watch more

【LIVE REPORT】BLUEGOATS、4周年ワンマンで魅せた刹那的で高濃度な「アイドル×青春パンク」の幕開け

StoryWriter

取材&文:西澤裕郎
写真:すずき大すけ

4人組アイドルグループ・BLUEGOATSが2025年11月6日(木)、4周年ワンマンライブ<青春を、もう一度>を東京・下北沢シャングリラにて開催した。

BLUEGOATSは、ほんま・かいな、ダイナマイト・マリン、チャンチー、ソンソナの4名からなるアイドルグループ。「あなたと私でBLUEGOATS」というコンセプトを掲げ、THE BACK HORNの菅波栄純やTOPICS.LAB主宰の田仲圭太といったクリエイターによる楽曲を主軸に、熱量の高いライブを行っている。同ワンマンのライブレポートを掲載する。


LIVE REPORT:4周年ワンマンライブ<青春を、もう一度>

アイドルシーンが熱狂に包まれていた2010年代。アイドルというフォーマットの上で、さまざまな音楽的実験、パフォーマンスの挑戦が行われ、刺激的なカルチャーが生み出された。

アイドルシーンが多様化し活性化した一方で、2020年代に入り、実験的なものや新しいものは生まれづらくなった。そんな中、ありそうでなかったのが、アイドルと青春パンクの掛け合わせだ。

青春パンクは2000年代に熱狂を生んだムーブメントだが、「青臭さ」「稚拙さ」といったラベリングや“本物ではない”という視線にもさらされてきた。また、メロディックで感情を増幅する演奏アンサンブルを要するため、オケ中心の現場では魅力が削がれやすいという事情もあり、アイドルシーンにおいて有機的な掛け合わせが成功した事例は多くなかった。

2025年、その二つを挑戦的に組み合わせようとしているアイドルがBLUEGOATSである。このワンマンは、その掛け合わせが機能する瞬間が垣間見える夜となった。

ほんま・かいな

ダイナマイト・マリン

19時41分。オープニングSEの銀杏BOYZ「BABY BABY」が流れると、客席は本編さながらの合唱が起こり、メンバーも1人ずつ歌いながら登場。4人が中央で円陣を組み、「BLUEGOATSはじまるぞ!」の叫びから「GOOD LUCK!!」へ。フロア前方へ観客がなだれ込む。かいなとマリンは客席に身を乗り出し、最前の観客の手をつかんで歌う。落ちサビ前には、熱のこもった合唱が会場を包んだ。かつての青春パンクの現場を、現在形の肌触りで呼び戻す光景がそこにはあった。

ソンソナ

チャンチー

続く「青春時代」。銀杏BOYZの前身バンド・GOING STEADYのラストシングルと同名の楽曲を、4人は力強く歌う。BLUEGOATSの近年のレパートリーは青春パンク調が増え、テーマが明確化している。

この日、要だったのはマニュピレーターのリアルタイム運用だ。MCの背後でギター・ストロークが走り、バンド現場の「間」を音像で補う。そこにメンバーの人生が素の言葉で乗る。

最初にMCをしたのはダイナマイト・マリンだった。

「私は6年前に地元の群馬を出て、友達や親に頭下げて、BLUEGOATSになりました。約束なんて一つも叶えられてない。それでも私ができる一番の恩返しは、自分のわがままを貫いて、自分が決めたこの場所でこの街で成功すること一つだけ。私はこの街に友達も家族もいないけど、今は同じ歌を歌うメンバーや、あなたがいる。わがままばっかだし、迷惑をかけてどうしようもないけど、最後まで貫かせてくれ」

それまでの人生を言葉を濁さず語ると、「1、2、3、4」とマリンが不器用にも生々しくカウントを取り、「八月の日が差す頃」へ。まるでバンドの歌い出しのようにサウンドが鳴り、楽曲が始まる。4人はダンスをすることなく、ほぼ横並びになって歌う。歌が突出してうまいわけではない。大事なのはそこではないと言わんばかりに感情を乗せて歌っていく。表情は必死ではあるが、アイドルらしい笑顔を忘れない。

