watch more

【GO TO THE BEDS 連載】Vol.6 ヤママチミキ編「光みたいなものが見えている気がします」

StoryWriter

BiSHや豆柴の大群らが所属するWACKの中で、キャリアが最も長かったGANG PARADE(以下、ギャンパレ)が2つに分裂して生まれたアイドルグループ「GO TO THE BEDS」。ギャンパレでキャリアの長い5名――ヤママチミキ、ユメノユア、キャン・GP・マイカ、ココ・パーティン・ココ、ユイ・ガ・ドクソンによって構成された異例の新人グループだ。

2020年7月22日にはグループ初となるフルアルバム『GO TO THE BEDS』をリリース。9月6日には横浜・関内ホールにて結成後初のホールワンマンライヴ〈ARE YOU SLEEPER?〉を有観客で開催。9月21日からは1週間にわたり無人島でのサバイバル生活を行う企画を完遂し、9月27日に中野heavysick ZEROにて2回目のワンマンをニコ生中継で行った。

そんな彼女たちに迫る個別インタビュー連載も2周目に突入。第1回目となる今回は、無人島生活を終えて、中野heavysick ZEROでワンマンを行った翌日、ヤママチミキに話を訊いた。

取材&文:西澤裕郎
写真:外林健太


現状をどうにかするためには極限状態に身を置くしかなかった

──約1週間にわたる無人島でのサバイバル生活、お疲れさまでした。

ヤママチ(以下、ミキ):ありがとうございます(笑)。

──メンバー5人で自力でイカダを作って脱出するという、アイドルグループとは思えない企画を達成したわけですが、無人島生活を終えてみた感想は?

ミキ:現代の便利さを1番感じましたね。それこそご飯1つにしても、火を起こすところから始めて何時間もかけて準備をして。5泊が長いなと思った瞬間もあったんですけど、終えてみると1日24時間とは思えなくくらい本当にあっという間だった気持ちがめちゃくちゃ大きいですね。

──無人島では具体的にどんなことをやったんですか?

ミキ:用意されていたミッションをクリアすると何かしら報酬がいただけたので、お風呂や椅子、机を作ったり、釣りをしたり、究極のアウトドアって感じでしたね。私はインドアなので、何もかもやったことのないことばかりだったんですけど、ドク(※ユイ・ガ・ドクソン)が小さい頃にガールスカウトをしていたことがあったので、その知識を便りにしつつ、5人で手探りでミッションに臨んでいました。アウトドア好きな人だったら、もしかしたらやったことあるかもしれないけど、大半の方が経験したことないようなことをやっていましたね。

──ドクソンさんの経験がある程度あるとは言え、椅子やお風呂を作ったり、よくできましたね。

ミキ:本当にその場の思いつきだったり、テレビで観たような情報だけでやっていたんですけど、ニコ生さんがずっと放送してくださっていてコメントも見れる状態にしてもらっていたんです。5人全員分からないことだらけだったので、視聴者の方に「これはどうしたらいいんだろう?」とか訊くと、みんなが答えを探してきてくれたり、自分の持ってる知識を出してくれて。視聴者の方々にもたくさん助けてもらいました。

──サバイバル生活の中で1番つらかったことは?

ミキ:うーん、全部つらかったんですけど、最後にイカダを漕いでいるとき、1時間ぐらい同じところに居続けた時間があって。波に流されまくっていたときは心が折れそうでした。イカダに乗っている時はお客さんのコメントも全く見れない状況だったので、励みになるものがほぼほぼないというか。メンバー全員の心が折れかけていた瞬間は本当にしんどかったなと思います。ずっと漕ぎ続けているから腕もしんどくなってきたり、濡れているので寒くなってきて体力的にもどんどん落ちてきちゃって。それはつらかったですね。

──心折れそうになりながらも、無人島から脱出した時はどんな気持ちでしたか?

