watch more

【密着レポ】BLUEGOATS「君たちの世界を変える為に来ました!」ファンから集めた28万円を競馬にぶっ込んだ青春パンクアイドルの1日

StoryWriter

取材&文:平賀哲雄
写真:すずき大すけ

横浜アリーナを満員にするという目標を掲げ、菅波栄純(THE BACK HORN)や田仲圭太(TOPICS.LAB、ex.SCRAMBLES)などが手掛ける青春パンクを歌い叫び続けている女性アイドルグループ・BLUEGOATS(ブルーゴーツ)が、2025年3月2日(日)、ギャンブル観戦イベント~渋谷CYCLONEでの単独ライブ【DEAD OR A LIVE】を開催した。StoryWriterでは、この日の彼女たちの活動に密着取材し、そのレポートをインタビューも交えてお届けする。

INTERVIEW:BLUEGOATS

BLUEGOATS

昼下がりの渋谷某所。BLUEGOATSのほんま・かいな、ダイナマイト・マリン、チャンチー、ソンソナがギャンブル観戦イベントを行うべく集合。このイベントは、金欠のほんま・かいながプロデューサー兼社長(三川陸)に相談し「1RTにつき100円競馬に賭けて、勝ったらあげるよ」との約束をもとに借りたお金+YouTube生配信でのファンからのスパチャで集めた計23万3440円。これを競馬(チューリップ賞と中山記念)にぶっ込み、そのレースの模様をファンと共に観戦するというアイドルらしからぬ企画。というわけで、開演前からスマホで競馬予想サイトを見つめながらブツブツ言っていたかいな中心に、メンバーもスタッフ陣もそわそわしていた。

今回の密着取材を依頼された私は、これが初のBLUEGOATS現場。四半世紀ほど音楽ライターとして様々な取材をしてきたが、競馬に大金をぶっ込む直前のアイドルと対面した経験はなく「とんでもない現場に来てしまったな」と思いながらも、まずは事前にお願いされていたメンバー4人へのインタビューを敢行することにした。

「いつか勝つ為の負けなんで」

──初めましてなので、まずはグループ内でのポジションやキャラクターを知りたく、自己紹介からお願いできますでしょうか。

チャンチー

チャンチー:チャンチーと言います! 私がグループ内でいちばんポジションやキャラクターみたいなものがないんですけど……どういうキャラだろう?

ほんま・かいな:笑顔じゃない?

チャンチー:笑顔みたいです(笑)。

ソンソナ

ソンソナ:ソンソナです! グループの中でのキャラクターは……。

ほんま・かいな:かわいい。

ソンソナ:かわいいで、一応頑張らせて頂いてます(笑)!

ほんま・かいな

ほんま・かいな:ギャンブラー担当、ほんま・かいなです。

──今回の企画がまさにギャンブルですもんね(笑)。

ダイナマイト・マリン:ラーメン担当、ダイナマイト・マリンです。最近オススメのラーメン屋さんは、新宿の満来です。

ダイナマイト・マリン

──タモリさんの行き付けだった、チャーシューがどデカいお店ですよね。BLUEGOATS、自分たちではどんなグループだと思いますか?

ほんま・かいな:青春パンクという括りではあると思うんですけど、まだいろいろ模索しながらやっているんで、これから自分たちだけのジャンルみたいなものを見つけたいと思っています。でも、他のアイドルがやっていないようなことをやっているなと思います!

 

──経歴を調べたところ、今年で結成4年目。その間に辞めていったメンバーもいたみたいですが、ここまで続けてこれた要因って何だと思いますか?

ほんま・かいな:最初のほうはそもそも辞める理由もないし、今さら他にやりたいこともなかったし、BLUEGOATSから出て行く理由がないから続けてきた。で、今はいちばん大きい目標が横浜アリーナなので、そこに立つ為だけにやっているんですよね。あと、日々いろんなことがあって、いろんな納期に追いかけられているんですよ(笑)。「この日までに歌詞書いて」とか「この日は撮影だからね」とか。それに追われているから、自然と続いていっている感覚もあります。毎日必死に生きていたら、4年も経っていた感じですね。だから「辞めたい」と思ったことがないんですよ。

──そんなBLUEGOATSの4人がそれぞれどんな経緯でアイドルを目指し、このグループに加入するに至ったのか。エピソードゼロ的なストーリーも伺わせてください。では、チャンチーさんから。

