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【連載】アセロラ4000「嬢と私」シーズン3 歌舞伎町ニューウェーブ編 第4回

StoryWriter

昨日、今日、明日。変わりゆく私。

今、ふたたびの、歌舞伎町。

私は、ステップアップしてより良いキャバクラ・ウォーカーとして歩き出すための転職活動をいったん休止した。

なぜならば、エトウさんが私とサカイくんを連れて、歌舞伎町のキャバクラ「ロザーナ」へと招待してくれるというのだ。

招待する、と言っても、エトウさんは単なる客。にもかかわらず、私とサカイくんの分までごちそうしてくれるというのだから、太っ腹にもほどがある。

どうしてそんな大金が払えるのか。エトウさん実家大富豪説。エトウさんオレオレ詐欺グループリーダー説。エトウさん三億円事件真犯人説。どの説も、あながち間違っていないかもしれない。実際、前回エトウさんは8万円もの大金を払っているのだ。

その内訳は、こうだったらしい。

セット料金(60分):10,000円
場内指名料:3,000円
延長料金(30分):4,000円
焼酎ボトル:10,000円
女の子のドリンク:1杯2,000円程度
税金8% サービス税25%
※その他、記憶にない。

サービス税とは。勝手に数字を決めて良い税制度なのか。私は、キャバクラという桃源郷の治外法権ぶりに改めて仰天した。

それにしても、これでも8万円などという法外な金額になるわけがない。エトウさんは、いったい何をしていたのか。

「ドェッギャブ、ヨダザンビンンヂガグ、ヅヅダガダデ、ゴエ!」

JOJO広重が爆音でギターを弾いたときと同じ周波数で、エトウさんが私に話しかける。その言葉を、いつもサカイくんが私に通訳してくれるのだ。

「“結局、4時間近く、いたからね、おれ”って言ってますね。ようは、延長しすぎて高額になったんじゃないですかね。あと、“女の子が何杯飲んだかわからないんだよね、今思えば、羽目を外しすぎたよね”とも言ってます」

そんなに喋ってたか、いま。まあいい。とにかく、それほどまでにお気に入りの子がいたということなのか。

「ギャルっびょがで、じゃぎごだっだびょおえが!」

どうやら、ギャルっぽい嬢で、最高だったらしい。私のこれまでの世界観とは違うであろう店、「ロザーナ」。すぐに、行ってみたい。はやる気持ちが抑えられない。

そんな私を、エトウさんがさらに煽る。自分が場内指名した嬢との2ショットを自慢げに我々の前に差し出してきたのだ。

そこにいたのは、超、カワイイ、嬢。

私は、カワイイ嬢の姿を拡大することで、画面の外にエトウさんの姿を追いやり、さらに嬢を見つめる。

キリッとした眉毛、二重瞼。愛らしい八重歯、そして巨乳。

そうだ、「ロザーナ」へ行こう。私はそう決めると、ベテランおばさん派遣社員・安田さんの元に行き、早退を申し出た。

「あら、どうしたのよ、アセくん。お腹でも痛いの?」

違う違う、そうじゃ、そうじゃない。

興奮した私は今、少し汗ばんでいる。こんな状態では、「ロザーナ」のギャルに加齢臭で嫌われてしまう。いったん家に帰り、お風呂に入ってから歌舞伎町にライドオンするのだ。

早くもウキウキWATCHING状態で帰りのエレベーターを待つ私。ふと見ると、中国人留学生のテイさんがこちらを見ている。テイさんは、私に気があるのかもしれない。いや、気があるのだろう。

「好きなのよ、アセくん、あなたが。……好きなのよ、最近まで気が付かなかったけど。お願い、私のためにリング(キャバクラ)に上がらないで」

すまない、テイさん。歌舞伎町一の嬢がリング(キャバクラ)で私を待っているんだ。だから、いかなきゃな。でも、ありがとう。

心の中でそうつぶやきながら振り返ると、テイさんは、すでに、いなかった。

私は、急いでママチャリをこいで帰宅すると、お風呂に入りバスロマンでスキンケアを済ませた。そして、いざ、2度目の歌舞伎町へ。

我々は、待ち合わせ場所のロボットレストランの前に集まると、エトウさんの後について行き、店の前に到着した。

東京・新宿区歌舞伎町。高級キャバクラ「ロザーナ」。

そこには、私にとって、運命の出会いが待っていた。

〜シーズン3 第5回へ続く〜

シーズン3 歌舞伎町ニューウェーブ編 第1回
シーズン3 歌舞伎町ニューウェーブ編 第2回
シーズン3 歌舞伎町ニューウェーブ編 第3回

アセロラ4000「嬢と私」まとめページはこちら

※「【連載】アセロラ4000「嬢と私」」は毎週水曜日更新予定です。

アセロラ4000(あせろら・ふぉーさうざんと)
月に一度のキャバクラ通いを糧に日々を送る派遣社員。嬢とのLINE、同伴についてTwitterに綴ることを無上の喜びとしている。未婚。
https://twitter.com/ace_ace_4000

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