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「継承だけど、断絶」──AqbiRec・田中紘治が語る、Finger Runs楽曲とビッグビート受け継ぐ新グループ、オーディション開始

StoryWriter

取材&文:野崎勝弘

AqbiRecが手掛けるアイドルグループ・Finger Runsが2026年2月16日に活動を終了した。その楽曲と“ビッグビート”というコンセプトを受け継ぐ新グループが始動することが決定し、2月21日よりオーディションを開始する。プロデューサー田中紘治は、新体制ではラップパートを強化し、よりダイレクトな感情表現を目指す方針だと語る。また、育成プロセスをYouTubeで公開し、成長の過程をドキュメンタリーとして発信するという。新グループに求める人物像や今後の展望について、ラストワンマンを目前に控える1月30日、田中と新グループのマネジャー池永彩華に話を聞いた。


ファンの人生を滅茶苦茶にするドラマチックなアイドルグループ

──新グループは、どんなグループになりそうか、楽曲やコンセプトについても教えてください。

田中紘治(以下、田中):みんなで騒ぎたくなる音楽。笑ったり泣いたり、ファンの人生を滅茶苦茶にするドラマチックなアイドルグループです。Finger Runsの楽曲と“ビッグビート”という軸は引き継ぎます。ビッグビートはロックとヒップホップの要素を融合させたダンスミュージックです。すべての楽曲が新グループにそのままフィットするとは限らないので、編成や歌詞の調整も視野に入れています。

 

もちろん新曲は積極的に制作して、新グループとしてのアイデンティティはスピード感を持って育てます。パフォーマンスについては、特にラップパートを強化して、よりダイレクトに感情を表現させたい。ラップが増えると、その分、メロディーの力も重要になります。しっかり歌で魅せられる“歌姫”も必要です。パフォーマンスが尖ってくると、愛すべきキャラ性も大事になってきます。どストレートに可愛くありたい女の子もほしい。もう人類全部ほしい。サウンドは洗練させつつ、メンバー自身の意思やメッセージを気持ちよく届けられるエンターテイメントを目指します。メンバーが海外でも活躍できるように頑張りますが、日本特有のメンタリティー、島国ならではの狂気は大事にしたい。

池永彩華(以下、池永):私はスタッフとしてAqbiRecに関わって9年になりますが、田中さんの作る“スルメ曲”が好きなんです。最初は少し違和感があっても、聴き込むほどに魅力が見えてくる楽曲。それが田中さん曲の良さで、そんな“スルメ曲”が大好きだったのですが、最近はそういう楽曲が減ってきたと感じていて、残念に思っていました。新グループで田中さんがやろうとしていることを話してくれたときに、私が思ってたことと一致して、一緒に作りたいと思いました。

田中:今も全曲に関わってますが、徹底的に引っかき回すことは減っていました。新グループではアルバム単位では数曲になるかもしれませんが、自分の曲にも取り組みます。

──Finger Runsの第2期として始めなかった理由について、教えてください。

田中:Finger Runsはファンとの関係性も含めて魅力で、一つの完成形だと思っています。名前と歴史は彼女たちのものです。継承だけど断絶。グループ名の《Finger Runs》もオリジナルメンバーこそが名乗るべきだと思っています。メンバー(フィンガー)とファン(総称:サムズ)がそろって何かをつかむ、という意味を込めた名前でした。活動終了が決まって以降も、ファンの応援がとても暖かくて、メンバーも乗りに乗っています。このままラストライブまで駆け抜けてくれるはず。ただ、グループのコンセプトとしては道半ばに感じていて、楽曲や思想は引き継ぐ。新グループは楽曲を受け継ぎながらも、リセットし、ゼロから始めます。

──デビューまでのスケジュールは。

田中:2026年2月21日からメンバー募集を開始し、4月末までに最終審査を終える予定です。そこから約2カ月間で集中的に育成し、6月末から7月上旬のデビューを想定しています。

池永:グループが活動開始したら、私はカメラマンでもあるので、そのスキルを活かして、可愛いところも、面白いところも、変なところもメンバーの良さを写真で引き出して記録に残してあげたいし、メンバーが悩むことがあれば聞いてあげたいし、ライブ前はMCを一緒に考えたい。あと、変質者が出たら身を挺してメンバーを守ったこともあるし(笑)! たくさん頼ってください!