ミキ:本当に脱出できたー! って気持ちがめちゃくちゃ強かったです。あと、単純にうれしくてしょうがなかったです。私もそうですし、メンバーも無理かもと思った瞬間もあったけど、ここで諦めたら無人島で生活した時間が無意味になってしまうし、ずっと観続けてくれていたり応援してくれたお客さんに対して恩返しすらできないまま終わってしまう。この企画を準備してくれたスタッフさんにも本当に申し訳ないなって気持ちが強かったので、最後までみんな頑張れたんだと思っています。

──純粋な疑問なんですけど、どうして無人島生活企画が行われたんだと思いますか。

ミキ:スタッフさんが用意してくれたライヴだったり企画だったり、GO TO THE BEDSの音楽だったり、そうした期待を私たちは超えられていなかったと思うんです。具体的なことで言うと、MVの再生回数が伸びなかったり、GO TO THE BEDSの音楽を聴きたいと思ってくれる人の数を伸ばせなかった。ギャンパレは1つ1つのライヴを経て少しずつお客さんを増やしてきたグループだったんですけど、こういう時代になって自分たちの見せ方や音楽の届け方を上手いことできずに来てしまった結果、いろいろな人への期待に応えられなかった。それこそ「現状間違いなくGO TO THE BEDS」で渡辺(淳之介/WACK代表)さんが書いてくれた詞のような感だった。それをどうにかするためには極限状態に身を置くしかないということで組んでもらった企画だったのかなと。それは無人島に行く前に考えたときより、生活をし終えた今の段階でもすごく強く思いますね。

数日後に解散と言われる可能性もあるなという気持ちもありました

──「現状間違いなくGO TO THE BEDS」の歌詞は、かなり辛辣というか。周回遅れとまで書かれています。初めて聴いた時、どんなことを思いましたか?

 

ミキ:まだ新しい曲をもらえていて、その詞を渡辺さんが書いてくれていることに希望はあったんですけど、先がどうなるか分からないという怖さは感じました。でも、この曲をもらったからこそ、本当にやるしかないという気持ちは強くはなりました。正直、この曲をもらった時は、数日後に解散と言われる可能性もあるなという気持ちもありました。

──同楽曲のMVは、今まで渡辺さんが残してきた代表的なMVの要素をオマージュした作品になっています。ある意味、最終兵器的な作り方だと思うんですけど、どういう気持ちで撮影に臨んだんでしょう。

ミキ:嬉しかったと言っていいのか分からないですけど、私は旧BiSがずっと好きだったんです。元になったMVは、渡辺さんにとってターニングポイントになった作品ばかりで。もちろんどのMVも大切だけど、より思い入れのあるものだったのかなって。それを凝縮させたMVを作ってもらえるのは嬉しかった。こんなにダメダメな自分たちにもまだ希望を見せてくれるというか、諦めないでいてくれているっていうのを企画を聞いた時に思って嬉しかったです。

──103回連続で楽曲をパフォーマンスする撮影前、渡辺さんが「目の前の人たちを感動させられなかったら、その先にいるお客さんたちには伝わらない」というアドバイスを伝えていました。撮影中は、どんなことを意識していましたか。

ミキ:必死に1回1回に対して向き合って、気持ちを入れてやってたつもりだったけど、それができていたかは今はまだわからなくて。がむしゃらにやることだけが正解ではないと思っていたからこそ、自分の歌割りでカメラが来た時にどれだけアピールできるか、どれだけお客さんがいると思って見せられるかを意識してやっていまいた。でも、それって傍から見たら余裕そうに見えたりとかしたのかなと思って。私が顔にあまり疲れているとか出ないっぽくて。

──僕も密着取材していましたが、たしかにケロっとしているようにも見えました。

ミキ:だからといって疲れているような顔を演じたところで、それこそ絶対に伝わらないと思いながらやっていました。後半は本当に疲れていたので、あまり何も考えられていなくて。とりあえず動いているっていう状態で、必死でした。

──当初の予定だと、102回行うはずでした。しかし102回で終わらず、103回目のイントロが始まった。現場の空気がそうさせたと思うんですけど、予想もしなかった最後の1回でした。

ミキ:102回目が全然ダメだったのかなと思ったんですけど、91回目から、今まで立ってきたライヴ会場の名前を描いた紙をスタッフさんが掲げてくれていたんです。そして、103回目に書かれていたのが「アンコール」だった。あ、なるほど、これはアンコールかと思って、妙に納得はしました。

──中野heavy sickとか、会場名を見ると気持ちは変わるものですか?

