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アダルトを衣食住と同列に──UKが秋葉原にオープンさせたブランドショップ「GRAYZONE」とは?

StoryWriter

2020年2月2日、秋葉原に“NEO-ADU”をコンセプトにしたブランドショップ「GRAYZONE」がオープンした。エロいものは恥ずかしい…… というイメージを払拭し、「エロ=日常」という自然な在り方を掲げ、ファッション、インテリア、日用品などのアイテムが販売される。日常に溶け込み「持っていることが恥」とならない、自然体で存在できる「ネオアダ製品」。

そんな「GRAYZONE」の代表が、ミュージシャンとしての顔も持つUKだ。2016年に映像作家のエリザベス宮地とともに秋葉原に潜入したドキュメンタリー作品『日本グレーゾーン』を制作、2018年末には発禁処分となったものの通販にて販売し、わずか1日半で完売となった18禁楽譜 『GRAYZONE』を刊行したUKは、なぜ秋葉原に常設のショップをオープンすることにしたのか? そして“NEO-ADU”とは? 開店直前の店を訪れ、UKに話を訊いた。

取材&文:西澤裕郎
写真:エリザベス宮地


アダルトを昔の風習のまま世の中に置いておくことは不自然

──なぜ、秋葉原にショップをオープンさせようと思ったんでしょう?

UK:2016年に、映像作家のエリザベス宮地さんと『日本グレーゾーン』という映像作品を作って、そこから「GRAYZONE」という活動が始まったんです。その活動の一環として、2018年末に18禁の楽譜『GRAYZONE』を刊行したところ、発売禁止とかいろいろ問題が起こりつつも好評で。次の号は何をしようか考えていたんですけど、後追いで知った人から「買えないんですか?」って連絡をもらったり、期待していただくことが増えて、逆に俺がちょっと萎えてしまったんです。その代わりに何かしたいと思って考えて行き着いたのが、ショップを立ち上げるというアイデアでした。

18禁楽譜『GRAYZONE』

──ショップを始めるにあたり、“NEO-ADU”というテーマが掲げられています。「NEO-ADU」とは、どういったものなんでしょう?

UK:アダルトって、18禁と言われているじゃないですか? 18歳以下は触れてはいけないものだったり、社会的に少しだけ恥ずかしいものという扱いがされている。でも、SNSの普及で、昔に比べて敷居が少し下がっているイメージがあって。それなのに昔の風習のままアダルトを世の中に置いておくこと自体が不自然だと思ったんです。そういう意味で、ネオ・アダルト=“NEO-ADU”ってつけているんです。アダルトの敷居をもっと下げて、誰が観ても恥ずかしいと思わないコンテンツを提供したい。アダルト製品とかそういうものを、生活に馴染んだ形でもっと手に取りやすいような形で展開していこうのが、“NEO-ADU”と自分が掲げているコンセプトです。

──ショップでは、どんなものが販売される予定なんでしょう。

UK:日常生活に溶け込むということがキーワードで、衣食住に密接に関係するようなアイテムを考えています。日々のルーティーンの中で、歯を磨く、ご飯を食べる、服を着るということがありますけど、その中の一環でセックスをするとか、オナニーをするとかって流れもあるのに、そこだけ隠されているというのは不自然なので。そういう垣根を超えたことをしたいので、衣食住に関わるものと同列でアイテムを並べられるショップにしたいと思っています。そういうアイテムは今作っていますし、今後も展開していこうと思っています。

秋葉原は日本の文化が集約されている街

──『日本グレーゾーン』の撮影舞台も、今回のショップの場所も秋葉原です。どうして秋葉原なんでしょう。

UK:今年オリンピックがあるというのもありますけど、秋葉原って、日本の文化が集約されている街だと俺は認識していて。渋谷は若者の文化という形で、世界から観た日本の文化は秋葉原に全部集約されている。その文化を世にもっと普及したいというか、秋葉原の街ってこういう街なんだよってことを知ってほしいんです。そういう文化を俺は好きになったし、おもしろい店があるよとか、こんなおもしろいところだよってことをコンテンツで触れて紹介したのが「日本グレーゾーン」という映像作品だったんです。なので、お店を出すにあたって真っ先に浮かんだのが秋葉原だった。普通にアパレルをやるのであれば、新宿とか渋谷がいいと思うんですけど、あえてここでやる意味をもう少し深いところで考えている。世界水準でできたらなと思って秋葉原にしました。

──UKさんの考える日本文化は、リーガルとイリーガルの中間に位置しているということ?