──どのような人材を求めていますか。

田中:「等身大の自分で勝負できる女性」です。元気なとこばかりじゃなくて、課題と向き合う姿も含めて堂々と見せられる人。さらけ出せる環境は準備してます。

──オーディション最終審査には、5名の特別審査員(ケンカイヨシ、ナンシー、ハハノシキュウ、福井シンリ、BUTCH)が参加されると聞きました。

田中:声をかけたら、流れでOKしてくれた物好きな人たちです。もしかしたら、まだ増えるかもしれません。まずは書類審査、その後、僕と池永による二次審査。で、最終審査で彼らが参加してくれます。

■新グループオーディション・特別審査員プロフィール

ケンカイヨシ


J-POPシーンで多くのヒットを生み出してきた音楽プロデューサー/クリエイター。CHEMISTRY、香取慎吾、草彅剛、高橋優、東海オンエア、スカイピースなど幅広いアーティストを担当。アニメ『暗殺貴族』主題歌は世界的ヒットを記録し、オリコン1位を5回、YouTube1000万再生超の楽曲も多数。ジャンル横断のプロデュース力と、鋭い観察眼で新世代の才能を見抜く。
ナンシー
シリアスからあざといまで、“表現をつくる”振付師。RAY、BELLRING少女ハート、ゆるめるモ!、tipToe.など50組以上/350曲超を担当。近年はAKB48や≠MEも指導し、振付だけでなく“見せ方”まで踏み込む演出が持ち味。元アイドルとしての経験から、パーソナルな成長にも寄り添う。
ハハノシキュウ


青森県弘前市出身のラッパー/小説家。MCバトルを経てポニーキャニオンからメジャーデビュー。2019年に星海社より小説家としてデビューし、ラップ/文章/作詞の三軸で活動。言葉の感性と独特の視点を武器に、新グループの感情表現に深みを与える。
福井シンリ


ヴィジュアル系バンドでの活動を経て、作編曲家へ転向。相川七瀬、TrySail、愛乙女☆DOLL、Luce Twinkle Wink☆など幅広いアーティストやアイドルに楽曲を提供。AqbiRecとは14年来のパートナーとして、BELLRING少女ハート、Finger Runsなど所属グループの楽曲を数多く手がける。メンバーの個性にフィットした楽曲制作に定評がある。
BUTCH
iPhone行列を象徴する名言「乗るしかない、このビッグウェーブに」を発言して以降、”ビッグウェーブさん”として親しまれるようになったマルチタレント。田中がBELLRING少女ハートを立ち上げる際、スタッフとして活躍。その人柄がファンにも愛された。

 

──応募者にオーディションでアピールしてほしいことは?

田中:半径5メートル以内の人間が最大のスピーカーになります。採用されても、落ちても、面白い子がいた!と審査員たちに思わせてください。フロアのファンだけではなく、業界内にファンを増やせる人材を目指してほしいと考えています。

──具体的にどんな部分を見てほしいと考えていますか。

田中:ハハノシキュウさんはMCバトルもバチバチに熱量のある人で、Finger Runsにも歌詞を提供してくれています。本気でラップしたい方は絶対に挑戦してほしい。より没入度の高い歌詞で新グループの気持ちを濃くしていきたくて、オーディションから参加してもらいました。ケンカイヨシは素晴らしい作家ですが、人間としてちょっとおかしい部分があって視点が面白い。参加者のどんな面に将来性を感じてくれるか楽しみです。福井シンリさんは長年の付き合いです。彼もグループ自体を楽曲に取り込むのが魅力で、オーディションで受けた刺激を音楽に変えてくれると思う。振付師のナンシーは、たくさんのアイドルのダンスを手掛けています。自分自身がアイドルだった経験を活かして、パーソナルな面でも向き合ってくれます。BUTCHは、僕がBELLRING少女ハートを立ち上げた時に一緒に頑張ってくれたスタッフで、陽気だけど人に優しく寄り添える奴です。オーディション会場の緊張をいい空気にしてくれることを期待しています。