ミキ:私はめちゃくちゃ変わりました。その時の光景だったり、自分がどういう気持ちで立っていたかとか、あの曲がよかったなとかを思い出したりしていて。今まで立ってきた場所だったので具体的なものが想像しやすくて、お客さんも見えたんです。91回目からの時間は、私の目の前にはずっとお客さんがいました。

期待値よりも上を自分が目指さないと、グループが絶対によくならない

──MVが公開された日、結成後初のワンマンライヴ〈ARE YOU SLEEPER?〉が開催されました。お客さんを入れてのライヴは、WACKとしても久しぶりの公演でしたが、どんなライヴになりましたか。

ミキ:お客さんを目の前にすると、気持ちもやっぱり違いました。楽しくて、うれしくてという気持ちが1番強かったです。後々冷静になって思い返したり、ライヴ映像を確認したりすると、もっとできたというか、もっと考えられたライヴだったのかなと思って。課題は多く残ったライヴでしたね。

 

──特に印象的だったのは、メンバーがステージをはけたり、演劇調の振付があったりしたことです。どうしてこういう演出が生まれたんでしょう。

ミキ:GO TO THE BEDSの振付は、(キャン・GP・)マイカが中心になって考えているんですけど、マイカの色を出してほしいというのが全員の希望で。その中で今までと違ったものをお客さんに見せたいねとずっと言っていたんです。それで曲の途中にはけたり、「GROOVE」でユアが1人だけぽつんと残って始まったりというアイデアが生まれて。配信だからこうしたいというよりも、1つのライヴとしてお客さんに楽しんでもらいたい気持ちが強かったんです。ドクもワクワクさせられるものを見せたいとずっと言っている子なので、GO TO THE BEDSとして振り付けでそういうのがあったらいいねっていうことから生まれました。

──GO TO THE BEDSの歌やダンスのスキルは、WACK内でも飛び抜けて高いということも感じました。

ミキ:無人島で毎日反省会をしていたんですけど、全員キャリアが長いので、どうしても期待値が高いところから始まっているんです。私たちは最低ラインが高いのにも関わらず、そこからのスタートがまだできてないと思っていて。期待値よりも下からスタートしてしまっているからダメだよねっていうのはずっと話していました。なので9月6日ももっとできたんじゃないかという反省はあります。

 

──昨日9月27日は、中野heavysick ZEROで2回目のワンマンを開催しました。無人島サバイバル明けのワンマンということで、手応えはいかがでしたか。

ミキ:私がプチパニックを起こしてしまい、今までしたことないようなミスをしたり反省がいっぱい残ったんですけど、5人のアイコンタクトが自然と増えていったので、よかったのかなと思う部分はありました。ただ、5泊6日一緒に頑張ってくれたのに、こんなボロボロでごめんなさいってめっちゃ思いました。

──さっきの期待値の話もそうですけど、自分に対しての基準もどんどん高くなってきているということなんでしょうか。

ミキ:高くしないといけないって気持ちはあります。期待値の最低ラインが高くなっているんだったら、絶対にその期待値よりも上を自分が目指さないと、グループが絶対によくならないと思うので。私はわりと自分に甘いので、そうならないようにやろうと思っています。

みんなの愛を感じられたのが本当に嬉しかった

──「現状間違いなくGO TO THE BEDS」の3連発で始まり、最後「行かなくちゃ?」の3連発で終わりました。3連発もWACKの代名詞です。とても意味のあるセトリだったと思いますが、どんなことを考えてライヴをしましたか。

ミキ:「現状間違いなくGO TO THE BEDS」は、1曲目から死ぬ気でいこうとみんなで言っていて。後のことは考えずにいこうって個人的にも思っていたし、たぶんメンバー全員思っていたのかなってライヴして思いましたね。とりあえず死ぬつもりで全部やるぞっていう気持ちでやっていました。ちょっとずつみんな痛みや疲れが出てきたりしていたとは思うんですけど、今できるものをやらなかったら、私たちはこの先がないので。とりあえず最初の1曲にかけてやろうと思いましたね。

──MCで「まだ知らない世界中の人に音楽を届けていきたいと思います。そのために私たちはこれから先、どれだけ薄汚れても生きていきます」と言っていたのが印象的でした。どうして「薄汚れても」という表現をしたんでしょう?

