お世話になっております。自転車でハードオフをはしごするdigる男・ヨコザワカイトです。
皆さんは「ワールド・ミュージックとはなんぞや?」という疑問を抱いた事はありますか?
僕は、そんな疑問を疑問にしたまま、23年間生きてきてしまいました。お恥ずかしい話です。
アフリカ、ラテンアメリカ、アジア、バルカン半島、ケルト、ロマほか世界の各地域と民族の、多様な音楽を包括する音楽用語である。(日本語wiki)
世界中の他の地域のさまざまなスタイルの音楽を網羅する西洋の音楽カテゴリ。民族/土着の音楽/フォークミュージック/ネオトラディショナルミュージック/非西洋音楽/西洋のポピュラー音楽など、複数の文化的伝統が混在する音楽。(英語wiki)
僕が初めて「ワールドミュージック」という単語を意識したのは、地元にあるTSUTAYAのワールドミュージック・コーナーでした。そのコーナーは棚が1つしかなく、イージーリスニング系の音楽が多かったんですよ。ボサノヴァとかハワイアンとか。
それが、僕のワールドミュージックとの出会いでした。一応一通り聴いてはみたものの、イージーリスニングと混同していたんですよね。世界の音楽らしいんだけど、「なんか軽いんだよなあ」と(笑)。
そこから、話は先週に飛びます。
最近お金がなさすぎて単発のアルバイトをしているのですが、その先輩が異常に音楽に詳しくてですね。毎日、色々な音楽を教えてくれるんですよ。
音楽から思想史まで色々な話をしている中で、「ワールドミュージックってなんぞや」という話になりまして。その方いわく、エスニック / 民族音楽が流行った時代が80年代にはあるんだそうです。確かに、手元にある『MUSIC MAGAZINE(増刊)-ミュージックガイドブック88-』にも民族音楽を売りにしたレコード店の広告が多いですね。
1988年のミュージックマガジン増刊号を購入。バキバキに濃い内容はもちろん、レコード店の広告が素晴らしい。 pic.twitter.com/yXnqvzZiNj
— ヨコザワカイト (@SW_Yokozawa) August 1, 2020
どうやらワールドミュージックに対する誤解があるようだとわかったので「じゃあ、これ聴いてみなよ」と渡されたのが、こちら。
本作はプログレッシブ・ロックバンドGenesisの初代ボーカリスト・ピーター・ガブリエルによるソロ4作目。『Peter Gabriel 4』/『Security』とも呼ばれる。僕が借りたのは英語版ではなくドイツ語版。
この衝撃で僕の誤解は吹き飛ばされました。「めっちゃ重いじゃん!」と(笑)。
当時の白人社会に抑圧されたネイティブアメリカンの恐怖や痛みを表現したこのアルバムは、民族音楽的なドラム / 打楽器とエレクトロニックなシンセサウンドが融合した、まさにエスノとテクノの共演。それも最終的な落とし所はロックという、初心者の僕がのめり込むには最適の1枚でした。
エドワード・サイードが「ポストコロニアル」を提唱した『オリエンタリズム』を発表したのが、1978年。当時、異文化を語る試みは時代の最先端として様々されていたわけで。この作品からも文化人類学の影響をモロに受けたメッセージが強く込められています。
1曲目「The Rhythm of The Heat(Der Rhythmus der Hitze )」をもう少し詳しく見てみましょう。
有機的なドラムと無機質な重低音シンセ、そこに彼の叫び声が力強く投げかけられます。「The rhythm is inside me」という歌詞からも伝わってくるように、内なるリズムが熱暴走を起こしたような曲とでも言いましょうか。
本人もプリミティブ・エレクトロニクス·ミュージックと呼んでいるので、外を内に読み込んでいく時代の中で、原初的な体験を呼び覚ますような意識が生まれていったのではないでしょうか。と言っても内省的に落ち込むのではなく、鋭いメッセージと熱いエネルギーに満ち満ちています。
ラストにかけて(コーダと呼ぶらしい)爆音なまでに盛り上がっていくのがもう怖いくらいに衝撃的。そして同時に、ようやくワールドミュージックの入口に立てたかなという実感が湧いてくるのでした。
このアルバムの中で1番売れた曲は、シングルカットもされた「Shock the monkey」。モンキーと言っても動物愛護の意味のサルではなく、「内なる嫉妬を呼び覚ませ」というメタファーなんだそう。米ポップシングルチャートで29位にランクインしています。これが売れる時代があったなんて、今からは想像もつきません。
MVも怖い…
Spotifyを一応載せておきますが、音質などの問題で手元にあるCDとは印象がかなり異なります。レコードだとまた違うんだろうなあ。Spotifyで気になった方は是非、CDやレコードで!
※「【連載】digる男。」は毎週月曜日更新予定です。
1997年生まれ、千葉県出身。大学では社会学を専攻している。StoryWriterで連載を担当しながら就職活動中、そして迷走中。最近は、密かに音源も制作している。