UK:例えば、日本のロリ文化は、世界を基準にしたらあり得ないものじゃないですか? それがまかり通っている日本こそグレイだなと思う部分もあるんですけど、誰もが気にしているけど触れていないような世界に触れたい、知らせたいという思いが、GRAYZONEの活動の中に含まれている。なので、そこに関しては、秋葉原がとか日本文化がどうこうって感じではないですね。

──観光客が増えるなど秋葉原のイメージも変わったような気もしますが、今も秋葉原はおもしろいと思いますか?

UK:こんなにもお店や人種が変わる街ってそうそうないと思っていて。渋谷だったらクラブとかライヴハウスのイメージ、原宿だったら洋服のイメージが昔からあると思うんですけど、秋葉原はもともと青果市場だった。それが電気街になって、いつの間にかオタクの街に変わっていった。今も、ちょっと歩けば卸業者があったりする。それが秋葉原のおもしろいところだと思っています。

アダルト業界でSupremeみたいなことをやりたい

──この活動はミュージシャンの延長戦ではないと考えていいんでしょうか。

UK:完全に個人的な活動ですね。音楽は一切関係ない。もちろん18禁楽譜は音楽として出しているけど、基本的には自分のやりたいことを誰にも文句を言われずやれる場所、吐き出せるのがGRAYZONEなんです。

──『日本グレーゾーン』、18禁楽譜は、1回ごとにプロジェクトが終わるものでしたけど、今回のショップは日常的に続いていくもので、コストやリスクもあると思います。この先の展望をどう考えられているんでしょうか?

UK:恥ずかしげもなく展望を言えば、Supremeのようにしたい。Supremeのやることに対して誰も文句は言わないし、こういうアイテムあるよってスタンスが格好いいと思うんです。俺はアダルト業界でSupremeみたいなことをやりたい。今、カジュアルなアダルトのジャンルってTENGA一強なんですね。生活になじんだアダルトというのはTENGAしかない。でもまだTENGAはアダルト感があると思うんです。例えば、アダルトベースにTシャツだったりアイテムを展開しているから。そういうことではなく、生活ベースでアダルトがあるとことが本来のあり方なので、俺はそっちをやりたい。SupremeとかSTUSSYがアダルトとのコラボ商品を出したら爆発的に売れると思うし、先手を打たれたら悔しいけど、俺はそれを土台から作りたい。だから決して自己満足で終わりというわけではないんです。

──けっして、アダルトショップではないと。

UK:普通のアパレル雑貨というか、自分のブランド製品だけを取り扱うブランドショップです。これが土台ごと大きくなっていったらいいなという展望があります。もう一つ自分がこだわっているというか、思っていることがあって。今ってどこかに属していることが今生きる術の1つになっちゃっていると思うんです。例えば、TENGAだったらアダルト業界にちゃんと居座って、その中でいろいろやる。ドメスティックブランドだったら、横の繋がりでデザイナー同士が盛り上げてやっていく。音楽もそう。それもおもしろいんですけど、GRAYZONEには、どこにも属していない不明瞭な領域っていう意味があって、俺はそれを体現したい。ファッションでいうと、毎年シーズンものをルックに出して発表することがスタンダードになっているけど、俺はそこに則ってやるつもりはないし、自分が出したいときに出す。アダルトに関しても、自分のお店が有る限りはそこで出していける。だからみんなが仲間であり、みんなが敵という感じですね。基本的に孤立している感じ。どこかにジャンル分けしたり、属さないとできないことなんてないから。この先も俺は誰かとつるむこともないです。

──もちろんお金を稼がないと続いていかないことは前提としてありますが、根底にあるのはビジネス第一ではないということなんですね。

UK:ビジネスというよりは楽しいことや注目されることをしたい。やりたいことから始めているだけなので、それがお金になったらラッキーかなくらいのマインドですね。それが俺のモットーです。

──実際にお店に足を運んでみると、ちょっとおもしろいことやってみましたというレベルではないですよね。ショップの隅々までUKさんの本気を感じます。

UK:これは18禁楽譜を作ったときから言っているんですけど、音楽業界とかミュージシャンの人が「ブランドを立ち上げました」「グッズを作っています」と言っても、あくまでもバンドの領域から抜け出せていない感じがしていて。本人にそのつもりがなくても、俺から見たら、ブランドごっことか、お店ごっこみたいなイメージを持っちゃう。それっぽいってことをやっているだけで、ちゃんとやれている人は本当に知れる数かしかいない。やるんだったら本気でやるというのが俺のポリシー。だから俺は、このお店も音楽のことは一切関係なく、自分が本気で没頭できる中でやっている。ダラっとはやらない。そうじゃないと、その先がないから。その先に広がるものは想像の範疇でしかなくなってしまうと思うので。もっともっと知らない世界が俺の目指しているところなんです。


■ショップ情報

GRAYZONE
住所非公開
営業時間:12時〜20時
※2020年2月2日(日) オープン

公式Instagram
https://www.instagram.com/grayzone.tokyo

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