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【連載】「嬢と私」~キャバクラ放浪記編~ 第7回 町田「熟女キャバクラD」の嬢(後編)

StoryWriter

~前回までのあらすじ~

生田マネージャーの色香にたまらなくなったサカイくんにより、熟女キャバクラへと誘われるアセロラ4000。小田急ロマンスカーに飛び乗り、いざ、町田へ。


傷つき打ちのめされても はいあがる勇気がほしい。HOLD YOUR LAST CHANCE。そう、長渕剛も言っていた。サカイくんの暴言で著しく傷つけられた私の名誉は、今、はじめて降り立った街・町田で回復されようとしていた。

駅を出ると、数々のケバケバしいピンクのネオンがギラギラと手招きしていた。なんて、下品そうな街なんだ。歩き出すと、すぐにさまざまな呼び込みボーイに声をかけられた。

「はい、おっぱい」

華麗にスルーする、私。

「さあ、おっぱい」

グッと、歯を食いしばって耐える、私。

難攻不落の要塞に挑むがごとく、次から次へとやってくる、風俗の呼び込みという、刺客。ミスターSASUKE・山田勝己であっても、きっと1stステージで脱落してしまうに違いない。いや、彼なら自宅に町田のセットを組む可能性もある。そうすれば、攻略も可能かもしれない。いや、そんなことはどうでもいい。今は、ただ、大地真央さまに似た熟女に会いたい。その一心で、歩を進める、私。

「1,000円で、おっぱい」

思わず振り向く、私。1,000円で、おっぱい。本当なのか、それ。

ダメだ、ダメだダメだ。そんなことに時間を使っている暇など、ない。私を待っているのは、大地真央さま。とにかく行かねばならない。

ようやくたどり着いた、「熟女キャバクラ ダイヤモンド」。ワインレッドの看板が、いかにも熟女感を醸し出している。ボーイに案内されるがまま、地下へと降りていく。扉を開けると、ちょうど目の前に、サカイくんと、エトウさんがいた。私が到着したにも関わらず、それぞれについた嬢と話し込んでいる様子の2人。

1人は、もたいまさこ似。もう1人は、室井滋に似ている。「やっぱり猫が好き」。いや、違う。そんなバカな。2人の熟女には悪いが、嬢としての輝きが、まるでない。しかし、サカイくんとエトウさんは懸命に熟女嬢に気に入られようと、必死にトークを続けている。

「あ、アセさん。俺たち同級生で、夕ニャン世代で気が合っちゃって」

嬉しそうに、もたいと視線を交わす、エトウさん。いつものガサガサボイスを、のどぬーるを大量投入することで一時的に克服しているようだ。

それにしても、どこが、美人揃いなのだ。このレベルの嬢で、満足してしまうとは。人間、落ちぶれたくはないものだ。常に向上心を持たなければ、キャバクラなどに来る資格はない。私なら、もたい嬢と室井嬢のコンビに対して、即座にチェンジを宣告することができる。サカイくんと、エトウさんは、お人よしにもほどがあるのだ。

私は、ソファーに腰を下ろすと、嬢を待った。しかし、周囲を見渡してみても、大地真央さまのような熟女がやってくる可能性は、BOOWYの再結成と同じぐらい、限りなく0%に近いことは、明白。だとしたら、私はこの60分間を、己のキャバクラスキルの研鑽を積むための修行と捉えるしかない。

「どうも~」

私のテーブルに、熟女嬢が、やってきた。

口元から覗く、銀歯。目元のしわ、そして巨乳。

「ちょっと~どこ見てんのよ~」

私は、横に座った嬢のビジュアルに、わが目を疑った。長い髪の毛が辛うじて女性であることを伝えてくれるものの、その顔面は、限りなく男性に近い。芸能人で言えば、竹村健一だろうか。今にも、「だいたいやね」と言い出しそうだ。いや、よく見ると「600 こちら情報部」の田畑彦右衛門にも似ている。どちらにせよ、大地真央さまでは、ない。

私は、ため息をつき、目を閉じた。

なぜ、そこまでして キャバクラに行かなきゃいけんのか。なんで、そこまでして、自分の金を使わなきゃいけんのか。俺にはよう分からんが、それは素晴らしいことかもしれませんね、キャバクラ。

※「【連載】アセロラ4000「嬢と私」」は毎週水曜日更新予定です。

アセロラ4000(あせろら・ふぉーさうざんと)
月に一度のキャバクラ通いを糧に日々を送る派遣社員。嬢とのLINE、同伴についてTwitterに綴ることを無上の喜びとしている。未婚。
https://twitter.com/ace_ace_4000

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