【連載】なにが好きかわからない vol.77「冬冬の夏休み(原題:冬冬的假期)」

皆さんこんにちは。

お盆なので実家に帰ってました。僕は毎年、少なくともお盆と年末年始は実家に帰るのですが、世間的には旅行に行ったりする人が多いみたいですね。旅行に行く人はそれで良いんですけど、僕みたいな地方出身者だと実家に帰らないと親が心配になってしまうので、極力実家に帰るようにしたいと思ってます。人生であと何日親に会えるんだろうと思ったら、今出来ることをしてあげたいなあ、どんな恩返しができるかな? という事を、祖母が亡くなってから一層強く思っております。自分の人生が一番大事だけど、同じくらい家族や身の回りの人も大切にしたいです。こういう事について色々な相反する状況に頭を抱えております。

どうしてこう人生って上手くいかないんでしょう、そしてそれはいつまで続くんでしょう……。

さてさて、実家に帰る新幹線に乗る前、久しぶりにユジク阿佐ヶ谷というミニシアター映画館で映画を観てきました。何を隠そう、ここでは7月13日から明日8月16日まで一ヶ月に渡り台湾映画特集を開催しております。僕も全部の作品を観たわけではないのですが、予告映像や購入したパンフレットで見た限り、全ての作品が面白そう。作品選定の趣味の良さが伺えます。時間の合間を見つけて何作品か見たのですが、一番好きだったのが今回ご紹介したい「冬冬の夏休み(原題:冬冬的假期)」です。

 

あらすじは、お母さんの体調が悪くなり入院している間、息子の冬冬(ドンドン)とその妹は祖父の家に預けられることになった。近所の子供達と遊んだりイタズラをしたりなど楽しく過ごすが、その一方で障害のあるご近所さんや、叔父さんが強盗を行なった旧友を匿う事件なども起こりながら、一ヶ月の夏休みを過ごしていく…… という作品です。

劇中では小さな事件や遊びがたくさん起こっているのですが、例えるならかの名作ゲーム「ぼくのなつやすみ」を台湾で映画化したような作品です。1984年に公開の作品で、しかも台北と台中の真ん中ほどに位置する台湾のど田舎「苗栗県」を舞台にしているため、田舎の原風景と時代を匂わせる服装なんかは、きっと50歳前後の人なんかはノスタルジーに呑まれてしまうんじゃないでしょうか。大都市台北から来た冬冬が、苗栗県の銅鑼駅に降り立って早速広場にいた子供達と会って、自分のラジコンと広場の子供の亀と交換しているシーンなんかは微笑ましい限りです。映画館のお客さんの年齢層も高めだったのですが、皆声を上げて笑っていたのが印象的でした。当時を経験していない僕でも、田舎育ちのせいか妙な懐かしさを感じながら幼少期の純粋な日常を思い出してしまいます。

ただ、この作品では子供達の無邪気な姿とは裏腹に、母親の容体の話や近所の知的障がいがある女性が妊娠した話、旧友の強盗を匿っている叔父さんなど実は色々な問題が起こっています。もちろん、冬冬もそういった出来事を知っているのですが、どうにも彼にはあまり自体が飲み込めません。大人の苦労なんて子供に知る由もないのですが、子供達の純粋な日常と大人の間で起こっている問題のギャップも描かれているのが面白かったです。ただ、きっとそれちゃんと目の当たりにした冬冬にとって、大人になった後、あの夏は忘れられない出来事になるはずだと思います。僕が子供の頃の夏休み、能天気に毎日ザリガニ釣りか野球ばかりしてましたが、きっと親は諸々の問題に向き合っていたんだと思うと、面白いような申し訳ないような複雑な気持ちになりますね。

この映画で描かれたような風景が、過疎化などを原因にどんどん廃れてっていますよね。僕は別に田舎や自然を至上に考えているわけでもないのですが、今のままだと自分の故郷は無くなっちゃうのかなってふと思う時があります。若い人はどんどん都会に行って、親やじいちゃんばあちゃんは老人ホームで勝手に亡くなって家を継ぐ人はいない…なんてことを想像するだけで辛くなってきます。この映画を観終わって、確かな多幸感とちょっとした物寂しさを感じました。お盆前の時期、帰省する直前に観れて良かったなあ…。今度は親やじいちゃんばあちゃんにも観せたいな。

お母さんの手料理もたくさん食べられたので東京帰ります。

今週はここら辺で。来週もひとつよしなに。

※「【連載】なにが好きかわからない」は毎週木曜日更新予定です。

エビナコウヘイ(えびな・こうへい)
1993年生まれ、青森県出身。進学を機に上京し、現在は大学で外国語を専攻している。中国での留学などを経て、現在では株式会社WACKで学生インターンをしながら就職活動中。趣味は音楽関係ならなんでも。

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