ミキ:その次の「VILLAN」という曲で〈薄汚れても生きていきたいでしょ?〉っていう投げかけの歌詞を書いているんです。それが現状の自分たちに当てはまる言葉なのかなと思って。5日間風呂も入らず日々泥まみれになりながら過ごした中で、本当に活きることに精一杯だった。そういう部分を踏まえた時に、薄汚れても生きて、自分たちの音楽を伝えていきたいという気持ちを込めて話しました。

──「VILLAN」はミキさんのお父さんが亡くなった時に作詞した楽曲だと前回のインタビューで話してくれました。ライヴで歌って、どんな気持ちでしたか。

ミキ:どっちかと言ったら「VILLAN」は8割死、2割生きるぐらいのスタンスで作詞したんです。だけど、ライヴをしてみたら、その割合が全然違くて。生きていたいという気持ちの割合が大きくなった。それは意外な発見でした。もっと絶望的な気持ちで自分も歌うかなとも思っていたんですけど、自分の中では光を見ながら歌っているような感覚でしたね。

──アンコールでは「行かなくちゃ?」を3連続で披露しました。

ミキ:「行かなくちゃ?」は楽しもうという気持ちと、お客さんに届けたいという気持ちが1番大きかったんです。配信だと直接お客さんの反応が返ってこないので難しいなと思うんですけど、お客さんに届いていると信じながら歌いました。特に3回目は本当に純粋に楽しんでやりました。今までギャンパレ時代も、フロアに下りてパフォーマンスすることはなかったので、メンバーもちょっと戸惑いつつも、heavy sick全体を使って、今私たちはこんなに楽しんでライヴをしているんだということをお客さんに伝えられるように歌いました。

──3回目の「行かなくちゃ?」は、無人島を経たからこその1回でしたね。

ミキ:途中でイカダを漕いだり、火を起こししたりとかしていました(笑)。

 

──ニコ生では、指のマークがぶわーと弾丸のように画面を埋め尽くしていました。

ミキ:後から見たんですけど、サビのところで私たちが指を天にあげる振りと一体感があるように溢れていて。みんな頭いいと思ったし、嬉しかったですね。

──初ワンマンのときもそうでしたが、GO TO THE BEDSはお客さんの熱量や愛が強いなということをすごく感じます。

ミキ:それは本当に思います。今回の無人島でも、みんなたくさんツイートしてくれていて。最終日、人がいる島に辿りついて、宿でハッシュタグを追ったんですけど追いきれないぐらい事あるごとにツイートをしてくれていて。みんなの愛をそこでも感じられたのは本当に嬉しかったです。

──「現状間違いなくGO TO THE BEDS」と言われていますが、そこから這い上がれそうな兆しというか、手応えみたいなものは掴めていますか?

ミキ:無人島企画を経て、メンバーそれぞれへのリスペクトの気持ち、お客さんに対する愛情だったり感じ方、グループに対しての考えとか、知っていたつもりだったけど全部知りきれてなかったんだなってことを実感して。たくさん反省点もあったけど、それこそ光みたいなものは見えている気はします。いつもその状態になった時に掴みきれてなかったので、今度はちゃんとがっしり掴んでいかなきゃいけない。私はすぐ気が緩んじゃうタイプなので、そこで気を抜かないようにと思っています。1週間を終えて安心という気持ちはあるけど、気を抜いてしまったら今までと変わらなくなってしまうので。さらに気を引き締めていこうと強く思っています。


■リリース情報
GO TO THE BEDS『タイトル未定』
2021年1月13日(水)リリース
WPCL-13264
税抜 2,200円
収録内容:
現状間違いなくGO TO THE BEDS
他全6曲予定

■ライヴ情報

GO TO THE BEDS〈ARE YOU SLEEPER?〉

2020年11月8日(日)@京都 KBSホール
時間:Open 18:30 / Start 19:00

2020年11月3日(火・祝)@仙台市 若林区文化センター
Open/Start 18:30/19:00 [問] G/I/P 022-222-9999

GO TO THE BEDS公式 WEBサイト:https://gotothebeds.com/

GO TO THE BEDS PROFILE

ヤママチミキ、ユメノユア、キャン・GP・マイカ、ココ・パーティン・ココ、ユイ・ガ・ドクソンの5人からなるアイドルグループ。読み方は“ゴートゥーザベッツ”。

2020年3月、所属する音楽事務所WACKが主催するオーディション合宿「WACK合同オーディション2020」最終日に事務所代表の渡辺淳之介より「ギャンパレ」を2つに分ける形で結成がアナウンスされた。

2020年4月1日に同日結成した「PARADISES」とのスプリットアルバム『G/P』をリリース。

同年7月22日に初のフルアルバム『GO TO THE BEDS』をリリース!!

https://gotothebeds.com/

PICK UP