
取材&文:西澤裕郎
写真:外林健太・Kuzu Tanaka
GANG PARADE、ASP、ExWHYZ、豆柴の大群などのマネジメントを行う株式会社WACKが、2025年3月22日(日)~3月28日(土)にかけて6泊7日わたり開催する合宿型合同オーディション「WACK合同オーディション2026」。
今回の合宿オーディションには、書類審査と2次オーディションを通過した名に加え、ASPからナ前ナ以が参加している。
その様子は最終日までニコニコ生放送ですべて中継される。
StoryWriterでは合宿の様子を連日に渡り現地からレポートする。
オーディション初日
3月22日、長崎・壱岐島。「WACK合同オーディション2026」が開幕した。
この地に降り立ったオーディション参加者は、22人。その中でも、現役WACKメンバー・元WACKメンバーを対象としたシード枠に応じたのはたった1人。ASPのナ前ナ以だけだった。さらに、参加予定だった候補生が直前に2名辞退するという幕開けとなった。


筆者がWACKオーディションを最初に取材したのは、2016年のBiSオーディション。あのとき渡辺が候補生の前に立ったときの空気と、今日の空気はまるで違う。
「この激動の、完全にオワコンのWACKに応募していただいてありがとうございます」
それが候補生に向けたオリエンテーションでの最初の言葉だった。
渡辺が今年の合宿で候補生に伝えたかったことは、一言で言えばこうだ。今までのWACKのやり方は通用しなくなった。

豆柴の大群以外のグループが今年解散する理由についても渡辺は正直に話した。ロンドンの大学院に約2年通い、WACKグループを呼びロンドンで何度イベントをやったがお客さんがなかなか増えなかった。何が足りなかったのか、ずっと考えていた、という。
「ダンスが上手いと言っても、ほとんどの地下アイドルの子たちはK-POPのアイドルたちに勝てないと思っているよね? ダンスも歌もそう。俺が通っていたロンドンのクラスメイトからは、BiSHですら『これでこんなに人を集められるの?』と言われてしまう。バイアスのない人たちから見たら、そう見えてしまう」

そして、WACKの第1章で何が起きていたか渡辺は包み隠さず話した。解散するグループのメンバーたちがダメだったわけじゃない。ただ、これから渡辺が向かいたい場所と目標が違った。
では、これからのWACKに必要なものは何か。渡辺の答えは明快だった。血の滲むような着実な努力をコツコツと積み重ねること。渡辺はその証拠として、水面下で動いているWACKでの選抜プロジェクトの話をした。英語とダンスのハードなレッスンを毎日絶対にやることを課した。最初は今の3倍ほどのメンバーがいたが、毎日続けられなかった人たちは外れていった。今残っているのは6人だという。
「1年や2年で成功すると思っているなら、帰った方がいい。俺もロンドンに2年いて改めて思ったけど、自分は天才だと思っていたし、3ヶ月もいればペラペラになると思っていた。でも2年いてやっと、幼稚園児くらい喋れるようになったかな、という感じだった。何事も、すごく時間がかかるんだよ」
ダンスも、歌も、英語も、同じだと渡辺は言う。どれだけ才能があっても、毎日欠かさず続けなければ何も変わらない。
「君たちは地下アイドルの世界では、『頑張っているね、がむしゃらにやっているね、かっこいいね』と言ってもらえるかもしれない。でもバイアスのない人たちから見たら、ただ下手な人たちかもしれない。大学院でバイアスなしに見られたとき、俺が認めてもらえたのは予習復習だったり、授業での発言だったり。携帯を見ている時間をどれだけ勉強に変えられるか。それをいかにやれたかで、人の目は変わってくる」
一夜漬けでやろうとする人は、うちの会社にはいらない。渡辺はそう言い切った。「学校の期末テストじゃないから、一夜漬けでは実力にならない。毎日1歩ずつちゃんとやること。これは自分に嘘がつけないことだから」。BiSHが東京ドームに立つまでに9年かかった。これから向かう世界には、もっと時間がかかるかもしれない。それでも渡辺はコツコツやり続けることにしか答えはないと言う。
今回の合宿でも早朝マラソンはある。デスソースもある。ただ一つ、去年までと違うことがある。どちらも強制ではない。「マラソンに出たくないならやらなくていい。デスソースも、やりたいと思えばスタッフに言ってください。自分が何をするのか、どう反応するのか、自分で考えて決めてください」。マラソンに出なかったから落ちる、ということはないかもしれない。でも出なかったから落ちることはある、と渡辺は付け加えた。

オリエンテーションの後半、渡辺が候補生に最初の課題を出した。
具体的な目標を決めること。
「例えば、東京ドームをやりたいです、という目標が想像できたとしたら、それに向けていくらかかるのか、誰と繋がればいいのか、何人のお客さんが必要なのか、どんどん細かく分類されていく。その具体的なリストが全部潰れたとき、きっとあなたはその目標を達成している」。
目標を書いたら、一人ずつ別の人に話してみる。口に出すことで、自分でも気づいていなかったことが浮かんでくる。「目標があれば毎日頑張れる。目標がなければ毎日頑張れない。今日は自分を見つめ直す日だと思って、真剣に考えてほしい」。そう真剣に候補生たちに語りかけた。
15時になり、英語基礎力テストが始まった。事前にアナウンスはあった。英語のテストがあること、勉強してくること。30分間、候補生たちはペンを走らせた。コツコツやってきたかどうか、ここで問われる。











テストが終わると、候補生とナ前ナ以は改めて目標を考える時間に入った。この1週間の目標、そして将来の目標。書き出して、候補生同士で発表し合い、内容をより具体化していく。


