取材&文:岡本貴之
総勢20組のアイドルグループ出演のライブイベント<Counter FES>が2025年9月26日(金)、渋谷クラブクアトロにて開催された。9時間以上にわたるライブは、終盤でとてつもない盛り上がりとなり大団円。次回12月14日(日)にLINE CUBE SHIBUYAで第2弾が開催されることも発表され、大きな期待感の余韻を残して幕を閉じた。
アイドル戦国時代と呼ばれた2010年代、数々のアイドルグループの誕生・活躍によって裾野が広がったことで、音楽的なアイドル(所謂楽曲派)やライブアイドルが活性化。アイドルならではのライブシーンを創り上げて来た。
しかし2025年の今、TikTokでバズることなど、かわいい系アイドルが主流になっている。<Counter FES>は、そんな時代に於いて、ライブシーンを主戦場にする現行の楽曲派やライブアイドルたち、総勢20組が集結。なんと平日の12時40分からスタートして、21時過ぎまでぶっ通しで行われるという、挑戦的なイベントだ。果たして、どのような1日になるのか? 実際に足を運んでみた。
開演前のBGMには自爆、ザ・ブルーハーツ、ブランキー・ジェット・シティなどが流れていた。開演の12時40分時点で、フロアに集まった観客はおよそ30人ほど。平日のこんな時間にライブハウスにライブを観に来るなんて、みんな何をしている人なんだ。かくいう自分も決して暇なわけじゃないぞ、と誰にともなく言い訳をしつつ開演を迎えた。
●12時40分~14時45分
12:40開演を知らせるアナウンスと共に、トップバッターのFandLが爆音SEに乗って登場。栖永みらが「盛り上がっていけますか!?」と煽ってイベントが幕を開けた。2ビートのサウンドが地面に響く中で動き回り歌う5人に対してペンライトを振るファンたちには昼も夜も関係なく盛り上がっていた。
イベントは、各グループのライブについてのレギュレーション(撮影の可否)のアナウンスを挟みながら進行。GLIM of GRANDはフード付きの衣装を纏ったミステリアスな登場の仕方からセンターがスクリームしてスタート。ラウドでカオティックなサウンドによるミクスチャーロック、デスメタルに乗せた歌が強烈。フロアでは、仲間内の数人が1人をリフトするなどして盛り上がったり(安全な感じ)。肩を組んで輪モッシュ等、局地的な激しい盛りあがりに。
白を基調としたメンバーカラーの衣装が新鮮に映ったRe:Yuは、疾走するラウドロックをノンストップで次々と曲を披露。衣装も相まって一番アイドルっぽさを感じたが、ヘドバンで湧かせたり4人が全力で声を合わせることでオーディエンスを巻き込んでいた。
続くMy Criminal Lovers’はガラリと雰囲気を変えて、ストイックな世界観を展開。轟音に乗って疾走しながらのパフォーマンスで、近寄りがたい雰囲気を醸し出しているように思えたが、終盤ではかなりオーディエンスにアプローチしてフロアからはステージに身を乗り出す観客もいた。
王道アイドル的なコスチュームのBR!OTは、ノイジーなギターを中心にしたサウンドで始まり、スカロック調のアレンジを織り交ぜたり、ポップな曲調で楽しませた。ここまでの5組は、ラウドロックとEDMをベースにした楽曲を披露するグループが集められている印象だった。
タイムテーブルを見ると、5組が出演するごとに5分間のインターバルが設けられていたが、実際にはあまりそうした間隔は取られずに、ひたすらぶっ続けで出演者が登場してライブが行われた。合間に物販のための出入りはあるものの、常時フロアには30人ほどのお客さんがいた。とはいえ、まだまだお客さんが集まるのはこれからだろう。
●14:50~16時55分
福岡を拠点に活動する5人組アイドルグループLOVExxBADが登場。真っ赤に染まるライティングと対照的なブルーのデニムを用いた衣装が印象的。あまり上物が目立たないリズム中心のトラックで、絶え間ない打音とどこかあどけなさを感じさせる歌声の組み合わせは不思議な聴感。4つ打ちに煽られるように激しいアクションを見せてステージ上を転げまわったりとアグレッシブに爪痕を残した。