ドキュメンタリー形式のYouTube番組で、成長の過程を見せる

──育成プロセスの公開についても教えてください。

田中:ドキュメンタリー形式のYouTube番組で、成長の過程を見せるコンテンツです。この一年くらい社内で撮影システムを準備してきて、4月頃からはFOKALITEという後輩グループで展開していく予定です。現在BELLRING少女ハートのマネジメントを託しているMELTRECも、この企画に関わりたいって言ってますね。いつもハイクオリティなライブ配信でお世話になっているチームにも協力してもらうので、楽しんでもらえるよう頑張ります。僕自身、昔はテレビ番組の制作を通じてメジャーで活躍する方々に関わっていたから思うんですが、あまりクローズドにやっていると、運営もアイドルも甘えが出て結果に出てしまうよな、と反省も多くて。まずこの辺に力を入れていきます。

池永:私は本音を伝えることが苦手で、涙が出そうになることもあります。こういう人って世の中に結構いると思うんですけど、このコンテンツを通してメンバー達が壁にぶち当たることも、葛藤することも多々あると思いますが、そこから乗り越えていく姿だったり、成長していく姿を見て、心動かされることがあると思うのでそういう人にも届いて欲しい。それと、この企画を通してパフォーマンスだけではなく、メンバー達が自分のことを好きになるきっかけにもつながったらいいなと思っています。

──様々な映像コンテンツに携わってきた田中さんならではのアイデアですね。

田中:自分の得意分野に限って活かしてなかったんですよね。番組ディレクターの目線で「この人たちと関わりたい」と思えるグループにしたい。僕はテレビ番組を制作をしてきましたが、先を目指している人ほど、カメラの前で《真剣な自分》を演じることから始めます。模範的に振る舞って、それが素顔と同化して、演者としてチームメイトとして成長が加速していく。だから今回、それを組み込みたいと思いました。それにSNSのアルゴリズムがどれだけ変わっても、人が物語性に惹かれたり、感動を求めることに変わりはないです。感動にもいろいろあって、ビシッとフォーメーションがそろったダンスも感動を呼び起こします。例えば、バレエのユニゾンは無条件に感動します。それは、人間がそれだけのことをやるために、どれほど高い意識と努力を必要とするかを、見る側が潜在的に感じ取るからです。個性も身体的な特徴もバラバラのアイドルグループだからこそ、シンクロは醍醐味の一つです。ここ数年はグループ全員が同じ基礎を共有することを重視していて、FOKALITEはデビュー前から通常レッスンの他にステップに特化したレッスンなど、複数のカリキュラムに取り組ませています。AqbiRecは海外のファンも多く、言葉の通じない方に言葉の壁を超えた熱を届けたいから。枠に収まらない爆発力と、それをどうにか型の中に押し込む矛盾、というものをずっと考えています。新グループもそれを極めていきたい。

──新グループで目指すものは?

田中:観る者の感情に強烈な刺激を与えたい。それはAqbiRecの得意分野です。その波を広げて、自然と“大きなステージを目指さざるを得ない状況”を作りたい。2010年頃、ももいろクローバーの番組を手がけたり、デビュー直後から異様な盛り上がっていたBiSのMVを撮ったりして、シーン全体が猛烈なエネルギーで動いているのを肌で感じていました。その流れでBELLRING少女ハートやMIGMA SHELTERを立ち上げ、話題にもしてもらって、やり甲斐を感じていたんです。でも、ふと自分の周りを見回すと、「今はもう、ああいうことは起こらないのかな」と思う瞬間もあって。そんな中、こないだKAWAII系の運営さん達と飲んだら、めちゃくちゃ楽しかったし焦りました。みんなギラギラしているし、シーンにはまだ隙間がたくさんある、と感じたんです。「自分にも何かできるんじゃないか」と思ってる方、毎日を持て余している方は、ぜひオーディションに参加してください。とんでもなくエネルギッシュなステージになることは約束します。そこから先の道は、一緒に作りましょう。このビッグビートに乗るしかないです!

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