【INTERVIEW】22歳新人SSW太田ひな、ピアノ弾き語り曲を大胆に再構築したデビュー作を語る

都内を中心にライヴ活動を行ってきた22歳の女性シンガー・ソングライター、太田ひなのデビュー作『BETWEEN THE SHEETS』が1月16日にリリースされた。もともとピアノの弾き語りで曲を作っていた太田が、プロデューサーにAureole/Temple of Kahnの森大地を迎え、ゼロベースから再構築した全9曲。ピアノ主体の楽曲に、エレクトリックなビート、きらびやかなシンセ、繊細な電子音、生の管弦楽器などを大々的に導入した本作について、太田ひなに話を訊いた。

インタヴュー&文:西澤裕郎
写真:Jumpei Yamada


ピアノをいじっている時間のほうが楽しくて(笑)

──太田さんには、StoryWriterで連載中の「illunisiom」に登場していただいたり、kilk recordsの森さんが経営しているbekkanでお会いしたり、何かとご縁があるわけですが、どのように音楽をはじめたのかなど聞かせていただけたらと思っています。いきなりですけど、音楽に興味を持ったきっかけってなんだったんでしょう。

太田ひな(以下、太田):入口は3歳から小学校6年生までピアノのレッスンを受けていたことなんですけど、その時は曲を作ろうと思っていた訳ではなく、先生が好きで習っていたんです。中学で吹奏楽部に入って練習で発声をすることがあったので、うまくなりたいと思って歌唱を習っていた時期もあります。

──テレビで流れるJ-POPとかに対する興味は持っていました?

太田:めちゃめちゃ興味があって、流行っている音楽はとりあえず全部知っていました。ただ、めちゃめちゃ掘って聴いているタイプではなかったかな。あと親がクラシック好きだったので、家で流れているのを聴いていました。

Jumpei Yamada「illunisiom」より

──どちらかと言うと、聴くよりプレイするのが好きというか。

太田:そっちの方が楽しかったです。とはいえ、楽譜を見てかっちり弾くのはあまり得意じゃなくて、耳で聴き取って弾いたのを先生に直してもらうことが多かったです。自分で雰囲気を作って、先生に細かいところは直してもらうような形でレッスンをしていました。手数の多いスピード感ある曲より、空間があるような曲のほうが小学校くらいから好きだった気がします。

──それだけ、耳がいいってことなのかもしれないですね。

太田:いやいや。そこはわからないけど、よく1人で遊んでいましたね。

──熱心にやっていたピアノを小6で辞めたのはなんでだったんでしょう?

太田:先生が病気になってしまって。他のレッスンに行く気にもなれなくて辞めちゃいました。家では弾いていたし、合唱の伴奏とかはやったりしていたんですけどね。

──高校時代、1番頑張ったことってなんだったんでしょう?

太田:私の中で高校時代の比重はめちゃめちゃ大きくて。もちろん勉強も頑張ったし、人間関係もすごく頑張った。濃かった気がします。

──そこまで力を入れていろいろ頑張った理由はあるんですか。

太田:頑張らざるを得なかったんですよね。周りは頭の良い子ばっかりだったし、気の強い女の子たちがすごく多かった。私もその中にいたんですけど、本当はピアノをいじっている時間のほうが楽しくて(笑)。別にその子たちに合わせられたし、楽しかったんですけど、これは言っても分からないだろうなってこともあるじゃないですか? 当時は自分の思いと、友達といるときの思いでバランスを取るのが難しかったです。

メジャーなコードはなかったし混沌としていました

──そうした高校生活を送りながら家ではピアノを弾いていたわけなんですね。初めて作った曲のことは覚えていますか?

太田:覚えていますよ。「ストレスが溜まったからピアノ弾こう」っていう初期衝動で作っていたから。今聴いたら恥ずかしいと思う暗い曲です(笑)。

──初期衝動で作った音が暗い感じの曲っていうのはおもしろいですね。暗いっていうのは、どんな雰囲気の曲なんですか? テンポも遅いみたいな?

太田:テンポも遅いし、選ぶ音もメジャーなコードはなかったし、混沌としていました。自分でも「なんでこんな展開なんだろう」と思うこともあって、「これサビ?」みたいな感じの曲だったと思います。

──それが当時の太田さんの気持ちを反映している曲だと。

太田:そうです。だから恥ずかしくて今は聴きたくない(笑)。

──歌は入っていなかった?

太田:入っていました。歌詞もありました。本当に日記みたいなことを歌っていて、とりとめがなかったです。今では覚えてないくらいちっちゃい話なんですけど、嫌なことがあったら、それについて考え続けて1ヶ月間作っていたりとかしていて(笑)。

──その当時の曲に近い雰囲気の曲というか、名残を感じさせるような曲は、『Between The Sheets』でいうと、どれになるんでしょう。

太田:「渦中」ですかね。…… 圧倒的に「渦中」だと思います。

 

──そんな暗くは聴こえなかったですけどね。

太田:弾き語りでやっている時はめっちゃ暗くて。テンポもすごく遅かったんです。アレンジが入って印象が変わったのかもしれないですけど、私もこんな感じになるとは全然思っていなかったのでおもしろいなって。

──2017年に自主制作して手売りで300枚以上売ったCD『理性的なあなた』は、今作とはまた違うテイストなんですか?