続いてステージ上がったGRiEDは、御子柴ちひろ、1×7のボーカルのコンビネーションがバチっとはまって、1曲目からグッと引き付けた。2人共キレのあるダンス、ロングトーン、スクリームなど技術的な面でも秀でていた。クラップ、ジャンプも自然発生、終盤はキュートな振り付けと合唱でフロアと一体となり、イベント中盤のハイライト的な盛り上がりとなった。
縷々はゴシック調の衣装でステージ狭しと動き回って歌い迫力満点。ヘドバン、コール&レスポンスと、オーディエンスへのアプローチも盛りだくさん。ラウドな曲からハウス、EDMテイストの楽曲もあり、個性溢れる6人(7人組だが神田ぽめが欠席)がそれぞれが主張しつつ結束する様は痛快だった。
丑03-USHIMITSU-は、登場するなり薄暗い照明の中ですぐに歌い出した。白塗り顔のメンバーが強烈なインパクトを発揮。ファンタジック且つプログレッシブなサウンドに乗せた前衛的なパフォーマンスは、白日夢を見ているよう。終盤延々と放たれた耳をつんざく大爆音のデジタルビートには誰もが立ち尽くすしかなかった。
IQ99がブルーのメイド衣装も爽やかにステージに登場すると、ファンが一斉に声を上げた。ボーカルに合わせたキメの多いトラックが、ファンとの一体感を後押ししている。楽曲は親しみやすく、それこそTikTokでバズを狙えそうな印象の、ここまでの出演者の中で最も正統派アイドル的な存在感が目立っていた。
10組の出演を終えた時点で時刻はちょうど17時に。気付けば会場はかなりお客さんの数が増えてきて、フロアも徐々に埋まってきた。まだまだ折り返し地点、ここからさらなる盛り上がりが予想された。
●17時00分~19時05分
HOTALOOPはキラキラなSEに乗って賑やかにステージへ。「えいえいおー!!」と気勢を上げて、同名曲でライブをスタートした。MIXを打ち盛り上がるオタクたち。ここにきての正統派アイドルポップに一瞬戸惑ってしまったほど、昼間のクアトロとは雰囲気がガラリと変わったライブで、イベント後半戦突入に思いっきり元気を注入してくれた。
ちなみに今日のここまでの傾向として、王道アイドル寄りのグループはブルーの衣装、ロック寄りのグループは黒の衣装と、アイデンティティが一目瞭然で示されていた。そんな中、カラフルなコスチュームで登場のパピプペポは難しいは、軽快なトラックに乗せて華やかにパフォーマンス。コールも沸き起こり安定の人気ぶりが伝わってくる。それにしてもドン・グリの存在感(キリンのお面)がすごい。6人+研修生2名の8人による淀みないフォーメーションによる歌と踊りは、イベントをキラキラアイドルムードに変えた。
と思ったところで、再びガラリと雰囲気を変えたのはO-VER-KiLLだ。BiSHなどの楽曲を手掛けた松隈ケンタがサウンドプロデュースによる4人組ということで、WACK界隈ファンの熱い声援が飛ぶ。革ジャンをベースにした個性的な衣装でゴリゴリなロックチューンは、激しくも切なさがこみ上げる松隈節が炸裂していた。
姉・楽と妹・救の双子で作詞、作曲、振付、プロデュースを行うユニットBABYTANTSは、登場するやものすごい大歓声が発生。見事なハーモニーを聴かせてライブを開始すると、高速パンクチューンに拳を突き上げ、ジャンプするオーディエンス。2人で全身を使って思いっきり踊りながら、しっかりと立ったメロディを聴かせる曲の良さ、心を揺さぶる歌唱力の高さは、ライブ猛者揃いのイベントの中でも、かなり光るものがあった。
5人組グループcowoloは純白の衣装を身に纏いステージへ。終始動きっぱなしのダンスと共に届けられる楽曲は、曲ごとに深い物語性を感じさせるもの。8月にデビューしたばかりとは思えない堂々としたパフォーマンスで魅了した。
●19時10分~エンディング
ここからイベントは最後のスロットへ。ラスト5組のトップで登場したLiVSは、ひと際大きな声援を受けて迎えられた。ステージ前に身を乗り出して歌う4人のどこか切実に迫るものを感じさせる歌声、アクションに、オーディエンスは両手を挙げて感情移入。フロアではみんなで肩を組んで体を揺らし、大きな一体感に包まれた。