チャンチー:私は中学生の頃、本音を話せる人も頼れる人もいなくて。で、学校って「スカートは短くしちゃいけない」とか「靴は踏んじゃいけない」とか、どうでもいいことを指導されるじゃないですか。私はそんなことよりも「大事なものって何なんだろう?」とか「自分は今なんで生きているんだろう?」とか、そういうことを知りたくて。それで、中学生にして人生に迷ってしまっていたとき、ももクロさんだけが自分の生き甲斐で。すごくキラキラしていて大好きだったんですよね。だから「自分もこうなりたい!」って思ったんです。まわりからは綺麗事って言われるけど、私は「努力すれば、絶対に夢は叶う!」って証明したくなってアイドルになりました。

ほんま・かいな:あのー、インタビュー中に失礼だとは思うんですけど、競馬予想サイトを見ていてもいいですか? まだどの馬にどう賭けるか決めきれていなくて……。

──どうぞ、どうぞ(笑)。続いて、ソンソナさん。

ソンソナ:幼い頃に初めてAKB48さんを見て、そこからアイドルというものを知って。可愛くて、笑顔で歌って踊っているアイドルがただただ好きだったんですね。で、自分は大人になったら勝手にアイドルになるもんだと思い込んでいたんですよ(笑)。それで家で踊ったりしていたんですけど、実際にアイドルになろうと思ったらオーディションを受けなきゃいけないじゃないですか。でも、それを受ける勇気がなくて。自分がなりたいアイドルになれるヴィジョンが浮かばないグループには入りたくなかったし。あと、お金があんまりない家庭だったこともあって、アイドルになるか、生活を取るか、天秤にかけてずっと悩んでいたんです。そんな中で、BLUEGOATSのオーディションを知って、いろいろ調べてみたら結構……下ネタ?

チャンチー:アイドルっぽくはなかっただろうね(笑)。

ソンソナ:洗濯機を売ったりとかもしていて(笑)。それでも、ただただ惹かれたんですよね。ライブとかも観て、このグループに自分がいて、このグループが大きくなっていく未来が見えたんですよ。それまで自分が観ていたグループは大きいステージに立っていたし、私的には人生を懸けてアイドルをやるわけだから、絶対に自分が立ちたい大きいステージに立てるアイドルになりたいんですけど、BLUEGOATSはその姿がイメージできたからオーディションを受けることにしたんです。なので、加入してから今日まで後悔したことはないですね。絶対に成功できると思っているので。

──続いて、マリンさん。

ダイナマイト・マリン:私も物心ついたときからアイドルが好きだったから「アイドルになるしかない、それしかない」みたいな感じで。それで、モーニング娘。さんとか、WACKのオーディションも受けたりして。自分は絶対にアイドルしかないと思っていたんですけど、何回受けてもダメで。書類審査すら通らないこともあって。それで「どうしよう?」って路頭に迷っちゃって、工場に就職することになったんです。そこで何年か働いたときにこのグループのオーディションを見つけたんですけど、明らかに他のアイドルと違ったんですよね。パッと見て唯一無二なものを感じて、オーディションを受けることにしたんです。私は「強くありたい」という気持ちが自分の中でいちばん大きくて、BLUEGOATSは破天荒なことをやったりしていても、ちゃんと一本ブレない芯があるんですよ。だからメンバーになれて良かったです。

──マリンさんは「アイドルをこうあるべき」的なマンガを描かれていて、それが話題になっていたりするじゃないですか。ゆえに芯のあるBLUEGOATSに惹かれたんでしょうね。

ダイナマイト・マリン:最近、自分のマンガを描いて、それに対して「アイドルはこうあるべき、みたいな考えを持っているアイドルわら」みたいなツイートを見かけたりもするんですけど、それってプロ意識がないだけじゃないですか。なので、自分はちゃんとアイドルというものにプロ意識を持っていたいなと思っているんです。

──かいなさん、そろそろ大丈夫でしょうか(笑)?

ほんま・かいな:すみません! 私がアイドルになったきっかけは……そもそも働きたくなかったんですよ。バイトとかやってみて「マジで向いてないかも」と気付いたんです。両親が仕事で帰ってくるのが夜遅くて、あんまり楽しくもなさそうだったし、それをずっと見て育ったから「働くのって楽しくないんだろうな」と思っていたこともあって。それで「楽しいことをしたい」と思ったら、それがアイドルだったんですよ。ただ、キラキラしたアイドルには向いてないと思っていて、そんな中でこのグループは「なんか面白そうだな」と感じて。プロデューサーの三川さんと面接して入ることに決めたんですけど、最初からめちゃくちゃで「なんでこんなことやんなきゃいけないんだ?」と思うようなことをやってて。でも、私は「売れる為ならなんでもやります!」と言って入ってきているんで(笑)。

