!とか思って、ライブの勢いとかで打ち負かすみたいな精神状態ではありました。ある時、対バン相手がMCで「さっき前に出てた、ただごちゃごちゃやってるだけのバンドみたいなのもいますけど」みたいに話されたことを、めっちゃ覚えてます(笑)。

「FUJI ROCK FESTIVAL’23」出演を振り返って

――オレンジスパイニクラブのライブを観たときに、めちゃめちゃ骨太なロックバンドでびっくりしたんです。自分達はライブバンドだという感覚は持っていますか?

ユウスケ:持ってはいるんですけど、曲幅が広いので勢いだけに任せたくはないという想いがあって。そういう意味で曲によって強弱は生まれてくるんですけど、ライブバンドって言われる所以はドーテーズの頃のまま受け継いでいるのかなと思います。

ナオト:絶対的に俺らの音っていう部分は意識してやっていますね。渋い音が好きなので、ギターロックとかJ-POP寄りに流されちゃうとおもしろくなくなっちゃうので。

ゆっきー:上手にやれればやりたいですけど、テンション上がるとそうなるし、速い曲が入ってくるとどうしてもパンクっぽくなっちゃうというか。

ユウスケ:血が騒ぐんだよね。

――ゆりとさんは?

ゆりと:僕もそうですね。スイッチが入るとガッ!となっちゃうので、そうならないように自分をコントロールしながらライブバンド感は出していきたいんですけど、難しいところですよね。ある種、リズム隊は落ち着いていていいのかなと最近思っていて。熱量だけがかっこいいではないと思っているので、魅せるところは魅せて、聴かせるところは聴かせるかっこよさを、鍛錬してつけていきたいところですね。

――「FUJI ROCK FESTIVAL’23」の2日目朝のレッドマーキーに朝イチで行ったら、めちゃめちゃ人が並んでいて、すごい注目を集めていましたよね。フジロックでの演奏はどうでしたか?

ゆっきー:難しかったですね。

ナオト:そう、難しかったんですよ。お客さんが正直というか。しっかり演奏を観ている感じがして。楽しかったんですけどライヴとしてはまだまだだなと思っちゃいましたね。

――難しかったというのはどういう部分で感じたんですか?

ナオト:一時期、SCOOBIE DOのレッドマーキーの映像をめちゃめちゃ観ている時期があったんですけど、めちゃめちゃ盛り上がってるんですよ。そのぐらい盛り上げさせる気持ちでいっちゃったので、そことはちょっとギャップがありましたね。

ゆっきー:あとは認知の問題もあったというか、みんなが知ってる曲をやっている時は反応がいいしって感じはありましたね。

ゆりと:手応えがあったかなかったかで言われたら、なかったんですけど、不完全燃焼だったということは、自分でもまだできることがあったかなとは思っていて。お客さんがどうこうというよりは自分は満足してなかったので、まだまだだなって感じです。

――今年の夏は「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」にも出演されていました。雰囲気はだいぶ違ったかなと思いますが、いかがでしたか。

ユウスケ:ロッキンは、俺らがいつもいる場所というか、安心感があって、素直に楽しくライヴできたし爽やかにできました。

ナオト:茨城が地元なので、いつかひたちなかの大きいステージに立ちたいですね。

これから実っていくとか、良いところを切り取ったアルバム

――そして、2ndフルアルバム『Crop』が完成しました。アルバムタイトルにはどのような意味があるんでしょう?

ユウスケ:今作は、切り取るということがテーマにあったので、最初は『トリミング』という案もあったんです。

ナオト:切り取るって意味としてもいいんじゃない?ってなったんですが、ちょっと犬っぽいよねって話が出て(笑)。同じ意味合いで語感のいい言葉を探したとき、『Crop』が出てきて。収穫とか実るという意味もあるし、いいんじゃないのってなりました。

ゆっきー:一番は切り取るって意味が大きかったよね。

ユウスケ:今作には、いろいろなテーマの曲があって、シングルで出した曲が結構入っています。いろいろ含めて、これから実っていくとか、良いところを切り取ったアルバムにしていく意味を込めて『Crop』にしました。

――ジャケットもまさに切り取るというテーマが反映された作品になっていますね。

ナオト:デザイナーの吉良さんと配信シングルのジャケットを一緒に何個か作ってきたんですけど、切り取るという意味も含め、配信シングルのジャケットとアー写の一部を切り取って、それを寄せ集めたんです。

――オレンジスパイニクラブの良いところ切り取って、収録したような作品になっているんですね。

ナオト:曲も男女の日常とかが切り取られて入っている感じもありますし、様々ですね。

――「ルージュ」はMV含め、ちょっとエッチですよね。

ナオト:エッチですかね(笑)?