そんな余韻が残る中、Finallyの6人がそれぞれ個性豊かなファッションでステージに登場した。ギターのカッティングが牽引するグルーヴ、パーティーチューンに大合唱。見事なコーラスワークも聴かせ、他のグループにはない個性を発揮した。終始湧きっぱなしだったライブは、終盤にさらに熱量が上がり加速していく。ダイナミックなサウンドと奔放なパフォーマンスで爆発的な大盛り上がりとなった彼女たちが間違いなくこの日のMVPだった。
これ以上の盛り上がりはないかもと思いきや、直後にステージに上がったSOMOSOMO は、さらなる怒涛のパフォーマンスでエキサイティングなライブを披露。触発されたように疾走するダンスチューンで最初から沸きに沸いた。メンバーが一斉にステージ前に出ると、フロア後方からもドッと人が押し寄せて、メンバーとグータッチするなど、ファンも一見さんも関係なく興奮の坩堝に巻き込んだ。
いよいよセミファイナル、にっぽんワチャチャが勢い良くステージに飛び出してきた。「Every bady セイ!セイ!」で〈飲んで 飲んで 飲んで〉とコールする5人は会場のムードもどこ吹く風、とばかりにマイペース。キャッチーなネタてんこ盛りな楽曲にフロアは大ウケしながらものノリに乗って盛り上がり、笑顔が広がるハッピーなライブとなった。
9時間に渡るイベントのトリを務めるのは、ゆるめるモ!だ。メンバーの変遷を経て今年で活動13周年を迎えた彼女たち。ステージに艶やかな6人が並びフロアのオーディエンスと対峙するようにライブをスタートすると、振り合わせで一体に。ステージを広く使い動き回りながら、9月30日(火)に発売されるニューアルバム 『虚無泥棒』からの新曲も披露。ジャンルを横断した楽曲、さまざまなロックバンドのメンバーで構成される生バンドをバックにしたライブ等、オルタナティヴなライブアイドルの道を開拓してきた彼女たちが、記念すべき第1回目の「Counter FES」を締めくくったことには、主催者の思いとイベントの意義が感じられた。
エンディングでは、後半に出演したゆるめるモ!、にっぽんワチャチャ、SOMOSOMO、Finally、cowolo、LiVS 、BABYTANTS、O-VER-KiLLのメンバーが再登場して、告知を交えつつ、MCとの爆笑トークを展開してイベントは大団円で終了となった。
この日出演したグループの楽曲は、いずれも凝りに凝った展開、アレンジの複雑さといったクオリティで競い合っていたが、前半のグループが聴かせたラウド系の楽曲から、後半に向かうにつれて多様なジャンルを取り入れた音楽性、グループの個性がより鮮明になっていたように感じられた。今後、ライブシーンの中で競い合うことにより2020年代のライブアイドル・アンセム楽曲が生まれる可能性もあるのではないだろうか。
また、全員がオケを使っており生バンドでのライブを行うグループがいないため、機材転換の時間を必要としないのはこのイベントを行う上で大きな利点。それもあって、昼間から始まったにも関わらず、一切ダレることなくテンポよく数珠つなぎにライブを観ることができたことが、終盤の爆発的な盛り上がりに繋がったように感じられた。次回の第2回「Counter FES」は日曜日の開催、しかも会場は大箱のLINE CUBE SHIBUYA。またしてもどんなイベントになるのか予想不能ということで、おおいに期待にしたいと思う。
<Counter FES>
2025年9月26日(金)@渋谷クラブクアトロ
出演:FandL / GLIM of GRAND / Re:Yu / My Criminal Lovers’ / BR!OT / LOVExxBAD / GRiED / 縷々 / 丑03-USHIMITSU- / IQ99 / HOTALOOP / パピプペポは難しい / O-VER-KiLL / BABYTANTS / cowolo / LiVS / Finally / SOMOSOMO / にっぽんワチャチャ / ゆるめるモ!/