──言質を取られていたわけですね(笑)。

ほんま・かいな:取られているし、自分の中でマジで横浜アリーナという場所が特別で。なんでかと言うと、母親がSnow Manのファンで一緒に横浜アリーナでのコンサートを観に行ったことがあるんです。なので、自分がもしビッグになるなら、絶対に横アリは行きたいなと思っていて。母親も知っている会場だし、「ウチの娘は横アリに立った」って自慢できるじゃないですか。だから「その為ならなんでもやります」って。それで、このグループに入ったら自分の価値観が一瞬でめちゃくちゃになって(笑)。でも、それがすごく楽しかったんですよ。それまで普通に生きることを無理して頑張っていた側だったんで、でもここには普通じゃないことがいっぱいあって「たのしい!」と思ってやっていたらこんなに時間が経っていました。

──相性が良かったんでしょうね。今日も普通じゃないことのひとつとして、ギャンブル観戦イベントを開催するわけですが、そこに至るまでの経緯を教えてもらってもいいですか?

ほんま・かいな:言っておきたいのは、こういうことをやることになった発端は私じゃないんですよ。かつてとある企画があって。その当時のメンバーの給料は2万円だったんです。その2万をぜんぶ競輪に突っ込ませてみた、みたいな企画がすべての発端。だから、私が自ら競輪場に行ったわけでもなく、ギャンブルに興味があったわけでもなく、背中を押されてギャンブルの世界に足を踏み入れたんです。今回は競馬のイベントですけど、バーン!ってゲートが開いたから馬のように走り出していたんです(笑)。働かないで、予想するだけでお金を得られるって凄いことじゃないですか! 「こんなシステムあってもいいの?」と思って。それで気付いたらハマっていました。負けても、いつか勝てるし。いつか勝つ為の負けなんで、みんなやったほうがいいと思います。

──空気階段の鈴木もぐらさんにインタビューしたことがあるんですけど、まったくおんなじことを言っていました。遊園地やスポーツ観戦はお金を払うだけだけど、競馬は素晴らしいレースを観させてもらったうえにお金をもらえることもある。だから、みんなもやったほうがいいって。

ほんま・かいな:アハハハ! その通りだと思います(笑)。

──それを今回はイベント化しちゃったわけですよね。

ほんま・かいな:ギャンブル好きなファンの人も最近増えてきていて。それならそういうギャンブル好きのみんなも巻き込んで、そのうえで私たちのライブに呼びたいと思ったんですよ。ただ「ライブに来てください」とお願いしても、地下アイドルに興味がない人は来ないじゃないですか。なので、いったんみんなでギャンブルをやろうと。しかも私たちはみんなのお金を集めて賭ける。他人事じゃなく自分事にさせる。そしたら一体化して盛り上がれるじゃないですか。で、その熱量を持ったままライブに移動する。

 

──なるほど。要するにアイドルとギャンブルという異なるカルチャーの橋渡しをしようとしているわけですね。簡単に言えば、異文化交流。それで、BLUEGOATSのファンも増えたら最高だよねっていう。

チャンチー:ファンの人たちも一体となってその異文化交流をしようとしてくれているんですよ。私たちはこの4人だけがBLUEGOATSじゃなくて、ファンひとりひとりもBLUEGOATSなんです。だからこそ今日のイベントもできるんだと思うし、きっとライブにも初めて来てくれる方々がいると思うんですよね。アイドルに偏見を持っている方も多いと思うんですけど、ギャンブラーの皆さんにはこの1日を通して「こんなアイドルもいるんだ! アイドルって面白いんだ!」と思ってもらえたらなって。で、BLUEGOATSとその音楽とメンバーのことを好きになってもらいたいですね。

──ある意味、粗品さん的ですよね。彼のYouTube動画を通して競馬ファンがライブに来てくれたり、逆に音楽ファンが競馬を楽しむようになったりしている。それをアイドルがやっているところにまたひとつ面白さがあると思います。

ダイナマイト・マリン:あと、BLUEGOATSは歌詞をメンバーが書いていたりして、それぞれに伝えたいことは違うんですけど、例えば私はライブで日頃の鬱憤を晴らしてもらいたいなと思っていて。だから、今日はギャンブルで鬱憤が溜まっている人にも、それをBLUEGOATSのライブで晴らしてほしいなって思っています(笑)。

──ギャンブルで負けたあとのアフターケアまで? こんなアイドルいないですよ(笑)。でも、そう考えると今夜のライブも凄いことになりそうですよね。人間は競馬で負けたあと、或いは勝ったあとにライブを観るとどれだけ爆発するのか。ある種の実験でもある。

チャンチー:怖いなぁー(笑)。

ほんま・かいな:でも、そう捉えると面白いですね。なんか起こりそうな予感がする(笑)。

ソンソナ:BLUEGOATSのライブに初めて来る人たちがどんな反応するのかも楽しみだよね。最近はどのライブにも初めて来てくれる人が絶対にいるんですよ。だから1回1回のライブに全力で臨みたいし、私はふとしたときに「あのとき、楽しかった!」と思い出して元気になったりするんですけど、今日のライブも観てくれた人たちの記憶に一生残るような時間にしたいなと思っています!