その最中に、サプライズがあった。候補生が1人ずつ呼び出され、WACKの課題曲11曲の中からランダムで1曲が告げられ、Aメロからサビまでをアカペラでその場で歌うよう指示された。準備の時間はない。楽器も伴奏もない。自分の声だけで、楽曲を歌うことが問われる場だった。


結果は厳しかった。ほとんどの候補生が歌えなかった。
歌えたのは、22人中、わずか6人。
HANANOANAはASPの「SAKEBE」を、RYUUSEiKOはEMPiREの「FOR EXAMPLE??」を飛び飛びながらも歌い切った。ゲンジツユアはBiSの「primal.」を、mahohoはBiSの「gives」を歌い、「世界はクソで、自分はカス」という印象的な言葉を残した。タテ・マエはGANG PARADEの「BREAKING THE ROAD」とBiSの「LOVE」の2曲を歌い、「WACKオーデを2022年から挑戦してきて、ようやくつかんだチャンス」と今回に挑む気持ちを伝えた。チャン・PP・マイカはBiSHの「優しいPAiN」とCARRY LOOSEの「When we wish upon a star」を歌い切り、ダンスが得意だとブリッジしながら移動するパフォーマンスを見せた。


その結果に対し、渡辺はニコ生の視聴者に向かってこう言った。「(候補生も)めちゃくちゃ後悔してると思うから、やらなかったこと自体は。もうここで挽回するしかないから、頑張ってもらうしかない」。そして表情を少し緩めてこう続けた。「今回のテーマは成長物語を見ていけるといいのかなって、僕は切り替えました」。
合格したとしても、すぐデビューさせるつもりはない、とも渡辺は言った。これは突き放しているわけではない。むしろその逆だ。コツコツ積み重ねることにしか答えはないと1日かけて語り続けた渡辺が即戦力を求めるのではなく、ちゃんと育てる。それが今回の合宿に渡辺が込めた静かな本気だと思った。
その後、渡辺は候補生一人ひとりと面談に入った。目標に具体性が足りないと感じれば何度でもラリーをする。もっと自分と真剣に向き合ってと突き返す。その繰り返しが夕食まで続き、夕食後にも面談は続いた。涙を流す候補生も多く、また具体性に欠けると指摘することも、また時には怒りを押さえながらも本気で候補生と向き合う瞬間もあった。
そんな中で決定的なノーを突きつけられたのが、現役WACKメンバーとして唯一シード枠で参加したASPのナ前ナ以だった。
ナ前ナ以に対して渡辺は「ASPで何もできなかったやつが何をどうするの?」と詰問。ナ前ナ以は「5年間がんばってなかったとは思わないけど、がんばり方を間違えたとはすごく思う。ASPのことをずっと売れるって思ってた。めっちゃカッコいいと思ってた。あと1年、あと1年と思いながらやっていたけど、今、本当にWACKから自分がいなくなったら、武道館とか、今までのいい思い出が悪い思い出になっちゃうと思った。何を言っているか自分でもわからないけど、怖くなっちゃって。それは自分のせいだなとも思って」
渡辺「一昨日も言ったじゃん、『来ないほうがいいんじゃない?』って。君はある意味WACK代表だよね? 英語だって3年前くらいから必要だって言ったよね? 何してたの? なんのために来たの? この結果が見えてたから来るなって言ったんじゃん。なんでこの点数取れんの、意味わかんないよ。俺に勉強してるって言ったのに、中学3年生レベルの出題を。君じゃないの? 一夜漬けの人なんて。前に合宿来たときに言ってたよね、『WACKがナメられてる』って。お前がナメてんじゃないの? 今回、無双してくれるって思ってたのに。追い込みたいわけじゃないのに、さすがに何も言えないよ。なんで覚えてこない? なんで勉強しない? 知ってるでしょ、選抜メンバーが死ぬほどやってたことも。選抜の子たちは何年も前から一発で80%以上の点数取ってたよ。それにだからさ、残してくれなのかどうなのか知らないけどさ、なんでそれ以上に行こうとしないの」
ナ前ナ以「わからない。自分でももうわからない」
渡辺「墓穴掘りに来たの?」
ナ前ナ以「かなあ……。でもそうかも知れないです」
渡辺「じゃあ、ノーだ。ノーだろ。来る前からわかってるなら来るなよ。最後まで自分のことじゃねえかよお前。お前の真意がまったくわかんねえよ。好きだったんだよね、WACKのこと?」
ナ前ナ以「うん。大好き」
渡辺「でもやってくれないんだよね。わかんないんだよね。普通に考えて英語も100点じゃないの。なんで最後まで足掻かなかったの?」
ナ前ナ以「確かに自分のことしか考えてなかった」
渡辺「明らかにやってないじゃん。わかってたでしょ。お前の言葉をそのまま言い返すよ。君にWACKをナメられてるよ」
この日、脱落者はナ前ナ以、ただ一人だった。
コツコツ積み重ねてきたかどうか。それを自分に嘘をつかずにやれるかどうか。渡辺が一日かけて語り続けたことの答えが、最もくっきりした形で現れた瞬間だった。WACKを大好きだと言った。それは間違いなく、ナ前ナ以の本当の気持ちだっただろう。だが、結果はその想いとは真逆の形となってしまった。
全員の面談が終わり、渡辺は翌朝もう一度候補生と話すことを告げた。
「WACK合同オーディション2026」は、波乱の初日を終えた。

■イベント情報
2026年3月22日(日)13:00~
【前半】全て見せます!WACKオーディション合宿2026完全密着6泊7日の死闘
https://live.nicovideo.jp/watch/lv350108688
2026年3月25日(水)12:00~
【後半】全て見せます!WACKオーディション合宿2026完全密着6泊7日の死闘
https://live.nicovideo.jp/watch/lv350108689
WACK 公式WEBサイト:https://www.wack.jp/



