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【連載】ツクヨミ ケイコ「大丈夫、わたしには音楽がある」Vol.24 音楽で、記憶を辿る

StoryWriter

高校生になって久しぶりに中学校までの通学路を歩いたとき、ふわっと感じた匂いで親友を思い出したことがある。中学校の門を出て坂道を登ったところの十字路。親友との別れ道。わたしたちはいつもそこで立ち止まってだらだらと話すのが日課だった。その匂いは親友の匂いではなくて、その十字路の角にある銭湯の匂いだったということに、卒業してから初めて気が付いた。

星を見にいこうよ、と高校生のときにした友人たちとの約束を、数年越しに昨年実現させた。当時は自転車で遊びに行っていたわたしたちが、お金を出し合ってレンタカーを借りて茨城まで行ったときのこと。車のなかで、何か音楽を流そうよという話になると、満場一致の答えはBUMP OF CHICKENの「アリア」だった。その曲は、当時わたしたちがコンビニの前でアイスを食べているとき、ラジオで流れていた思い出の曲だった。

景色や匂い、音などの五感に影響されて、記憶を辿ることがある。

わたしは音楽を聴いているときにも、いつの間にかふんわりと忘れかけていた、むかしの記憶を思い出すことがある。

わたしが初めてアコースティックのライブを観たのは、四谷天窓という会場だった。

高田馬場駅からさかえ通りに入って少し進んで左の道に入ったところの、秘密基地のような会場だった気がする。数えるほどしか行ったことのないあの会場が、わたしはなぜだかすごく好きだった。客席の後方には座敷の席があり、あたたかみの溢れた内装と、<四谷天窓>のやわらかいフォントがぴったりだった。

きっかけは、もともとよく聴いていたバンドのボーカルがTwitterでRTしていた、とあるリンクだった。いつもならそのまま目にも留めずタイムラインに流れていくであろうそのリンクに、わたしはどういうわけか飛んでいた。リンクの先はツイキャスで、地方に住んでいるシンガーの配信だった。確か当時はまだオリジナル曲があるかないか、くらいだったと思う。とにかく声が素敵で印象的だった。

当時学生だったわたしは、“ライブ”というものにすら、まだほとんど行ったことがなかった頃だったと思う。その日は夏休みだった。そのシンガーが東京で初めてのライブをするという告知を見て、TwitterのDMで予約を取った。

初めてのアコースティックライブ、もちろん一緒に行く人はおらず、ライブハウスという場所にすら慣れていなかった、もはやひとりで電車に乗ることすら緊張していた頃。いま思えば、当時のわたしにそんな行動力があったことに驚く。ただただ音楽が好きで、その機会を逃したくない一心だったのだろう。もう何年も前なのに、ライブ中の景色を、MCの喋り方までも、いまだに覚えている。

きっと常連なのであろう大人たちは、その会場での楽しみ方を網羅しているようだった。ライブが終わったあと、その会場の中でわたしだけが浮き出ているような感覚になった。どうしていいか分からなかったわたしはライブが終わったあと、ドリンクを交換する勇気すら無くそそくさと会場を出た。ライブの感想だけを、そのシンガーに送ったような気がする。

これが、わたしの初めてのアコースティックライブの日だった。

四谷天窓は、2020年のコロナ禍で閉店してしまった。

わたし自身、2019年にアイドルとしてデビューしてからお客さんとしてライブに足を運ぶことはなかなかできなくなってしまったけれど、コロナ禍の影響で慣れ親しんだライブハウスが次々と閉店や移転、名前が変わって再スタートを切って行くなかで、なんとなく四谷天窓のことだけは時折思い出しその行く末がなんとなく気がかりだった。

復活のためにクラウドファンディングをしていたことも知っていた。いま思えば、少しでもあのクラウドファンディングに参加したら良かったな。あの頃の常連の大人たちの協力もあってのことだろう、四谷天窓は昨年、神楽坂天窓として復活したそうだ。

わたしが作詞をさせていただいたわたしたちの楽曲「七変花」で、こんな歌詞を書いた。

忘れたっていい なかったことになってしまう前に 思い出して

記憶というものは、時間が経つと減少していく。だから完全に記憶から消えてしまう前に思い出したり復習をしたりすることで、定着していき、思い出すまでの時間が短くなるのだそうだ。

あのときのあの場所、あの匂い、あの音楽、思ったこと、感じたこと、知ったこと、経験。過去に縋っているように思えてしまう瞬間もあるけれど、やっぱり愛おしい記憶たちは、何度でも思い出して、いつまでも大切にしたいと思う。

最後に。

わたしがあの日の、初めてのアコースティックライブでの不器用だけど純粋な思い出をいつまでも思い出せるように、あの頃出会った音楽たちを。

 

 

 

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