ギャンブル観戦イベント「かいなはロックスターだから仕方ない」全額ツッコむ

話を聞くまでは「アイドルがギャンブル?」と少し構えてしまっていたが、アイドルファンと競馬ファンの異文化交流。そのうえで自分たちのライブの魅力も知ってほしいなんて、実に有意義なイベントじゃないか。4人それぞれのアイドルとしての生き方も魅力的だった。と、さっきまで「とんでもない現場に来てしまった」と思っていたことが嘘みたいに晴れやかな気持ちになって迎えたギャンブル観戦イベント。

BLUEGOATSのファンから競馬新聞を握り締めたギャンブラーまで、老若男女が集った観戦客の前に登場したかいな、マリン、チャンチー、ソンソナ。「忘れられない日にしましょう」とみんなとトークを楽しみながらも、かいなはファンから集めた23万3440円をどの馬にぶっ込むか。単勝、複勝、三連単、馬連、ワイドなど馬券の種類にもギリギリまで悩んでいた。すでに自分の馬券を購入済みの観客たちからのアドバイスも飛び交っていたが、「今は誰の声も耳に入らない」と競馬予想サイトを睨みつけ続ける彼女。しかし、購入時間の締切が迫ると手を震わせながら全額入金。そして「家、帰っていいですか?」「ギャンブルは気持ち!」「騎手、馬、私、三位一体! 今日は君たちも! 四位一体!」と情緒不安定になりながらも、チューリップ賞、単勝9番、ビップデイジーに全額ツッコむと決断する。「中山記念は勝ってから考えます」。

これには客席から「おぉー!」と歓声が上がったが、このあとに中山記念が控えていることもあり、さすがにスタッフ陣は「運営からお願いなんですけど、全額はやめませんか」と止めに入る。しかし「どっちに転んでも伝説になる!」などのファンたちからの説得。そして、自分の意見を曲げない彼女に「かいなはロックスターだから仕方ない」と三川プロデューサーも覚悟を決める(とは言え、その表情は大いに動揺)。そして、馬券購入。まもなくレースの中継スタート。会場の熱気は競馬場、或いは週末に競馬中継を流している酒場の様相を呈し、最後の直線までデッドヒートを繰り広げるビップデイジーに「いけぇ!」「抜かせぇー!」「絶対に負けんな!」等の怒号が飛び交う。が、その声は次の瞬間に虚しく「あぁ~……!」という溜息に変わる。1着、2番、クリノメイ。ビップデイジーは惜しくも3着で敗れた。

熱狂と静寂。希望と絶望。観客から「ナイスファイト!」と讃えられるも、僅か数分に人生の光と闇を見たかいなは項垂れる。これにてファンから集めた軍資金はゼロに。が、これでイベントを終わらせるわけにはいかないと判断したスタッフ陣は、続く中山記念の為に「会社から5万円出す」と男気を見せた(とは言え、三川は「俺の金が……」と大いに動揺)。そして、限られた時間の中で思考をフル回転させたかいなは「最後まで自分を信じていきましょう」と、これまた単勝で9番、マテンロウスカイに全賭け。そして、レースはスタート。マテンロウスカイは善戦することもなく、こちらの会場も先程のような盛り上がりを見せることもなく、9着でフィニッシュ。1着はファンの誰かが推していたルメール騎手のシックスペンスだった。

かいなは「本当にすみません!」「本日、28万溶けました!」と謝罪。一瞬「今に見てろよ!」と強がる場面もあったが、「このあとライブなんですけど、いなかったらごめんなさい」と落ち込みながらその場をあとにした。

 

LIVE REPORT「誰もあなたを笑わない!」競馬終わりのライブ【DEAD OR A LIVE】

やはり「とんでもない現場に来てしまった」。インタビュー終わりの晴れやかな気持ちが嘘のように、イベント終演後の会場はまるで焼け野原のように感じられた。メンバーの控室スペースからは「くそぉ!」と怒り交じりの叫び声が聞こえる。こんなムードでこのあとのライブは果たしてどうなってしまうのだろう。かいなが本当にライブにいなかったらどうするんだろう……。

