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山本直樹が審査委員長を務める「太田エロティック・マンガ賞」2019年下半期の結果を発表

StoryWriter

太田出版が主催するマンガ賞「太田エロティック・マンガ賞」の2019年下半期の結果発表が行われた。

今回は200作品以上の応募の中から、エロティクス賞・優秀賞・奨励賞あわせて5作品が入賞。入賞者へは審査委員長・山本直樹による講評が公開されている。

エロティクス賞を受賞したzngo「苦楽下」に対して山本は「絵もうまく幻想文学的な味わいも素晴らしくて、文句のつけようがないと思います」と評している。同作品は後日、pixivコミックに掲載予定。

また、今回は最終選考に残りつつ辛くも受賞とならなかった作家への講評も掲載されているので合わせてチェックしてみてはいかがだろう。(西澤裕郎)


■「太田エロティック・マンガ賞」概要
審査員:山本直樹、太田出版編集部、pixiv編集員
賞金:エロティクス賞 10万円(1名)、優秀賞 5万円(1名)、奨励賞 3万円(若干名)
※次回の募集については「太田エロティック・マンガ賞」募集ページでご案内します。
http://www.ohtabooks.com/awards/

▼▼エロティクス賞▼▼
賞品:pixivコミックに掲載、賞金10万円 ※pixivコミックには後日掲載予定です

◆zngo「苦楽外」


山本直樹 講評
ずば抜けて自分の世界が出来ていました。エロスという観点とは少し違うかもしれませんが、絵もうまく幻想文学的な味わいも素晴らしくて、文句のつけようがないと思います。もしかしてプロ経験ある人なのかな。今回同時に応募されていた『婆偶』のほうが、もしかしたらこの人本来の作風かもしれないけれど、その持ち味が出すぎていて、入っていける読者が少ないかもしれないと感じました。こっちはもう少し門戸が広いような気がする。同じく同時応募だった『大雨小歌』はわりとスケッチ的な感じで、僕も含めてそれが大好きな人はいますけど、作品としてバランスが良いのはやはり『苦楽下』だと思います。

▼▼優秀賞▼▼
賞品:賞金5万円

◆上田たんぽぽ「ランデブー」


山本直樹 講評
不思議な世界を描こうとする人はたくさんいますが、実際にこのように描ける人はなかなか少ないです。エロさもちゃんとあって、男の子も女の子も生き生きと動いてる。作中でキャラクターの気持ちがちゃんと動いているのが伝わるというのはそれ自体で素晴らしいことです。終わり方もかっこよかったです。ゴトウユキコさんっぽい世界も感じさせつつ、しっかりと独自の世界を持っていると思います。絵もざっくり描いているようでうまいですし、作品の雰囲気とばっちり合っていました。

▼▼奨励賞▼▼
賞品:賞金3万円

◆いからしひなこ「睡蓮華」
山本直樹 講評
自分の間で描けていますし、お話のリズムやテンポに合わせてページが進んでいくのが読んでいて気持ちよかったです。必ずしもエロがメインではないけれど、しっかりと人物の気持ちが描けているのも素晴らしい。この何気ない内容で41ページは多いと思われやすいかもしれないけれど、ちゃんと空気感が出ていて、この漫画に必要なページ数だった気がします。最後、雪の中に蓮華だけっていうのもうまいなと思いました。好きな世界です。

◆熊と翼「ゲスの極み家族」
山本直樹 講評
絶望的だけどどこか明るい。作者の実体験かと思わされる迫力があります。これが想像だとしたらそれもすごいですけど。同時応募作『ショートエログラム』も、短いなりにまとまっていて良いと思いました。でもこの作品くらい長いほうが読みでがある。ただ絵の方が、言わば本番とラフが半々くらいの完成度なので、次はよりしっりと仕上がったものを読んでみたいです。

◆海岸亭「美大予備校生の苦悩」
山本直樹 講評
お話に勢いがあって、作中世界をしっかり描けていました。それだけでいいですよね。主人公も相手の女の子もちゃんと生きて動いている。終わり方も安易なハッピーエンドにするでもなく、無理やりどん底に行くでもなく。キャラふたりとも美大予備校生活がずっと続いていくと察せられるところがいいと思いました。

▼▼山本直樹 総評▼▼
今回は全体的にレベルが高く、大賞と優秀賞をどれにしようか迷ったのは初めてですし、本当なら奨励賞を20本出したいくらいだったし、講評した以外にも光る作品は多々ありました。その中で大賞を獲得したzngoさんと優秀賞の上田さんの評価には、実際あまり差がありませんでした。奨励賞の3名も含めてみなさん個性を十分持っている人たちなので、細かくどうこう言うことはありません。とにかく描き続けてください。どんどん行っちゃってください。
残念だったのはネームの字が小さく読みづらい作品があったことかな。好きな長さにできるのがweb投稿の良い点だと思うので。ストーリーやネームの量に合わせてページ数を変えるのも一つの手でしょう。あと最近の傾向として近親相姦ネタが多いですね。ドラマチックなお話にしやすいように見えますが、ショックが続くとお話が平板になってしまいます。
漫画を描いていると、読者に対してだけじゃなく描いてる自分すらも「こんなはずじゃなかった…!」っていう良い意味の裏切りが顔を出す時があるんです。そこを逃さず首根っこを捕まえると、もっとお話が面白くなるはずです。

※最終選考通過作品への講評は、ページにてご確認下さい。

・【2019年下半期】太田エロティック・マンガ賞 選考結果発表
http://www.ohtabooks.com/press/2020/02/28120000.html

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