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StoryWriter

こんにちは。

就活ですが、とりあえず内定を1つ貰っておかなきゃということで、全然やりたくない職業だけど「自分の強みを活かしてみる」ということで外資系の某IT企業を受けてみました。志望理由さえも思いつかず「別に落ちてもええがなw」の適当な気持ちで受けてたらスルスルと最終面接まで……。

自分のやりたい事(出版)に相当向いていなかったんだろうな、という複雑な心境です。全然喜べないんですよね。苦汁を飲んでやりたい事を求め続けるのか、安牌を切ってのうのうと安泰を取るか…… 安定した業界、会社に決まったらとりあえず親は安心してくれるだろうな。それが憎いところなのでありますが。

人生は苦渋の決断の連続。

「大事なときほど誰も助けてくれない、自分で決める人生にしないといけない」

そんな人生の苦味を自覚し始めるキッカケになった作品『沈黙』を今回お話したいと思います。

小説家の遠藤周作氏の代表作で一昨年末には映画化もされた名作。この作品が好きで人並に本を読み始めたキッカケになりました。

 

簡単なあらすじはと言うと、島原・天草一揆(圧政に苦しむ百姓達がキリスト教を拠り所として反乱を起こした事件)が収束し鎖国体制が敷かれた江戸時代の日本に、とある宣教師が潜り込んで入国し布教や隠れキリシタンの支援をしようとするも、奉行所に追われる身となりやがて捕まってしまう。

そこで彼は、元キリシタンで改宗した奉行と出会い対話するが「日本にキリスト教は根付かない」という事実を突きつけられる。棄教するまで囚われの身となった宣教師は、棄教したにも関わらず拷問される隠れキリシタンを見せつけられてしまい、自分はどうすべきなのか? 信ずる神に問い掛けても神は沈黙を貫くのみ。宣教師が棄教しキリストに背くまで続くこの状況で、彼が下す決断は? そして極限まで追い詰められている宣教師に対して神は…… といった具合です。

いつもは作品の見どころをネタバレ全開していますが、今回は読んでからのお楽しみにしたいので敢えて割愛させていただきます。

以前、「強虫と弱虫」という対比表現を使わせていただいたことがありましたが、これは遠藤周作氏の~~の講演会で今回の主題である『沈黙』について語った言葉を引用したものです。

改めまして説明させていただきますと、人間には強虫と弱虫の2種類がいまして。自分の信念を貫こうとするも周囲を傷付けまいとするばかりに意志を貫き通せない「弱虫」、周りを巻き込み傷つけてでも自分の信念を貫くことに邁進できる「強虫」の2種類です。

『沈黙』という作品になぞらえると、鎖国下でキリスト教への弾圧が進んでいる日本でキリスト教の布教と神の愛を信じ続ける宣教師が「強虫」。隠れキリシタンであるものの、教義を貫こうとするもののちょっと脅されるだけで神や宣教師を裏切ってしまうキチジローという男がいまして「弱虫」という事になります。

宗教なんてお堅いテーマで話されてしまうと日本人には敬遠されがちなんでしょうが、僕はこの作品及び遠藤周作の講演会の文章を読んで、自分の四半世紀ほどの人生を振り返ることができました。

なるほど、人生には自分の意志を通すべきか、はたまた納得こそいかなくても周りを尊重し合わせるべきなのか? という2つの選択が、こびりついて離れなかったように思います。

そして今回は今の僕の就活状況(やりたい仕事のために機会を待つか、夢を諦める形にはなるけど安泰な道を行くか)は正にそうだと思います。

恋愛事にせよ受験や就活にせよ、強虫も弱虫も人は自分で決めた道というものを歩んでその酸いも甘いも受け入れていかなくてはならないですね。『沈黙』一場面で以下のような言葉が出てきます。

「弱いものが強いものよりも苦しまなかったと、誰が言えるのか?」

強虫は自分の意志を貫き通すために苦痛を伴って生きていく。

では、弱虫にはそれができないから苦しまないのか? というとそうではなくて。そんな自己を責め続ける苦しみを味わって生きている、という意味です。いずれにしても楽な生き方なんてできないということです。でも僕が思うに、意志を通すor通さないについては、「自分で選ぶことができる」ということが人生に於ける1番のポイントなんじゃないか? そして、それを自分で選ぶからこそ、選択に付随してくる辛さに耐えうるのではないかと。

幸か不幸か、僕はこの1年弱の間に「強虫」に分類される人達に出会うことができました。そして、その人達を知って憧れてきました。ただの「弱虫」だった僕が「強虫」に憧れて「僕も強虫になりたい!」と思うことができたんです。

でも、親を始めとする周囲の人々に迷惑をかけ続けることもできない、この憐憫の情との間で苛まれ続けることにもなりました。自分がどうしたいのかは明白なのに、それに徹しきれない弱虫な側面が強調されてしまうんです。勿論、今すぐ決断をする必要はありませんが、早く覚悟は決めなくてはならないなあ…… と。

今回、作品について敢えて多く語りませんでしたが、是非『沈黙」という作品を一読していただいて、新潮社のサイト(http://www.shinchosha.co.jp/book/112325/)に挙げられた遠藤周作の言葉をぜひ読んでいただきたいです。

そして、皆さんにも考えてほしいのです。自分が弱虫なのか強虫なのか? 自分の選択で固められた人生に伴う苦痛と喜びにちゃんと向き合えているのかを。

この作品について話すと普段の字数では収まらないのですが、頑張って要点だけまとめました。いつかもっと長い文章で伝えられる機会があればいいな。

今回はここら辺で。また来週もよしなに。

※「【連載】なにが好きかわからない」は毎週木曜日更新予定です。
エビナコウヘイ(えびな・こうへい)
1993年生まれ、青森県出身。進学を機に上京し、現在は大学で外国語を専攻している。中国での留学などを経て、現在では株式会社WACKで学生インターンをしながら就職活動中。趣味は音楽関係ならなんでも。
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