太田:全然違います。4曲入りだったんですけど、基本はピアノと声とドラムで、2曲だけドラムとピアノでやっています。家の近くに生ピアノのあるスタジオがあって、そこにめっちゃ入り浸っていたらドラマーの人と出会って。手伝ってもらいながら作りました。レコーディングは(埼玉宮原のライヴハウス)ヒソミネでたまたま会っていた方がエンジニアさんで、お願いしました。

──人との出会いに恵まれているんですね。

太田:本当にそうですね。いろんな人に助けてもらっています。

──『Between The Sheets』のレーベルオーナーでもあるkilk recordsの森さんとは、何かきっかけで出会って一緒にやるようになったんでしょう。

太田:ちょこちょこbekkanでライヴをやっていて、そのときにライヴを観てもらっていたんです。2018年頭に、森さんが携わっていた神楽音に出た時も観てくれて。そのとき、「愛すべきぼくら」をリミックスしてくださるって言ってくださったのが最初です。

──森さんが観たライヴはどんな編成でやっていたんですか?

太田:弾き語りです。バンドメンバーを迎えてライヴをしたことって数えるくらいしかなくて、ずっと弾き語りでやってきました。

──アルバムだけ聴いていると、ピアノの弾き語りをしている感じが逆に分からないからおもしろいですね。1曲リミックスするという話から、アルバムを丸々プロデュースすることになったわけで、よっぽど太田さんの素質に惚れ込んだのかなと思うんですけど、どんな形で進んでいったんでしょう?

太田:それまでも私の曲をアレンジしてもらう機会って実は結構あったんです。ただ、思い描いているものにぴったり合ったものをやっていただくってことがなくて。言い方とかやり方が分からなかったというのもあったんですけど、その部分で森さんは私の思っていることを汲み取ってくださる方で、逆に話を聞いてもらいながら作っていきました。

──音を重ねたり、ピアノの弾き語りとは違う作り込んだ音にしたいみたいなことも考えていた、と。

太田:そうしたい曲もあったんですけど、伝え方だったりコミュニケーションの仕方が私自身よく分からなくて。やりたいことが200%伝わってできたというのが今回のアルバムなんです。

外に出ようと思うようになりました

──実際、どのようにして音源制作はしていったんでしょう。

太田:基本は私の隣で森さんが作業しているという形でした。音の選び方1つとっても「この部分、どっちの音がいい?」って聴いてくれて、私も「こんな感じ」みたいに細かくお願いして、じゃあこれはどうだろう、みたいにコミュニケーションしながら進めていきました。

──初アルバムということで太田さんにもこだわりがあると思うんですけど、制作時に森さんとの意見の違いとかはなかったですか?

太田:結構あったとは思うんです。ただ、これは絶対にイヤだって部分はなかったので、すごくおもしろかったです。隣で作業を見ていて。

──こうやって太田さんと話す雰囲気と、曲を聴いての印象では全然違うなと思って。アルバムには、もうちょっと陰があるというか。

太田:陰っていうのは、暗いみたいなことですか?

Jumpei Yamada「illunisiom」より

──暗いっていうより…… bekkanなどでお会いすると明るいじゃないですか?

太田:いやいや、あれ、めっちゃ頑張っていますもん(笑)。やっぱり暗いのかな…… どういうところが暗いと思いますか?

──得体が知れない感じがするというか、パーソナルな部分が見えない感じ。

太田:本当ですか! おもしろい。

──音楽的なおもしろさやかっこよさは感じつつ、どんな人が歌っているのが分からない感じがする。今は、歌い手がMVに出てきたりTwitterをやったりしているから、歌っている人と曲が聴き手のイメージでも一致していると思うんですけど、なかなか一致しないのがおもしろい。ピアノの弾き語りを観ていたら違ったのかもしれないけど、アルバムだけ聴いたら本当に分からない。

太田:おもしろいなと思うのは、昔に作った曲だったり、森さんと0から作った曲、ついこの間作った「カーテンコール」みたいに、いろんな時期に作った曲が混ざっているんです。今はこんなこと全然思わないし、しないだろうなってことも、曲を聴くと思い出します。反映されているかは分からないけど、森さんから教えてもらったことを活かしてやってみた曲もあるので、そう感じてくれたのかもしれないです。

 