次のMCでは、チャンチーが語った。

「アイドルを始めて10年が過ぎました。私はよく笑顔がいいねって言われるし、他の人から見たらきっと、ヘラヘラ笑ってて、ずっとドジでアホで忘れ物とかなくし物ばっかりして、そんなふうに見えてるような人生……」

そう語ると、チャンチーはアカペラで曲の一節を歌い始めた。MCの延長ともいえる、生々しく感情的な歌声に観客は耳を傾ける。

「10年アイドル続けてきたよ。どんなに笑われたって、アイドルだけは10年1本、踏ん張って踏ん張ってやってきたよ。そんな私の人生。だからこそ……」

再び楽曲の一小節をアカペラで歌うと、「こんなアイドルと同じ学年にいたくないって言われて、大学を強制退学して、踏ん張って踏ん張って、やっぱりアイドルだけやめられなくて、頑張ってきた。そんな人生、まだまだ終わらせられるわけがない。まだまだ終わる気もない」と語り、「あたしの人生クソすぎる」へ。MCの間、後ろを向いて立っていた3人が1人ずつ前を向き、チャンチーの横に立ち、4人が揃って歌う。

同曲を歌い終えると、かいなは「全員で行くよ! あいつに向かって、あなたの味方だー!」と叫び、客席の観客の上に乗ってステージを向く。客席からチャンチーに向けて、かいなは「愛してる!」と叫んだ。続く「ガムシャラ」はBLUEGOATSからチャンチーへの応援歌のように、「誰もあなたを笑わない」はチャンチーからファンへの応援歌のように響いた。

次のパートでは、ソナがMCを行った。

「実は2年前にお母さんと、3年で横アリに行けなかったら、アイドルっていう夢を諦めるって約束をしました。だけど、やっぱり諦めきれなくて、それでもどうにかって引き延ばしているんです。もう3年経ったけどのんびりしていくつもりはないし、今日までの時間を信じてるし、今日だって、あなたと『今日いい日だった』って言えるように、その夢を叶えてきたんです。自分だけ幸せだったらBLUEGOATSっていう人生を選んでない。誰かに愛されていたいし、愛してください。あなたのその愛にふさわしいアイドルでいたい。だからあなたと同じ景色を見たい。だから今日も私はここを選んで、あなたに希望の歌を歌いたい」

「4人で歌いたい」とメンバー4人は中央にぎゅっと近づいて歌い、「IWGP」では4人で肩を組んで、感情たっぷりに歌い上げた。そして、かいながMCで語る。

「失ったものばかり数えたくないし、数えてもない。失っても寂しくないと思えるところまで、ひたすらやろうって、後ろも横も見ないでやってきました。そしたら、いつの間にかこんなにたくさんの人がライブ見に来てくれるようになったし、曲も死ぬほど増えました。その一つ一つがあなたの心と結びついてるんだろうなと思う。それがすごく嬉しい。そういう大事な曲は、これからどんなにたくさん増えても、あなたの心の中にあり続けていると思う。この曲がなかったら、今のグループを伝えきれていないし、ここにいるあなたたち1人1人とだって多分出会えなかったと思う。全てのBLUEGOATSの始まりみたいな曲です」

そう語ると「東京タワー」へ。メンバーの熱量、会場の熱気は上がり続けていく。ライブ終盤、かいなが「今はみんなの時間だけど、時間もらうね」と、横浜アリーナに行くことが目標であることを告げ、メンバーへ向けて語りかけた。

