皆さんこんにちは。
今日で2月も終わり、僕の学生生活が後1ヶ月で終了となります。
田舎から上京してきた僕にとっては東京という場所は本当に刺激的で、きっと田舎にいたままでは巡り会えなかった物や人が一つの大きな波として一気に押し寄せてきたかのような日々でした。得た物も失った物も数知れず…… こんなに世の中には僕に必要なものとそうでは無いものがあるんだと痛感した日々だったと今になって思います。そして、これがこれからの人生の縮図なんじゃないかなとも思います。ポケーっとして漫然と日々を過ごす中で傷つけた友人や恋人もいれば、それでも見捨てずに僕と繋がってくれている人々の存在もあり、こうやって周りの人間関係は自然と選別されていくのでしょう。確かに意識と無意識を問わず関係を切り捨てるのは簡単なことかもしれませんが、それでももっと色々な人と関係を築き、継続できる人間でありたいと思います。縁が切れてしまうのは相手が誰であれ、物凄く悲しいことなんじゃないかなあ。という事を、実家で中高時代の思い出の品々を眺めていて思いました。
さて、今回お話したい作品は昨年台湾で上映され評価されていた作品「先に愛した人(原題:誰先愛上他的)」です。
ご存知の方もいらっしゃるとは思いますが、昨今の台湾は2020年東京オリンピックに向けて、国際的にはまだ多くの国が正式な国として認可していない台湾の競技上の表記を「Chinese Taipei」から「Taiwan」とする事を求める意見やアクションが起こったり、昨年は同性婚に対して基本法律にすべきかを問う住民投票が行われて否決となったものの、彼ら彼女らを擁護する声が大きく、今年になってようやく司法院から同性婚に対する憲法解釈が認められ特例の法律が制定されるなど、色々な事が巻き起こっている国(地域)であります。特に同性婚ついては昨年から議論が盛り上がりを見せていたのですが、その中で擁護派を後押す結果となったのがこの映画ではないかと。
あらすじはというと、ある妻子持ちの男性の死後から話は始まります。
数年前に家を出て行った男が亡くなった後、保険金はもちろん残された家族に譲渡されるものと思っていたところ、その保険金が家族には入ってこない。調べてみると、保険金の受取人は見知らぬ男へと変更されていた。実は旦那はこの男(阿傑)と恋人関係にあり、その保険金の譲渡先を彼に自身で変更していたのだった。女性としてのプライドが傷つけられ、また、残された息子と自分にはお金も残されていない事について発狂しそうな妻は、旦那の恋人の家に押し掛け問い詰める。残された息子とこの阿杰の不思議な関係から物語が始まる…… というものです。
この作品では性別意識によって苛む事になっているのは、実は主役の阿傑ではありません。
彼は旦那との愛情を果たそうとしているだけで自身がLGBTQである事に負い目を感じている様子など全く無いです、むしろこの性別意識に苛まれているのは夫婦の方。旦那さんの方は自身のセクシュアリティとの葛藤があり、それを隠しながら夫婦生活を続ける事に限界を感じて家からいなくなってしまいます。そして辿り着いた先が阿傑だったという事、セクシュアリティ云々ではなくて感情的に求めたものが彼だったというだけの事です。その感情については誰も否定はできないものであるはずだと思います。
しかし、この旦那の行動によって同じく苦しめられてしまうのが妻の方。映画を見ていれば分かるのですが、彼女は自身が女性である以上は良妻賢母でなくてはならない、という考えに強く囚われいます。その感情が旦那の同性愛者であるという宣告から自分に対する自信やら全てが崩壊していきます。どちらが良い悪いの話では無いのは勿論ですが、こうしたすれ違いのせいでどちらも苦しんでしまったんですね。LGBTQがもっと引け目を感じずに自身のセクシュアリティを言える社会なら互いに苦しまずに済んだのかな、なんて思ったりしました。
恥ずかしながら、僕が高校生の頃に人生初の彼女に振られた時「性別の違いとかなければ僕達は別れずに済んだのか、付き合う事もないけどずっと一緒にいられたのかな」とずっと思っていた時期がありました。今回の映画のような夫婦のような悲しいことが起こらないように、皆の理解が深まるように、頭でそういう人もいるんだと理解するんじゃなくて受容できる心持ちを持てるようにしたいな、と思える作品でした。LGBTQの問題が主題というよりは、ある人達の間のヒューマンドラマ的な感じで観始めたのですが、セクシュアリティの問題を考える良いキッカケの作品だと思います。Netflixで日本語字幕で観れますので、よければ。
今週はこの辺で。
また来週、一つよしなに。
※「【連載】なにが好きかわからない」は毎週木曜日更新予定です。
1993年生まれ、青森県出身。進学を機に上京し、現在は大学で外国語を専攻している。中国での留学などを経て、現在では株式会社WACKで学生インターンをしながら就職活動中。趣味は音楽関係ならなんでも。