【連載】Jumpei Yamada「illusionism」2nd season Vol.5──玉手初美

泉谷しげるや曽我部恵一をはじめとしたミュージシャンのポートレート撮影を中心に、CD、書籍、広告、webや雑誌などの撮影を手がけている写真家のJumpei Yamadaが、写真をもっと自由に捉えてほしいという想いをもって、7月3日(火)よりスタートした連載「illusionism」。

2nd seasonは、1人のゲストモデルの撮り下ろしの写真を、月曜日から金曜日まで毎日更新。最終日金曜日にはゲストライターによる書き下ろしストーリーも掲載。Jumpei Yamadaとモデル、ライターとの化学反応を毎日お楽しみにご覧ください。

Vol.1──櫻井 紗季(東京パフォーマンスドール)はこちら
Vol.2──太田ひなはこちら
Vol.3──優雨ナコ(クマリデパート)はこちら
Vol.4──シバノソウはこちら


Vol.5 玉手初美

DAY1

DAY2

DAY3

DAY4

DAY5

 

 

一時期、気に入らないことがあると自分で前髪を切るという変な癖がついてしまったことがある。そのせいでずっと眉毛にかからないくらいの長さで、伸ばしたくてもなかなか伸ばせないことがあった。

 

途中で「オンザ眉毛」と呼ばれる髪型が個性派の象徴みたいな時代に突入して、そんなつもりはないのに「今流行りのね!」と言われるのが疎ましくてたまらなかった。こちとら好んでこの前髪で居るわけじゃない。私はキョンキョンが好きだから、どちらかって言うと「ワンレンボブ」とか前髪を分ける髪型になりたいのに。今度こそ伸ばそうと暫らく頑張ってみても、やっぱり眉毛の上に戻ってしまう。前髪の長さが、どれほど自分が今の状況に満足しているかどうかのバロメーターみたいなものになっていた。

 

前髪を切ったくらいで人生が開いていくなら、誰だってそうする。でもどんなに前髪を切っても事態が好転することはない。わかっているのに、夜中にふっと「もう駄目だ」と思い始めると止められない。半ばパニック状態になりながらハサミを手にし、前髪を一直線にバツンと切る。自分の太ももの上に異常に汚らしく思える毛がバラバラと落ちていく。不格好になった自分を鏡で確認して泣くところまでがセットだ。「ああまたやってしまった」と少し冷静になってからやっとハサミを縦にしたりすいたりして、ぱっつん前髪を整え始める。何とか誤魔化そうとするほど、どんどん短くなっていく。

 

何年か前、ついにやりすぎてしまって、いよいよコケシみたいになってしまった。これはもうどうにもならん。どう見てもこの前髪は「個性的」という言葉では誤魔化せない。そう思って、平日だったけれど仕事を休んで美容院に駆け込んだ。「自分で前髪を切ってしまうんです。駄目だと思っても、ぜっったいに後悔するってわかっていてもどんどん短くなる一方で。心の病気なのかもしれません」両眼を腫らしたコケシみたいな女が席に座るなり早口で捲し立てる姿を見て、美容院のお姉さんの表情は一瞬こわばった。「手前が駆け込むべき場所は美容院じゃなくて病院だろってね、アッ、こりゃ一本取られた」頭の中で知らない落語家が勝手に漫談を始める。ほとんど半狂乱で今にも泣き出しそうな私とは裏腹に、お姉さんは至って軽い口ぶりで「ありますよねー前髪失敗しちゃうこと」と言った。「でもたぶんお客さんが自分で思っているほど変じゃないですよ、この髪型。ぱっつんが嫌なら、後ろの方から髪を持ってきて流せば自然な感じになりますし」

 

そのお姉さんの言葉の通り、コケシだった前髪はオシャレな「眉上バング」風に変身した。ついでに、肩に付くくらいの長さだった後ろ髪もうなじが見えるくらいのショートカットにしてもらい、「髪色も変えちゃいます?」という言葉に流されてカラーまでしてしまった。気分がさっぱりして、表情も一気に明るく見えるようになった気がする。明日職場で突っ込まれたらどうしよう。仮病がバレちゃうな。まあ文句言われたら辞めちまえばいいか。何だか気持ちまで大きくなってきた。

 

「もう自分で前髪切らないから」

 

すっかり泣き止んだ鏡の中の私にそう言ってあげたら、後ろに立っていたお姉さんは自分に話しかけられたと思ったのか「ふふっ」と笑って頷いていた。

 

 

Jumpei Yamada「illusionism」
〜season2・完~

Jumpei Yamada「illusionism」のseason2はこれで一旦終了です。
現在、season3に向けて誠意制作中。
season3の再開をお楽しみにお待ちください!

Model =玉手初美

Text = まりな(日本マドンナ)

3ピースバンド「日本マドンナ」のギタリスト。

2018年4月には6年ぶりの新作『ファックフォーエバー』をリリース。

新宿を拠点にマイペースに活動中。

Twitter : @nihonmadonna

Photograph = Jumpei Yamada(じゅんぺい・やまだ)

1987年富山県生まれ。
2007年より関西にて活動。
活動拠点を東京へ移し、2014年独立。
ミュージシャンのポートレート撮影を中心に、CD・書籍・広告・webや雑誌等各種媒体の撮影を手がけ、並行して自身の作品制作も行う。

2015年2月 写真集「ギミ!ギミ!ギミ!ダーリン!」発表。
2018年2月写真展「immanent」at 高円寺FAITH

Web : https://jumpeiyamada.com/
Twitter : @jumpeiyamada_

写真はもっと寛容で発想力を掻き立てるもの──写真家・Jumpei Yamadaが人生、連載を語る
「illusionism」シーズン1 はこちら


被写体募集
illusionismに被写体として参加して頂ける方を募集中です。経験不問。興味のある方は「氏名」「年齢」「バストアップ写真、全身写真(3ヶ月以内撮影)」「芸能活動されている方は芸歴・活動歴」を明記・添付の上、件名:被写体募集にてillusionism.wanted@gmail.comまでご連絡下さい。応募者多数の場合、採用させて頂く方にのみご連絡させて頂きます。

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