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【連載】アセロラ4000「嬢と私」シーズン5 コロナ時代編 第21回

StoryWriter

「今日、用事があって新宿に行くから、よかったら飲まない?」

厚木の激安キャバクラの熟女嬢、ガッツだぜからのお誘いLINE。これまでの嬢たちからの営業的・戦略的LINEとは一線を画すメッセージ。

どうやら、ガッツだぜは私を気に入っている。

しかし、私にはお金がない。そしてピアノもない。君に聴かせる腕もない。心はいつも空回り……。どんなにガッツだぜが私のことを気に入ってくれても、たった246円では何もできないのが大都会・東京。電車で新宿にたどり着き、駅の自販機でヤクルトジョアを飲んだ時点で0円になってしまう。

「新宿で買い物とかしてるから、連絡してちょんまげ」

私を誘惑するガッツだぜのLINE。みると、同時にサカイくんからのLINEも届いていた。

「アセさん、エトウさんがこの前のお詫びにごちそうしてくれるそうです」

私は、とりあえず空腹を満たすため、サカイくんの言葉を頼りに指定の居酒屋に向かう。場所は、奇遇にも新宿。すでにエトウさんとサカイくんが待っていた。

「アセざん、ごのまえのお詫びにおごりたいのと、また仕事を紹介しだいんですよ」

ガサガサ声で囁きかけるエトウさん。どうやら、また悪だくみをしているようだ。

「ちがうんでずよ、ごんどはほんどに、らくなじごどです」

そう言いながら私の前にチラシを置く。見ると、ファンシーなアリさんたちが何やらマッチ箱のような小箱をルンルンと笑顔で運ぶ様子がイラストで描かれている。先頭にいるアリさんの吹き出しには「ボクたちでも簡単に運べる軽作業だよ!」と書いてある。

「すごく簡単でお金の儲かる仕事なんですって!やりましょうよ、アセさん」

もしかして、サカイはエトウとグルなのでは。私の中に疑念が芽生える。しかし、そんな思いは次の瞬間に吹き飛んだ。

「アゼざん、よかったら今日、前金渡しまずよ」

私の前に封筒を差し出すエトウさん。恐る恐る中身を検めると、なんと2万円が入っていた。

これがあれば、ガッツだぜとデートができる。

私は、金を受け取ると、エトウさんの顔面を踏み台にして、居酒屋の座敷を飛び出した。

「そうか、事件は居酒屋で起きているんじゃない。キャバクラで起きているんだ。キャバクラに向かうんですね、アセさん!?」

背後から聞こえるサカイくんの声。確かにその通り。事件は常にキャバクラで起きている。しかし、今日の私はそんな事件とは無縁の保守的なアラフィフのナイス・ミドル。この2万円で、ガッツだぜと大人の夜を過ごすのだ。

私は、ガッツだぜとの逢引へと心を高鳴らせながら足早に待ち合わせの居酒屋へと向かう。

「あ~、アセP、待ってたっちゃ」

一軒め酒場で落ち合ったガッツだぜが、私に向かって大きな声で手を振る。

真っ赤なワンピース、真珠のネックレス、デカいイヤリング、そして巨乳。

「何、飲むっちゃ?」

開始早々、ラムちゃん言葉で私を煽るガッツだぜ。そんなにラムちゃんが好きなのだろうか。

「違うよ、これ、山Pだよ~!」

違った。「野ブタをプロデュース。」の山Pのキャラを真似していただけだったようだ。

「とりあえず、おつまみで納豆頼んだよ」

私が唯一食べることができない、納豆。

「めちゃくちゃ美味い!ていうか、まいう~」

口からスパイダーマンのように糸を吐きながら納豆を平らげるガッツだぜ。

「最近、ZARDっていうロックバンドにハマってて。これから、カラオケいかない?」

1時間ほどして、急に席を立つガッツだぜ。私の腕にしがみつき、カラオケを探して歩く。待ちゆく人たちが、私たちを見ている。今時珍しい、ボディコン姿が珍しいのだろう。私は、急激に恥ずかしくなってきた。

「じゃあ、歌うね!」

全力で、ZARDからGReeeeN、湘南乃風などを次々と歌うガッツだぜ。歌い終わると、熱心にキングコング西野がいかにすごいのかを私に訴えかける。もちろん、カジサックのチャンネルも欠かさずチェックしているという。さらに「100日後に死ぬワニ」に感動して泣いたのだという。

なんか、嫌だ。

「アセPも、ファンモンとか歌ってよ」

私は、ファンモンなど絶対に歌わない。そして、私はアセPなどではない。さらに言うと、私の友だちのエトウさんはカボチャみたいな顔ではないし、だっちゃと言っていいのはラムちゃんの声優・平野文と原作の高橋留美子だけだ。

こんなダサセンスな嬢とは一緒にいたくない。

「えっアセP、ばいちゃなの?」

私は、ガッツだぜの制止を振り切り、カラオケを後にした。

危なかった。さみしさのあまり、私は我を見失い、熟女の包容力に牙を抜かれていた。もう少しで、落ち着いてしまうところだった。

やはり、私には無理めな嬢がよく似合う。若くて美人でスタイルがよくわがままで、それでいて可愛らしい嬢。そうだ、あびる優みたいな嬢がいい。これから探しに行こう。それこそが、私の人生におけるオアシスであり、日々を生きるモチベーションとなっているのだ。

私は、家に帰りガッツだぜのLINEをブロックすると、取り急ぎ藤田ニコル写真集を眺めながら眠りについた。

「事件は居酒屋で起きているんじゃない。キャバクラで起きているんだ」

私は、何度目かの原点回帰を誓ったのだった。

アセロラ4000『嬢と私』コロナ時代編はほぼ毎週木曜日更新です。
次回更新をお楽しみにお待ちください。

アセロラ4000「嬢と私」とは? まとめはこちらから

アセロラ4000(あせろら・ふぉーさうざんと)
月に一度のキャバクラ通いを糧に日々を送る派遣社員。嬢とのLINE、同伴についてTwitterに綴ることを無上の喜びとしている。未婚。
https://twitter.com/ace_ace_4000

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