「これから数字が増えるたびに傷つくことも失敗も、もちろん成功もたくさん増えると思う。傷つかないなんてのきっと無理だから、傷ついたときに、顔を見合わせて、『それでもよかったね』って言い合えるようなBLUEGOATSでいよう。この先、本当に想像できないことがたくさん私達を待ってるから、そんなに怖がらずに、不安にならずに、自信持って、私達なりにも負けずに歩いていけたらと思う。立ち止まったりしても、それでいいよ。好きなだけ迷っていいし、好きなだけ立ち止まって、最後は絶対私が必ず迎えに行くからね」

そして「友よ」へ。かいなは再び客席の観客の上に乗り、ステージの方向を向いて3人の顔を見る。「こんないい顔してたんだ」と万感の思いを3人に伝えると、ステージに戻って4人で同曲を精一杯歌い、「解散」では肩を組んで感情を出し尽くし、ステージを後にした。

鳴り止まないアンコールに応え、再登場した4人。かいなが「私達、今度さ、アルバム出すじゃん」とさらりと告知すると、大きな歓声が上がる。「全部新曲のアルバムです」と伝えると、どよめきと歓声が入り混じった。かいなとまりんで印税に関するユーモラスなやり取りをした後、曲のイントロが鳴り、「印税558円」を披露。最後はファストチューン「TOMORROW」で観客たちも大暴れして幕を閉じた。

アイドルのライブでバックバンドが登場することは、いまや珍しくない。そんな中でBLUEGOATSは、録音したサウンドをPC上でリアルタイムに扱い、まるでバンドのようなステージを生み出す方法を模索してきた。メンバーだけでなくスタッフも一丸となり、トライ&エラーを重ねてきた。それがこのワンマンで確かな形となっていた。

その試みに全力で応えるファンたちの存在も大きい。メンバーたちの歌声、一挙手一投足、言葉に全力で反応し、自分たちの青春を鳴らすようにフロアを揺らしていく。盛り上がり方はアイドルのコールなどに依存していない。ある意味で、観客自らが主役であるというくらいの熱量だ。

それこそが青春パンクであり、BLUEGOATSが目指している場所なのかもしれない。ステージ上のバンドが青春を描いていたとき、観客もまた青春を生きていた。その呼応こそが青春パンクを青春パンクたらしめていた。

BLUEGOATSは、アイドルという自由なフォーマットの上で、何度もトライ&エラーを重ね、独自の回答を導き出した。青春は長くない。アイドルとしての人生も永遠ではない。だからこそ、この組み合わせはより刹那的でもあり、濃度はさらに上がっていく。見たことのない青春と音楽の掛け合わせが生まれている。そんなアイドルの新しい夜明けを感じたワンマンライブだった。


セットリスト
1. GOOD LUCK!!
2. 青春時代
3. 英雄の歌
4. It Won’t Be Long
5. Dynamite!!
6. 春はあけぼの
7. 八月の日が差す頃
8. ポラロイド
9. あたしの人生クソすぎる
10. ガムシャラ
11. 誰もあなたを笑わない
12. これが人生だ
13. 嘘ひとつ言えたなら
14. IWGP
15. 東京タワー
16. 君の唄で生きていたい
17. YOLO
18. 友よ
19. 解散
EN1. 印税558円
EN2. TOMORROW


■ライブ情報

BLUEGOATS LIVE TOUR【青春を、もう一度】
10月5日(日)東京・shibuya CYCLONE(終了)
10月11日(土)愛知・RAD HALL(終了)
11月6日(木)東京・下北沢シャングリラ(終了)
12月27日(土)大阪・Live House Pangea
OPEN 18:00 START 18:30
https://bluegoats.jp/news/42b2d55b-1493-4dc4-b35b-7456fd62a7f5

BLUEGOATS 6thワンマンライブ【さらば青春の光】
2026年1月28日(水)東京・恵比寿LIQUIDROOM
OPEN 18:00 START 19:00
https://bluegoats.jp/live/8323907c-7f08-4900-9b33-dd31e849092d

 

 

 

 

PICK UP