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【連載】「嬢と私」~キャバクラ放浪記編~ 第11回 失意のダウンタウン・中野

StoryWriter

前回までのあらすじ

中野の激安キャバクラ「ポワゾン」に入店したアセロラ4000とエトウさん。1番手のナオミ嬢との噛み合わない会話をドローで終え、次なる嬢との戦いに、挑む。

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何も聴こえない 何も聴かせてくれない 僕の身体が昔より大人になったからなのか……。

壊れかけの、アセ。私は、キャバクラに行ったにも関わらず、また悩んでいた。

「インポなんじゃないですか、アセさん」

中野の街中で、いきなり大きな声を出す、エトウさん。いや、エトウ。デリカシーのかけらも、ない。現代にはEDという便利な用語があることも知らず、デカい声でインポを連呼する天パーデブに、私は他人のフリを決め込んで歩く。

「だって、キャバクラに来ても全然楽しそうじゃないっすよね」

それは、その通りだ。「ポワゾン」の2番手嬢、身長175cmのダイナマイトボディを誇るカオリ嬢。確かに見た目はタイプ。なぜなら私は、デカい女性が、好きだから。

「2番目の嬢のとき、ずっと黙ってませんでした?」

そうなのだ。タイプはタイプなのだが、一方的に喋りまくるカオリ嬢のトークは、私のらいおんハートに何一つ響かなかった。なんて、退屈な嬢なんだ。そして、なんて退屈な店なんだ。そしてそして、中野とは、なんてつまらない街なのだ。どこが、サブカルの聖地なのだ。

嬢一人育てられない街・中野。虚ろな目で、失意のままウォーキングデッドのごとくさまよい歩く私。傍らでは、スターウォーズのジャバザハットのような体をしたエトウがスマホを見ながらニヤついている。どうやら、さきほどの店で嬢とLINEを交換したらしい。それに引き換え、私に付いた2人の嬢は、LINE交換というキャバクラ界の社交辞令すら、行わなかった。怠慢としか思えない。職場放棄と責められるべきだ。私の職場であれば、すぐに派遣切りに遭うだろう。

初代嬢や歌舞伎町の嬢なら、こんなことはなかったはず。彼女たちは、獲物を狩るベンガルトラのごとく、速攻でLINEを聞いてくる。そうしたアグレッシブな嬢の前では、私はシマウマやインパラのように、大人しく我が身を獲物として捧げてきた。

そう、私は攻めに攻めてくる嬢が、好き。中野の街には、そんな嬢はいないのだろうか。

「嬢はいねが~、攻めに攻めてくるアグレッシブな嬢はいねが~」

私は、なまはげのように呟きながら、街を練り歩く。

「こんばんは~」

とある店の前から、声がした。ラーマ奥様インタビューだろうか。いや、どうやら違う。女性たちが、我々に話しかけているようだ。

コマンド? → はなす。

「ガールズバーやってるんでえ、よかったらどうですか?」

ガールズバー。そういうのも、あるのか。

金髪のボブヘア、パッチリした目、ぽってりした唇、そして巨乳。

いや、服の上からは、わからない。ただ、結構かわいい。木村カエラに雪崩式ブレーンバスターを食らわしたようなビジュアルの、若い女の子。傍らには、地味な昭和顔をした子も経っている。小津安二郎の映画に出てきそうな、モノクロな、女の子。

「飲み放題で、3000円ですよ」

悪くない、悪くないぞ。

キャバクラじゃなくても、いい。

私は、中野最終決戦として、ガールズバーを選んだ。

次回、シーズン4最終回。

※「【連載】アセロラ4000「嬢と私」」は毎週水曜日更新予定です。

アセロラ4000(あせろら・ふぉーさうざんと)
月に一度のキャバクラ通いを糧に日々を送る派遣社員。嬢とのLINE、同伴についてTwitterに綴ることを無上の喜びとしている。未婚。
https://twitter.com/ace_ace_4000

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