このイベントの約2時間後、渋谷サイクロン。会場にはメンバーの願い通り、先まで競馬に熱狂していた者たちも含む満員の観客が詰めかけていた。そして、銀杏BOYZの名曲「BABY BABY」が入場曲として流れると共に歌い出し、そんな準備万端のオーディエンスの前に無事現れたかいな、マリン、チャンチー、ソンソナは冒頭から全身全霊のアクトを展開。かいなの「勝つ為の負けなんで」という言葉を思い出す。彼女がライブに現れないなんてことがあるわけなかった。「競馬から始まるという前代未聞のイベントでございますけれども……負けました! 28万、溶けましたー! でも、これこそ! クソアイドルぅぅぅ! 君たちの前で輝く私の人生!」。魂の叫びに競馬で負けた人も勝った人も呼応して、狂喜乱舞しなら共に歌い叫んでいく。

前述の銀杏BOYZやガガガSPから毛皮のマリーズまで、パンクロックとそのマインドが老若男女の人生を変えた時代の音楽。それらを想起させるアティチュードの楽曲群をひたすら畳み掛け「君たちの世界を変える為に来ました! 今日はあなたたちの為だけに歌います!(かいな)」「どんなにメンバーにクズがいても、どんなに社会から外れても、どんなにあなたが決めた選択を否定する奴らがいても、私はずっと! ずっと! あなたの味方だぁ!(チャンチー)」「どんな日でも、どんな明日が待っていても、私はアイドルだから、こうやって私の目を見て顔を見て話を聞いてくれるあなたに言葉を届けるから! ずっとそばにいます!(ソンソナ)」と叫ぶ姿は、まさしくロックスター。そして、めくるめく披露される青春パンクのそのすべてにシンガロングを巻き起こしながら、拳を振り上げて共鳴するオーディエンスの光景もピュアネスに溢れていた。

「素直になれない自分が嫌いだった。でも、BLUEGOATSの活動を通して初めて自分の身近にいてくれる存在を「特別なんだ」と思いました。ここにいるあなたも、誰からも好かれてないとか、誰からも愛されてないんじゃないかと思うことがあると思います。それでも、あなたは世界にたったひとりしかいない特別な人間なんです。誰かの、私たちの特別なんです。特別なあなたに歌います。(マリン)」と披露した「素直になれない」では、劇的で壮大なロックバラードに乗せて、丸裸な自分たちの心を曝け出すように絶唱。IWGPでは、全員で肩を組んで左右に揺れながら聴き入っていた観客の中には、その全力の愛の歌に涙する者の姿もあった。

また、ライブ本編が終了すると、アンコールと叫ぶ代わりに<おねがいこのまま 時間を止めて なんて願わずいよう いざサラバ♪>とオーディエンスが歌い出す場面も。これは、菅波栄純(THE BACK HORN)がBLUEGOATSに提供した「解散」という楽曲で、悲しい印象の強い“解散”を“解り合って散る”という前向きなメッセージに昇華したナンバー。ステージに舞い戻った4人はその曲を「最後、とびきりの笑顔で解散!」と、その言葉通りの満面の笑みで楽しげに歌い上げていく。そして、最後は、本編でも披露した新曲「誰もあなたを笑わない」を今一度。ここにいるすべての人々を全肯定しながら、共に何度も何度も「誰もあなたを笑わない!」とはしゃぎながら歌い合う世界は、これぞ青春。純粋ゆえに上手く生きられない者たちのアンセムそのものだった。

「BLUEGOATSでした! ありがとう!」

この日、インタビューからギャンブル観戦イベント、単独ライブ【DEAD OR A LIVE】と初めてBLUEGOATSを取材させてもらったが、最終的に思ったことはやはり「とんでもない現場に来てしまった」。それはネガティブな意味合いではなく、不器用ながらに全力でファンの人生ごと未来や世界を変えようとする、とんでもないアイドルに出逢ってしまったという意味だ。過去にそうした革命を起こした者たちも、最初から最後まで青春真っ只中みたいな顔して突っ走っていたことを思い出す。競馬に大負けした直後に「君たちの世界を変える為に来ました!」と本気で叫ぶアイドルたちが横浜アリーナを満員にする? 面白いじゃないか! そんな起き得ないことを起こせる異端児の到来を私は、いや、時代は待っている。

取材&文:平賀哲雄


■ライブ情報

BLUEGOATS 5thワンマンライブ『青春謳歌』

2025年5月2日(金)@新宿LOFT
OPEN 18:00 / START 19:00

PICK UP