──森さんからは学んだことで、印象的だったり記憶に強く残っていることがあれば教えてもらえますか。

太田:森さんは私の歌詞を褒めてくれたりもして、良いところは伸ばそうと考えてくれているんですが、私としては歌詞については改めて考えさせられました。例えば「渦中」を作ったときは言いたいことをばーって書いたんです。でも森さんと曲を作ったりいろいろな曲を教えてもらったりする中で、この響きが気持ちいいから、こっちの単語の方がいいんだなみたいなことがわかるようになってきて。歌詞に限らずなんですが、これまで鬱々と自分だけで作ってきたけど、もっと自分の遠いところにある要素をかき集められるようになったというか。やってみようとしたことはあったけど、あまりやったことなかったので貴重な体験でした。

──太田さんにとって音楽を作ることは、どういうものになっているんでしょう。

太田:『Between The Sheets』を作ったことで、外に出ようと思うようになりました。そしたら知らないことばかりで。めっちゃ怖いんですけど、頑張ろうって気持ちです。高校生のときみたいに鬱々したり内向したりはするけど、内向しているだけってことはなくなって。いろんな曲を聴いて、ちょっとずつ自分の武器にできたらいいかなと思います。あと、このニュアンスが欲しいなとか少しずつ考えられるようにはなった感じがします。

自分から遠い場所にあることを取り入れたい

──ピアノ弾き語り以外に、太田ひなバンドでもライヴをしているそうですけど、どういう編成なんでしょう?

太田:元Aureoleの岡崎さんがベースを、花園distanceのあんりちゃんがドラムを、森さんがマニピュレーターと電子ドラムを、kokorokokoniarazuのなるみさんがコーラスとシンセをやってくれています。

──バンドで活動することは、太田さんにとってどんな体験ですか。

太田:めっちゃ難しいです。どうしても弾き語りのタイム感になっちゃうんですよね。「渦中」とか「Lush」とかテンポの速い曲は、声の出し方も飛ばし方も全然違うし、私が慣れていないっていうのもあって本当に感覚が違う。バンドをやると弾き語り忘れるし、弾き語りをやるとバンド忘れるしみたいな感じで(笑)、今頑張っています。

 

──レコ発はどんな感じのライヴにしようと思っていますか?

太田:バンドも、弾き語りも、カバー曲もやったり、盛り沢山なライヴにしようと思っていて。以前、企画をやった時、お客さんとの距離がすごく近くてアコースティックな感じだったので、今回は大きな会場ですし、こういうスタイルも初めてなので不安だけど楽しみです。

──名刺代わりのアルバムとなり、いろんな人の耳に触れる訳ですけど、その先どんなことをやっていきたいですか。

太田:フェスに出たいです。あと、こんな曲も作りたいし、あんな曲もやりたいしっていうアイデアがすごくたくさんある。いっぱい曲を作りたいし、長くやりたいなって思います。あと、昨日今日であったことを盛り込んでしまう癖があるので、もっと自分から遠い場所にあることを取り入れたいです。

──身の周りのこと以外のことも取り入れていきたいと。

太田:私はまだ、観たり、聴いたりしたものが近いものばかりなので同じ情景や手癖になりがちだけど、もっともっと想像したりしつつ曲を作っていけたらなと思っています。

──新しい経験をしたり、知らない世界を知っていく中で、作風や楽曲の雰囲気も変わっていくでしょうしね。

太田:それが今からめちゃめちゃ楽しみです。


■アルバム情報

太田ひな 1st album『Between The Sheets』
価格:定価 2,000円+税
品番:KLK-2057
レーベル名:kilk records

収録曲:
1. ロマンス
2. 渦中
3. 船を漕ぐ
4. Blue Moon
5. Lush
6. 甘いミルク
7. 黄昏
8. 愛すべきぼくら
9. カーテンコール

■ライヴ情報
太田ひな 1st album「Between The Sheets」release party
2019年2月2日(土)@王子 北とぴあ ドームホール
時間:OPEN 16:30/START 17:00
チケット:前売 2,500円/当日 3,000円(ドリンクの販売はありません)
ACT:太田ひな orchestra
Profile
太田ひな(おおた・ひな)
歌、ピアノ、作詞、作曲
2015年夏ピアノ弾き語りにて音楽活動を開始幼少期よりピアノに触れ、15歳の時に作曲を開始。2015年にライヴをスタートし、現在も都内近郊のライヴハウスを中心に活動している。2017年にリリースした自主制作CD『理性的なあなた』は、手売りで300枚以上の売上を記録。四谷天窓で行なわれた同作品のレコ発ライヴでは公演開催前にチケットがソールドアウトとなった。ライヴではドラム、ベース、ラップトップなどを入れたバンド編成、ピアノ弾き語りのソロ編成、ソロ~少人数のラップトップ・ミュージック編成など、様々な編成で行なっている。【生年月日】
1996年4月30日生まれおうし座 A型【好きなもの】
お酒、レバー、チョコレート、豆乳、お風呂 【苦手なもの】
大人数の飲み会、付け合わせのニンジン【趣味】
読書、ジョギング・太田ひな HP

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