 

――大人なテイストがするなと感じました。これはナオトさん作詞曲ですが、どういうふうに着想して作られた曲なんでしょう?

ナオト:最近、オレンジスパイニクラブらしさを意識しすぎているなと思って。一度そういうのをやめて、自分の好きなように肩の力を抜いて作ってみようと思って作った曲なんです。アレンジャーが入っているんですけど、スクラッチとか平成初期感みたいなものはデモの段階から入れて、さらにブラッシュアップしてもらいました。今までのオレンジスパイニクラブっぽくない曲ではあると思うんですけど、メロディとか歌詞とか、落とし所は今までと同じなので、ある意味新しいけどオレンジスパイニクラブらしい曲だなと思っています。

――あえて今までやっていないようなことをやっていこうとした部分があったんですね。

ナオト:そうですね。曲に合ったアレンジをしていった方がいいなと今作から思うようになって。今までだったら、俺らっぽくないからもっとバンドっぽくしようとかって手法をとっていたはずなんです。アルバム全体で見ても、いい状態で聴いてほしい気持ちが強くなったので、新しいことでも恐れずにやっていこうかなって感じです。

――それぞれ今作の中で新しく取り入れたことや、挑戦したことをお伺いしたいなと思うんですけど、ユウスケさんはどうでしょう。

ユウスケ:僕は歌い方ですね。今までは、できた歌詞とメロディをなんとなく歌っていて。高いところが出すのに必死になってAメロとかBメロとかをないがしろにしていたような感じだったんですけど、今回は一言一言を大事にして、聴いている人にもなるべく伝わりやすいよう強弱つけて歌ったりとか。レコーディング中もちょっと手の動きとかをつけてみるとか、新しいことを取り入れながらレコーディングしてみたんです。そしたら意外と歌も変わったっておっしゃってもらえることが多かったので、アルバム通して全曲やってみました。いい方向にいい形になったかなと思いますね。

――そういう意識の変化には、なにかきっかけがあったんですか?

ユウスケ:ボイトレに行っているんですけど、その先生に言われたんです。化粧もせずに曲をステージに立たせるな、おめかししてステージに立たせてあげないと曲に失礼だと。お前が作る曲にも、弟が作る曲にも失礼だし、せっかくメンバー4人で演奏しているのに、お前が台無しにしてどうするんだってことを言われて目が覚めたんですよね。そこからは、ちゃんと1曲1曲大事にしてライブでもちゃんと歌うようにしていますね。

――ゆっきーさんはどうでしょう。

ゆっきー:「君のいる方へ」で、歪みのエフェクターをベースで踏んでいて。今までエフェクターを通すことをしていなかったんです。僕はベースとアンプだけみたいな結構シンプルなものが好きで、エフェクターをあまり通したくなかったんですけど、「君のいる方へ」でナオトに歪みを入れてほしいって言われて歪みを入れたって感じですかね。

――エフェクトをかますことに抵抗はあった?

ゆっきー:結構抵抗はあって。でも、ナオトがそんなに言うなら、入れるかってなって入れた感じです。あと、「タイムトラベルメロン」とか「ルージュ」とか「ピンクフラミンゴ」とか曲のベースラインのフレージングとかは曲が変わってきていて。拍の捉え方みたいなものは、ちょっと意識したところがありますね。ファンクとかブラック・ミュージックとかそっちの方を意識してやってみた感じです。

――ゆりとさんはいかがでしょう。

ゆりと:新しいことはあまりしてはいなくて。今まで通りダイナミクスというか、強弱は大事にしています。奥行きを出したいというところだけ意識してましたね。あと「hug.」でブラシを初めて使ったぐらいですかね。棒じゃなくなったくらいですかね(笑)。

――こういう曲だからということでブラシを取り入れた?

ゆりと:そうですね。ナオトが作った曲なんですけど、デモを出してくれた段階でブラシのニュアンスで作られていたので使おうということで使いました。

――ナオトさんはいかがでしょうか。

ナオト:『Crop』というアルバム全体で見た時に、前作の『アンメジャラブル』と比べて真逆のことをやっているなと思っていて。そういう意味では、今作は全体的に新しい伝え方をしているなと思っていますね。

 

――11月からは東京・Zepp Shinjuku(TOKYO)公演を含む全16公演のツアー「2nd Full Album 『Crop』Release ONEMAN TOUR 2023 -見えないものに愛を-」を開催します。どんなツアーにしたいですか?

ナオト:前回のリリースが一昨年にあって、そのときのツアーはアルバムの曲を全曲やるツアーだったんです。今回のツアーはアルバムの曲もやるし、前の曲もやる、ライブとして楽しんでもらえるようなツアーにできたらなと個人的には思っていますね。

ゆりと:前回のツアーはセットリストも変えなかったですからね。固定でいっていたのでそのへんも変えていけたらなと思います。もしかしたら全箇所来る人とかもいると思うので、そういう小さなところに気を遣いながらツアーできればなと思いますね。

ゆっきー:アルバムを出してのツアーが2年振りなので、演奏力とかみんな上がっていると思うんです。あの時はバタバタしたツアーだったなと思っていて、もうちょっとちゃんとした、演奏もみんなに魅せるっていう感じのライブができたらいいなと思いますね。

ユウスケ:長いツアーをやるのが3回目で。初回の時は、はじめましてってめっちゃ距離があった感じがあったんですけど、去年行った時はちょっとお客さん側からうぇーいって来てくれて。今回は3回目ですから、さらにお客さんとの距離を縮められればと思ってます。あと今回はお客さんと一緒に歌いたいです。

――ユウスケさんの新しい歌い方もライブでどう響くか楽しみですね。

ユウスケ:早く披露したいですね。僕の歌声を早く聴かせたいです(笑)。


■リリース情報

オレンジスパイニクラブ
2nd Full Album『Crop』
発売日:2023年9月20日(水)
定価:3,300円(税込)
品番:WPCL-13501
https://orangespyni.lnk.to/Crop
収録曲:
1. ルージュ
2. 君のいる方へ
3. タイムトラベルメロン(テレビ東京ドラマ25「真相は耳の中」主題歌)
4. no reason
5. Crop
6. ハルによろしく
7. ピンクフラミンゴ
8. さなぎ
9. 洒落
10. パピコ
11. レイジーモーニング
12. 9分間
13. hug.

■ライヴ情報

2nd Full Album 「Crop」Release ONEMAN TOUR 2023 -見えないものに愛を-
2023年10月20日(金)@千葉 千葉LOOK ※ソールドアウト※
2023年10月26日(木)@北海道 札幌Sound lab mole
2023年10月28日(土)@青森 八戸FOR ME
2023年10月29日(日)@宮城 仙台enn 2nd
2023年11月4日(土)@福島 club SONIC iwaki
2023年11月10日(金)@新潟 新潟GOLDEN PIGS RED
2023年11月11日(土)@石川 金沢EIGHT HALL
2023年11月17日(金)@香川 高松DIME
2023年11月19日(日)@鹿児島 鹿児島CAPARVO HALL
2023年11月21日(火)@熊本 熊本B.9 V2
2023年11月22日(水)@福岡 福岡DRUM Be-1
2023年11月24日(金)@広島 広島VANQUISH
2023年11月26日(日)@京都 京都磔磔 ※ソールドアウト※
2023年12月1日(金)@愛知 名古屋ボトムライン
2023年12月6日(水)@大阪 心斎橋BIGCAT
2023年12月9日(土)@東京 Zepp Shinjuku
ALL Ticket ¥4,000(+D)

チケット購入URL
https://orangespinycrab.com/croptour2023/

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